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Disease Atlas · 眼科 · 疾患

眼嚢虫症

Ocular cysticercosis

別名
眼内嚢虫症眼窩嚢虫症外眼筋嚢虫症ocular cysticercus
臓器系
眼科感染症
科目
Medical MicrobiologyPharmacology
トピック
微生物学 4/25:Taenia solium薬理学 C3:抗原虫薬・駆虫薬
上位概念
嚢虫症
合併症
網膜剥離
治療薬
アルベンダゾールプレドニゾロン
原因微生物
有鉤条虫
症状
複視眼球突出斜視霧視
禁忌薬
プラジカンテル

🧠 全体像:は(の幼虫による組織内感染)が眼・眼窩に生じた病型で、学習上の核心は「眼内」か「眼外(眼窩・)」かでが正反対になることである。眼内(・網膜下)にがいる場合、(・)で虫体を殺すと、内での過敏反応により不可逆的な視力障害を来しうるため、薬物治療は禁忌で外科的摘出が原則になる。一方、眼窩・の眼外病変はではないため、+ステロイドの薬物療法が第一選択になりうる——同じ寄生虫・同じ「眼の」でも、かどうかがを分けるという点が、の禁忌欄()を理解する鍵になる。

病態と分類

(Taenia solium)の虫卵をヒトが摂取すると、したが血流に乗って全身の組織に播種し、眼・眼窩にもを形成しうる1。

56眼の検討では、眼内病変(後部セグメント)25眼と眼外病変31眼にほぼ二分される2。

区分 病型 頻度(同一集積内)
眼内 9/25眼
眼内 下 8/25眼
眼内 網膜下 9/25眼
眼外 25/31眼
眼外 眼窩(円錐内・円錐外) 6/31眼

の中ではが最多(40%)、次いで(28%)・(20%)・(12%)の順である2。は後部眼窩外円錐(50%)に最も多い2。

💡 「眼内」と「眼外」の違いは解剖学的なかどうかである。 ・はに守られたで、も炎症の逃げ場もほとんど無い。これに対し・眼窩は全身の他の組織と同様、が届き、炎症も周囲へ拡散しうる——この解剖学的な違いが、後述するのになる。

臨床像

  • 眼内病変:、、が主体。直接で網膜下・に虫体を確認できることが強い手がかりになる2。病変が進行するとが悪化し、を合併しうる。
  • 眼外病変(・眼窩):生存期の32例の検討では、初発症状は(75%)が最多で、腫瘤(37.5%)、(28.1%)、(28.1%)と続く。平均年齢19.5歳と比較的若年層に多い3。(・・)を呈することもある。

診断

が診断の中心的手法で、境界明瞭な嚢胞性病変と内部反射性・というを呈する2。病変は初期には薄い壁と低反射性を示し、進行すると壁が厚くなり多数のを形成する。網膜下病変ではの有無が病期の進行を反映する2。眼窩・病変も超音波で嚢胞性病変として描出でき、経過観察に有用である。

治療:眼内は手術、眼外は薬物療法が原則

⚠️ 症には禁忌である。 ・という内で虫体がにより崩壊すると、死滅虫体への過敏反応で不可逆的な視力障害・失明に至りうる1。このため、症の治療は外科的摘出()が原則であり、の米国添付文書はを禁忌に掲げている。⭐ /ASTMHガイドラインは、にを開始する全患者に対し、事前のでの有無を確認することを推奨している(強い推奨)——気づかれていない眼内寄生虫があると、の治療として投与したが失明を招きうるためである1。

⚠️ 眼外(・眼窩)病変はではないため、薬物療法が選択肢になる。 生存期のでは、経口とによる段階的療法で全例が改善し、までの平均期間は65.9日であった。ただし4例で無症状のが残存した3。

💡 同じ薬(・)が、によって「治療の主役」にも「禁忌」にもなる。 これはの強さの問題ではなく、虫体が死んだときの炎症の逃げ場があるかどうかという解剖学的な問題である。

まとめ

  • はの眼病型で、眼内(・下・網膜下)と眼外(・眼窩)に大別される。
  • 眼内病変は(・)にあるため、で虫体を殺すと不可逆的な視力障害・失明を来しうる。治療は外科的摘出が原則で、は米国添付文書でが禁忌になっている。
  • 眼外病変(が最多、に好発)はではないため、+ステロイドの薬物療法が有効で、多くは数か月以内に改善する。
  • にを開始する前は、全患者でを行いの有無を確認する(/ASTMHの強い推奨)。

出典

  1. 1.Diagnosis and Treatment of Neurocysticercosis: 2017 Clinical Practice Guidelines by the Infectious Diseases Society of America (IDSA) and the American Society of Tropical Medicine and Hygiene (ASTMH)(Infectious Diseases Society of America(IDSA)/ American Society of Tropical Medicine and Hygiene(ASTMH)・2018)神経嚢虫症の駆虫薬治療を検討する全患者に、開始前の眼底検査を推奨する(推奨7)。眼内で虫体が駆虫薬により崩壊すると重篤な視力障害を来しうるため、眼内嚢虫の有無を確認してから駆虫薬を開始すべきであること。米国添付文書(Biltricide)はこれを踏まえ、眼嚢虫症をプラジカンテルの禁忌としている。閲覧 2026-09-16
  2. 2.Ultrasound B-Scan for Posterior Segment and Extraocular Evaluation in Ocular Cysticercosis(Clinical Ophthalmology・2025)眼嚢虫症56眼の検討で、眼内病変(後部セグメント)25眼のうち硝子体内嚢虫症9眼・硝子体下嚢虫症8眼・網膜下嚢虫症9眼、眼外病変31眼のうち外眼筋嚢虫症25眼・眼窩嚢虫症6眼であったこと。外眼筋別では内直筋40%(10眼)・下直筋28%(7眼)・外直筋20%(5眼)・上直筋12%(3眼)、眼窩内局在は後部眼窩外円錐50%・前部眼窩外円錐33.33%・円錐内16.67%であったこと。平均年齢45.6歳(SD 16.8)、男女比32:24で男性に多いこと。B-scan超音波では境界明瞭な嚢胞性病変と内部反射性・音響陰影が特徴で、硝子体内病変は初期は薄い嚢腫壁と低反射性硝子体炎、進行すると厚い嚢腫壁と多数の硝子体膜形成を呈し、網膜下病変では網膜剥離の有無が病期を反映することを確認した。閲覧 2026-09-16
  3. 3.Extraocular muscle cysticercosis: clinical features and management outcome(Strabismus・2008)生存期の外眼筋嚢虫症32例の後ろ向き検討で、平均年齢19.5歳、初発症状は眼球運動制限75%・結膜腫瘤37.5%・複視28.1%・眼球突出28.1%であったこと。経口アルベンダゾールとプレドニゾロンによる段階的薬物療法で全例が改善し、完全寛解までの平均期間は65.9日、4例を除き眼球運動制限は残存しなかったが4例では無症状の残存制限を認めたことを確認した。閲覧 2026-09-16