スコア体系ノート一覧へ

Scores · Published

イプスウィッチタッチテスト

Ipswich Touch Test

臓器系
内分泌・代謝
科目
Internal Medicine
トピック
内科学 L-23:糖尿病の細小血管・大血管合併症

🧠 全体像:Ipswich touch testは、器具を一切使わずに指先だけで保護知覚の消失(LOPS)をスクリーニングする手技である。10 gと同等の精度を持ちながら、が手元にない・劣化している・使い方に習熟していないといった場面でも代用できる点が最大の価値であり、「より優れた検査」ではなく「が使えないときの実用的な代替」として位置づける。

目的と適用場面

内容
目的 糖尿病患者の・切断リスクにつながる保護知覚の消失(LOPS)のスクリーニング
対象 糖尿病患者の年1回以上の包括的足評価(の一項目)
使う場面 10 gが手元にない・破損している病棟や外来、器具を使わず短時間で行いたい場面
位置づけ 10 g検査の代替手技の1つ。米国糖尿病学会(ADA)の糖尿病診療ガイドラインは、包括的足評価のとして10 gまたはIpswich touch testのいずれかに、痛覚・温度覚・振動覚のうち少なくとも1つを組み合わせるよう位置づけている(→ 内科学 L-23)

構成要素と配点

検者が患者をさせ、指先で以下の部位に1〜2秒程度軽く触れ、患者が触覚を感じた瞬間に申告できるかを1部位ずつ確認する1。

部位 評価内容
第1趾()先端 触覚の有無
先端 触覚の有無
第5趾(小趾)先端 触覚の有無
(施設により)部を含めた最大8部位 触覚の有無

配点というより二値評価(感じた/感じない)の積み上げであり、「触覚を感じなかった部位」の数で判定する。原法は左右合計6部位(または8部位)のうち、閾値以上の部位が無感覚であれば「」と判定する枠組みを採る1。

解釈とカットオフ

  • 無感覚な部位が2か所以上あれば、保護知覚の消失(LOPS)を疑い、危険足として扱う。
  • 10 g法を基準とした精度は研究間で幅があるものの、いずれも良好な一致度を示す。
研究 対象 感度 特異度 との一致度
Rayman 2011(原著)1 265例(入院・外来混在) 76% 90% 89% 77% κ=0.879
Dutra 20202 2型糖尿病250例 83.33% 97.66% 85.71% 97.21% κ=0.819
flowchart TD
    A["糖尿病患者の年1回の包括的足評価"] --> B{"10 g<span class='jp-term jp-term-diagram' title='monofilament (Semmes-Weinstein test)'>モノフィラメント</span>が使えるか"}
    B -->|"はい"| C["10 g<span class='jp-term jp-term-diagram' title='monofilament (Semmes-Weinstein test)'>モノフィラメント</span>検査を実施"]
    B -->|"いいえ(器具なし・破損等)"| D["Ipswich touch testを実施"]
    D --> E["第1・3・5趾先端に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='eye closure'>閉眼</span>下で軽く触れる"]
    E --> F{"無感覚な部位が2か所以上か"}
    F -->|"はい"| G["LOPS疑い=危険足として<br>評価間隔を短縮し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='foot care'>フットケア</span>介入"]
    F -->|"いいえ"| H["痛覚・温度覚・振動覚のうち<br>少なくとも1つを追加評価"]

⚠️ 限界と使ってはいけない場面

⚠️ 患者自身が反応を正確に伝えられることが前提の検査である。 重度の、意識障害、強い不安・緊張などで「感じたら申告する」という応答が信頼できない患者では、結果を字義どおりに解釈できない。

⚠️ 検者の押し当てる力は一定ではない。 が一定の10 g荷重を再現性よくかけるのに対し、IpTTは検者の指先の感覚に依存するため、検者間でわずかな力のばらつきが生じうる——研究間で検者間再現性がκ=0.68〜0.879と幅があるのはこのためと考えられる12。

⚠️ 単独の診断法にしない。 10 g検査と同様、IpTTもの確定診断そのものではなく、潰瘍・切断リスクのスクリーニングに位置づけるである。ADAのガイドラインも、としてまたはIpTTに加え、痛覚・温度覚・振動覚のうち少なくとも1つを組み合わせるよう求めている(→ 内科学 L-23)。

まとめ

  • Ipswich touch testは、器具を使わず第1・3・5趾先端への軽い接触で保護知覚の消失(LOPS)をスクリーニングする手技である。
  • 10 g法と精度がおおむね同等(感度76〜83%・特異度90〜98%、一致度κ=0.82〜0.88)で、が使えない場面の実用的な代替になる。
  • 無感覚な部位が2か所以上あれば危険足として扱い、評価間隔の短縮や介入につなげる。
  • 検者の力加減に依存し患者の応答が前提となるため、などで応答が信頼できない患者には適さず、単独では確定診断とならない。

出典

  1. 1.The Ipswich Touch Test: A Simple and Novel Method to Identify Inpatients With Diabetes at Risk of Foot Ulceration(Diabetes Care(Rayman G, Vas PRJ, Baker N, et al.)・2011)3つの病院で医師4名・足専門医9名・医学生5名が糖尿病患者265名(入院・外来)を評価した研究で、Ipswich touch test(IpTT)は第1・第3・第5趾の先端(法により足背部も加えた8部位、または6部位)に検者が1〜2秒程度軽く指を触れ、患者が閉眼した状態で触覚を感じたら申告する手技であること、振動覚閾値25 V以上を基準とした場合の6部位法での成績が感度76%・特異度90%・陽性的中率89%・陰性的中率77%で、10 gモノフィラメント法(感度81%・特異度91%・陽性的中率91%・陰性的中率81%)とおおむね同等であったこと、IpTTと10 gモノフィラメント法の直接比較でκ=0.879(P<0.0001)、検者間の再現性がκ=0.68(substantial agreement)であったこと、特別な器具を要さず訓練が簡便であるため入院患者のスクリーニングに有用と結論していることを確認した閲覧 2026-09-07
  2. 2.Is It Possible to Substitute the Monofilament Test for the Ipswich Touch Test in Screening for Peripheral Diabetic Neuropathy?(Diabetology & Metabolic Syndrome(Dutra LMA, Moura MC, do Prado FA, et al.)・2020)2型糖尿病患者250例を対象とした横断研究で、10 gモノフィラメント法を基準としたIpTTの成績が感度83.33%・特異度97.66%・陽性的中率85.71%・陰性的中率97.21%・陽性尤度比30.19・陰性尤度比0.17であったこと、両検査の一致度がκ=0.819(P<0.001)と高かったことを確認した閲覧 2026-09-07