Histopathology

Histopathology · H1-003

急性心筋梗塞

Acute myocardial infarction

描出疾患
急性冠症候群

🧠 全体像:この標本は、核を失った好酸性心筋、、密なから、発症後およそ1〜3日のを考える。診断の中心は虚血性の炎症反応であり、波状線維だけで梗塞と断定しない。

標本の要点

項目 所見
臓器 心臓
標本 HE染色の心筋
病変
壊死形式
低倍率の鍵 と壊死心筋の染色性の差、
高倍率の鍵 質の好酸性化、核・横紋の消失、波状線維、
推定 密なと核消失から、おおむね発症後1〜3日

発症機序

多くは冠動脈のが破綻またはびらんを起こし、その上に形成された血栓がを急減させる。固定性の冠動脈狭窄を背景に、プラークの急性変化やなどの動的要因が重なる場合もある。心筋のが需要を下回ると、最もが低くの高いから不可逆的傷害が始まり、閉塞が持続すればへ波状に拡大する。

flowchart TD
    A["冠動脈プラークの破綻・びらん"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='platelet plug'>血小板血栓</span>形成と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coronary blood flow'>冠血流</span>低下"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subendocardial'>心内膜下</span>心筋の虚血"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiomyocyte (cardiac myocyte)'>心筋細胞</span>の不可逆的傷害"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coagulative necrosis'>凝固壊死</span>"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neutrophil infiltration'>好中球浸潤</span>"]
    F --> G["マクロファージによる壊死組織除去"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Granulation tissue'>肉芽組織</span>"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='collagen fiber'>膠原線維</span>性瘢痕"]

観察の順序

低倍率

  1. 心筋の走行をし、染色性が均一な正常部と、好酸性が強く炎症細胞の多い梗塞部を区別する。
  2. 壊死部の広がりがであることを確認する。
  3. が梗塞部に密集するか、辺縁に偏るかを見る。
  4. 出血、心筋間浮腫、既存瘢痕など、梗塞や再灌流を示唆する付加所見を探す。

高倍率

所見 意味
波状心筋線維 を失った虚血心筋が隣接するに引かれて細く波打つ。早期変化だが単独では非特異的
細胞質の好酸性化 タンパク変性とRNA消失を反映する
核・横紋の消失 の不可逆的傷害を支持する
密な 発症後1〜3日ごろに目立つ反応
心筋線維の 壊死組織が分解され始めていることを示す

⚠️ 好中球を「壊死心筋を貪食する主細胞」と説明しない。 好中球はを放出して壊死組織を分解するが、本格的な貪食と除去の中心は後から入るマクロファージである。

心筋梗塞の時間経過

おおよその時期 主な病理所見
数時間以内 所見は乏しい。辺縁に波状線維を認めうる
4〜24時間 好酸性化、初期、浮腫・小出血、好中球流入
1〜3日 核・横紋の消失を伴う、密な
3〜7日 マクロファージによる壊死心筋の除去、、辺縁充血
1〜2週 辺縁からが進入
2〜8週以降 が増加し、最終的に灰白色瘢痕となる

時間推定にはと再灌流の影響があり、単一所見ではなく複数所見を組み合わせる。

臨床所見との対応

では胸痛、呼吸困難、心電図変化、上昇を認めうる。ただし、すべての心筋梗塞がST上昇を示すわけではなく、ST上昇型と非ST上昇型の双方がある。病理標本は壊死の存在とを示すが、臨床診断では症状、心電図、、画像を統合する。

鑑別

病変 鑑別点
心筋炎 炎症がに一致せず、リンパ球主体でへの傷害を伴うことが多い
カテコールアミン傷害 が目立ち、分布は斑状でと一致しないことがある
再灌流 、間質出血、浮腫が強い
心筋標本の 横帯を認めても周囲の壊死・炎症・出血を欠く
古い心筋梗塞 が失われ、低細胞性の密な性瘢痕が主体

まとめ

  • の基本病変は、低下による心筋のである。
  • から壊死が始まり、閉塞が続くとへ広がる。
  • この標本では波状線維、核消失、密なが重要で、発症後1〜3日程度を示唆する。
  • 波状線維だけでは非特異的であり、好酸性壊死と炎症反応を合わせて診断する。