Immunology

Immunology · 1.1

免疫系の役割・機構・器官・細胞

The role, processes, organs and cells of the immune system

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W1Lecture / 講義
応用トピック
小児のリンパ節腫大

🧠 免疫系は「認識→応答→排除、あるいは寛容」という一本のフローチャートとして読む。 標的は外部の寄生体(bacteria・viruses・fungi・helminths)と内部の。この認識・応答系は5つの特徴(・感受性・記憶・)で定義され、自然免疫と獲得免疫という時間スケールの異なる2層で構成される。

免疫系がなぜ重要か

免疫系の機能異常は多くの疾患の根底にあり、COVID-19への対応や、がん免疫療法のような最先端治療の基盤にもなっている。免疫系の理解が新しい治療・ワクチン・慢性疾患の治療につながる。

自己と非自己

💡 「拡張された自己」という視点。 体内にはと同数以上のが存在し、に生息するを形成する。これらは食物由来のエネルギーを消費・貯蔵・再分配する「多細胞器官」として、免疫系にとって排除すべきでない存在——免疫系は単純な「異物=敵」ではなく、「破壊すべきもの(to be destroyed)」と「許容すべきもの(to be tolerated)」を区別する、より洗練されたロジックで動いている。

分類 対象
破壊すべき(dangerous) 外因性:bacteria・viruses・fungi・helminths;内因性:tumor cells
許容すべき(tolerated)

リンパ系と免疫器官

の動脈側では静脈側で回収される以上の体液が組織間隙に漏出し、となる。これがリンパ管に集められリンパとして循環する。

一次(中枢)免疫器官と二次(末梢)免疫器官

区分 器官 機能
一次(中枢、central) 骨髄、胸腺 リンパ球の成熟の場
二次(末梢、peripheral) リンパ節、脾臓、MALT(mucosa-associated lymphoid tissue)、SIS(skin immune system) リンパ球が抗原と出会う(encounter)
慢性炎症部位に形成 慢性炎症に伴い新生

一次免疫器官の障害は致命的、の障害は代償されうる。 骨髄機能不全は・易感染性を招く(例:広島原爆——爆心地2km以内では約2週間、放射線障害の中でも骨髄・白血球破壊が最も重篤な症状になった)。(thymus removal in infancy、心臓手術に伴うことがある)は生命維持と両立しない、または末梢T細胞集団に影響し早期のを招きうる——年齢依存的に結果が異なる。一方、リンパ節摘出は局所的なにとどまり、脾臓摘出はへの易感染性を招く(が転移診断に応用される所以)。

CD抗原:白血球表面分子の共通言語

CD(Cluster of Differentiation)抗原を検出・分類するための共通(1〜350番)。

CDマーカー 発現細胞
CD3 T細胞
CD4 、単球
CD8
CD19, CD20 B細胞

免疫応答の5つの特徴

①抗原特異性

抗原=免疫応答を引き起こす分子・細胞。=エピトープは、T・B細胞受容体に認識される抗原の特定部分。抗体(antibody/immunoglobulin)は通常、を認識する。

受容体 認識するエピトープ
B細胞受容体・抗体 天然の
MHC(HLA)のに提示された

💡 B細胞とT細胞は抗原認識の仕方が根本的に違う。 B細胞は抗原の「形」をそのまま認識するが、T細胞はがMHC分子に載せて提示するペプチド断片しか認識できない。MHC-I結合ペプチドは8〜9アミノ酸、MHC-II結合ペプチドは11〜20アミノ酸という長さの違いがある。

②抗原感受性

1つの細胞は1種類のしかもたないが、活性化後のにより、感染性病原体への反復曝露に対して効率的な防御が可能になる。

③記憶

T・B記憶細胞の形成により、同じ抗原との再会に迅速に対応できる。

④クローン選択

に勝った理由。 抗原があらかじめ多様なリンパ球クローンの中から適合するものを「選択」して増殖させる()のであって、抗原が受容体の形を「指令」するのではない(は誤り)。活性化リンパ球は短命なに分化する。

⑤免疫恒常性

が去れば恒常性を再確立する必要がある。免疫は可逆的:活性化・抑制・調節のバランスで制御される。

役割 細胞例
Th1, Th17, B細胞, mDC(myeloid dendritic cell)
Treg, Breg, iDC(immature DC)

自然免疫 vs 獲得免疫

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tumor cells'>脅威</span>の認識"]
  A --> B["自然免疫<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='immediate response'>即時応答</span>"]
  A --> C["獲得免疫<br>1〜2週間で発達"]
  B --> D["バリア:皮膚・粘膜・分泌物<br>分子:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='complement system'>補体系</span>・自然抗体<br>細胞:マクロファージ・顆粒球・肥満細胞・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dendritic cell'>樹状細胞</span>・ILC・NK細胞"]
  C --> E["細胞性免疫:T細胞<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='humoral immunity'>液性免疫</span>:B細胞・抗体"]
特徴 自然免疫 獲得免疫
受容体特異性 限定的 高い特異性
なし あり(1〜2週間)
記憶 限定的 あり
増幅様式
的起源 より古い 以降に出現

💡 自然免疫の方が獲得免疫より進化的に古く、量的にも重要。 講義の take-home message の筆頭。自然免疫は「」として、獲得免疫が動員される前に大部分のに対応している。

リンパ球再循環と一次・二次免疫応答

の約30%/日が循環中に存在し、リンパ節で自分のエピトープを探索する。で自分の抗原に出会うと、遊走を止め(stop migrating)、活性化・増殖・分化する(芽球化:blast transformation)。特定の抗原に反応するの割合は0.01%未満という驚くほど低い頻度。

長い(slower, longer latency) 短い(faster, shorter latency)
振幅 低い 高い
優勢な抗体クラス IgM IgG

SARS-CoV-2迅速検査のIgM/IgG判定はこの原理そのもの。 IgM+/IgG+=新規感染、IgM+/IgG−=新規感染、IgM−/IgG+=既感染、IgM−/IgG−=未感染または検査時期尚早。

顆粒球もリンパ球と同様に循環するが、平均20時間循環にとどまり一方通行(循環から出たら戻れない)。炎症時には皮膚・滑膜(synovial membrane、関節リウマチ=rheumatoid arthritisで顕著)でが一過性にへ変化し、通常はほとんど到達しない部位へリンパ球の遊走を可能にする。

サイトカイン

分子量約5〜20 kDaの小型可溶性タンパク質・で、メッセンジャー・調節分子として働く。

flowchart TD
  A["サイトカインによる<span class='jp-term jp-term-diagram' title='signal transduction'>情報伝達</span>の様式"]
  A --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='paracrine signaling'>傍分泌</span>(近傍細胞へ)"]
  A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='autocrine signaling'>自己分泌</span>(分泌した細胞自身へ)"]
  A --> D["内分泌(血流を介し遠隔へ)"]
  A --> E["接触分泌 juxtacrine(細胞間接触を介して)"]

サイトカインに共通する性質

性質 内容
膜受容体作用 は比較的少数
一過性の効果 短寿命mRNA・負のフィードバックによる
1つのサイトカインが複数の効果をもつ
拮抗・・カスケード 複数のサイトカインが相互作用しあう

主なサイトカインファミリー

(IL-1〜36)、、TNF(tumor necrosis factor)、IFN(interferon)に加え、脂肪組織由来の・筋由来の・肝由来の・骨由来の——これらを総称してと呼ぶ。

分類 代表例
IL-1, TNF, IFN-γ, IL-12, IL-18, IL-17, IL-33
IL-10, TGF-β, IL-13, IFN-α, IL-35

⚠️ は正のフィードバックの暴走。 病原体・腫瘍・自己免疫疾患により誘発されうる、著明なサイトカイン上昇とを伴う生命を脅かす性疾患。背景には正のがある。

まとめ

  • 免疫系は「認識→応答→排除/寛容」のロジックで動き、自己(extended selfを含む)と非自己(外因性・内因性の)を区別する。
  • 一次免疫器官(骨髄・胸腺)はリンパ球成熟の場、(リンパ節・脾臓・MALT・SIS)は抗原との出会いの場。一次器官の障害はより致命的。
  • CD抗原(CD3=T細胞、CD4=Th/Treg、CD8=、CD19/20=B細胞)がの共通言語になる。
  • 免疫応答の5つの特徴:(T/B細胞で認識様式が異なる)、感受性()、記憶、
  • 自然免疫(即時・低特異性・)と獲得免疫(1〜2週間・高特異性・・記憶)は進化的にも機能的にも異なる2層。自然免疫の方がより古く、より重要。
  • リンパ球・一次/(IgM→IgG)・サイトカイン(・カスケード・ストーム)が、免疫系のダイナミクスを支える。