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Imaging findings · Published

光干渉断層計

Optical coherence tomography

別名
光干渉断層撮影光干渉断層法optical coherence tomography
臓器系
眼科
科目
Medical BiophysicsTranslational Medicine and PathophysiologyNeurology
トピック
生物物理学 11.06:Laserの応用病態生理学 1-33:全身性エリテマトーデス・全身性硬化症・シェーグレン症候群神経内科 G2-01:視力低下の神経学的原因と視野欠損
関連疾患
MEK阻害薬関連漿液性網膜症中心性漿液性脈絡網膜症中毒性・栄養障害性視神経症低眼圧黄斑症毛様体解離網膜色素線条

🧠 全体像:は超音波の光学版で、返ってくる光のエコーの時間遅れと強度から断層像を作る1。が「網膜の表面の色」を見るのに対し、この装置は「どの層に何があるか」を見る。⭐ 臨床的な意味は所見を細かく記述できることではなく、造影剤も侵襲も要らないので何度でも繰り返せることにある——を今日打つか1か月待つか、緑内障が進行しているか、という判断を同じ患者で反復して下せるようになったことが、この装置が眼科の標準になった理由である。

何を見ているか

超音波は音のエコーが返る時間を電子回路で直接測れるが、光は速すぎて同じことができない。そこで低干渉を使い、参照光路との干渉が成立する深さだけを取り出す。得られるものは3段階に積み上がる。

単位 内容
Aスキャン 1点における深さ方向の反射プロファイル(1本の柱)
Aスキャンを横に並べた2次元の断面像。臨床で「OCT画像」と呼ばれるもの
ボリューム を面状に集めた3次元データ。網膜厚マップやセグメンテーション解析はここから作る

💡 眼と相性がよい理由は透光体である。角膜・・が近赤外光を通すので、体表から数mmしか届かない光でも網膜まで到達できる。初期のヒト生体は波長840 nm・軸方向分解能15 μm(組織中)で得られており1、この「十数μm」という桁が超音波との決定的な差である。

⚠️ 同じ略語が眼科以外でも使われる。 冠動脈内腔から撮るの一方式も同じ原理で、本ノートが扱う眼科の装置とは適応も機種も別である。

世代の違い

⚠️ 軸方向分解能と撮像速度は世代・機種で大きく違う。 数値を引用するときは、どの世代のどの装置かをセットで書く。

世代 深さ情報の取り方 速度の目安
時間領域(TD-OCT) 参照鏡を機械的に動かして深さを1点ずつする 第3世代のStratus OCT(2002年導入)で毎秒400 Aスキャン1
スペクトラルドメイン(SD-OCT) で干渉スペクトルを取り、全深さのエコーを実質的に同時に測る 眼科装置の現在の標準。毎秒25,000〜80,000 Aスキャン1
掃引光源(SS-OCT) 波長を高速に掃引する光源を使い、検出器側で同様に全深さを得る 機で毎秒10万Aスキャン超1

⭐ 時間領域からスペクトラルドメインへの移行は、速さより先に感度の問題だった。 2003年に3つの研究グループが独立に、スペクトラルドメイン検出が時間領域検出に対して強い感度上の優位をもつことを示した。理由は、光のエコーを実質的に同時に測定している点にある1。最初の承認スペクトラルドメイン機は2006年にOptovue社から導入された1。

💡 掃引光源機は長波長(1050 nm付近)を使うため散乱の影響が小さく、より深い・まで届きやすい。のように全体の形を見たい場面で意味をもつ。研究段階では波長1050 nmで軸方向分解能約5〜6 μmの網膜撮像が毎秒10万・20万Aスキャンで示されている1。

層の呼び名

網膜の層構造そのものは組織学 17.1:感覚器:眼が扱う。ここで問題になるのは、組織像の層と、断層像に見える反射の帯が一対一に対応しないことである。

⚠️ 文献上の各層の定義は頻繁に変わり、網膜の解剖・組織像としばしば一致していなかった。2014年の国際パネル(IN•OCT)はこれを整理し、特定の反射構造だという確たる証拠は無いが、解剖学的な領域には対応すると思われる像に対して「zone(帯)」という語を導入した——myoid zone・ellipsoid zone・interdigitation zoneがこれにあたる2。

⭐ 実務上の要点は次の一点である。かつて「IS/OS junction(・接合部)」と呼ばれていた高反射の帯は、現在はellipsoid zoneと呼ぶ。この帯のが保たれているかどうかが、が生き残っているかの上の手がかりとして繰り返し使われる。

液体を読むときは、溜まっている場所で分けるのが基本になる。

場所 典型的な像 代表的な背景
網膜内 境界明瞭な低反射の → ・・術後・ぶどう膜炎
網膜下 とのあいだの低反射腔 滲出型・の
が状に持ち上がる() ・

いつ行うか

領域 見るもの 次の行動
黄斑(疾患) ・・の有無と量 を投与するか、間隔を延ばすかを決める
黄斑(疾患) 黄斑円孔・・の形態 手術適応と、どの膜を剥がすかの計画
急性期のの肥厚と 発症時刻の推定と全身のへ進む
乳頭周囲の(RNFL)厚、黄斑の複合体(GCC)厚 緑内障の進行判定。では腫脹のを追う
と層構造、隅角、深度 角膜疾患の評価、屈折手術・の計画
の菲薄化とellipsoid zoneの 原因薬の継続可否を処方医と相談する

薬剤性網膜症のスクリーニングは版が動く

のスクリーニングは、この装置の役割が最も明文化されている場面である。米国眼科学会の2025年改訂では、第一のはで、広角のを併用する。と多局所は二次的なという位置づけになった3。

⚠️⚠️ 東アジア系では黄斑だけを撮ると見落とす。 ヨーロッパ系の患者の眼の多くは傍型の毒性を示すのに対し、東アジア系の患者の眼は中心周囲型を呈する傾向がある。例外も多いため、スクリーニングでは両方のパターンを探す3。⭐ 24-2Cのような新しい視野プログラムは、傍と中心周囲を同時にスクリーニングできる3。

投与開始後まもなく眼底・・によるベースライン検査を行い、投与中は年1回のスクリーニングを推奨する。ただし有意な危険因子が無ければ最初の5年は延期してよい3。用量と期間のほか、腎疾患の併存・の使用・高齢での投与開始が危険因子である3。

💡 2016年版と読み比べると、この10年で何が動いたかが見える。 2016年版の第一のはとの組み合わせで、はのな裏づけ、は障害の分布を示すもの、という位置づけだった。開始時期は適切な用量で主要な危険因子の無い患者なら5年経過後から年1回である4。つまり主役がから画像検査へ移り、併用相手がからへ替わったのが改訂の骨格である。

⚠️ 一方で変わっていないものもある。あたり5.0 mg/kg以下という用量の上限(⭐ 2025年改訂も「変更なし」と明記し、では1日400 mg未満に抑えるとしている)と、腎疾患の併存・の使用という危険因子は、2016年版から一貫している43。⚠️ ただし「黄斑の外も見る」の言い方は変わった。 2016年版は「アジア人ではこれらの検査を中心の黄斑より外側まで及ぼすべき」というアジア人に限った指示だったが4、2025年改訂は「例外が多いのでスクリーニングでは両方のパターンを探す」という全患者への指示に組み替えている3。2016年版は推奨用量でのを5年まで1%未満・10年まで2%未満とし、20年後には20%近くに上昇するとしていた——ただし20年を経ても毒性の無い患者が翌年に発症する確率は4%にとどまる4。

⚠️ 早期に見つける意味は、止める判断を早くできることにある。 軽度のは中止後に進行しにくいが、高度のは中止後も数年にわたって悪化しうる3。2016年版もは不可逆で治療法が無いとしていた4。⚠️ 新しい画像技術と人工知能解析には実験的な進歩があるが、一般使用に向けて検証されたもの・広く利用できるものは現時点では無い3。

血流を見る派生型(OCTアンギオグラフィ)

同じ場所を短い間隔で繰り返し撮り、時間的に変化する信号だけを抜き出すと血流が描出できる。造影剤を使わず、網膜との血管網を層ごとに分けて見られる。

⚠️ の置き換えではない。 造影検査が見ているのは色素の漏出という機能的な現象で、この派生型が見ているのは動いている血球である。血管があることと、その血管が漏れていることは別の情報なので、活動性の判断を血流像だけに預けない。

解釈を乱す要因

  • :層の自動境界抽出は、大きな・・出血があると外れる。厚みの数値が急に変わったときは、まず断層像そのものに戻っての引かれ方を見る。
  • の:やがあると信号強度が落ち、層が薄く出たり途切れて見えたりする。装置が出す信号強度の指標を確認せずに厚みだけを比べない。
  • 不良と眼球運動:視力の悪い眼ほどが保てず、断層像が歪む。同じ部位を測っている保証が無いまま経過を追うと、実際にはない変化が出る。
  • 正常値データベースの母集団:厚みの色分けは装置内蔵の正常値との比較であり、その母集団に含まれない眼——強い、高齢、小さい乳頭——では偽陽性が出やすい。⚠️ 眼軸の伸びた眼ではが薄く表示され、緑内障が無いのに異常と読まれることがある。
  • 装置間で厚みの絶対値が違う:境界の定義が機種ごとに異なるため、経過は同じ装置で追う。機種を替えたら、そこで基準を取り直す。
  • 厚みだけを追わない:牽引が外れた直後や網膜が萎縮に向かうときは、が悪化していても厚みは減る。数値と断層像を必ず一組で読む。

評価の進め方

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='decreased visual acuity'>視力低下</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='metamorphopsia'>変視症</span>などで<br>黄斑病変を疑う"] --> B["断層像を撮る"]
    B --> C{"液体貯留があるか"}
    C -- "あり" --> D{"どこに溜まっているか"}
    D -- "網膜内の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cystic space'>嚢胞腔</span>" --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='macular edema'>黄斑浮腫</span>として<br>原疾患を検索する"]
    D -- "網膜下" --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neovascularization (new vessels)'>新生血管</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='serous detachment'>漿液性剥離</span>を疑い<br>造影検査で漏出を確かめる"]
    D -- "<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pigment epithelium'>色素上皮</span>下" --> F
    C -- "なし" --> G{"層の構造が壊れているか"}
    G -- "全層の欠損" --> H["黄斑円孔として<br>手術適応を検討する"]
    G -- "層間の分離・膜状構造" --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='traction'>牽引性</span>疾患として<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='vitreous body'>硝子体</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='internal limiting membrane'>内境界膜</span>の関与を評価する"]
    G -- "<span class='jp-term jp-term-diagram' title='outer layer'>外層</span>の菲薄化・帯の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rupture (tear)'>断裂</span>" --> J["変性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='drug-induced retinopathy'>薬剤性網膜症</span>を疑い<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='fundus autofluorescence'>眼底自発蛍光</span>と病歴を確認する"]
    E --> K["治療後は同じ装置で<br>同じ部位を追跡する"]
    F --> K
    H --> K
    I --> K
    J --> K

まとめ

  • は光のエコーの時間遅れと強度から断層像を作る、超音波の光学版である1。透光体を通せる眼と相性がよく、初期の生体で既に軸方向分解能15 μmに達していた1。
  • 世代は時間領域→スペクトラルドメイン→掃引光源と進んだ。移行の決め手は速さ以上に感度であり、スペクトラルドメインは光のエコーを実質的に同時に測ることで優位に立った1。⚠️ 分解能・速度は機種依存なので、数値は装置名とセットで扱う。
  • 断層像の帯は組織像の層と一対一ではない。IN•OCTパネルは確証を欠く像を「zone」と呼ぶことにし、myoid・ellipsoid・interdigitationの各帯を定めた2。ellipsoid zoneのがの生存の手がかりになる。
  • 液体は「網膜内・網膜下・下」のどこに溜まっているかで読み分け、を打つか待つかの判断に直結させる。
  • のスクリーニングでは、2025年改訂でが第一の検査になり、を併用する3。⚠️ 東アジア系は中心周囲型を取りやすいので、黄斑だけを撮らない3。
  • 数値を信じる前に断層像へ戻る。、による信号低下、正常値データベースの母集団のずれ、装置間差が、いずれも「異常な数値」を作る。

出典

  1. 1.The Development, Commercialization, and Impact of Optical Coherence Tomography(Investigative Ophthalmology & Visual Science・2016)Europe PMC の全文(PMC4968928)を取得して確認した。光干渉断層計が光のエコーの時間遅れと強度から画像を作る超音波の光学版としてしばしば説明されること、最初の光干渉断層計画像がDavid Huangらにより1991年にScience誌で示されたこと、初期のヒト生体網膜像が波長840 nm・軸方向分解能15 μm(組織中)で得られたこと、第3世代の時間領域機Stratus OCTが2002年に導入され毎秒400 Aスキャンであったこと、2003年に3つの研究グループが独立にスペクトラルドメイン検出の感度上の優位を示しその理由が光のエコーを実質的に同時に測定する点にあると述べていること、最初のFDA承認スペクトラルドメイン機が2006年にOptovue社から導入されたこと、スペクトラルドメイン機が現在の眼科装置の標準で撮像速度が毎秒25,000〜80,000 Aスキャンの範囲にあること、市販の掃引光源機が毎秒10万Aスキャンを超えて動作すること、研究段階では波長1050 nmで軸方向分解能約5〜6 μmの網膜撮像が毎秒10万・20万Aスキャンで示されたことを確認した閲覧 2026-09-04
  2. 2.Proposed lexicon for anatomic landmarks in normal posterior segment spectral-domain optical coherence tomography: the IN•OCT consensus(Ophthalmology(International Nomenclature for Optical Coherence Tomography Panel)・2014)正常眼のスペクトラルドメイン光干渉断層計像に見える網膜・脈絡膜の層と帯の呼称について国際的なパネルが合意名称を定めたこと、文献上の各層の定義が頻繁に変わり網膜の解剖・組織像としばしば一致していなかったこと、特定の反射構造であるという確たる証拠を欠くが解剖学的な領域に対応すると思われる像に対して「zone」という語を導入したこと、その帯にmyoid zone・ellipsoid zone・interdigitation zoneが含まれることを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得閲覧 2026-09-04
  3. 3.Special AAO Report: Recommendations on Screening for Hydroxychloroquine Retinopathy (2025 Revision)(American Academy of Ophthalmology(Marmor MF, Ahn SJ, Ehlers JP, Melles RB, Mieler WF, Sarraf D, Yusuf IH/Ophthalmology 2026;133:439-450)・2026)2016年の勧告から10年を経た改訂として、第一のスクリーニング検査を光干渉断層計とし広角眼底自発蛍光を併用すること、視野検査と多局所網膜電図は二次的な確認検査であること、24-2Cのような新しい視野プログラムが傍中心窩と中心周囲の両領域を同時にスクリーニングできること、ヨーロッパ系の患者の眼の多くが傍中心窩型の毒性を示す一方で東アジア系の患者の眼は中心周囲型を呈する傾向があり例外も多いためスクリーニングでは両方のパターンを探すべきであること、投与開始後まもなく眼底・光干渉断層計・眼底自発蛍光を含むベースライン検査を行うこと、投与中は光干渉断層計と眼底自発蛍光による年1回のスクリーニングを推奨するが有意な危険因子が無ければ最初の5年は延期してよいこと、推奨1日用量が実体重あたり5.0 mg/kg以下で変更されておらず高度肥満の患者では1日400 mg未満に抑えるとされていること("The recommended daily dosage remains unchanged at ≤5.0 mg/day/kg real weight. Keep under 400 mg/day for severely obese patients.")、用量と期間のほかに腎疾患の併存・タモキシフェンの使用・高齢での投与開始が危険因子であること、軽度の網膜症は中止後に進行しにくいが高度の網膜症は数年にわたり悪化しうること、新しい画像技術と人工知能解析には実験的な進歩があるものの一般使用に向けて検証されたものや広く利用できるものは現時点で無いことを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得閲覧 2026-09-04
  4. 4.Recommendations on Screening for Chloroquine and Hydroxychloroquine Retinopathy (2016 Revision)(American Academy of Ophthalmology(Marmor et al., Ophthalmology)・2016)2016年版が第一のスクリーニング検査を自動視野検査とスペクトラルドメイン光干渉断層計の組み合わせとし、多局所網膜電図は視野検査の客観的な裏づけを与えるもの、眼底自発蛍光は障害の分布を示すものと位置づけていたこと、アジア人ではこれらの検査を中心の黄斑より外側まで及ぼすべきとしていたこと、適切な用量で主要な危険因子の無い患者では5年経過後から年1回のスクリーニングを開始するとしていたこと、多くの眼では毒性の首座が傍中心窩であるがアジア人の患者ではしばしば黄斑外のパターンの障害を示すとしていたこと、推奨1日用量が実体重あたり5.0 mg/kg以下であったこと、推奨用量での毒性リスクが5年までは1%未満・10年までは2%未満で20年後には20%近くに上昇するが20年を経ても毒性の無い患者が翌年に発症する確率は4%にとどまるとしていたこと、網膜症が不可逆で現時点で治療法が無いとしていたことを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得閲覧 2026-09-04