病理学

病理学 · A/40

シェーグレン症候群/強皮症(全身性硬化症)/結節性多発動脈炎

Sjögren Syndrome, Scleroderma, Polyarteritis Nodosa

タグ
Mechanism / 機序High-yield / ポイント
応用トピック
限局性強皮症と全身性強皮症唾液腺の炎症性疾患と唾液腺症全身性エリテマトーデス・強皮症・皮膚筋炎・血球貪食性リンパ組織球症
疾患
シェーグレン症候群結節性多発動脈炎全身性強皮症
症状
毛細血管拡張
検査値
抗La/SSB抗体

🧠 全体像:3疾患は標的臓器で覚える——は(・唾液腺)、強皮症は線維化を介した全身臓器、PANは中動脈壁そのもの。いずれも自己抗体や免疫複合体が引き金だが、最終的なの主役は炎症性浸潤()・線維化(強皮症)・(PAN)と異なる。

シェーグレン症候群

・唾液腺の破壊 → (・keratoconjunctivitis sicca)+1。

  • 病型: 一次性(単独の「」)または二次性(SLE/RAを伴う)2。

💡 分類基準は2016年にACR/で改訂されている。 シェーグレン症候群を示唆する徴候・症状のある人を対象に、次の5項目の重み付け和が合計4点以上で分類する(検証コホートで感度96%・特異度95%)1。

項目 点数
のリンパ球性(1以上/4 mm²) 3
陽性 3
5以上(または4以上)、少なくとも片眼 1
5 mm/5分以下、少なくとも片眼 1
0.1 mL/分以下 1

はこの5項目に入っていない。頭頸部への放射線治療歴、活動性C型肝炎(陽性)、、、、、関連疾患の既往がある人は症状が重なるため分類から除外する1。⚠️ 「一次性/二次性」という呼び分けは近年見直されている。 2023年の国際Rome合意は、他のに併存する場合をsecondaryではなくassociatedと呼び、日常臨床では両者を区別せず単に「Sjögren disease」と呼ぶことを勧告している。旧来の一次性/二次性という区別は、均質な集団を要する研究に限るべきとされる2。

  • 発生機序: 導管上皮抗原に対するCD4⁺ T細胞+全身性のB細胞。自己抗体は抗SSA/Roと抗SSB/La(リボヌクレオタンパクに対する)。特定のMHC-II対立遺伝子が素因。
  • 形態: 腺への強いリンパ球+(を形成することも)→ 腺の破壊。(中枢神経、皮膚、腎)。結果:・、口腔粘膜の萎縮・、、気管支炎・。
  • 臨床: 40〜60歳の女性。唾液腺腫大。(MALTリンパ腫を中心とする非ホジキン)リンパ腫のリスクが高い。 よく引かれる「約40倍」は1978年の古典的な報告に由来する値で、米国NIHの乾燥症候群の女性136例から7例のが生じ、一般女性の期待値の43.8倍だった(耳下腺腫大・脾腫・リンパ節腫脹の既往がある例で高リスク)3。💡 倍率は集団と比べる腫瘍の範囲で大きく変わる。一次性シェーグレン症候群1,300例(平均追跡91か月)では、悪性腫瘍で最多はB細胞リンパ腫(MALT型27例・非MALT型19例を含む)で、(SIR)は全体で11.02、内訳は・免疫36.17・19.41・その他の6.04と腫瘍型により幅があり、全体は1.13にとどまった4。

全身性硬化症(強皮症)

皮膚、消化管、腎、心、肺、筋の強い線維化。2つの病型:

(CREST)
広範な皮膚病変(体幹・四肢近位に及ぶ)、急速、早期に消化管・臓器病変 皮膚硬化は肘・膝より遠位(手指など)と顔に限られる、緩徐な経過
()→ → 良性経過、肺高血圧

CREST = Calcinosis()、Raynaud(レイノー)、Esophageal dysmotility()、Sclerodactyly()、Telangiectasia()。

💡 分類基準は2013年ACR/基準。 両手の手指の皮膚硬化がより近位に及べば、それだけで分類できる(9点)。及ばない場合は下表を各項目の最高点だけ加算し、合計9点以上でと分類する。手指を侵さない皮膚硬化の例や、・好酸球性筋膜炎など強皮症様疾患でよりよく説明できる例には適用しない5。

項目 点数
手指の皮膚硬化:の手指 2/(より遠位でより近位に及ぶ) 4 最高4
病変: 2/陥凹瘢痕 3 最高3
2
毛細血管の異常 2
および/または 最高2
Raynaud現象 3
強皮症関連自己抗体(抗・抗・抗ポリメラーゼIIIのいずれか) 最高3

💡 抗体と臓器病変の対応は3系統で覚える。 抗Scl-70(抗)→、→肺高血圧に加え、→という対応があり、取り違えると全体が逆になる。フランスのでは陽性例の腎クリーゼ頻度は14%(陰性例3%、5.0)で、陽性例2.2%・陽性例3.9%を上回った(319例中の陽性は29例=9.4%)6。

  • 発生機序(相互に関連する3つ): 自己免疫応答(CD4 T細胞 → 、、 → コラーゲン)、血管傷害( → → 虚血)、コラーゲンの過剰沈着。
  • 形態: 皮膚 — 指から始まる硬化性萎縮 → 、。消化管 — 食道の線維化(「柔軟性を失ったゴム管」)→ GERD・、吸収不良。肺 — +肺高血圧 → 。腎 — 血管壁の肥厚、 → 腎クリーゼ・腎不全(阻害薬で治療7)。心 — 。
  • 臨床: 50〜60歳、女性:男性 3:1。ほぼ全例でRaynaud現象(白→青→赤)。嚥下障害、呼吸困難。

💡 阻害薬の普及で腎クリーゼの予後は劇的に改善し、死因の重心は肺へ移った。 阻害薬導入後、腎クリーゼの1年死亡率は85%から24%へ改善した7。この数字の元は、米国の大学強皮症センターで1972〜1987年に腎クリーゼを起こした108例の前向き追跡で、1年は阻害薬なし15%・あり76%だった。ただし阻害薬で治療した55例でも24例(44%)が早期に死亡するか永続的な透析を要した8。一方、EUSTARコホート(5,860例、死因を調査できた234例)では死亡の55%がSScに直接起因し、そのうち35%・26%・心病変26%で計87%を占めた9。

結節性多発動脈炎(PAN)

Polyarteritis = 多数の動脈、nodosa = 結節状(罹患動脈に沿って触れる結節・動脈瘤に由来する名)。2012年CHCCの定義は「糸球体腎炎や細動脈・毛細血管・の血管炎を伴わず、と関連しない、中型または小型動脈の壊死性動脈炎」10。一部は関連で、HBs抗原が免疫複合体を形成して血管壁を傷害する11。フランス血管炎研究グループの1963〜2005年診断348例では123例が関連だった12。

💡 2012年改訂Chapel Hill Consensus Conference(CHCC)は血管径による分類を整理し、PANは陰性・糸球体腎炎を来さないとして、陽性・小型血管優位で糸球体腎炎を来す(MPA)と明確に区別された10。⚠️ PANはかつて感染と強く結びついていたが、ワクチンの登場と流行を受けた対策の強化でが著明に低下し、1990年代には最も多い血管炎の一つだったものが、現在は最もまれな血管炎の一つとされる11。上記の348例の比率は1963年以降のであり、現在の割合ではない。

  • 形態: 小〜中動脈(特に)の壊死性炎症、肺は侵さない。急性期:混合浸潤++血栓症 → 。慢性期:線維性の壁肥厚。灌流障害 → 梗塞、、、出血。
  • 臨床: 50歳以上の男性(あらゆる年齢)。無症状期を挟む発作性経過。虚血が侵す部位:
    • 腎 → 高血圧、乏尿、腎不全(最多の死因)。
    • 消化管 → 腹痛、吸収不良、。
    • 神経 → 。
    • 皮膚 → 、結節、潰瘍、壊疽。
    • 心 → 。
  • 診断:生検・()。糸球体は侵さない(SLEと異なり病変)。

💡 ポイント: = 抗SSA/SSB、+、リンパ腫リスク増加。強皮症 = 線維化+Raynaud、 = 抗Scl-70、/CREST = 抗、腎クリーゼ → 阻害薬。PAN = 中動脈の、肺は侵さない、関連、。糸球体は侵さない(SLEと対照的)。

まとめ

  • シェーグレン症候群は・唾液腺への破壊で、抗SSA/抗SSB抗体と・を特徴とし、MALTリンパ腫を中心とするのリスクが高い(古典的報告では約44倍)。
  • は(抗Scl-70、急速な経過、)と/CREST(抗、緩徐な経過、肺高血圧)に分かれる。
  • 強皮症のほぼ全例でRaynaud現象がみられ、腎クリーゼには阻害薬を用いる。
  • はの性血管炎で、肺と糸球体は侵さない点がSLEと対照的。
  • PANの一部は関連(HBs抗原の免疫複合体)で、ワクチンの普及などでは低下した。・・が特徴。

出典

  1. 1.2016 American College of Rheumatology/European League Against Rheumatism classification criteria for primary Sjögren's syndrome: A consensus and data-driven methodology involving three international patient cohorts(Annals of the Rheumatic Diseases(International Sjögren's Syndrome Criteria Working Group)・2017)2016年ACR/EULAR分類基準は抗SSA/Ro抗体陽性と口唇小唾液腺のフォーカススコア1以上をそれぞれ3点、眼表面染色スコア・Schirmer試験・無刺激全唾液流量の異常を各1点とする重み付け和で合計4点以上を分類とすること、検証コホートでの感度96%・特異度95%を確認した。同時掲載のArthritis & Rheumatology版(PMC5650478)の表3で、眼表面染色スコアとSchirmer試験は少なくとも片眼で判定すること、頭頸部放射線治療歴・活動性C型肝炎(PCR陽性)・AIDS・サルコイドーシス・アミロイドーシス・GVHD・IgG4関連疾患が除外基準であることを確認した閲覧 2026-08-27
  2. 2.2023 International Rome consensus for the nomenclature of Sjögren disease(Nature Reviews Rheumatology(International Task Force on Nomenclature of Sjögren Disease)・2025)2023年の国際Rome合意が、他の全身性自己免疫疾患に併存する場合を`secondary`ではなく`associated`と呼ぶこと、日常臨床ではprimaryとassociatedを区別せず単に「Sjögren disease」と呼ぶこと、両者の区別は均質な集団を要する研究に限ることを勧告し、旧来の一次性/二次性という呼び分けを見直す方向性を示したことを確認した閲覧 2026-08-27
  3. 3.Increased risk of lymphoma in sicca syndrome(Annals of Internal Medicine・1978)抄録で、米国NIHで追跡した乾燥症候群の女性136例のうち7例が初回入院の6か月〜13年後に非ホジキンリンパ腫を発症し、同年齢層の一般女性の期待値の43.8倍であったこと、耳下腺腫大・脾腫・リンパ節腫脹の既往がある例でリスクが高かったことを確認した閲覧 2026-09-23
  4. 4.Characterization and risk estimate of cancer in patients with primary Sjögren syndrome(Journal of Hematology & Oncology・2017)一次性シェーグレン症候群1,300例の追跡(平均91か月)で127例(9.8%)が悪性腫瘍を発症し最多はB細胞リンパ腫であったこと、血液悪性腫瘍全体の標準化罹患比(SIR)は11.02で、内訳は多発性骨髄腫・免疫増殖性疾患36.17、ホジキンリンパ腫19.41、その他の非ホジキンリンパ腫6.04と腫瘍型により幅があり、固形癌全体のSIRは1.13にとどまったことを確認した閲覧 2026-08-27
  5. 5.2013 Classification Criteria for Systemic Sclerosis: An American College of Rheumatology/European League Against Rheumatism Collaborative Initiative(American College of Rheumatology / European League Against Rheumatism(van den Hoogen et al., Arthritis Rheum)・2013)2013年ACR/EULAR分類基準は両手指の中手指節関節より近位に及ぶ皮膚硬化があれば単独で分類可能とし、無ければ手指皮膚硬化・指尖病変・毛細血管拡張・爪郭毛細血管異常・肺病変・Raynaud現象・強皮症関連自己抗体(抗セントロメア・抗トポイソメラーゼI・抗RNAポリメラーゼIIIを一括りにした単一項目)を重み付け加算し合計9点以上で分類することを確認した閲覧 2026-08-27
  6. 6.Anti-RNA polymerase III antibody prevalence and associated clinical manifestations in a large series of French patients with systemic sclerosis: a cross-sectional study(The Journal of Rheumatology・2010)フランス3施設のSSc患者319例の横断研究で、抗RNAポリメラーゼIII抗体陽性例(9.4%)の腎クリーゼ頻度は陰性例より高く(14%対3%、オッズ比5.0、95%CI 1.4〜17.3)、びまん皮膚型により多くみられた一方、抗トポイソメラーゼI抗体陽性例の腎クリーゼは2.2%、抗セントロメア抗体陽性例では3.9%にとどまったことを確認した閲覧 2026-08-27
  7. 7.Scleroderma and Renal Crisis(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)強皮症腎クリーゼの予測因子がびまん皮膚型・急速進行性の皮膚硬化・抗RNAポリメラーゼIII抗体陽性・高用量副腎皮質ステロイドであること、ACE阻害薬の普及で1年死亡率が85%から24%へ改善したこと、短時間作用型カプトプリルから直ちに開始して血圧をみながら増量する治療戦略を確認した閲覧 2026-08-27
  8. 8.Outcome of renal crisis in systemic sclerosis: relation to availability of angiotensin converting enzyme (ACE) inhibitors(Annals of Internal Medicine・1990)抄録で、大学の強皮症センターで1972〜1987年に強皮症腎クリーゼを起こし前向きに追跡した108例で、1年生存率がACE阻害薬なし15%・あり76%(P<0.001)だったこと、ACE阻害薬で治療した55例のうち24例(44%)が早期死亡または永続的透析に至り、多変量解析では高齢と心不全がこの不良転帰と関連したことを確認した閲覧 2026-09-23
  9. 9.Causes and risk factors for death in systemic sclerosis: a study from the EULAR Scleroderma Trials and Research (EUSTAR) database(Annals of the Rheumatic Diseases(EUSTAR)・2010)抄録で、EUSTARコホートのSSc患者5,860例に生じた死亡284例のうち234例で構造化質問票が回収され、55%がSScに直接起因する死亡、41%が非SSc死因であったこと、SSc関連死の内訳は肺線維症35%・肺動脈性肺高血圧26%・心病変(主に心不全・不整脈)26%であったこと、蛋白尿・心エコー上の肺高血圧・肺拘束性障害がそれぞれ独立した死亡リスク因子であったことを確認した(全文は2026-09-23に取得できず、腎クリーゼの件数は未確認)閲覧 2026-08-27
  10. 10.2012 Revised International Chapel Hill Consensus Conference Nomenclature of Vasculitides(Arthritis & Rheumatism (American College of Rheumatology)・2013)CHCC 2012が血管径に基づく分類を整理し、結節性多発動脈炎(PAN)をANCA陰性・糸球体腎炎を来さない中型血管炎として、ANCA陽性・小型血管優位で糸球体腎炎を来す顕微鏡的多発血管炎(MPA)と明確に区別したこと、Wegener肉芽腫症を多発血管炎性肉芽腫症(GPA)、Churg-Strauss症候群を好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)と改称したことを確認した閲覧 2026-08-27
  11. 11.Polyarteritis Nodosa: Old Disease, New Etiologies(International Journal of Molecular Sciences・2023)全文(PMC10706353)で、歴史的にPANはB型肝炎ウイルス(HBV)感染と強く結びついていたが、HBVワクチンの登場とAIDS流行を受けた公衆衛生対策の強化によりPANの発生率が著明に低下し、1990年代には最も多い血管炎の一つだったものが現在は最もまれな血管炎の一つになっていること、HBV関連PANではHBs抗原が免疫複合体を形成すること、糸球体腎炎・肉芽腫・ANCA陽性の欠如がPANを他の血管炎と鑑別する所見であることを確認した。HBV関連例が占める割合の数値はこの総説に記載が無い閲覧 2026-08-27
  12. 12.Clinical features and outcomes in 348 patients with polyarteritis nodosa: a systematic retrospective study of patients diagnosed between 1963 and 2005 and entered into the French Vasculitis Study Group Database(Arthritis & Rheumatism・2010)抄録で、1963〜2005年に診断されACR基準とCHCC定義を満たしたPAN 348例(診断時平均年齢51.2歳)のうち123例がHBV関連、225例が非HBV関連であり、HBV関連例は末梢神経障害・腹痛・心筋症・精巣炎・高血圧が多く、死亡はHBV関連34.1%対非HBV関連19.6%、再発は10.6%対28%であったことを確認した閲覧 2026-09-23