Histopathology

Histopathology · H1-002

肺の出血性梗塞

Hemorrhagic infarction of the lung

描出疾患
肺血栓塞栓症

🧠 全体像:肺のは、末梢肺動脈の血栓塞栓で虚血に陥った肺胞へ、などから血液が流入して生じる赤いである。低倍率では病変、高倍率では「壊死した肺胞隔壁」と「赤血球で満たされた」を組み合わせて読む。

標本の要点

項目 所見
臓器
標本 染色(hematoxylin and eosin stain:HE)
病変 肺血栓塞栓に伴う
壊死形式 肺胞構築を一時的に保つ
低倍率の鍵 出血性で境界の比較的明瞭な末梢病変、肺動脈枝内の塞栓
高倍率の鍵 肺胞隔壁の壊死、内の大量の赤血球
併存所見 、炭粉沈着、

発症機序

肺は肺動脈との二重血行を受けるため、肺動脈が閉塞しても常に梗塞するわけではない。末梢肺動脈が塞栓で閉塞し、心不全や肺うっ血などでによる代償が不十分な場合、肺実質はに陥る。そこへ比較的高圧のや周辺血管から血液が流入し、傷害された毛細血管から赤血球がへ漏出するため赤色梗塞となる。

flowchart TD
    A["末梢肺動脈への血栓塞栓"] --> B["肺胞隔壁の虚血"]
    B --> C["肺胞隔壁の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coagulative necrosis'>凝固壊死</span>"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bronchial circulation'>気管支循環</span>・周辺血管から血液が流入"]
    D --> E["傷害血管から赤血球が漏出"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alveolar space'>肺胞腔</span>が赤血球で満たされる"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subpleural'>胸膜直下</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemorrhagic pulmonary infarction'>出血性肺梗塞</span>"]
    G --> H["器質化・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fibrous scar (fibrotic scar)'>線維性瘢痕</span>"]

観察の順序

低倍率

  1. 正常にした肺実質と、赤く充実した病変部を区別する。
  2. 病変が末梢肺動脈のに沿うことを確認する。肉眼では典型的に胸膜を底辺とする病変になる。
  3. 肺動脈枝の内腔を塞ぐ血栓塞栓を探す。血管壁に付着して器質化した血栓と、標本作製時に生じた血液塊を区別する。
  4. 壊死部と周囲肺の境界、既存のや線維化の分布を確認する。

高倍率

観察部位 読み方
肺胞隔壁 核が消失または不明瞭となり、肺胞の輪郭だけが残るを認める
大量の赤血球が充満し、病変の出血性を示す
肺動脈枝 内腔を閉塞する血栓塞栓が原因病変を直接示す
とともに赤血球や壊死物を処理する。慢性うっ血があればを含みうる
炭粉沈着 マクロファージ内の黒色粒子で、吸入炭素に由来する背景所見である
気腫・ 拡大したや線維性に肥厚した間質を認めるが、梗塞そのものの必須所見ではない

💡 出血だけではとは診断できない。 壊死した肺胞隔壁、内出血、に一致する分布、可能なら血栓塞栓を合わせて判断する。

背景所見の位置づけ

この標本には、炭粉沈着、も示されている。これらは標本内に実在する重要な観察点だが、すべてを梗塞の結果とみなしてはいけない。気腫や線維化は先行する慢性肺病変として肺を低下させ、が成立しやすい背景になりうる。一方、軽度の炭粉沈着は吸入炭素を取り込んだマクロファージの偶発的所見でもあり、それ自体を梗塞の原因としない。

鑑別

病変 鑑別点
単純な肺胞出血 内赤血球は多いが、肺胞隔壁のに一致する病変を欠く
出血性肺炎 好中球やフィブリンを伴う内滲出が主体で、の分布を示す
両側びまん性に、肺胞隔壁浮腫、II型肺胞上皮過形成を示す
慢性肺うっ血 毛細血管うっ血とが広くみられるが、限局性の壊死を欠く
性梗塞の器質化期 赤血球よりもマクロファージ、線維芽細胞、が目立ち、瘢痕へ移行する

まとめ

  • 肺のは、主に末梢肺動脈の血栓塞栓によって生じる。
  • 肺胞隔壁の内出血の組合せが組織学的な核である。
  • 肺の二重血行により梗塞は常には起こらず、心不全、うっ血、既存肺疾患などが成立を助ける。
  • 、炭粉沈着、気腫、は観察すべき併存所見だが、梗塞の必須所見ではない。