Histopathology

Histopathology · H1-006

腎の貧血性梗塞(肉眼標本)

Specimen: anemic infarction of the kidney

🧠 全体像:腎の梗塞のでは、まずと被膜面で向きを定め、次に「被膜側に広い底辺をもつ黄白色の楔」と「その周囲の赤い境界」を探す。楔形は枝の支配領域、淡い色は流入血の途絶を反映する。

標本の要点

項目 所見
臓器 腎臓
標本 固定された腎の肉眼標本
病変 梗塞
黄白色から淡黄褐色
被膜側を底辺、髄質・側を頂点とする
境界 正常実質との間に赤い充血性境界
転帰 壊死組織の除去と線維化による

肉眼標本の読み方

1.臓器の向きを決める

には・腎盂が集まり、外側の凸面は被膜に覆われる。切面で皮質と髄質を確認し、病変がどのに沿うかを考える。

2.楔形を確認する

腎区域動脈はに近く、閉塞した枝の下流がひとまとまりに壊死する。そのため、病変は被膜面に広い底辺を置き、閉塞血管へ向かって細くなるを示す。

3.色と境界を読む

  • 梗塞中心部は血流が途絶えるため淡く、とともに組織が黄白色に見える。
  • 周辺部は隣接する生存組織からの充血、によって赤く縁取られる。
  • 病変は正常腎実質から比較的明瞭に区画される。

⚠️ 黄白色の本体を「炎症細胞が集まった色」だけで説明しない。 淡い外観の中心は動脈血流の途絶とであり、炎症細胞は主に壊死部との境界から侵入する。

組織像との対応

flowchart TD
    A["肉眼:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='wedge-shaped'>楔状</span>の黄白色領域"] --> B["組織:腎実質の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coagulative necrosis'>凝固壊死</span>"]
    B --> C["肉眼:赤い境界"]
    C --> D["組織:充血・出血・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neutrophil infiltration'>好中球浸潤</span>"]
    D --> E["壊死組織をマクロファージが除去"]
    E --> F["肉眼:陥凹した<span class='jp-term jp-term-diagram' title='wedge-shaped'>楔状</span>瘢痕"]

顕微鏡では、尿細管と糸球体の輪郭が残る一方で核が消失し、細胞質が好酸性化する。詳しい検鏡所見は H1-001:腎の梗塞 で確認する。

原因と臨床的意味

主な原因はまたは区域動脈の血栓塞栓である。心房細動などの血栓症、血管内操作に伴う塞栓などが背景になりうる。

小さな限局性梗塞はして発見されることもある。一方、広範または反復性の虚血では腎機能低下を来し、虚血部位からの活性化が持続すれば高血圧に関与しうる。ただし、単発の小梗塞が必ず高血圧を起こすわけではない。

鑑別

鑑別点
腎盂腎炎性瘢痕 の変形を伴い、腎盂から被膜へ向かう粗い瘢痕を形成する
古い 被膜面が陥凹し、切面に白い線維化を認める
皮質が広範・帯状に壊死し、単一の病変に限局しない
膨張性の結節・腫瘤を作り、血管支配に一致する単純な楔形とは異なる

まとめ

  • 腎の梗塞は、被膜側を底辺、髄質・側を頂点とする黄白色の病変である。
  • 赤い境界は充血、を反映する。
  • 黄白色部の本体はによるであり、炎症細胞の集積だけではない。
  • 治癒後は線維化してとなり、広範・反復性の場合は腎機能や血圧へ影響しうる。