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Disease Atlas · 眼科 · 疾患

網膜剥離

Retinal detachment

別名
網膜剥離症
臓器系
眼科
科目
EmbryologyNeurologyPediatricsInternal Medicine
トピック
発生学 19.2:眼:網膜・虹彩・毛様体神経内科 G2-01:視力低下の神経学的原因と視野欠損小児科 10:早産の合併症(BPD・ROP・NEC・IVH)内科学 L-23:糖尿病の細小血管・大血管合併症
関連疾患
白内障
症状
飛蚊症光視症視力低下白色瞳孔
元疾患
Coats病糖尿病網膜症
原因となる疾患
Stickler症候群

🧠 全体像は「神経感覚網膜がから剥がれる」という一点は共通するが、なぜ剥がれるかで裂孔原性・の3型にはっきり分かれ、この3型は原因も治療もまったく別物になる。学習の幹は、①裂孔の有無(裂孔原性だけが「孔」を持つ)で3型を分けること、②・カーテン様という症状の並びを覚えること、③黄斑(中心視野)が剥離に巻き込まれているかどうかがと視力予後を決める、という3点である。

病態:なぜ剥がれるか

網膜は発生学的に眼杯の)と)というもともと2枚の壁が向き合っただけの構造であり、両者の間の癒着はもともと弱い。この発生学的な「継ぎ目」が、成人になってから再び開くのがである。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neural retina'>神経網膜</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retinal pigment epithelium'>網膜色素上皮</span>の<br>もともと弱い癒着面"] --> B{"何が2層を引き離すか"}
    B -->|"全層<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retinal tear'>網膜裂孔</span>から<br>液化<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vitreous body'>硝子体</span>が流入"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rhegmatogenous retinal detachment'>裂孔原性網膜剥離</span>"]
    B -->|"増殖膜が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neural retina'>神経網膜</span>を<br>物理的に牽引"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tractional retinal detachment'>牽引性網膜剥離</span>"]
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='choroid'>脈絡膜</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retinal vessel'>網膜血管</span>から<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='subretinal space'>網膜下腔</span>へ液体が滲出"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='exudative retinal detachment'>滲出性網膜剥離</span>"]
    C --> F["神経感覚網膜が<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='retinal pigment epithelium'>網膜色素上皮</span>から分離"]
    D --> F
    E --> F
    F --> G["剥離部の網膜が<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='choroid'>脈絡膜</span>からの栄養を失う"]
    G --> H["光受容細胞の機能低下・変性"]

💡 裂孔原性だけが「裂孔(孔)」を必要とする。 液化したが全層のを通ってに流入し、を内側から押し剥がすのがである。は増殖膜(に伴う線維など)が網膜を物理的に引っ張って剥がす機序で裂孔を伴わず、の異常な透過性により液体そのものがに貯留する機序で、こちらも裂孔を伴わない1

病型

機序 主な原因・危険因子
全層から液化に流入 、病的歴(手術後)、YAGレーザー後嚢切開、外傷、などの遺伝性結合組織疾患1
増殖膜がを物理的に牽引し剥離 、増殖、鎌状赤血球症、外傷1
への液体貯留、裂孔・牽引を伴わない 腫瘍、炎、など基礎にある網膜・疾患1

裂孔原性が最も頻度が高く、がその引き金になる。 加齢に伴うの液化・収縮でPVDが起こると、が強く癒着した周辺網膜が牽引され、そこに全層裂孔が生じることがある。急性症候性PVDの患者では初回検査時に裂孔がなくても、その後数週間で新たに裂孔を生じる確率が約2%あり、や牽引所見を認める例では6週以内または新規症状の出現時に速やかな再検査が推奨される2

の代表はで、に伴う線維の収縮が網膜を牽引する。も重症例ではの異常増殖から線維形成・に至る小児の代表的な病型である。

臨床像

の典型的な症状の並びは、①の急激な増加、②(光が走るように見える)、③視野の一部が欠けるという順で進行し、周辺から中心へカーテンが下りてくるように進行するのが特徴である1

などの小児例では、剥離が進行すると瞳孔に(正常なの代わりにがみられる所見)を認めることがあり、との鑑別が必要になる。

は裂孔原性ほど急激な発症はまれで、基礎疾患(の進行、腫瘍など)の経過中に緩徐なとして気づかれることが多い。

⚠️ 見逃してはいけないこと

⚠️ 急性の多数は、確定診断がつくまでを疑い続ける。 これらは全の初発症状になりうるが、症状の程度と剥離の重症度は必ずしも一致しない。下での間接検による周辺網膜の評価が確定診断の要である1

⚠️ 黄斑が剥離に巻き込まれているかどうかでが変わる。 は緊急手術が必須ではなく、手術までの時間が最終視力に影響しないが、いったん剥離が黄斑に達した例(macula-off)では発症後1週間以内の手術が視力予後の観点から推奨される1。「症状が軽いから待てる」ではなく「黄斑がまだ保たれているか」で判断する。

⚠️ 糖尿病患者の急なを高血糖のせいだけにしない。 を来しうる眼科緊急疾患であり、眼底評価を先送りにしない。

⚠️ 小児のとの鑑別を要する。 重症による剥離はを呈しうるが、悪性腫瘍であるを除外せずに経過観察に入らない。

診断

flowchart TD
    A["急性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='floaters'>飛蚊症</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='photopsia'>光視症</span>・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='visual field defect'>視野欠損</span>を訴える"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mydriasis'>散瞳</span>下 間接検<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spectacles'>眼鏡</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='scleral depression'>強膜圧迫</span>で<br>周辺網膜まで評価"]
    B --> C{"裂孔・剥離を確認できるか"}
    C -->|"確認できる"| D["黄斑の状態を評価"]
    C -->|"中間透光体<span class='jp-term jp-term-diagram' title='opacity (turbidity)'>混濁</span>などで<br>確認できない"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ultrasound (US)'>超音波検査</span>で<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='retinal detachment'>網膜剥離</span>の有無を評価"]
    E --> D
    D -->|"黄斑温存"| F["緊急手術必須ではない<br>早期の計画的手術"]
    D -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='macular detachment'>黄斑剥離</span>"| G["発症1週間以内の手術"]

は中間透光体など)で眼底が直接観察できない場合に有用で、感度94.2%・特異度96.3%と報告されている1

治療

裂孔原性・は原則として手術治療の対象であり、は基礎疾患の治療が主体になるという方針の違いが3型を貫く。

治療法 適応 特徴
単独、剥離を伴わない例 裂孔周囲をさせ、剥離への進行を予防する
気体網膜復位術 単一裂孔、裂孔が上方8時間以内に限局する例 眼内に気体を注入し、体位により裂孔を内側から塞ぐ1
バックリング 眼球外側からシリコンなどで陥入させ、裂孔をに接触させる
裂孔原性・、複雑例 を切除し牽引を解除、増殖膜を除去したうえで復位させる1

は非管理が原則で、腫瘍・炎・など基礎にある網膜・疾患を同定し治療することが最優先になる1

⚠️ は初回手術の約8〜10%に生じ、復位失敗の最も多い原因である。 初回手術で復位できても、の増殖により再剥離しうることを患者に説明し、術後の定期フォローを欠かさない1

まとめ

  • という発生学的にもともと弱い癒着面が再び開く現象で、裂孔原性(裂孔+液化の流入)・(増殖膜による牽引、裂孔なし)・(液体貯留、裂孔なし)の3型に分ける。
  • 裂孔原性の危険因子は・病的歴・外傷、の代表はである。
  • 典型的な症状は→周辺から中心へ進行するカーテン様の順で現れる。
  • 黄斑温存例は緊急手術必須ではないが例は発症1週間以内の手術が推奨され、この違いが最終視力を左右する。
  • 診断は下の間接検が基本で、中間透光体例では(感度94.2%・特異度96.3%)を用いる。
  • 治療は・気体網膜復位術・バックリング・から病型・裂孔の位置に応じて選択し、は基礎疾患の治療が主体になる。増殖は復位失敗の最多原因である。

出典

  1. 1.Retinal Detachment(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)網膜剥離が裂孔原性(液化硝子体が全層網膜裂孔を通じて網膜下腔に入る)・牽引性(増殖膜が神経感覚網膜を網膜色素上皮から牽引剥離する、裂孔を伴わない)・滲出性(網膜下腔に液体が貯留する、裂孔を伴わない)の3型に分けられること、裂孔原性の危険因子が格子状変性・病的近視・内眼手術歴・外傷であり牽引性の危険因子が増殖糖尿病網膜症・増殖硝子体網膜症であること、症状が多数の新規飛蚊症・光視症・周辺から中心へ進行する視野欠損であること、診断は間接検眼鏡と強膜圧迫による周辺網膜の評価に加え超音波検査(感度94.2%・特異度96.3%)で行うこと、黄斑温存例では83%が矯正視力20/40以上を達成し手術までの時間が最終視力に影響しないのに対し黄斑剥離例では発症1週間以内の手術が推奨されること、増殖硝子体網膜症が初回手術の約8〜10%に生じ復位失敗の最多原因であること、発生率がおよそ1万人に1人(年間10万人あたり6.3〜17.9人)であることを確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.Posterior Vitreous Detachment, Retinal Breaks, and Lattice Degeneration Preferred Practice Pattern(American Academy of Ophthalmology・2025)急性症候性後部硝子体剥離で初回検査時に網膜裂孔がなかった患者もその後数週間で裂孔を生じる確率が約2%あること、硝子体色素・硝子体網膜出血・硝子体網膜牽引を認める場合は6週以内または新規症状出現時に速やかな再検査を要することを確認した。閲覧 2026-08-03