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眼圧

Intraocular pressure

別名
IOP眼圧上昇高眼圧intraocular pressure
臓器系
眼科
科目
Medical PhysiologyPharmacologyIntensive Therapy and Anesthesiology
トピック
生理学 8.4:視覚の生理学薬理学 B27:平滑筋作用薬・子宮収縮作用薬麻酔科学 B-18:オピオイドと筋弛緩薬
関連疾患
Axenfeld-Rieger症候群Fuchs角膜内皮ジストロフィFuchs虹彩異色性虹彩毛様体炎Peters奇形Posner-Schlossman症候群UGH症候群遺残胎児血管系外傷性虹彩括約筋断裂眼球癆眼部帯状疱疹眼窩コンパートメント症候群隅角後退緑内障後部多形性角膜ジストロフィ高眼圧症周辺虹彩前癒着色素散布症候群水疱性角膜症先天性遺伝性角膜内皮ジストロフィ低眼圧黄斑症虹彩角膜内皮症候群虹彩母斑・虹彩黒色腫毛様体解離落屑症候群緑内障頸動脈海綿静脈洞瘻
監視対象薬
アセタゾラミドアプラクロニジンアフリベルセプトチモロールトラボプロストビマトプロストピロカルピンファリシマブブリモニジンブロルシズマブボレチゲン ネパルボベクラタノプロストラニビズマブ
影響する薬剤
シクロペントラートトロピカミド

🧠 全体像:はの産生()と流出(からの主経路、という)が釣り合う点で決まる、ただそれだけの値である。この産生と流出という二本の軸が、そのまま緑内障治療薬のの分類そのものになる——β遮断薬・は産生を抑え、はを促し、・は主経路の流出を促す。一方でこの数値は、視神経がどれだけ傷んでいるかを直接は語らない。正常範囲内でもは進行しうるし、単回の測定値は・角膜の性状・測定時の体位に容易に振り回される。という数字の裏に「今、産生と流出のどちらが破綻しているのか」を読むのがこのノートの仕事である。

何を測っているか

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nonpigmented ciliary epithelium'>毛様体無色素上皮</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='aqueous humor production'>房水産生</span>"] --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior chamber'>前房</span>内の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='aqueous humor'>房水</span>量"]
    B["主流出路:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='trabecular meshwork'>線維柱帯</span>→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='canal of Schlemm'>Schlemm管</span><br>副流出路:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='uveoscleral outflow'>ぶどう膜強膜流出</span>"] --> C
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraocular pressure'>眼圧</span> = 産生と流出の均衡"]
    A -.->|"抑制"| E["β遮断薬・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='carbonic anhydrase inhibitor'>炭酸脱水酵素阻害薬</span>"]
    B -.->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='minor routes'>副経路</span>を促進"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prostaglandin analogue'>プロスタグランジン関連薬</span>"]
    B -.->|"主経路を促進"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Rho kinase inhibitor'>Rhoキナーゼ阻害薬</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pilocarpine'>ピロカルピン</span>"]

はが能動的Na⁺分泌によって産生し、→瞳孔→と流れたのち、大部分は隅角のからへ排出される(主流出路)。残りは(間隙からへ)を通る、非依存性のである。とβ受容体はいずれも産生側の調節に関わり、これが・の標的になる。・などの()はを促進し1、はを収縮させて主経路の流出を促す。産生・流出という二本の軸を覚えれば、緑内障治療薬のクラス分けはほぼ自動的についてくる。

基準値と単位

単位はmmHg。統計学的なは欧米では21mmHgとされることが多いが、日本人を対象とした(多治見研究)では平均14.5〜14.6±2.7mmHgで、平均値±2によるは約20mmHgとなり、日本の眼科診療では20mmHgをとの境界として扱う合理性があるとされる1。値の分布はではなく高値側に歪む。

は、が統計学的なを超えていながら視神経・視野に異常がない状態を指す1。

⭐ 「正常範囲内でも緑内障は進行する」という点が、この検査の限界を最もよく表す。 (NTG)は、が統計的な正常範囲にとどまったままが進行するとして独立して扱われる1。が正常だから視神経は健常、とは言えない。

測定法

測定法 特徴
圧平に要する力からを推定する基準測定法。臨床的に最も精度が高く標準として使われる1
非接触式(空気圧式) 噴射した空気で角膜を圧平し非接触で測定する。手技は簡便だが脈波の影響を受けやすく、複数回の測定を要する1
iCare(式) なしで測定できる携帯型。Goldmannとよく相関するが概してやや高値に出やすく、小児にも使いやすい1
Tono-Pen 座位・臥位いずれでも測定できる携帯型の

測定上の注意

⚠️ は角膜を変形させ、その変形量からをする。 そのため測定値は角膜そのものの、とりわけに系統的に左右される——角膜が厚い眼ではは過大評価され、薄い眼では過小評価される1。(LASIK・PRKなど)で角膜が菲薄化した眼では、術後の値が実際より低く出やすい1。

⚠️ 角膜が薄いこと自体が、にとどまらず緑内障進行の独立した危険因子として挙げられている1。薄い角膜は「実際のを過小評価させる」ことと「進行しやすい素因を持つ」ことの二重の意味を持つ。

その他の変動要因も単回値の解釈を狂わせる。

  • 測定時の圧迫:での、きつい襟や衣類、息止め・()はを介して一過性にを上げる
  • ・瘢痕は圧平・のいずれの方式でも測定値を歪める
  • 体位:臥位では座位よりが上がりやすい
  • :一般に朝方に高くがある。季節変動:冬に高く夏に低い傾向がある1

⭐ これらを踏まえると、単回の測定値だけで病型や重症度を決めてはいけない。 同一時刻・同一体位での再現性、可能ならを追ったカーブで評価する。

眼圧上昇の意味

分類 代表例
流出路の障害 、・・(いずれも緑内障の病型として扱う)
隅角の閉塞 。・・が誘因になりうる
産生・流入の異常 、ぶどう膜炎などの炎症性充血
薬剤性 ステロイド(点眼・吸入・経鼻・全身投与のいずれでも起こりうる)、・による、によるからの、()によるを介した一過性上昇

💡 という概念がある。ステロイドを使う人の一部だけが、の蓄積を介してを起こしやすい体質を持つ。全身性はもちろん、点眼・吸入・経鼻投与のようなでも生じうるため、を問わず新規開始時はを念頭に置く。

💡 によるは、・によるとは機序が異なる。の浮腫とが・を前方へ押し出して隅角を閉塞させるもので、瞳孔はしない。「していないから薬剤性ではない」と除外してはいけない。

⚠️ は視力予後を左右する症である。 片側の高度な眼痛・頭痛に悪心・嘔吐、、を伴い、急激なを来す。嘔吐を伴うため腹部疾患や頭蓋内疾患と誤られやすいが、・・を伴えば症を最優先で疑う。初期治療は(・グリセオール)とを抑える薬剤(・など)の組み合わせで、が虚血でを欠く間は()が無効なばかりかのでを増強しうるため、がある程度下降してから追加する12。その後の根本治療はである1。

⚠️ を疑う外傷ではを測定してはいけない。 圧迫そのものが眼内容の脱出を招きうる。

眼圧低下の意味

分類 代表例
の低下 重症のぶどう膜炎によるの炎症性機能低下、
の漏出 緑内障手術後のからの漏出、外傷・術後の漏出
眼球構造の破綻 、末期の(眼球の萎縮)

⚠️ が持続すると、のひだ形成を介して黄斑に歪みを来すを生じうる。を伴うは原因検索と眼底評価の対象になる。

経時変化とモニタリング

緑内障の管理は単回の値ではなく、に対する推移で評価する。は病期、無治療時、年齢・余命、の進行速度、家族歴などの危険因子を勘案して症例ごとに設定する。

⚠️ 設定のしかたには2通りあるが、同格ではない。 病期に応じた目安(初期19mmHg以下・中期16mmHg以下・後期14mmHg以下)は「提唱されている」値として紹介されるにとどまり、ガイドラインはこの目安が無治療時を考慮していないと明記したうえで、の結果をもとに無治療時からの20%下降・30%下降という下降率で目標を設定することを推奨している(推奨の強さ2=弱く推奨する、エビデンスの強さB=中)1。💡 同じ「16mmHg以下」でも、無治療時が18mmHgだった眼では下降率がわずか11%にしかならず下げ足りないのに対し、30mmHgだった眼では47%も下げることになる。絶対値の目安だけを追うと、この差がまったく見えない。

flowchart TD
    A["治療開始前の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraocular pressure'>眼圧</span>・病期・危険因子を評価"] --> B["症例ごとに<span class='jp-term jp-term-diagram' title='target intraocular pressure'>目標眼圧</span>を設定"]
    B --> C["治療開始"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraocular pressure'>眼圧</span>の推移を追跡"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='perimetry / visual field testing'>視野検査</span>・OCTで進行を確認"]
    E -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='target intraocular pressure'>目標眼圧</span>到達かつ進行なし"| F["同じ治療を継続"]
    E -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='target intraocular pressure'>目標眼圧</span>到達でも進行あり"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='target intraocular pressure'>目標眼圧</span>を下方修正"]
    E -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='target intraocular pressure'>目標眼圧</span>未到達"| H["治療強化"]

⭐ という一つの数値だけでなく、・OCTによる・の変化と合わせて「治療が効いているか」を判定する。に達していても進行があれば目標を下方修正する。

ステロイドを新規に開始するときは、開始前のをベースラインとしてし、現象が顕在化しうる数週間後を目安に再評価する。

⚠️ でもを測る。 ・・のは、注射後60分以内に一過性のが起こると書いている345。⚠️ だけはが「30分以内」と書いており、この時間は薬剤ごとに確かめる6。のは、⭐ コントロール不良の緑内障では特に注意し、が30 mmHg以上のあいだは注射しないとし、いずれの場合もとの灌流の両方を監視して適切に対処するよう求めている356。⚠️ この「30 mmHg」がどの節に置かれているかは4剤で揃っていない。 ・は4.4の緑内障の注意書きの中だけに置き、は4.4に加えて4.2の基準にも挙げ、にいたってはの全文で glaucoma という語が一度も現れず、緑内障を名指しした注意書きそのものが無く、30 mmHg以上は4.2の基準(の30文字以上の低下・・にかかる網膜下出血・前後28日以内のと並ぶ)にだけ現れる4。💡 節が違えば掛かる患者が違う。 4.4の書き方はコントロール不良の緑内障に限定した注意だが、4.2の基準は緑内障の有無を問わず適用される。「30 mmHg」という数字が同じでも、そこから読み取れる運用は同じではない。

💡 急性の機序が違う。 がのの増加で数週かけて上がるのに対し、は注入した容量そのものが眼内に加わることによる即時の上昇である(同文書は=注入量の増加でもが上がるとする)3。

まとめ

  • はの産生()と流出(→が主経路、が)の均衡で決まり、この二軸がそのまま緑内障治療薬の分類になる。
  • 単位はmmHg。日本人ではは約20mmHgとされ(欧米の21mmHgとは異なる)、正常範囲内でもとして進行しうる。
  • 測定はが基準。が測定値を系統的に左右し、薄い角膜は過小評価だけでなく進行の危険因子でもある。日内・季節変動があり単回値で決めない。
  • は流出路の障害・隅角の閉塞・産生流入の異常・薬剤性に分けて考える。は視力予後を左右する症で、嘔吐を伴うためされやすく、を疑う外傷ではを測ってはいけない。
  • は低下・漏出・眼球構造の破綻に分けて考え、に注意する。
  • 管理は単回値でなくに対する推移と視野・OCTの進行で評価する。病期別の絶対値(初期19・中期16・後期14mmHg以下)は無治療時を考慮しない目安にすぎず、ガイドラインが推奨しているのは無治療時からの20〜30%下降という下降率のほうである(弱い推奨・エビデンスの強さ中)。
  • 後の一過性のは、のでだけ「30分以内」、他は「60分以内」。「30 mmHg以上では打たない」の書かれている節も4剤で揃っておらず、のには glaucoma の語すら現れない。

出典

  1. 1.緑内障診療ガイドライン(第5版)(日本緑内障学会 緑内障診療ガイドライン改訂委員会・2022)日本人の疫学調査(多治見研究)に基づく統計学的正常眼圧上限が約20mmHgであること(欧米で慣用される21mmHgとは異なる)、眼圧計は角膜を変形させてその変形量から眼圧を逆算するため中心角膜厚など角膜の物理的性質が測定値を系統的に左右し薄い角膜は緑内障進行の独立した危険因子でもあること、眼圧の日内・季節変動、緑内障管理における個別化された目標眼圧の設定方法(病期別の19・16・14mmHg以下は「提唱されている」目安として紹介されたうえで「ただしこれは無治療時眼圧を考慮していない」と明記され、各種RCTをもとに無治療時眼圧からの20%下降・30%下降という下降率での設定が推奨の強さ2〔弱く推奨する〕・エビデンスの強さB〔中〕で推奨されていること。同ガイドラインの凡例で数字が推奨の強さ、英字がエビデンスの強さを表すことも確認した)、および急性原発閉塞隅角緑内障の初期薬物治療(高張浸透圧薬・房水産生抑制薬を先行させ、瞳孔括約筋が虚血で対光反射を欠く間は縮瞳薬が無効かつ増悪させうるため眼圧がある程度下降してから追加する)を確認した閲覧 2026-09-08
  2. 2.Acute Angle-Closure Glaucoma(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)トノメトリーによる眼圧の正常範囲が10〜21mmHgとされること、急性閉塞隅角緑内障の初期治療がアセタゾラミド・マンニトールに続き点眼薬(β遮断薬・α2作動薬)を組み合わせる方針であること、ピロカルピンは眼圧が40mmHg未満に下がってから投与するという順序を確認した閲覧 2026-09-08
  3. 3.Eylea (aflibercept) Summary of Product Characteristics (Annex I)(European Medicines Agency・2026)PDF全文(165頁)を取得して4.4を逐語確認した。「Increases in intraocular pressure have been seen within 60 minutes of intravitreal injection, including those with Eylea」「Special precaution is needed in patients with poorly controlled glaucoma (do not inject Eylea while the intraocular pressure is ≥ 30 mmHg)」「In all cases, both the intraocular pressure and the perfusion of the optic nerve head must therefore be monitored and managed appropriately」と述べ、4.8の副作用頻度に眼圧上昇8%を挙げていること、4.9で過量投与(注入量の増加)が眼圧を上げうるため眼圧を監視するとしていることを確認した。閲覧 2026-09-08
  4. 4.Lucentis (ranibizumab) Summary of Product Characteristics (Annex I)(European Medicines Agency・2026)4.4で、成人ではラニビズマブの注射後60分以内に一過性の眼圧上昇が見られ、持続性の眼圧上昇も確認されているとして、眼圧と視神経乳頭の灌流の両方を監視し適切に管理するよう求めていることを確認した。眼圧30 mmHg以上は緑内障の項ではなく4.2の「休薬すべき場合」の一覧(最良矯正視力の30文字以上の低下・網膜裂孔・中心窩にかかる網膜下出血・前後28日以内の内眼手術と並ぶ)に置かれている。⚠️ PDF全文を再取得して数えたところ、この文書には glaucoma の語が1回も現れない——他3剤が持つ「コントロール不良の緑内障では特に注意」に相当する記述が無い。EMAのProduct informationページの Last updated 表示は13/05/2026。閲覧 2026-09-08
  5. 5.Vabysmo (faricimab) Summary of Product Characteristics (Annex I)(European Medicines Agency・2026)4.4で、ファリシマブを含む硝子体内注射後60分以内に一過性の眼圧上昇が見られるとし、コントロール不良の緑内障では特に注意して眼圧30 mmHg以上のあいだは注射せず、いずれの場合も眼圧と視神経乳頭の灌流の両方を監視するよう求めていることを確認した。4.8では眼圧上昇が common(4%)である。EMAのProduct informationページの Last updated 表示は21/08/2026。閲覧 2026-09-08
  6. 6.Beovu (brolucizumab) Summary of Product Characteristics (Annex I)(European Medicines Agency・2026)4.4で「VEGF阻害薬(ブロルシズマブを含む)の硝子体内注射後30分以内に一過性の眼圧上昇が見られる」とし、他の抗VEGF薬の製品概要が60分と書くのと時間が異なることを確認した。コントロール不良の緑内障では眼圧30 mmHg以上のあいだ注射しないという規定と、眼圧・視神経乳頭の灌流の両方を監視するという要求は共通である。4.8では眼圧上昇が common で、糖尿病黄斑浮腫では5.4%と最も頻度の高い副作用の一つ。EMAのProduct informationページの Last updated 表示は07/05/2026。閲覧 2026-09-08