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Disease Atlas · 眼科 · 外傷

毛様体解離

Cyclodialysis

別名
毛様体解離裂孔cyclodialysis cleft
臓器系
眼科
科目
Microscopic Anatomy and Embryology (Microscopic Anatomy)
トピック
組織学 17.1:感覚器:眼
鑑別疾患
隅角後退緑内障
合併症
白内障低眼圧黄斑症
関連疾患
外傷性虹彩括約筋断裂
治療薬
アトロピン
症状
前房出血視力低下
検査値
眼圧
画像所見
前眼部OCT

🧠 全体像:は、(まれにの合併症)でがから引き剥がされ、との間に異常な交通路ができる病態である。⭐ 同じが作るとは似て非なるものである——はの筋線維どうしの間が裂けるだけで新しい交通路は作らず、遠隔期にが上がる緑内障を来す。一方、はが組織の付着そのものから外れての逃げ道を作るため、⚠️ はむしろ下がり、重度のに陥る。同じから正反対の異常が生まれる——この対比を軸に理解する。

病態——房水の逃げ道ができ、作る力も落ちる

裂孔は、縦走がからすることで生じ、との間に本来存在しない交通を作る1。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blunt ocular trauma'>鈍的眼外傷</span>(まれに<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraocular surgery'>内眼手術</span>)"] --> B["縦走<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ciliary muscle fibers'>毛様体筋線維</span>が<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='scleral spur'>強膜岬</span>から<span class='jp-term jp-term-diagram' title='separation (dehiscence)'>離開</span>"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior chamber'>前房</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='suprachoroidal space'>脈絡膜上腔</span>の間に<br>異常な交通路が生じる"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='aqueous humor'>房水</span>がぶどう膜<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sclera'>強膜</span>路を介して過剰に流出"]
    B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ciliary body'>毛様体</span>への血流が減少"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='aqueous humor production'>房水産生</span>そのものが低下"]
    D --> G["慢性の重度<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypotony'>低眼圧</span>"]
    F --> G
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior chamber'>前房</span>の浅化・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cataract'>白内障</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='choroid'>脈絡膜</span>滲出・<br>網膜<span class='jp-term jp-term-diagram' title='choroidal folds'>脈絡膜皺襞</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypotony maculopathy'>低眼圧黄斑症</span>・視力喪失"]

⚠️ 流出増加と産生低下という2つの力が同時に働くため、は自然には改善しにくい。 の逃げ道が増えるだけでなく、それを作るはずの自身への血流も落ちるためである1。

が続くと、の浅化・・滲出・網膜・を経て永続的な視力喪失に至りうる1。

原因

が代表的な原因で、前房出血やなど、と同じでできる他の損傷を伴うことが多い。まれに・二次挿入・隅角切開術・切開術・などのの合併症としても生じる。

診断

⚠️ が同定のだが、やで観察が難しいことがある。 その場合はのUBM()で隅角の構造を描出する。術中に診断がつかない場合は、をで満たしてテーブル上でを行う方法もある1。OCTも隅角の非侵襲的な評価に用いられる。

治療——裂隙の大きさで段階を分ける

治療は裂隙の大きさに応じた段階的アプローチをとる1。

裂隙の大きさ 治療 成績
1〜1.5時計時間未満(小) まず1%点眼を1日2回・6週間試みる —
同程度(小) 療法 ある研究では14眼中5眼(36%)で成功
平均2.5時計時間(大)・不成功例 直接固定術(二重板状弁下での縫合閉鎖) 全体で17眼中16眼(94%)が解決
その他 、併用、レーザー 代替技術として報告あり

⚠️ 裂隙を閉鎖すると、が急に跳ね上がることがある。 直接固定術を受けた12眼中10眼(84%)で術後早期のが生じた。治療眼全体(成功例を含む)でみると、術後7日以内に最大70mmHgに達する疼痛を伴う可逆性のが13眼に生じている。ただし全例が7日目までに追加手術なく薬物療法でコントロールできている1。

💡 これは「逃げ道を塞いだ」と理解できる。 の異常な流出路が閉じても、の機能や隅角の機能がすぐには元通りにならないため、一時的にが過剰にたまりやすい状態になる。

平均追跡期間43.7か月の報告では、術前に6/12以上だったのは24%にとどまったが、治療後には71%まで改善し、二次緑内障の発生は認めなかった1。

隅角後退との対比

⭐ 同じが、する場所の違いだけで正反対の異常を生む。

する場所 がから の線維との間が2
新しい交通路 との間にできる できない(内部の裂隙にとどまる)
への影響 がぶどう膜路へ過剰に流出し 遠隔期にが線維化し(緑内障)
受傷直後からが持続しうる 受傷から数年〜数十年かけて緑内障を発症

⚠️ 「が無いこと」は、閉鎖性後の緑内障発症と有意に関連する所見として報告されている2。これは、があるとぶどう膜路からのが増えるため、によるの障害があってもが上がりにくくなる——を作る病態が、同時にを防ぐ側に働くことを示唆する。同じ外傷を受けた眼を診るときは、とのどちらの経過をたどるかを、で両方の所見を探しながら追う必要がある。

まとめ

  • は、などで()がからし、との間に異常な交通路ができる病態である。
  • ⭐ の流出増加と自身の血流低下による産生低下が同時に起こり、慢性の重度に陥る。 放置すれば・滲出・を経て視力を失いうる。
  • 診断は(では困難)を第一とし、UBMやを併用する。
  • 治療は裂隙の大きさで段階分けし、小さい裂隙は点眼・、大きい裂隙や難治例は直接固定術(縫合閉鎖)を行う。⚠️ 裂隙が閉鎖すると最大70mmHgに達するが起こりうるが、薬物療法でコントロール可能である。
  • ⭐ とはする場所が違うため、への影響が正反対になる。 は、は遠隔期の(緑内障)を来す。の存在は、むしろの発症を防ぐ方向に働きうる。

出典

  1. 1.Long-term outcomes following the surgical repair of traumatic cyclodialysis clefts(Eye(Nature Publishing Group;Agrawal P, Shah P)・2013)PMC全文(PMC3869508)で確認した。毛様体解離裂孔が縦走毛様体筋線維の強膜岬からの離開により生じ前房と脈絡膜上腔の間に異常な交通を作ること、これにより房水がぶどう膜強膜路を介して過剰に流出すると同時に毛様体への血流減少で房水産生も低下し慢性の重度低眼圧・前房の浅化・白内障・脈絡膜滲出・網膜脈絡膜皺襞・低眼圧黄斑症・視力喪失を来しうること、隅角鏡検査が同定のゴールドスタンダードだが浅前房では困難なことがあり高周波数UBM(超音波生体顕微鏡)で隅角の形態を描出できること、術中は前房を粘弾性物質で満たしてテーブル上で隅角鏡検査を行い診断できること、治療が段階的アプローチをとり1〜1.5時計時間未満の小さな裂隙にはまず1%硫酸アトロピンの点眼を1日2回6週間試み、初期治療として冷凍凝固療法(本研究では14眼中5眼=36%で成功、平均裂隙サイズ0.9±0.4時計時間)を行い、冷凍凝固不成功例や大きな裂隙(平均2.5±1.6時計時間)には二重板状強膜弁下で9-0ナイロン水平マットレス縫合2列を用いる直接毛様体固定術(direct cyclopexy、12眼に施行)を行うこと、他の代替技術として強膜バックリング・ガスタンポナーデを伴う硝子体切除術・アルゴンまたはダイオードレーザーによる毛様体光凝固が挙げられること、直接毛様体固定術を受けた12眼中10眼(84%)で術後早期の眼圧スパイクが生じたこと、治療眼全体(冷凍凝固成功例を含む)では術後7日以内に最大70mmHgに達する疼痛を伴う可逆性の眼圧スパイクが13眼に生じたが全例が7日目までに追加手術なく薬物療法でコントロールできたこと、全体では17眼中16眼(94%)で低眼圧が解決したこと、術前矯正視力6/12以上が4眼(24%)から術後12眼(71%)へ改善したこと、術前平均眼圧6.9±4.0mmHgから術後最終平均眼圧12.2±4.1mmHgへ改善し二次緑内障の発生はなかったこと、直接毛様体固定術に関連する脈絡膜上腔出血・眼内炎などの重篤な合併症はなかったこと、平均追跡期間が43.7±24.6か月(12〜110か月)であったことを確認した。閲覧 2026-09-07
  2. 2.Bilateral Angle Recession and Chronic Post-Traumatic Glaucoma: A Review of the Literature and a Case Report(Life(Iannucci V, Manni P, Alisi L, Mecarelli G, Lambiase A, Bruscolini A)・2023)PMCの全文(PMC10532958)で確認した。隅角後退が毛様体の輪状筋線維と縦走筋線維の間の病的な離開と定義されること(毛様体が強膜岬から離開する毛様体解離とは異なる解剖学的病変であること)、外傷後緑内障の早発・遅発分類の遅発群に毛様体解離裂孔の遅発閉鎖が挙げられていること、閉鎖性眼外傷後の緑内障と有意に関連する眼所見の一つとして「毛様体解離が無いこと」が挙げられており毛様体解離の存在がむしろ房水流出路(ぶどう膜強膜路)を介して眼圧を下げる方向に働くことが示唆されること、前房出血が隅角後退に最も多く合併し前房出血がある場合の隅角後退の有病率は報告により71〜100%から23.5%まで幅があることを確認した。閲覧 2026-09-07