Molecular Cell Biology

Molecular Cell Biology · 8

主要なDNA損傷の種類;塩基脱アミノ化の修復(EM学生のみ)

The most important types of DNA damage; repair of base deamination (only for EM-students)

🧠 DNA損傷は常に「2本鎖のうち1本だけ」が傷つく——もう一方の鎖に正しい情報が残っているからこそ修復が可能になる。 この「相補鎖が正解を知っている」という原則が、から09-formation-and-repair-of-thymine-dimers-mismatch-repair参照)まで、DNA修復システム全体を貫くロジックである。だけはこの原則が使えないため、(homologous recombination)かという全く異なる2つの解決策が必要になる。

DNA損傷とは

DNA損傷は2本鎖のうち一方の1つの塩基/ヌクレオチドが損傷し、もう一方の鎖は無傷のままである状態を指す。もう一方の鎖は元の正しい情報を保持しているため、DNA損傷は修復可能である。

DNA損傷の原因

  • 環境因子:UV光、
  • 化学的作用
  • 複製中の的過程
  • 代謝過程:ROS(、reactive oxygen species)——酸素を含み他の分子と容易に反応する不安定な分子。細胞内でROSが蓄積するとDNA・RNA・タンパク質の損傷、細胞死を招きうる

DNA損傷の分類

1. 自然加水分解

:β-N-の切断によるプリン(A/G)の遊離。DNAは完全に安定ではなく、は自然に加水分解されうる——1日あたり約10,000箇所のプリン部位がされる。原因は熱・酸——塩基を欠いたデオキシ-リン酸(APサイト)が残る。

:分子から(NH₂)が除去される反応。

塩基 産物
シトシン

2. 塩基修飾

内因性・により塩基が修飾されうる。

種類 内容
メチル化 CH₃基の付加
糖分子の付加
の付加
芳香環の付加

結果:複製時のエラー(変異)を引き起こしうる。

3. 架橋形成

DNAにおいては2つのヌクレオチド間の共有結合を指す。

種類 内容
2本の異なるDNA鎖間の架橋
同一DNA鎖内の架橋

はより有害——複製・転写を阻害し、染色体→アポトーシスを招く。増殖中の細胞に対する毒性が高いため、として利用される。

4. 二量体化

同一化合物の2分子が反応しを形成する反応。UV放射は隣接する間にの形成を促進し、ピリミジン二量体(、pyrimidine dimer、C-CまたはC-T二量体も生じうる)を形成する。DNA修復機能に欠陥のある人は日光に敏感で、になりやすい(09-formation-and-repair-of-thymine-dimers-mismatch-repair参照)。

5. 骨格損傷

は高反応性のを生成しDNAの結合を切断しうる。マスタードガスなどのもDNA骨格の切断を引き起こす。修復が困難で、染色体の一部の転座・欠失を生じうる。

6. インターカレーション

の間に薬剤自身を挿入する特殊な結合様式。DNAにをもたらし機能を停止させる(DNA鎖の切断、複製の阻害)。

p53は腫瘍抑制タンパク質でゲノムの守護者と呼ばれる。 DNA損傷が修正されるまでS期への移行を許さず、損傷数が過剰な場合はアポトーシス(細胞死)を誘導する。

DNA修復システムの分類

1. 複製完了前(複製中):校正

変異を防ぐ第一の防衛線はDNAポリメラーゼ自体である(原核生物:全てのDNAポリメラーゼ、真核生物:δ・εのみ)。正しいヌクレオチドが伸長鎖の3′端に付加され続ける限り、ポリメラーゼ部位に留まる。

  1. は3′-5′に依存する
  2. DNA合成中に誤った塩基が取り込まれると、新生鎖の3′ヌクレオチドと鋳型鎖のが起こらない
  3. その結果ポリメラーゼは一時停止し、伸長鎖の3′端は部位へ転送され、誤塩基が除去される
  4. 3′端はポリメラーゼ部位へ戻され、この領域が正しくコピーされる

2. 複製後:DNA除去修復システム(一本鎖・二本鎖損傷)

に加え、細胞はコピーエラーや・放射線への曝露による変異を防ぐその他のシステムを持つ。いずれも同様に機能する:損傷DNA鎖のセグメントを切除し、相補DNA鎖を鋳型としてDNAポリメラーゼとがギャップを埋める。

一本鎖損傷の修復系:

  • 09-formation-and-repair-of-thymine-dimers-mismatch-repair参照)
  • ——本項で解説
  • ——とほぼ同様

=塩基の修復:

全ての細胞はDNAという酵素クラスを持ち、この特に頻度の高いDNA損傷を認識し、N-(塩基と糖の間の結合)を切断して損傷塩基を除去する。各DNAは一般に1種類の損傷に特異的である。

flowchart TD
  A["DNA<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glycosylase'>グリコシラーゼ</span>が誤った塩基をらせん外へ反転"] --> B["糖-リン酸骨格から切り離す"]
  B --> C["APサイト(塩基欠失部位)が生成"]
  C --> D["AP<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endonuclease'>エンドヌクレアーゼ</span>がデオキシ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ribose'>リボース</span>5'-リン酸を除去し新規ヌクレオチドに置換<br>(APサイトを含むDNA鎖を切断)"]
  D --> E["DNAポリメラーゼI(原核)/β(真核)がAPサイトから除去されたセグメントを新しいDNAで置換"]
  E --> F["DNA<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ligase'>リガーゼ</span>が残ったニックを封鎖"]

塩基脱アミノ化の背景(点変異の最も頻度の高い原因の1つ)

(外環の自然消失、spontaneous loss of exocyclic amino group):

  • シトシン塩基へ変換
  • 5-メチルシトシンされるとを形成

多くは的過程だが、によっても起こりうる。これらの変化がDNA複製前に修正されなければ、DNA配列に永続的な変化が生じる——細胞はUまたはTを含む鎖を鋳型としてU-AまたはT-Aを形成し、1回の複製後、一方の娘DNA分子は変異T-Aを、他方は野生型C-Gを持つことになる。

二本鎖損傷の修復

(X線・γ線)や抗癌薬によって生じるDNA。二本鎖の切断・再結合は染色体再配列を招き遺伝子機能に影響しうる(例:「」遺伝子の形成、ある遺伝子のプロモーターが別の遺伝子近傍へ移動し発現量/発現細胞種を変化させる)。

の修復には2つのシステムが進化してきた:

機序
(homologous recombination) 類似した無傷DNA区間を鋳型として利用する。酵素が無傷鎖と損傷鎖を絡ませヌクレオチド配列を交換させ、欠けたギャップを埋めて2本の完全な二本鎖セグメントを完成させる
と異なり鋳型に依存しない。一連のタンパク質が数ヌクレオチドを削り取り、切断端を融合させる。正確性は低く遺伝子の混在・移動を招きうるが、姉妹DNAが利用できない場合に有用

まとめ

  • DNA損傷は常に2本鎖の一方のみに生じ、正常な相補鎖を鋳型として修復されうる——)、の6分類がある。
  • p53はDNA損傷を監視する腫瘍抑制タンパク質で、修復完了までS期移行を止め、損傷過多の場合はアポトーシスを誘導する。
  • 修復系は複製中の(DNAポリメラーゼの3′-5′)と複製後の)に大別され、塩基はDNA→AP→DNAポリメラーゼ→DNAというの一連の流れで修復される。
  • は一本鎖損傷とは異なる原理を要し、鋳型を用いると鋳型不要だが不正確なという2つの独立した経路で修復される。