Medical Microbiology

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細菌代謝の原理

Principles of bacterial metabolism

🧠 細菌代謝は「酸素とどう付き合うか」と「炭素をどこから取るか」の2軸で分類すると全体が整理できる。 この2軸を先に押さえておけば、あとで学ぶ菌種ごとの培養条件・鑑別培地・の特殊性がすべてこの座標上に位置づけられる。

酸素代謝

分子状酸素は反応性が高く、電子を奪う過程で(O2⁻)(OH•) を生じる。これらはいずれも分解されなければ細胞にとって毒性を持つ。

一部の細菌はこれらの産物を分解する3種類の酵素を持つ。

  • カタラーゼを分解する(2H2O2 → 2H2O + O2)。

  • を分解する。

  • を分解する(O2⁻ + O2⁻ + 2H⁺ → H2O2 + O2)。

細菌はこれらの酵素をどの程度発現するかによって分類される。酸素を「好む」菌はこれら防御酵素をすべて持ち、酸素なしでは生きられない=。一方、これらの酵素を全く持たず酸素に対して極めて脆弱な菌=嫌気性菌

分類 酸素の利用 保有する防御酵素 補足
を用い、酸素を最終電子受容体とする ・SODすべて
酸素があればの最終電子受容体として利用。酸素がなければ発酵でエネルギーを得て増殖可能 カタラーゼ+SOD に生きる能力」は持つが環境を好む(ヒト骨格筋がダッシュ時にへ切り替えるのに似た性質)
発酵のみ、を持たない SODのみ(カタラーゼなし) 低濃度の酸素には耐えられる
酸素を利用しない 防御酵素を持たない 酸素に対して脆弱
flowchart TD
    A["酸素 O2 に曝露"] --> B{"防御酵素<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='catalase-peroxidase'>カタラーゼ・ペルオキシダーゼ</span>・SOD)<br>を持つか?"}
    B -->|"持たない<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='obligate anaerobes'>偏性嫌気性菌</span>)"| C["毒性産物が分解されない<br>(O2⁻・OH•・H2O2)"]
    C --> D["菌の死滅"]
    B -->|"持つ<br>(好気性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='facultative anaerobe'>通性嫌気性菌</span>)"| E["SOD → カタラーゼ → <span class='jp-term jp-term-diagram' title='peroxidase'>ペルオキシダーゼ</span><br>の順に解毒"]
    E --> F["無毒産物(H2O・O2)へ変換"]

炭素・エネルギー源

エネルギー源として光を用いる菌をを用いる菌を という。はさらに以下に分類される。

  • :アンモニウムや硫化物など無機化合物から自分自身の栄養を作る。

  • (炭素源)から自分自身の栄養を作る。

  • :グルコースなど化学的・有機的化合物の両方を消費する(医学的に重要な細菌はすべてこの群に属する)。

従属栄養代謝の経路

代謝 とは、グルコースなどのを生物学的に酸化し、ATPとより単純な有機(または無機)化合物を得る過程を指す。代謝経路には以下がある。

経路 酸素の要否 ATP収量(グルコース1molあたり) 概要
呼吸 38 mol の共役
発酵(解糖のみ) 不要 から直接得るのみ(呼吸よりはるかに少ない) グルコースを経路でピルビン酸まで分解し、増殖を支える不完全な酸化

💡 発酵後にピルビン酸がどう分解されるか(乳酸・エタノール・プロピオン酸・酪酸・アセトン・その他の混合酸など、生成される最終産物の種類)は菌の分類に用いられ、臨床微生物学における生化学的同定検査(発酵産物の検出)の基盤となっている。

偏性細胞内寄生菌

  • ATP合成のための代謝経路そのものを持たない菌が存在し、これらは宿主からATPを「盗む」ことでしか生きられない。

  • こうした菌は宿主細胞内でのみ生存し、宿主なしでは生存できない。

  • 宿主のATPをエネルギー源として利用するため「」と呼ばれる。

  • ATPを奪うための特殊な細胞システムを持つ。

💡 代表例はRickettsiaChlamydiaなど。いずれも独自のATP/ADPトランスロカーゼを用いて宿主ATPを奪う「エネルギー寄生」を行う点が、単なる細胞内寄生(栄養だけを奪う場合)と区別される。

まとめ

  • 細菌代謝は「酸素との付き合い方」と「炭素・エネルギー源」という2軸で分類する。
  • では、・SODという3つの防御酵素の保有パターンにより、の4群に分けられる。
  • エネルギー源では vs 、後者はさらに(医学的に重要な細菌はすべてここに属する)に分けられる。
  • 代謝には呼吸(酸素要、38 mol ATP/molグルコース)と発酵(酸素不要、少量のATPだが増殖を支える)の2経路があり、発酵最終産物の違いが菌の生化学的同定に使われる。
  • RickettsiaChlamydia など)はATP合成能を持たず、宿主のATPを盗む「」である。