Molecular Cell Biology

Molecular Cell Biology · 21

RNA干渉による真核生物遺伝子発現の調節(miRNA、siRNA)

Regulation of eukaryotic gene expression by RNA interference (miRNA, siRNA)

🧠 RNA干渉は「二本鎖RNAは異物である」という細胞の警戒システムを利用した遺伝子サイレンシング機構であり、Dicerによる切断→RISC複合体への搭載→標的mRNAとのというをmiRNA・siRNAの両方が辿る。 両者の運命を分けるのは、標的mRNAとのの程度が「」か「不完全」かという1点だけであり、これが「切断による分解」と「翻訳抑制」という異なる結末を生む。

RNA干渉とは

RNAiは二本鎖RNA(dsRNA)によって誘導される遺伝子サイレンシング機構である。配列特異的であり、dsRNAと、その反応を引き起こしたdsRNAに配列相同性を持つ(ssRNA)分子——通常はmRNA——の両方の分解を伴う。

dsRNAは「異物」とみなされ、通常は全生物種の生きた細胞によって破壊される。RNAiは細胞内で検出されたdsRNAと同じ配列を持つmRNAを破壊する。

RNAiの機能は特定のmRNA鎖を標的にしてタンパク質合成を阻害することであり、これを短い(23ヌクレオチド)二本鎖セグメントへ切断する(RNAi→標的mRNA→分解)。細胞内のdsRNAはsiRNA(低分子干渉RNA)miRNA(マイクロRNA)の産生をもたらしうる。

RNA媒介性遺伝子サイレンシング

flowchart TD
  A["Dicer(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endonuclease'>エンドヌクレアーゼ</span>)が活性化"] --> B["Dicerがdsdsを中央で切断→siRNA・miRNAを産生"]
  B --> C["RISC複合体(RNA誘導サイレンシング複合体)がsiRNA/miRNAとともに組み立て"]
  C --> D["標的mRNAを分解→タンパク質産生なし"]
  1. Dicer(が活性化される
  2. Dicerがdsダブルを中央で切断し、siRNAとmiRNAを産生する
  3. RISC複合体(RNA誘導サイレンシング複合体、RNA-induced silencing complex)——siRNA・miRNAとともにmRNAを分解し、タンパク質産生をもたらさないタンパク質複合体

miRNA(マイクロRNA)

miRNA前駆体(pri-miRNA、dsRNA内に見られる)は、によって合成され、キャップ付加・される(転写後修飾)。

  1. 核内の酵素がに作用しより短くする——pre-miRNAを産生する
  2. pre-miRNAはを通って細胞質へ出て、そこでDicer酵素がこれを活性化する
  3. Dicerはpre-miRNAに結合し:①特定の位置で切断し2ヌクレオチドの3′(突出末端)を与える②5′端へリン酸を付加する
  4. miRNAはその後一群のタンパク質と組み立てられRISC複合体を形成する(、argonauteからなる)
  5. miRNAの一本鎖(パッセンジャー鎖、passenger strand)が標的mRNAに結合する

mRNAがmiRNAに結合されると、いくつかの帰結が起こりうる:

  • mRNA・miRNA間のが広範な場合(あまり一般的でない)、mRNAはタンパク質によって切断(スライス)される→mRNAのポリA尾部が除去される→mRNAの分解
  • があまり広範でない場合(より一般的)、はmRNAを切断せず、代わりにmRNAの翻訳が抑制され、mRNAはP-body(processing body)へ移動し、最終的にポリA尾部の分解を受ける

miRNA→

siRNA(低分子干渉RNA)

siRNAもdsRNA内に見出される。

  1. Dicer酵素が長いdsRNAと小さなヘアピンRNA(hairpin RNA、髪留め型に折り返した構造を持つRNA)から、小さな断片(約23ヌクレオチド対)としてsiRNAの産生を触媒する
  2. これらの二本鎖siRNAはその後RISC複合体に結合し、がsiRNAの一方の鎖を切断する(がこれを行えない場合、が現れて助ける)
  3. 複合体の新たに形成された一本鎖(パッセンジャー鎖)が標的mRNAを識別・結合する
  4. mRNAが切断され翻訳されない→分解される

miRNAとsiRNAは非常に類似した性質と機構を共有する。しかし、miRNAが翻訳の抑制()によって遺伝子をサイレンシングするのに対し、siRNAは翻訳前にmRNAを切断する(標的mRNA分解)ことで機能する。

miRNA siRNA
標的mRNAとの 不完全(部分的) 完全
主な帰結 翻訳抑制+P-body移行 mRNA切断+急速な分解
由来 自身の 外来/内因性の長いdsRNA、ヘアピンRNA
付加的機能 コンパクトなクロマチン構造の確立にも関与しうる

まとめ

  • RNAiは二本鎖RNAを「異物」として検出し、Dicerによる切断・RISC複合体への搭載を経てmRNAをサイレンシングする配列特異的機構である。
  • miRNAは→pre-miRNA→Dicer活性化という核内外の成熟過程を経てRISCに搭載され、標的mRNAとの不完全なにより翻訳抑制とP-body移行を引き起こす。
  • siRNAは長いdsRNA/ヘアピンRNAから直接Dicerにより生成され、標的mRNAとの完全なによりによる切断・急速な分解を引き起こす。
  • 両者の機構は酷似しているが、の違いが「翻訳抑制」と「mRNA分解」という異なる帰結を分ける決定的な要因である。