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Disease Atlas · 全身 · 先天性疾患

トリコチオジストロフィー(硫黄欠乏性毛髪発育異常症)

Trichothiodystrophy

別名
TTDPIBIDSIBIDSBIDS
臓器系
全身皮膚神経小児
科目
Translational Medicine and Pathophysiology
トピック
病態生理学 2-28:分子・細胞レベルの老化
鑑別疾患
コケイン症候群色素性乾皮症

🧠 全体像:(TTD)は、TFIIH複合体(転写との両方に働く)を構成する遺伝子(ERCC2/XPD・ERCC3/XPB・GTF2H5/TTDA、非型ではMPLKIP/TTDN1)の変異によるのである。名前のとおり毛髪の()含量低下が本質で、での「tiger tail」帯状所見が診断の決め手になる1。⚠️ 同じERCC2/ERCC3変異がを起こしうるのに、TTDではが増えない——この一点が、TTDを候群の例として挙げる理由であり、同時にとの最大の違いでもある2。

機序——TFIIHは転写と修復の両方を担う

flowchart TD
    A["ERCC2(XPD)/ERCC3(XPB)/GTF2H5(TTDA)の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pathogenic variant'>病的バリアント</span>"] --> B["TFIIH複合体の機能異常<br>(転写因子IIH:転写基本因子かつNER因子)"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nucleotide excision repair (NER)'>ヌクレオチド除去修復</span>(NER)の障害"]
    B --> D["転写そのものの障害<br>(毛髪<span class='jp-term jp-term-diagram' title='keratin'>ケラチン</span>など硫黄豊富な蛋白の合成低下)"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='xeroderma pigmentosum'>色素性乾皮症</span>と共通の遺伝子基盤"]
    D --> F["毛髪<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Cystine'>シスチン</span>含量低下→脆弱毛髪・tiger tail所見"]
    D --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ichthyosis'>魚鱗癬</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='short stature'>低身長</span>・知的障害・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='microcephaly'>小頭症</span>などの多臓器症状"]

💡 同じ遺伝子でも「修復が壊れるか、転写が壊れるか」で表現型が変わる。 ERCC2・ERCC3はどちらものでもあるが、TTDを起こす変異はTFIIHの転写側の機能をより強く障害すると考えられており、この違いが「同じ遺伝子なのにが増えない」という一見矛盾した所見を説明する2。

臨床像——頭文字の並びで覚える

頭文字 意味 頻度(Faghriら 2008、n=112)
Photosensitivity() 全例には出ない 42%
Ichthyosis() 65%
Brittle hair(脆弱毛髪) tiger tail所見73%、含量低下70% 96%
Intellectual impairment(知的障害) 発達遅滞を含む 86%
Decreased fertility(低下) —
Short stature() 73%

⭐ を伴えば PIBIDS、伴わなければ IBIDS(さらに脆弱毛髪とだけなら BIDS)と呼ぶ——略語は「必ず全部そろう」という意味ではなく、見られた頭文字だけを並べた表記である1。

⚠️ 出生時から所見が出ることが多い。 出生時異常は55%にみられ、(中央値2.2kg)37%、コロジオン様皮膚26%、7%、妊娠合併症28%(7%)である1。

診断——tiger tail所見

診断は臨床像に加え、毛髪をで観察したときの明暗ので強く示唆される(73%で陽性)。毛髪の含量低下(70%)も指標になる1。

予後——感染症による死亡リスクの上昇

⭐ 死亡率は一般人口の約20倍で、多くは10歳未満・感染症による。 系統的レビューでは死亡20例(18%)のうち19例が10歳未満で、13例が感染関連死であり、死亡年齢の中央値は3歳であった12。は36%にみられ、呼吸器感染が最多(29%)である1。

⚠️ 色素性乾皮症・コケイン症候群との違い

項目
ERCC2/ERCC3/GTF2H5(一部MPLKIP) ERCC2/ERCC3を含む複数のNER遺伝子
リスク ⚠️ 増加しない(一般的なTTD) 約1000倍に増加
脆弱毛髪・tiger tail所見・・ 高度のと若年での多発

出典は共通の系統的レビュー1とGeneReviews2による。💡 同じ遺伝子で片方は癌が増え、片方は増えない——修復と転写のどちらが主に障害されるかという1点がである。とも・・発達遅滞・・異常を共有し、鑑別に挙がる1。

まとめ

  • はERCC2(XPD)・ERCC3(XPB)・GTF2H5(TTDA)などTFIIH複合体を構成する遺伝子の変異によるである。
  • 毛髪の()含量低下が本質で、のtiger tail所見(73%)が診断の手がかりになる。
  • PIBIDS/IBIDS/BIDSは・・脆弱毛髪・知的障害・低下・のうち実際にみられた頭文字を並べた表記である。
  • ⚠️ と同じ遺伝子群が原因になりうるが、は増加しない——候群の例として挙げられる一方、癌化のリスクという点ではと対照的である。
  • 死亡率は一般人口の約20倍で、多くは10歳未満での感染症による死亡である。

出典

  1. 1.Trichothiodystrophy: a systematic review of 112 published cases characterises a wide spectrum of clinical manifestations(Journal of Medical Genetics・2008)報告された症例112例の系統的レビューで、毛幹異常(96%)のうち偏光顕微鏡で明暗が交互に帯状に見える「tiger tail」所見が73%、毛髪シスチン(含硫アミノ酸)含量低下が70%に認められたこと、発達遅滞・知的障害が86%、低身長が73%、魚鱗癬が65%、光線過敏が42%、眼所見が51%に認められたこと、出生時異常が55%(低出生体重〈2,500g未満〉37%・中央値2.2kg、コロジオン様皮膚26%、先天白内障7%)にみられ妊娠合併症が28%(うち妊娠高血圧腎症7%)であったこと、感染症の反復が36%(呼吸器感染29%・消化器感染13%・耳感染11%)で死亡例20例(18%)のうち10歳未満の死亡が19例(うち13例が感染関連)、死亡年齢中央値が3歳で一般人口と比べ約20倍死亡率が高いと評価されたこと、遺伝形式が常染色体劣性でXPD変異29%・XPB変異2%・TTDA変異2%・TTDN1変異5%・DNA修復正常例10%であったこと、TTD患者に癌の増加は報告されておらず色素性乾皮症の皮膚癌1000倍増加とは対照的である一方、TTD1例に扁平上皮癌、XP/TTD重複例2例に皮膚癌がみられたこと、コケイン症候群がTTDと光線過敏・低身長・発達遅滞・子宮内発育遅延・脱髄という所見を共有することを確認した。閲覧 2026-09-17
  2. 2.Xeroderma Pigmentosum(GeneReviews (University of Washington, Seattle / NCBI Bookshelf)・2022)常染色体劣性のヌクレオチド除去修復異常症のまとめ(表5)で、トリコチオジストロフィーが光線過敏・魚鱗癬・脆弱毛髪(偏光顕微鏡でtiger tail所見)・知的障害・低身長・小頭症・脳の髄鞘化異常を伴う多彩な表現型であり、原因遺伝子がERCC2(XPD)・ERCC3(XPB)・GTF2H5(TTDA)・MPLKIP(TTDN1、非光線過敏型)であること、10歳未満での死亡リスクが主に感染症により約20倍上昇すること、色素性乾皮症とは異なり顕著な皮膚癌増加を示さない一方でXP/TTD複合例では皮膚癌頻度が上昇しうること、ERCC2関連TTDでは他のERCC2変異による色素性乾皮症と異なり妊娠合併症の頻度が高いことを確認した。閲覧 2026-09-17