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Disease Atlas · 免疫・膠原病 · 症候群

シェーグレン症候群

Sjögren syndrome

別名
シェーグレン病SS
臓器系
免疫・膠原病全身
科目
Internal MedicinePathologyPathophysiology
トピック
内科学 R-10:シェーグレン症候群内科学 L-67:全身性自己免疫疾患:全身性エリテマトーデスとシェーグレン病病理学 A/40:シェーグレン症候群/強皮症(全身性硬化症)/結節性多発動脈炎病態生理学 I-33:SLE・全身性硬化症・シェーグレン症候群
鑑別疾患
IgG4関連疾患移植片対宿主病唾液腺腫瘍流行性耳下腺炎
合併症
MALTリンパ腫
続発疾患
腎尿細管性アシドーシス唾液腺炎・唾石症膜性増殖性糸球体腎炎
関連疾患
クリオグロブリン血症乾燥性角結膜炎原発性胆汁性胆管炎・原発性硬化性胆管炎混合性結合組織病全身性エリテマトーデス全身性強皮症
治療薬
ピロカルピンセビメリンリツキシマブヒドロキシクロロキン
症状
乾性咳嗽関節痛筋痛倦怠感腫脹嗄声嚥下障害羞明口腔乾燥涙液分泌低下点状表層角膜症
検査値
抗核抗体表皮内神経線維密度クリオグロブリン
スコア
ACR/EULAR分類基準
適応薬
セビメリンヒドロキシクロロキンピロカルピン

🧠 全体像症候群は、・唾液腺を中心とするへのが本態の全身性自己免疫疾患で、単独で生じる一次性(原発性)と、(SLE)や(SSc)・関節リウマチに合併する二次性(続発性)に分かれる。診断は「口渇・眼乾燥を訴える患者」全員に一様な検査をするのではなく、などの自己抗体、といった乾燥検査、を組み合わせて行う。治療の骨格は、①・唾液などの対症的な管理、②関節痛・全身症状に対する、③重症・難治性のに対する生物学的製剤、④B細胞リンパ腫リスクの継続的な監視、の4段階である。

病態

の導管上皮細胞がを提示し、CD4陽性T細胞を中心とするリンパ球が腺組織に浸潤して腺房を破壊する(focal lymphocytic sialadenitis)。同時に全身性のB細胞が生じ、などの自己抗体との活性化を伴う。特定のMHCクラスII遺伝子(HLA-DR3など)が発症素因となる。

  • 一次性(原発性)症候群:単独で発症する「」。が重度になりやすい。
  • 二次性(続発性)症候群:SLE、SSc、関節リウマチなど他の自己免疫疾患に合併する。
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='genetic predisposition'>遺伝素因</span>(HLA-DR3等)+環境因子"] --> B["導管上皮細胞が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='autoantigen'>自己抗原</span>を提示"]
    B --> C["CD4陽性T細胞の活性化・浸潤"]
    C --> D["腺組織の慢性炎症"]
    D --> E["腺房破壊による分泌低下"]
    B --> F["全身性のB細胞<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperactivity'>過活動</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='type I interferon'>I型インターフェロン</span>活性化"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-SSA/Ro antibody'>抗SSA/Ro抗体</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-SSB/La antibody'>抗SSB/La抗体</span>の産生"]
    E --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal gland'>涙腺</span>・唾液腺の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sicca symptoms'>乾燥症状</span>(sicca症状)"]
    G --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='extraglandular manifestation'>腺外病変</span>(皮膚・関節・肺・腎・神経・血液)"]
    D --> J["持続する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='germinal center'>胚中心</span>様リンパ球増殖"]
    J --> K["B細胞リンパ腫(主に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='MALT-type marginal zone lymphoma'>MALT型辺縁帯リンパ腫</span>)のリスク上昇"]

💡 病理組織学的には、腺組織への強いリンパ球・形質細胞浸潤がしばしばを形成するほど密になる。この持続的なB細胞増殖の場そのものが、後年のMALTリンパ腫になると理解すると、なぜ症候群でリンパ腫が重要かが繋がる。

⚠️ ・唾液腺の病理所見(やNFTのような単一の確定的所見)は存在しない。という定量的な組織学的指標を、他の臨床・と組み合わせて判断する。

臨床像

腺性症状(sicca症状)

部位 主な所見
・灼熱感・充血・
口腔 乾いた食物の、飲水の必要性増加、の多発、、耳下腺腫脹
その他の 低下)、皮膚・鼻腔・腟の乾燥、嗄声

腺外病変(全身性)

系統 主な所見
皮膚・血管 Raynaud現象、、下肢の紫斑(関連の血管炎)
関節 対称性の関節痛・
、気道病変(気管支炎)
(I型)、まれに
神経 末梢神経障害(感覚優位が多い)、まれに中枢神経病変
血液・免疫

⭐ 持続する耳下腺の硬い腫脹、リンパ節腫大、紫斑、、低C4、は、B細胞リンパ腫を示唆するであり、通常のsicca症状の悪化と区別して精査する。

一次性シェーグレンとオーバーラップ症候群の鑑別

項目 一次性症候群 SLEオーバーラップ(二次性) SScオーバーラップ(二次性)
中核病態 への直接的な が主体 血管障害+線維芽細胞活性化による線維化
重度になりやすく、しばしば初発症状 相対的に軽度なことが多い 相対的に軽度なことが多い
代表的自己抗体 抗SSA/Ro・抗SSB/La 抗dsDNA・抗Sm(+抗SSA/SSBの併存も多い) ・抗(Scl-70)・抗
特徴的な臓器病変 RTA、MALTリンパ腫 増殖性、神経精神ループス、 ・肺高血圧、
血管所見 Raynaud現象は比較的少ない Raynaud現象がありうる Raynaud現象がほぼ必発、初発症状になりやすい

💡 抗SSA/Ro・は一次性症候群に特異的ではなく、SLEでも高頻度に陽性となる。したがって抗体陽性のみで一次性と診断せず、の重症度・組織所見・他疾患の分類基準充足状況を総合して判断する。抗SSA/SSB抗体陽性妊娠では、児の房室ブロックなどのリスクを評価する点はと共通する。

診断

または臨床的疑いのある患者で、薬剤性(など)・脱水・糖尿病・放射線治療歴などの二次的な乾燥原因をまず除外したうえで、自己抗体とな乾燥検査を組み合わせる。

2016 ACR/EULAR分類基準

合計4点以上を分類の目安とする(研究・向けの分類基準であり、臨床診断そのものを置き換えるものではない)。

項目 点数
陽性 3
1以上/4 mm² 3
5以上(または4以上) 1
5 mm/5分以下 1
0.1 mL/分以下 1

⚠️ 単独陽性、ANA単独陽性、単独陽性はこの分類基準の加点項目ではない。歴、活動性C型肝炎、HIV感染、などのを除外してから適用する。

  • を下眼瞼に挟み、5分間の湿潤長を測定する。分泌量の評価。
  • ・リサミングリーンなどで角膜・の上皮障害を染色し、点数化する。
  • は4 mm²あたりの導管周囲リンパ球(フォーカス)の数で評価し、1以上を陽性とする。
flowchart TD
    A["持続する眼・口腔の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sicca symptoms'>乾燥症状</span>"] --> B["薬剤性・脱水・糖尿病など二次的原因を除外"]
    B --> C["抗SSA/Ro・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-SSB/La antibody'>抗SSB/La抗体</span>を測定"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Schirmer test'>Schirmer試験</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ocular staining score'>眼表面染色スコア</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='objective'>客観的</span>乾燥を評価"]
    D --> E{"2016 ACR/EULAR基準で十分な根拠があるか"}
    E -->|"いいえ"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='labial minor salivary gland biopsy'>口唇小唾液腺生検</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='focus score'>フォーカススコア</span>を確認"]
    E -->|"はい"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='extraglandular manifestation'>腺外病変</span>とリンパ腫リスクを評価"]
    F --> G
    G --> H["一次性か二次性(SLE・SSc・RA合併)かを判定"]
    H --> I["症状・臓器病変に応じた治療へ"]

治療

乾燥症状(sicca症状)の管理

症状 主な対応
眼乾燥 を含まないを第一選択とし、不十分なら眼科管理下で局所などの抗炎症点眼を追加する
頻回の飲水、無糖ガム・唾液代替製剤、歯科での予防を基本とし、残存唾液腺機能があればなどのを検討する
その他の乾燥 保湿剤、への潤滑剤、・加湿など部位別に対症的に対応する

⚠️ を持つ薬剤(一部の抗うつ薬・抗ヒスタミン薬など)や利尿薬はを悪化させうるため、可能な範囲で見直す。喫煙も乾燥を悪化させる因子である。

全身症状・腺外病変の治療

  • :関節痛・筋痛・全身感などの全身症状に対し、と同様に広く用いられる。ただしそのものへの効果は限定的とされ、あくまで全身・状が適応の中心である。長期使用では網膜毒性の定期眼科スクリーニングを行う。
  • :関節炎やなど、限られた病態のに短期間用いる。
  • 重症・難治性の:肺病変、腎病変、神経病変、など、臓器・生命を脅かす病変や通常治療に抵抗する例では、に加えリツキシマブなどの生物学的製剤を専門的に検討する。特に関連の血管炎はリツキシマブがよい適応となりうる病態として知られる。

リンパ腫サーベイランス

症候群では非ホジキンB細胞リンパ腫(大半が)の生涯リスクが一般人口より明らかに高い。持続する耳下腺の硬い腫脹、リンパ節腫大、紫斑、(特に低C4)、といったがあれば、通常の経過観察を超えて画像・組織評価を含む精査を行う。定期診療の中でこれらの所見を継続的に確認することが、早期発見につながる。

まとめ

  • 症候群は・唾液腺へのが本態で、単独発症の一次性と、SLE・SSc・関節リウマチに合併する二次性に分かれる。
  • などのsicca症状だが、関節・肺・腎(RTA)・神経・血液系にも及ぶ全身性疾患である。
  • 2016 は、し、合計4点以上を分類の目安とする。
  • 抗SSA/SSB抗体はSLEにも高頻度にみられるため単独では一次性と診断できず、SLE・SScオーバーラップとの鑑別にはの重症度や特徴的自己抗体・臓器病変の型を併せて判断する。
  • 治療は・唾液などの対症的乾燥管理を土台に、全身症状には、重症・難治性のにはリツキシマブなどの生物学的製剤を用いる。
  • 非ホジキンB細胞リンパ腫(主にMALT型)のリスク上昇を踏まえ、耳下腺腫脹・リンパ節腫大・などのを継続的に監視する。