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Watzke-Allen試験

Watzke-Allen test

臓器系
眼科
科目
Microscopic Anatomy and Embryology (Microscopic Anatomy)Microscopic Anatomy and Embryology (Embryology)
トピック
組織学 17.1:感覚器:眼発生学 19.3:眼:水晶体・角膜・脈絡膜・強膜・硝子体
適用疾患
黄斑円孔

🧠 全体像:は、の細いをに当て、患者に線の見え方を言わせるだけのベッドサイドの検査である。ではのが全層でしているため、患者は光の線が「途中で切れる」と訴える(陽性)。円孔に見える病変でも網膜が連続していれば、線は「細くなる」「曲がる」と訴えられてもしない(陰性)。1969年にWatzkeとAllenが報告した手技だが1、現在の確定診断はOCTによる全層/非全層の直接可視化に置き換わっており、本試験は診察室で行う補助的なスクリーニングという位置づけである。

目的と適用場面

内容
目的 と・板状円孔など「円孔に見えるが全層ではない病変」の鑑別を診察室で行う
対象 ・・を訴え、検眼で黄斑部に円孔様の病変を認める患者
使う場面 OCTが即座に利用できない状況でのベッドサイドスクリーニング、術後の網膜の簡易確認
評価しないもの 円・の有無など、術式選択に必要な定量的情報(これらはOCTでのみ得られる)

構成要素

⭐ 判定はに当てたときの反応が基本で、辺縁での反応は補助情報として使う。

手技 判定 意味
の細いをの中心に垂直・水平の両方向で当てる 線が途中ですると訴える(陽性) ——がで全層に欠損している
同上 線が細くなる・曲がる(屈曲)がしないと訴える(陰性) ・板状円孔など、網膜は連続しているが形態が乱れている病変
を円孔の辺縁に当てる 光が中心から離れる方向へ偏位・弯曲すると訴える 円孔周囲でがの欠損部へ向けてに牽引されていることを示す所見で、円孔形成の機序(の牽引)を裏づける2

40眼(37例、OCTでと確認済み)を対象とした前向き研究では、中心にを当てたとき24眼が垂直・水平とも「細くなる」、9眼が垂直・水平とも「する」、6眼が一方向のみ・他方向は細くなる、1眼がも細まりもなく屈曲のみと訴えた——と確定していても、必ず典型的な「」を訴えるとは限らない2。

解釈

所見 解釈
で線がする(陽性) を支持する所見
で線が細くなる・屈曲する(陰性) ・板状円孔を支持する所見。を伴わない
辺縁で光の偏位・弯曲を認める 円孔周囲でのの牽引を反映し、円孔形成の機序と整合する

⭐ ただし確定診断はOCTで行う。 全層かどうかという定義そのものが「からまでの」というOCTの言葉で書かれており3、診察室の本試験はOCTを撮る根拠であって代わりにはならない4。

限界と使ってはいけない場面

⚠️ 完全にな検査である。 判定は患者の申告に依存し、検者が誘導的な聞き方をすると結果が変わりうる。

⚠️ 確定済みのでも「」を訴えない例がある。 OCTで確認された40眼中、垂直・水平とも典型的なを訴えたのは9眼にとどまり、多くは「細くなる」というな訴えだった2。陰性所見だけでを除外してはならない。

⚠️ 円やの有無など、術式選択に必要な定量的評価はできない。これらの判断にはの項で扱うOCTベースの分類を用いる。

⚠️ OCTが利用可能な現在の診療では、本試験を単独の確定診断根拠として手術適応を決めてはならない。

まとめ

  • は、のをに当て、線がするか(陽性、を支持)、細くなる・屈曲するにとどまるか(陰性、などを支持)を患者に申告させるベッドサイド検査である。
  • 辺縁での光の偏位・弯曲は、円孔周囲でのの牽引という円孔形成機序を裏づける所見である。
  • OCTで確認されたでも典型的な「」を訴えない例が多く、陰性所見だけで除外してはならない。
  • 確定診断は必ずOCTで行い、本試験はOCTが利用できない場面での補助的スクリーニングと位置づける。

出典

  1. 1.Subjective slitbeam sign for macular disease(American Journal of Ophthalmology・1969)Europe PMCで書誌情報を確認した。Watzke RCとAllen Lが1969年にAmerican Journal of Ophthalmology誌へ「Subjective slitbeam sign for macular disease」の題で報告し、これが本試験の初出であることを確認した(本論文は電子化された抄録を持たず全文は未取得のため、検査手技そのものの記述は本論文にではなく後掲の資料に基づく)。閲覧 2026-09-05
  2. 2.Watzke-Allen slit beam test in macular holes confirmed by optical coherence tomography(Archives of Ophthalmology・2000)Europe PMC経由で抄録を閲覧した。OCTで確認された全層黄斑円孔40眼(37例)を対象にWatzke-Allen slit beam試験を円孔の中心と辺縁の両方・垂直と水平の両方向で施行した前向き研究で、中心にスリット光を当てた際、24眼で垂直・水平とも「細くなる」との訴え、9眼で垂直・水平とも「断裂する」との訴え、6眼で一方が断裂・他方が細くなるとの訴え、1眼で断裂も細まりもなく「屈曲する」との訴えであったこと、辺縁にスリット光を当てた際は全例で中心から離れる方向への偏位・弯曲が報告されたこと、これらの所見が黄斑円孔の大部分で光受容体の接線方向の牽引が原因であることを裏づけ、Watzke-Allen徴候の慎重な解釈が術前の視力予後推定に使える可能性があると結論していることを確認した。閲覧 2026-09-05
  3. 3.The International Vitreomacular Traction Study Group classification of vitreomacular adhesion, traction, and macular hole(Ophthalmology (International Vitreomacular Traction Study Group)・2013)全層黄斑円孔を「内境界膜から網膜色素上皮まで全網膜層が断裂した中心窩病変」と定義し、硝子体牽引によるものを一次性・硝子体黄斑牽引以外の病態に直接起因するものを二次性とすること、全層黄斑円孔をOCTで測った円孔径と硝子体黄斑牽引の有無で細分すること、硝子体黄斑癒着を「中心窩周囲の硝子体分離が残存する硝子体黄斑付着を伴い中心窩形態が乱れていないもの」、硝子体黄斑牽引を「異常な後部硝子体剥離に中心窩の解剖学的な歪みを伴うもの」と定義すること、この分類が治療成績を予測しうる臨床応用可能な体系を意図していることを確認した。PubMedの抄録(Ophthalmology 2013;120(12):2611-2619)を閲覧しており全文は未取得で、抄録には円孔径のµm区分そのものは記載されていない。閲覧 2026-09-05
  4. 4.Macular Hole(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)IVTS分類の第1因子である円孔径を「最狭部の水平径」と定義し、250 µm以下を小、250〜400 µmを中、400 µm超を大とすること、第3因子が硝子体黄斑牽引の有無であることを逐語で記載していること、Gass分類のステージ1が中心窩陥凹の消失で約半数が自然消退しうること・ステージ2が400 µm未満の全層神経感覚網膜欠損・ステージ3が400 µm超・ステージ4がステージ3に完全な後部硝子体剥離を伴うものであること、Watzke-Allen試験で細いスリット光を中心窩に当てたとき全層黄斑円孔では線の断裂を訴え、偽円孔では中央での細まりや屈曲を訴えて断裂はないこと、全層黄斑円孔の自然閉鎖が4〜11.5%に生じること、米国の研究で発症率が年間10万人あたり7.8人・女性優位(F:M=3:1、範囲1.2:1〜7:1)で60〜70歳代に多いこと、両眼罹患が2〜28%と幅広く報告されていること、扁平部硝子体切除術が手術の中心で内境界膜剥離が閉鎖率を改善したこと、タンポナーデにC3F8・C2F6・SF6・空気とその組み合わせが用いられることを確認した。閲覧 2026-09-05