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Disease Atlas · 眼科 · 疾患

眼部帯状疱疹

Herpes zoster ophthalmicus

別名
HZO
臓器系
眼科感染症
科目
Medical MicrobiologyDermatology
トピック
微生物学 3/13:ヘルペスウイルス:水痘・帯状疱疹ウイルス皮膚科 1-14:単純ヘルペスと帯状疱疹
続発疾患
角膜炎緑内障
関連疾患
急性網膜壊死
治療薬
(バル)アシクロビル
原因微生物
Varicella zoster virus
症状
小水疱眼痛羞明急性前部ぶどう膜炎神経栄養性角膜症動眼神経麻痺滑車神経麻痺外転神経麻痺
検査値
眼圧
元疾患
水痘・帯状疱疹
適応薬
(バル)アシクロビル

🧠 全体像:は、(V1)領域に再活性化した()が引き起こす帯状疱疹で、V1の枝であるが眼球内部にも分布するため、から網膜まで眼のあらゆる層を侵しうる。・の皮疹()がの予測因子であり、これを見たら眼科紹介を急ぐ。治療の軸は発疹出現から72時間以内に全身性抗ウイルス薬を開始することで、開始の遅れがそのままのリスクを増やす。

病態

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='trigeminal ganglion'>三叉神経節</span>に潜伏していた<span class='jp-term jp-term-diagram' title='varicella-zoster virus'>VZV</span>が再活性化"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ophthalmic division of the trigeminal nerve'>三叉神経第1枝</span>(V1)に沿って皮膚へ"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='forehead'>前額部</span>・上眼瞼・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vertex (parietal region)'>頭頂部</span>の皮疹"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nasociliary nerve'>鼻毛様体神経</span>枝を介し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dorsum of the nose (nasal bridge)'>鼻背</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nasal tip'>鼻尖</span>へ<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hutchinson sign'>Hutchinson徴候</span>)"]
    D --> E["同じ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nasociliary nerve'>鼻毛様体神経</span>が眼球内部にも分布"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conjunctiva'>結膜</span>・角膜・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sclera'>強膜</span>・ぶどう膜・網膜・視神経のいずれも侵しうる"]

がから再活性化し、V1の支配領域である・上眼瞼・に沿って帯状の皮疹をつくる。V1の枝であるは・の皮膚だけでなく眼球内部にも分布するため、・の皮疹()はの予測因子として臨床的に重要である——2025年発表の系統的レビュー・では、陽性は陰性例と比べてを来すが約6.5倍高く(6.51)、特異度89%・89%と高い一方、感度は53%・60%にとどまり、徴候がないことだけではを除外できない1。

疫学・危険因子

帯状疱疹は米国で年間1000人に1人が罹患し、60歳以上では100人に1人まで頻度が上がる。は帯状疱疹全体の10〜25%を占める2。危険因子は50歳以上と免疫不全(感染、副腎皮質ステロイド・を要する自己免疫疾患、臓器・後、化学療法中)である2。

⭐ は帯状疱疹全体の20〜30%に生じ、60歳を超える高齢者では最大50%に達する。高齢・急性期の重症度がリスクを高め、接種歴は防御的に働く2。はV1領域というの密な部位を侵すため、への注意は他部位の帯状疱疹以上に重要である。

臨床像

はから視神経まで幅広い層に及びうる。

部位・病態 所見
・ 結膜炎、・強膜炎
角膜 上皮型・角膜炎、(によるを背景に遷延しうる)
ぶどう膜 。(隅角の炎症)を伴うとが上昇し二次性緑内障に至る
網膜・視神経 まれに、、動眼神経麻痺・・による

⚠️ は、が低下しているために患者が痛みを訴えにくく、上皮障害が進んでも見逃されやすい。急性期を過ぎても定期的な角膜の診察を続ける。

診断

臨床診断が基本で、V1分布の皮疹と眼痛・・・充血などのの組合せから疑う2。の有無を確認するが、陰性でもを否定しない1。診断が不確実な場合は病変の()を補助的に用いる。

治療

⭐ 発疹出現から72時間以内に全身性抗ウイルス薬を開始する。確定診断や眼科受診を待って開始を遅らせない。 免疫正常な成人では、(1回1000 mgを8時間ごと)、アシクロビル(1回800 mgを1日5回)、のいずれかを最低7日間投与する2。72時間を超えての開始は、それ自体が・疼痛遷延のリスクを高める予後不良因子として扱われる——「72時間を超えても新生病変等があれば開始してよい」という猶予規定ではなく、遅れれば遅れるほど不利になると理解する2。免疫不全者、播種性病変、中枢神経・例では静注アシクロビル(10〜15 mg/kgを8時間ごと)へ切り替える2。

⚠️ ぶどう膜炎・にを用いる場合は、抗ウイルス薬でウイルス増殖を制御したうえで眼科医が管理する。では、への副腎皮質ステロイドの安易な使用が実質融解を促しうる点にも注意する。

💡 急性期を過ぎた後の・慢性化を防ぐとしての低用量(1回500 mgを1日2回、1年間)は、Zoster Eye Disease Study(ZEDS試験)が検証した。である12か月時点の新規・増悪病変は0.77(P=.09)で有意差に至らず、の18か月時点では0.73(P=.03)で有意差を示し、疼痛期間の短縮効果もみられた3。が有意差に至らなかった以上、この結果だけでを全例に一律推奨するには至らない。

予防

⭐ 50歳以上の成人と18歳以上の免疫不全者には、(非生ワクチン)を接種する。50〜69歳での有効性は約97%と報告されている2。はワクチンで防ぎうる帯状疱疹の一亜型であり、既往のない高齢者・免疫不全者への接種機会を逃さないことが、抗ウイルス薬による事後対応より優先される。

まとめ

  • はが(V1)で再活性化することで生じ、を介して眼球内部まで及ぶ。危険因子は50歳以上と免疫不全で、帯状疱疹全体の10〜25%を占める。
  • (・の皮疹)はのを約6.5倍高める予測因子だが、感度は53%にとどまり陰性でも除外できない。
  • は結膜炎から角膜炎・、ぶどう膜炎・、まれに網膜壊死・まで幅広い。は高齢者で最大50%に達する。
  • 治療の核心は発疹出現72時間以内の全身性抗ウイルス薬開始で、遅れればそれ自体が・疼痛遷延の予後不良因子になる。
  • (低用量)はZEDS試験での有意差を示せず、一律推奨には至っていない。50歳以上・免疫不全者へのによるが優先される。

出典

  1. 1.Hutchinson's Sign in Herpes Zoster Ophthalmicus: A Systematic Review and Meta-Analysis(Ophthalmology (American Academy of Ophthalmology誌)・2025)14件の観察研究を統合したメタ解析で、Hutchinson徴候陽性は陰性例と比べ眼病変のオッズが6.51倍(95%信頼区間4.09-10.34)であったこと、特異度89.2%・陽性的中率88.5%と高い一方、感度52.6%・陰性的中率59.8%にとどまり徴候陰性だけでは眼病変を除外できないことを確認した。閲覧 2026-08-20
  2. 2.Herpes Zoster Ophthalmicus(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)眼部帯状疱疹が三叉神経第1枝(V1)領域でのVZV再活性化であること、鼻毛様体神経枝の分布領域が鼻尖・鼻背の皮膚と眼球内部を共有するためHutchinson徴候が眼合併症のリスク上昇と相関すること、免疫正常な成人の標準治療(アシクロビル800mgを1日5回、バラシクロビル1000mgを8時間ごと、ファムシクロビル500mgを1日3回のいずれかを最低7日間、発疹出現から72時間以内に開始。72時間を超えた開始は眼合併症・疼痛遷延・角膜炎/ぶどう膜炎/網膜壊死のリスク増加という予後不良因子として扱われ、開始猶予を認める例外規定ではないこと)、免疫不全・播種性病変・中枢神経/眼窩内進展例での静注アシクロビル(10〜15mg/kgを8時間ごと)、結膜炎・上強膜炎/強膜炎・上皮/実質型角膜炎・神経栄養性角膜症・前部/後部ぶどう膜炎・眼圧上昇と二次性緑内障・急性網膜壊死・視神経炎・外眼筋麻痺という眼合併症の幅、帯状疱疹全体の疫学(米国で年間1000人に1人、60歳以上では100人に1人、HZOは帯状疱疹全体の10〜25%)とHZOの危険因子(50歳以上、HIV・自己免疫疾患への免疫抑制薬・臓器/骨髄移植後・化学療法などの免疫不全)、帯状疱疹後神経痛の頻度(全体で20〜30%、60歳超では最大50%。高齢・重症度がリスク因子で帯状疱疹ワクチン接種歴は防御的)、組換え帯状疱疹ワクチンが50歳以上の成人・18歳以上の免疫不全者に推奨され50〜69歳での有効性が約97%であることを確認した。閲覧 2026-08-20
  3. 3.Low-Dose Valacyclovir in Herpes Zoster Ophthalmicus: The Zoster Eye Disease Randomized Clinical Trial(JAMA Ophthalmology・2025)直近1年以内に角膜炎・虹彩炎の既往がある眼部帯状疱疹患者527人(460人が完遂)を対象に低用量バラシクロビル(500mgを1日2回)1年間投与とプラセボを比較したところ、主要評価項目である12か月時点の新規・増悪病変はハザード比0.77(95%信頼区間0.56-1.05、P=.09)で有意差に至らず、副次評価項目の18か月時点ではハザード比0.73(95%信頼区間0.55-0.97、P=.03)で有意差を示し、疼痛期間の短縮効果もみられたことを確認した。閲覧 2026-08-20