生物物理学

生物物理学 · 28.02

ヒト呼吸器系の箱型モデル(box model)

Box model of the human respiratory system

🧠 呼吸器のは、肺と胸壁を弾性要素、気道を抵抗要素として表す。 、、の差を追うと、肺が開いた状態を保つ仕組みと気流が生じる順序を同じ図で理解できる。

モデルを構成する圧力

PatmP_{atm} は体外、PalvP_{alv} は肺胞内、PipP_{ip} は肺と胸壁の間の圧力である。との差は気道内の流れを、との差は肺の膨張を決める。

は

Ptp=Palv−PipP_{tp}=P_{alv}-P_{ip}

で定義される。安静時にはが通常はより低いため、は正となり、内向きに縮もうとする肺を開いた状態に保つ。この圧差は弾性体に加わる応力に相当する考え方である。

肺と胸壁のつり合い

肺は内向きにし、胸壁は安静換気の範囲では外向きに戻ろうとする。呼気終末のでは、この二つの反対向きの力がつり合い、はと等しくなって気流が止まる。は独立した空箱ではなく、肺と胸壁の力を結び付ける薄い液体層として働く。

吸気では呼吸筋が胸壁を拡げ、がさらに低下し、が増えて肺容積が増える。その結果としてが一時的により低くなり、空気が流入する。

圧力変化から気流まで

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inspiratory muscle'>吸気筋</span>が収縮"] --> B["胸郭容積が増加"]
  B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intrapleural pressure'>胸膜腔内圧</span>が低下"]
  C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transpulmonary pressure'>経肺圧</span>が増加"]
  D --> E["肺胞容積が増加"]
  E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alveolar pressure'>肺胞内圧</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='atmospheric pressure'>大気圧</span>より低下"]
  F --> G["空気が肺胞へ流入"]

の価値は、筋収縮が空気を直接引き込むのではなく、胸壁、、肺胞容積、という順に伝わることを明示できる点にある。気流の大きさにはも加わる。

気胸で何が失われるか

気胸ではへ空気が入り、がへ近づく。が低下するため肺を開いていた力が失われ、肺はによって虚脱する。一方、胸壁は外向きへ戻る。これは単なる「に空気が増えた」現象ではなく、二つの弾性要素を結ぶが途切れた状態である。

まとめ

呼吸器の力学とガス交換は、気道・肺胞の構造、、換気、拡散を分けて扱う。12

  • との差であるは肺の膨張、との差は気流を決める。
  • 正のが肺を開いた状態に保つ。
  • 吸気は胸壁運動から圧力・容積変化を経て気流へ至る。
  • 気胸ではが失われ、肺と胸壁がそれぞれの弾性方向へ動く。

出典

  1. 1.Lung Structure and the Intrinsic Challenges of Gas Exchange(Comprehensive Physiology・2016)気道から肺胞へ至る構造、換気、拡散およびガス交換面の関係閲覧 2026-08-21
  2. 2.Gas Exchange in the Lung(Seminars in Respiratory and Critical Care Medicine・2023)肺胞換気、分圧、肺胞―毛細血管間の拡散および換気血流関係閲覧 2026-08-21