Traumatology

Traumatology · 15

肩甲帯の軟部組織・骨・関節損傷

Injuries of the shoulder girdle: soft tissue, bones and joints

前提:正常
上肢:肩と腋窩結合組織:固有結合組織とその種類

🧠 全体像外傷は、という骨、・肩甲上腕関節、腱板・腱をまとめて評価する。整復や固定の前後には必ずと上肢血流を記録し、高エネルギー損傷では胸部・血管・を見逃さない。

共通の評価

  • 、利き手、職業・スポーツ、既往を確認する。
  • 、肩の輪郭、の圧痛を観察する。
  • 収縮と上腕外側感覚、を整復・固定の前後で記録する。
  • 外傷時は単純X線を基本とし、複雑骨折・ではCTを用いる。腱板の性状評価にはMRIが有用で、超音波は施設と経験に応じて用いる。1

骨損傷

鎖骨骨折

中央部骨折が多い。転位の少ない閉折は三角巾を通常2〜3週の範囲で疼痛に応じて用い、早期に肘・手関節運動、疼痛軽減後に肩運動を始める。8字帯より通常は三角巾を選ぶ。

手術は開放骨折、皮膚切迫、神経血管損傷、肩、症候性偽関節などで強く考慮する。成人の完全転位・短縮・を伴う中央部骨折では、手術により癒合率の向上、癒合期間の短縮、早期機能回復が期待できる。一方、長期機能差の臨床的意義は小さいことがあり、感染、知覚障害、や金属との利益衡量を行う。2 固定には通常プレートとスクリューを用いる。

肩甲骨骨折

の指標であり、肺・血管・を検索する。多くは三角巾と早期運動で治療できる。関節窩の大きな・不安定性、肩甲頸部で40°を超える角状変形または1 cmを超える転位、上方では手術を検討する。数値は画像法や損傷全体で解釈し、単独の絶対基準にはしない。

上腕骨近位部骨折

Neer分類は主要骨片の転位を、概ね1 cm超または45°超を基準として記載する。転位の少ない骨折は短期間の三角巾と早期振り子運動で治療する。骨折、骨頭分割、高度転位、血流障害、活動性・骨質・腱板機能に応じてプレート固定、、リバース型人工などを選ぶ。高齢者の複雑骨折では人工骨頭の適応は限定され、リバース型人工が選ばれることが多い。3 高齢者では「2-part以上なら手術」と一律に決めない。

関節損傷

肩鎖関節脱臼

Rockwood型 基本方針
I〜II 三角巾、冷却、鎮痛、早期運動
III 保存治療を基本とし、職業・競技要求、、遷延する疼痛や機能障害を踏まえて手術適応を個別化4
IV〜VI 高度転位のため手術を検討

胸鎖関節脱臼

前方は多くが保存的に治療できる。後方は気管、食道、大血管を圧迫し得る救急疾患で、CTで確認し、胸部外科・科の支援と手術室環境を整えて整復する。安易な救急外来での牽引整復は避ける。

肩関節前方脱臼

前方ではを伴い得る。骨折リスクがあれば原則として整復前X線を撮るが、血管障害が切迫する場合は処置を遅らせない。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glenohumeral joint'>肩関節</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='dislocation'>脱臼</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='axillary nerve'>腋窩神経</span>・血流を記録"]
    B --> C["適切な鎮痛・鎮静と画像評価"]
    C --> D["穏やかな整復法"]
    D --> E["神経血管を再評価"]
    E --> F["整復後X線"]
    F --> G["短期固定と段階的リハビリ"]
    G --> H["反復<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dislocation'>脱臼</span>・大きな<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dehiscence'>骨欠損</span>なら安定化術を検討"]

強い回旋力を加える古典的Kocher法を無麻酔で機械的に行わず、十分な鎮痛・鎮静下で牽引対牽引、操作など穏やかな方法を選ぶ。反復や若い高需要者では下Bankart修復、関節窩が大きい場合はLatarjet法などを検討する。

軟部組織損傷

損傷 診断の手掛かり 治療の基本
腱板 外転・筋力低下、、外傷後の挙上不能 鎮痛・を基本とし、症候性の大きな、外傷後急性、機能障害持続ではを検討する1
投球・牽引で深部痛、 活動調整・、持続例で治療を個別化
上腕のPopeye変形、屈曲・ 多くは保存的、高需要・痙攣痛で腱固定術を検討
下痛 有痛弧、腱板負荷で疼痛 運動療法・活動調整が中心。形成術を一律に行わない

腱の・不安定性では前方痛、圧痛、を評価し、活動調整、鎮痛、運動療法から開始する。

ステロイド注射は短期鎮痛に用いることがあるが、反復注射による、感染、血糖上昇を考慮する。腱板では骨折・に隠れた急性を見逃さない。

リハビリテーション

  1. 疼痛と腫脹を抑え、手指・手関節・肘の可動域を保つ。
  2. 安定性が得られたら振り子運動から・自動介助運動へ進む。
  3. 可動域回復後に腱板・周囲筋を強化する。
  4. 職業・競技に必要な動作へ段階的に戻す。

固定し過ぎると、早過ぎる負荷は再転位・再を招くため、損傷と固定法に合わせて進度を変える。

まとめ

  • 整復・固定の前後でと上肢血流を必ず記録する。
  • 骨折と後方では胸部・血管損傷を積極的に探す。
  • 高齢者の骨折やRockwood III型は、分類だけで手術を決めず機能目標で個別化する。
  • は十分な鎮痛下で穏やかに整復し、整復後画像とリハビリまで完結させる。

出典

  1. 1.Operative management of midshaft clavicle fractures demonstrates better long-term outcomes: A systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials(PLOS ONE・2022)転位鎖骨中央部骨折の手術は癒合と機能を改善し得るが機能差の臨床的意義は限定的であること閲覧 2026-08-09
  2. 2.Surgical treatment of proximal humerus fractures: a systematic review and meta-analysis(European Journal of Orthopaedic Surgery & Traumatology・2023)高齢者の複雑上腕骨近位端骨折では人工骨頭よりリバース型人工肩関節が有力であること閲覧 2026-08-09
  3. 3.Comparative efficacy of operative versus conservative treatment for Rockwood type III acromioclavicular joint dislocation: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials(BMC Musculoskeletal Disorders・2024)Rockwood III肩鎖関節脱臼では長期機能の手術優位が明確でなく保存治療を基本に個別化すること閲覧 2026-08-09
  4. 4.High degree of consensus on diagnosis and management of rotator cuff tears: a Delphi approach(Knee Surgery, Sports Traumatology, Arthroscopy・2023)腱板断裂の性状評価にはMRIを重視し治療は断裂の大きさと症状を統合すること閲覧 2026-08-09