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Symptoms · Published

毛細血管拡張

Telangiectasia

別名
毛細血管拡張症
臓器系
皮膚循環器
科目
PathologyDermatologyInternal MedicineCardiologyENT
トピック
病理学 B/42:心臓・血管腫瘍皮膚科 3-17:肝疾患の皮膚症状病理学 A/40:シェーグレン症候群/強皮症(全身性硬化症)/結節性多発動脈炎内科学 S-46:全身性自己免疫疾患:全身性強皮症・炎症性筋疾患・混合性結合組織病循環器内科 B-10:慢性静脈不全の症状・身体診察・画像診断と治療耳鼻咽喉科 27:外鼻の外傷、炎症性疾患、腫瘍病理 B/13:遺伝性腫瘍症候群(遺伝性がん症候群)
関連疾患
遺伝性出血性毛細血管拡張症基底細胞癌酒皶・口囲皮膚炎色素性乾皮症全身性強皮症皮膚T細胞リンパ腫母斑性基底細胞癌症候群慢性静脈不全毛細血管拡張性運動失調症

🧠 全体像既存の毛細血管・がそのまま拡張して皮膚表面から透見される所見であり、血管腫のようなの増殖ではない。したがって「なぜ既存の血管壁が耐えられなくなったか」を考えることが病態理解の出発点になる。臨床での分かれ道は原発性か二次性か——原発性(など)は血管そのもののが主体で、二次性(・日光曝露・慢性ステロイド外用・肝疾患・など)は基礎疾患や環境因子が血管壁をさせる。単発の美容上の訴えなのか、の一所見なのかを見分けることが診療の骨格になる。

定義と用語の整理

は、真皮の毛細血管・が拡張・し、皮膚を通して赤色〜紫紅色の線状・網状の血管として透見される所見を指す。の増殖ではなく、である点が血管腫との本質的な違いで、血管腫は乳幼児期に増殖・退縮の経過をとる腫瘍性病変である。

鑑別で必ず行うのがである。透明なガラス板やグラスで病変を圧迫し、

  • する:血管内に血液が存在し、圧迫で血液が押し出される→・紅斑・(spider angioma、中心の細動脈から放射状に毛細血管が伸びる特殊型)
  • しないに赤血球が漏出している→紫斑(点状出血

を鑑別する。するかどうかは、病変が「血管の中の異常」か「血管の外への出血」かを一発で切り分ける、最も基本的で費用のかからない手技である。

病態生理

拡張の機序は大きく4群に整理できる。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='telangiectasia'>毛細血管拡張</span>"] --> B["血管壁の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='structural aberration'>構造異常</span><br>先天性・遺伝性"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='angiogenic factor'>血管新生因子</span>・エストロゲンの関与"]
    A --> D["紫外線・放射線による<br>真皮結合組織の変性"]
    A --> E["うっ血による<br>静脈圧・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='capillary pressure'>毛細血管圧</span>の上昇"]
    B --> B1["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hereditary hemorrhagic telangiectasia'>遺伝性出血性毛細血管拡張症</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='arteriovenous malformation (AVM)'>動静脈奇形</span>"]
    C --> C1["妊娠・肝疾患でのエストロゲン増加<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='spider angioma'>クモ状血管腫</span>"]
    D --> D1["日光角化・慢性放射線皮膚炎"]
    E --> E1["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic venous insufficiency'>慢性静脈不全</span><br>強皮症の血管障害"]

💡 が増えるのは、や肝での低下によってエストロゲンが相対的に過剰になり、血管拡張因子として働くためと考えられている。同じ機序が妊娠時の生理的なにも当てはまり、単独では病的意義を持たない。

では、血管壁そのものの線維化・と、それに続く異常な血管新生の代償反応がを生む。では逆に、によるうっ血を持続的に上げることで拡張が起こる。同じ「」でも上流の力学がまったく違う。

⚠️ 見逃してはいけない背景疾患

⚠️ (HHT、で、皮膚・粘膜のに加え、肺・脳・肝のを伴いうる。反復する原因不明の、口唇・舌・指先の点状の、家族歴がそろえば強く疑う。)のリスクになるため、疑ったら全身のを検索する。「」とは全く別の疾患であり、名称が似ている点に注意する。

⚠️ :顔面・手指・口唇周囲のは、・Raynaud現象・とそろって現れるであり、単独の美容上の訴えとして受診することもある。陽性・緩徐な経過が背景にあれば、肺高血圧など内臓病変のスクリーニングにつなげる()。

⚠️ :小児期に生じると、眼球・耳介などのを特徴とするのDNA修復異常症。が著しく高く、悪性腫瘍(リンパ腫・白血病)のリスクも上昇するため、通常量のCTスキャンでもを最小化する配慮が必要になる。

⚠️ 慢性放射線皮膚炎に一致したは、萎縮・硬化・色素異常とともに晩期障害として現れ、その皮膚からなどが発生しうる背景病変になる。

⚠️ (結節潰瘍型):真珠様光沢を伴う丘疹の辺縁にみられる樹枝状のは、である。単発で緩徐に増大し中央がする経過は良性のと紛れやすいため、この所見を見たら生検を検討する()。

💡 肝疾患(:単独では診断的意義に乏しいが、などの他の徴候と組み合わせて評価する。数個までは健常者・妊婦にもみられる。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='telangiectasia'>毛細血管拡張</span>を認める"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diascopy'>硝子圧法</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blanching'>退色</span>を確認"]
    B --> C{"分布は限局性か全身性か"}
    C -->|"顔面中心・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='flushing'>潮紅</span>を伴う"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rosacea'>酒皶</span>を考慮"]
    C -->|"下肢・下腿中心"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='venous stasis'>静脈うっ滞</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic venous insufficiency'>慢性静脈不全</span>を評価"]
    C -->|"顔・手指・口唇周囲+Raynaud"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='CREST'>全身性強皮症</span>を評価"]
    C -->|"口唇・舌・指先の点状+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='recurrent epistaxis'>反復鼻出血</span>"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hereditary hemorrhagic telangiectasia'>遺伝性出血性毛細血管拡張症</span>を疑う"]
    C -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='irradiation field'>照射野</span>に一致"| H["慢性放射線皮膚炎を考慮"]
    C -->|"体幹の単発・中心の細動脈"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spider angioma'>クモ状血管腫</span>として肝疾患・エストロゲン過剰を評価"]
    C -->|"小児・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cerebellar ataxia'>小脳失調</span>を伴う"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ataxia-telangiectasia'>毛細血管拡張性運動失調症</span>を疑う"]

分布・年齢・随伴所見の3点をまず押さえる。単発か多発か、体幹か四肢か、随伴する紅斑・潰瘍・全身症状の有無を確認するだけで、上記のどの経路に進むべきかがおおむね絞れる。日常診療で頻度が高いのは、顔面のを伴うと、下腿に生じるである。

治療の考え方

所見そのものへの介入と、原疾患の治療は別の軸として考える。

  • 所見そのものへの介入)やによる血管の選択的、あるいは(下肢の)が中心となる。美容目的、あるいは出血源としての目的のいずれもありうる。
  • 原疾患の治療との関係:HHTの・消化管出血は反復する病変を個別に・塞栓しても新規病変が生じ得るため、全身のの評価と長期的な出血管理が並行して必要になる。強皮症では自体よりも肺高血圧など内臓病変の管理が優先される。では・原因血管の処理を行わないと、レーザーでした部位の近傍に新たな拡張が再発しやすい。
  • 除外すべき所見を治療しない:紫斑(しない病変)をレーザーで治療しても無効であり、凝固異常・血管炎など全く別の精査が必要になる。

まとめ

  • の拡張であり、血管腫のようなの増殖ではない。
  • すれば血管内の異常、しなければへの出血(紫斑)であり、この一手技が鑑別の起点になる。
  • 原発性(HHT、)と二次性(強皮症、放射線皮膚炎、肝疾患、)に分けて考える。
  • 最優先で除外すべきはHHTの肺・脳と反復性、次いでの内臓病変。
  • 分布(顔面・下肢・点状・)・年齢・随伴所見(Raynaud、)から鑑別を絞る。
  • 治療はレーザー・による所見そのものへの介入と、原疾患の管理を分けて考える。しない病変をレーザーで治療してはならない。