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Drug Atlas · B29 Immunosuppressants / 免疫抑制薬 · 必修

ヒドロキシクロロキン

hydroxychloroquine

分類
Immunosuppressants / 免疫抑制薬Antiparasitics / 抗寄生虫薬
商品名(日本)
プラケニル
商品名(EU)
Plaquenil
科目
Pharmacology
トピック
B29: Immunopharmacology II (Inhibitors of cytokine gene expression, 5-ASA derivatives)
承認適応
全身性エリテマトーデス関節リウマチシェーグレン症候群混合性結合組織病ポルフィリン症マラリア
禁忌疾患
尋常性乾癬
副作用
視力低下皮疹悪心筋力低下
対象疾患
円板状エリテマトーデス前頭部線維化性脱毛症多形日光疹中心遠心性瘢痕性脱毛症
原因となる疾患
苔癬型薬疹低血糖(非糖尿病性)

🧠 全体像を理解する軸は「姉妹薬との網膜安全性の差」である。もとは薬として開発された同系統の4-アミノキノリン系薬だが、より網膜へのが穏やかなため、自己免疫では現在ほぼを置き換え、SLEでは禁忌がなければ全患者に投与すべき基本薬(土台)という特別な位置づけを持つ。マラリア治療薬としての適応も添付文書上は残るが、耐性株には無効で、臨床の主戦場はすでに免疫調節へ移っている。

薬効群の中での位置づけ

グループ 代表薬 使い分けの軸
4-アミノキノリン系(自己免疫疾患の基本薬) 網膜毒性が相対的に軽く、SLE・RA・症候群で長期投与の土台になる
4-アミノキノリン系(マラリア主体) 自己免疫疾患ではに置き換わっている。マラリアでは感受性株に第一選択になりうる
SLEのステロイドスペアリング薬 メトトレキサート して疾患活動性が残る場合に追加する
SLEの生物学的製剤 リツキシマブ +標準治療で不十分な例にさらに追加する

「SLEでは禁忌がなければ全員に」という原則が、他の・生物学的製剤の位置づけを決める土台になる。 他剤はあくまで追加するステロイドスペアリング戦略の一部であり、単独でを置き換えるものではない1

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hydroxychloroquine, HCQ'>ヒドロキシクロロキン</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='weak bases'>弱塩基</span>として<br>リソソーム・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endosome'>エンドソーム</span>内(酸性区画)に蓄積"] --> B["区画内で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='protonation'>プロトン化</span>され<br>膜を通過できず閉じ込められる<br>(イオントラップ)"]
    B --> C["リソソームpH上昇により<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='autoantigen'>自己抗原</span>提示・TLR7/9シグナルが減弱"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dendritic cell'>樹状細胞</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='type I interferon'>I型インターフェロン</span>産生が抑制される"]
    D --> E["自己反応性T・B細胞の活性化が鈍り<br>慢性炎症が鎮静化"]
    B --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='erythrocytic stage'>赤内型</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Plasmodium'>マラリア原虫</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='digestive vacuole'>消化食胞</span>でも<br>同じ機序で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='heme polymerization'>ヘム重合</span>が阻害される"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='free heme'>遊離ヘム</span>が蓄積し虫体死滅<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chloroquine'>クロロキン</span>感受性株のみ)"]

💡 イオントラップの原理は姉妹薬と共通するが、学習の軸としては自己免疫側の経路(TLR7/9・抑制)が主役になる。 SLEの病態はの処理不全から過剰へとつながる経路が中心であり、はこの経路の上流でリソソームpHを操作して介入する。マラリア側の機序はと同一で、耐性株には無効という限界も共通する。

薬物動態

項目 値・特徴
半減期 全血で約40日と極めて長い2
分布 組織移行が広く、メラニン含有組織(を含む)に高濃度で蓄積
代謝 主にCYP2C8・CYP3A4・CYP2D6で代謝され、desethylhydroxychloroquineを生じる2
排泄 一部は未変化体のままされる

半減期が極端に長いため、定常状態への到達も後の消失も数か月単位でかかる。 への強い親和性が、有効性の持続とリスクの両方の根拠になる。

適応

領域 使いどころ
SLEでは禁忌がなければ全患者の基本薬関節リウマチ症候群の関節痛・全身症状、の関節炎
が適さない例に低用量・低頻度で使用)
感染症 感受性地域のマラリアの治療・予防(実臨床での使用頻度は低い)2

用法・用量

自己免疫疾患:禁忌がなければ実体重5 mg/kg/日を目標用量として長期投与し、定期的な眼科フォローを組み込む1の観点からは実体重5.0 mg/kg/日以下に抑えることが用量閾値とされており3、両者を合わせて「5 mg/kg/日を超えない範囲で個別化する」と理解する。マラリア:成人の急性期治療では初回800 mgに続き6・24・48時間後に各400 mgを追加する短期レジメンを用いる2量の通常投与では肝障害・を来しうるため、通常より少ない低用量・低頻度で投与する。実際の用量は適応・体重・腎機能で大きく変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:4-アミノキノリン化合物に対する過敏症2、既存の・4-アミノキノリンによる視野異常の既往
  • ⚠️ 長期投与では定期的な眼科検査が必須。 用量閾値は実体重5 mg/kg/日以下で、基本的なののち5年経過してからは・SD-OCTによる年1回のスクリーニングを行う3
  • 心筋症・QT延長:心筋症による死亡例が報告されており、心疾患・徐脈・電解質異常のある患者では使用を避ける2
  • 重篤な低血糖:血糖値のモニタリングと患者教育が推奨される2
  • G6PD欠損:溶血のリスクがあるため注意2
  • :重篤な増悪・膿疱化を誘発しうるため慎重投与

副作用

頻度 内容
高頻度 悪心などの消化器症状、皮疹
注意 (長期投与)、筋力低下(骨格筋・心筋の
重篤・まれ 重篤な低血糖、心筋症・QT延長、G6PD欠損での溶血

まとめ

  • と同じ4-アミノキノリン系だが、網膜毒性が相対的に軽いため自己免疫ではに置き換わり、SLEでは禁忌がなければ全患者に投与する基本薬として位置づけられる。
  • 機序はリソソーム・のpH上昇によるイオントラップで、自己免疫疾患ではTLR7/9シグナル・産生の抑制、マラリアではでのとして働く(感受性株のみ)。
  • 半減期が数十日と非常に長く、への蓄積が長期投与でのリスクを生む——実体重5 mg/kg/日以下への用量抑制と定期眼科スクリーニングが必須。
  • マラリア・にも適応が残るが、現在の主用途は自己免疫疾患の免疫調節薬である。
  • 心筋症・QT延長、重篤な低血糖、G6PD欠損での溶血にも注意し、では増悪リスクから慎重投与とする。

出典

  1. 1.EULAR recommendations for the management of systemic lupus erythematosus: 2023 update(European Alliance of Associations for Rheumatology(Fanouriakis et al., Ann Rheum Dis)・2023)SLEでは禁忌がなければ全患者にヒドロキシクロロキンを推奨し、用量は実体重5 mg/kg/日を目標用量(target dose)とし、再燃リスクと網膜毒性リスクを勘案して個別化するとしていることを確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.Recommendations on Screening for Chloroquine and Hydroxychloroquine Retinopathy (2016 Revision)(American Academy of Ophthalmology(Marmor et al., Ophthalmology)・2016)ヒドロキシクロロキンの網膜症リスクは実体重5.0 mg/kg/日以下への用量抑制で低減でき、基本的な眼底検査ののち5年経過してから自動視野検査・SD-OCTによる年1回のスクリーニングを行うことを推奨することを確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.PLAQUENIL (hydroxychloroquine sulfate) tablets, for oral use — Prescribing Information(FDA(Advanz Pharma (US) Corp.、Revised 10/2024)・2024)1955年に米国で初回承認され、成人の急性マラリア治療では初回800 mgに続き6・24・48時間後に各400 mgを投与する短期レジメン(総量2000 mg)を用いること、重篤な低血糖・心筋症/QT延長・G6PD欠損での溶血に関する警告があること、全血中半減期は約40日でCYP2C8・3A4・2D6(およびFMO-1・MAO-A)により主にdesethylhydroxychloroquineへ代謝されること、添付文書上の禁忌は4-アミノキノリン化合物に対する過敏症であることを確認した閲覧 2026-08-10