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Disease Atlas · 皮膚 · 疾患

色素性乾皮症

Xeroderma pigmentosum

別名
XP
臓器系
皮膚腫瘍神経
科目
PathologyMolecular Cell BiologyOncologyGeneticsDermatology
トピック
病理学 B/10:DNA修復遺伝子(DNA修復機構)病理学 B/13:遺伝性腫瘍症候群(遺伝性がん症候群)病理学 B/15:化学・放射線による発癌病理学 B/18:腫瘍の疫学分子細胞生物学 9:チミンダイマーの形成と修復;ミスマッチ修復(EM学生のみ)腫瘍学 I-01:がんの病因遺伝学 3.1:遺伝的変異遺伝学 8.1:ゲノムと環境皮膚科 3-08:皮膚有棘細胞癌
鑑別疾患
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群ポルフィリン症
続発疾患
基底細胞癌皮膚有棘細胞癌悪性黒色腫
関連疾患
母斑性基底細胞癌症候群
治療薬
イソトレチノインアルファインターフェロン
症状
羞明難聴小脳性運動失調痙性麻痺振戦嚥下障害毛細血管拡張光線過敏眼瞼外反

🧠 全体像は、紫外線が作るDNA損傷を切り出すが生まれつき働かない疾患である——健常人なら数十年かけて蓄積する変異がXP患者では数年で蓄積し、が数十年早く多発する。8つの(XP-A〜XP-GとバリアントのXP-V)は「NERのどこが壊れているか」で分かれ、まで壊れた群(とくにXP-A)は神経細胞の修復不全からを合併する一方、だけが壊れた群(XP-C・XP-E)やNERは正常でもを担うDNAポリメラーゼηが壊れた群(XP-V)は状にとどまりやすい——この差が、同じXPという病名の中の症状の重さの違いを説明する。

概要・疫学

(XP)は、日光に高度の皮膚がんを高頻度に発生するである。19世紀末にオーストリアの医Kaposiらが重篤な性疾患として記載し、1968年に米国のCleaverがXP細胞の紫外線損傷修復異常を報告した——DNA修復異常が疾患を起こすことを示した最初の例である。

XPは試験により8つの病型(XP-A〜XP-Gの7群とバリアント型XP-V)に分類される。日本での頻度は約2.2万人に1人と、欧米(およそ100万人に1人)よりはるかに高い。これはXP-A群の原因となるXPA遺伝子のが日本人100人に1人と高いためで、本邦ではXP-Aが患者の過半数(約55%)を占め、状のみのXP-Vが約25%でこれに次ぐ(XP-D 8%、XP-F 7%、XP-C 4%、XP-Eはまれ)。世界的にはXP-Cが多く神経症状のない皮膚型が主体になりやすいが、日本ではXP-Aが多いぶん神経症状を合併する重症例の割合が高い。

病態(機序)

紫外線は隣接するの間にという異常なを作る。健常人はこれをで切り出し正しい配列に埋め直す。XP-A〜XP-Gは、NERを構成する7つのタンパク質(XPAERCC3XPCERCC2DDB2ERCC4ERCC5がそれぞれA〜G群に対応)のいずれかが機能を失い、損傷が除去されないまま複製が進んで変異が蓄積する状態である。

flowchart TD
    A["紫外線曝露"] --> B["ピリミジン二量体・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='(6-4) photoproduct'>6-4光産物</span>の形成"]
    B --> C["健常人:NERで切除・再合成"]
    B --> D["XP-A〜G:NER構成タンパク質が欠損"]
    D --> E["損傷が除去されず変異が蓄積"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='global genome repair (GGR)'>全ゲノム修復</span>のみの欠損(XP-C・E)"]
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transcription-coupled repair (TCR)'>転写共役修復</span>にも及ぶ欠損(XP-A・B・D・Gなど)"]
    G --> H["神経細胞でも修復不全→進行性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurodegeneration'>神経変性</span>"]
    B --> I["XP-V:NERは正常、DNAポリメラーゼη(POLH)が欠損"]
    I --> J["損傷を越えられず複製時に変異が蓄積"]
    F --> K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sun-exposed area'>露光部</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='skin cancer'>皮膚癌</span>の若年多発"]
    J --> K

⭐ NERには、ゲノム全体を見張ると、活発に転写中の遺伝子だけを優先的に見張るという2経路がある。XP-C・XP-Eはだけが障害されるため皮膚の変異蓄積が主体となり神経症状を伴いにくいが、XP-A・B・D・Gの多くはにも障害が及ぶため、「あまり分裂しないが転写は盛んな」神経細胞でも修復不全が起こり、進行性を合併しやすい。

💡 XP-Vだけは機序が異なる。NERは正常で紫外線損傷そのものは切除できるが、複製が損傷部位に到達したときそれを乗り越えて複製を続ける損傷乗り越えDNA合成を担うDNAポリメラーゼη(POLH遺伝子)が欠損している。損傷を修復できないのではなく「跳び越す」精度が落ちる結果、変異が蓄積して皮膚がんリスクが上がる。

臨床像

皮膚症状

臨床像は大きく2型に分かれる。

該当する群 特徴
XP-A・XP-B・XP-D・XP-F・XP-G 短時間の日光曝露で健常人には見られない激しい日焼け反応(強い発赤・浮腫・水疱)を生じ、曝露3〜4日後に増悪、消退に1週間以上かかる
色素 XP-C・XP-E・XP-V 異常な日焼けを起こさず、様のが徐々に進行する

⚠️ 「日焼けしないから軽症」とは限らない。XP-Cなど色素は激しい日焼け反応を欠くため乳児期には見過ごされやすく、の皮膚がんで初めて気づかれることが多い。

繰り返す日焼け様反応のたびに皮膚(顔面・項部・耳介・など)にが増え、皮膚は乾燥・萎縮しを伴うの像を呈する。この背景から、悪性黒色腫が健常人より数十年早く多発する。の発症年齢中央値は約9歳(健常人60歳以上)、悪性黒色腫は約22歳(健常人50歳以上)で、厳密ながなければ発生頻度は健常人の1,000倍を超える。部のも健常人の3,000倍と報告され、とくにXP-C群で目立つ。

眼症状

眼表面組織も紫外線曝露で障害され、炎、角膜の乾燥・・血管新生、、眼表面の腫瘍などが高率にみられる。網膜にはUVBがほとんど届かず直接病変は生じないが、は起こり得る。

神経症状(DeSanctis-Cacchione症候群)

XP-Aのほぼ全例、XP-Dの一部に進行性が合併する。最重症型はDeSanctis-Cacchione症候群と呼ばれ、皮膚・、進行性の、成長・性発達の遅れが加わる。

日本のXP-A群では、運動発達は6歳頃をピークに以後低下し、振戦を来し、12歳頃から歩行困難になる。難聴は学童期前半から出現し10代半ばでほぼ聴覚を失う。中学生前後から嚥下障害がみられ、により20歳前後でを要することが多く、以後は・感染症・外傷が生命を脅かす。

診断

診断は特徴的な臨床像(の急性・慢性期症状、50歳以前の皮膚がん、原因不明の進行性神経障害)との検査で確定する。培養線維芽細胞に紫外線を照射し(UDS)を測定すると、XP-V以外の群は正常の50%以下に低下する一方、XP-Vは70%以上とほぼ正常という逆転が鑑別の鍵になる。で原因群を特定し、日本人ではXP-A・XP-Vの高頻度変異を中心にで確定する。

鑑別には、にも色素異常を来す(常染色体優性)、光線とに水疱を生じる、急性の日光性浮腫・水疱を来すを含む、単なるが挙がる。神経症状を伴う型では、Cockayne症候群、(トリコチオジストロフィー)、Rothmund-Thomson症候群、Bloom症候群、COFS症候群やXP/Cockayne複合など、と神経・発達異常を併せ持つDNA修復異常を考慮する。は、日焼け反応や修復能の異常、進行性の色素異常・皮膚がんを欠く点で除外できる。

治療・管理

根治療法はなく、徹底した紫外線防御そのものが治療の中心になる。外出時は高SPF・高PAのサンスクリーン剤、長袖・長ズボン・帽子・UVカット・紫外線防護服を着用し、屋内でも窓ガラスへのUVカットフィルムやカーテン、蛍光灯の紫外線対策が必要で、携帯型紫外線量計による量の可視化も役立つ。

⚠️ 紫外線防御を徹底するほどビタミンD産生が妨げられるため、血中濃度を確認し必要に応じて経口補充する。

・眼科は3〜6か月ごと、神経型では小児神経科・・整形外科・リハビリテーション科を含むチームで年1回以上する。皮膚がんは早期発見・切除が原則で、多発例にはなどへの外用、悪性黒色腫へのの有用性が報告される。遺伝は全群が対象で、日本ではXP-Aので迅速な遺伝子・保因者・が可能である。

⚠️ 喫煙は紫外線とは独立に肺癌リスクを押し上げるため厳格に回避する。 は紫外線ほどの過敏性は証明されていないが、治療上必要な以外は慎重に扱う。

予後

生命予後を左右するのは皮膚がんでなく神経症状の有無である。厳密なと早期治療が徹底されれば皮膚型XP(XP-C・E・V)の生命予後は良好である。一方、日本で多いXP-Aの典型例では10代で嚥下・が進行し、20歳前後のを経て、誤嚥・感染症・外傷により30歳前後で死亡することが多い。近年は指導の普及で死は減ったが、を止める治療法は確立していない。

まとめ

  • は紫外線損傷を切り出すNERの欠損による疾患で、XP-A〜XP-Gの7群と、NERは正常だがPOLHが欠損するXP-Vを合わせた8つのに分かれる。
  • のみの欠損(XP-C・E)は状にとどまりやすいが、にも及ぶ欠損(とくにXP-A)は神経細胞の修復不全から(DeSanctis-Cacchione症候群)を合併する。
  • 日本ではXPAのにより頻度が2.2万人に1人と欧米よりはるかに高く、神経症状を伴うXP-Aが過半数を占め、の皮膚がんは健常人より数十年早く1,000倍以上の頻度で多発する。
  • 治療の中心は生涯にわたる徹底した紫外線防御で、・眼科・神経内科などの定期、早期腫瘍切除、ビタミンD補充、による、遺伝を組み合わせる。
  • 生命予後は皮膚がんではなく神経症状の有無で決まり、皮膚型は徹底で良好だが、神経型XP-Aは20〜30歳代で関連の合併症により死亡することが多い。