Histopathology

Histopathology · H1-001

腎の貧血性梗塞

Anemic infarction of the kidney

🧠 全体像:腎のは、に近い枝が塞がり、支配領域がに陥った病変である。低倍率では「被膜側を底辺、髄質側を頂点とする楔形」、高倍率では「細胞の輪郭は残るが核が消えた好酸性の影」を探す。

標本の要点

項目 所見
臓器 腎臓
標本 染色(hematoxylin and eosin stain:HE)
病変 動脈閉塞による梗塞
壊死形式
低倍率の鍵 境界明瞭な病変、周囲の充血性境界
高倍率の鍵 尿細管・糸球体の輪郭保存、細胞質の好酸性化、核消失、周辺部の

発症機序

腎の区域動脈はに乏しいため、血流遮断後の壊死領域は閉塞した動脈枝のを反映してになる。原因としては心臓由来の血栓塞栓が重要であり、心房細動などが背景になりうる。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='renal artery'>腎動脈</span>または区域動脈の血栓・塞栓"] --> B["支配領域の急激な虚血"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='renal tubular epithelium'>尿細管上皮</span>・糸球体の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coagulative necrosis'>凝固壊死</span>"]
    C --> D["周辺部の充血・出血・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute inflammation'>急性炎症</span>"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neutrophil infiltration'>好中球浸潤</span>"]
    E --> F["壊死組織の除去"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='wedge-shaped'>楔状</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fibrous scar (fibrotic scar)'>線維性瘢痕</span>"]

観察の順序

低倍率

  1. 腎皮質から髄質方向へ伸びるの淡い領域を見つける。
  2. 楔の底辺は被膜側、頂点は閉塞血管の方向である髄質側を向く。
  3. 壊死部と正常腎実質の間に、赤みの強いがある。
  4. 病変の境界がで、正常な糸球体を含む領域と壊死した領域が明瞭に分かれることを確認する。

高倍率

観察部位 読み方
壊死尿細管 基本構築と細胞輪郭は保たれるが、細胞質は均質に好酸性化し、核は濃縮・崩壊・融解を経て消失する
壊死糸球体 糸球体のは影のように残るが、係蹄を構成する細胞核が失われる
境界部 好中球が集まり、壊死組織に対する反応を形成する
血管 内腔を閉塞する血栓を認める場合があり、虚血の原因を直接示す
非梗塞部 核を保つ正常尿細管・正常糸球体が対照になる

💡 では「組織の形が残る」のが重要である。 虚血でタンパク質と分解酵素が変性するため、細胞は死んでいても直ちに融解せず、尿細管や糸球体の輪郭がしばらく保存される。

肉眼像との対応

肉眼ではの黄として認識され、周囲に赤い充血性境界を伴う。時間が経つと壊死組織は除去され、被膜面から陥凹する瘢痕へ移行する。肉眼標本の読み方は H1-006:腎の梗塞(肉眼標本) で確認する。

鑑別

病変 鑑別点
びまん性または斑状の傷害が中心で、動脈に一致する病変を作らない
と膿瘍形成が主体で、内の好中球や腎盂から放射状に広がる炎症を認める
両側性・広範なが主体で、単一動脈枝のに限局した梗塞とは分布が異なる
古い 壊死細胞や好中球は目立たず、の線維化と実質の陥凹が主体になる

まとめ

  • 枝の閉塞により、被膜側を底辺とする梗塞が生じる。
  • 組織学的本体は、輪郭保存・好酸性化・核消失を示すである。
  • 梗塞周囲の充血性境界とは、壊死組織に対する急性反応を示す。
  • 治癒後は壊死領域が線維性組織に置き換わり、を残す。