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Symptoms · Published

眼痛

Eye pain

別名
眼部痛目の痛みocular pain
臓器系
眼科神経
科目
AnatomyPhysiologyMedical MicrobiologyENTNeurology
トピック
解剖学 7.4:頭部:眼窩と眼生理学 8.4:視覚の生理学微生物学 5/3:眼感染を起こす細菌とウイルス(一覧)とその診断耳鼻咽喉科 34:副鼻腔炎の合併症神経内科 G1-01:瞳孔支配の障害
関連疾患
ベル麻痺(末梢性顔面神経麻痺)角膜炎乾燥性角結膜炎眼内炎眼窩蜂窩織炎強直性脊椎炎自己免疫性水疱症(天疱瘡・水疱性類天疱瘡)酒皶・口囲皮膚炎麦粒腫慢性副鼻腔炎緑内障
起因薬
セネジャーミンナタマイシンポリヘキサメチレンビグアニドボレチゲン ネパルボベク

🧠 全体像:「目が痛い」という訴えは一枚岩ではない。表在性(角膜・由来の・灼熱感)・深部痛(眼球そのものの鈍痛・)・(副鼻腔・三叉神経・頭蓋内由来)という性質の異なる3つを含み、この切り分けが以降の鑑別すべての幹になる。表在性なら外眼部の診察で完結することが多いが、深部痛は眼球内部か眼窩の病変を、は眼以外の構造の病変を疑わせる。診療の骨格は、少数だが失明・生命に関わる病態——など——を、見た目の軽さで見逃さないことにある。

定義と用語の整理

患者は「目が痛い」「ゴロゴロする」「奥が痛い」「目の奥が重い」など様々な言葉で訴え、この言葉自体が痛みの由来を示す手がかりになる。

分類 性状・随伴所見 代表的な病態
表在性痛 ・灼熱感、を伴うことが多い、点眼麻酔でほぼ消失する 炎、
深部痛 鈍い・押されるような痛み、眼球運動時に増悪、点眼麻酔で軽快しない 炎、
眼科的所見に乏しい、頭部・顔面の他部位にも症状が及ぶ 副鼻腔炎、片頭痛

この3分けがの最初の一手である。 表在性か深部かかをおおまかに決めるだけで、以降の診察・検査の焦点が絞られる。

片側性か両側性かも重要な手がかりになる。片側性・突然発症・外傷など局所の緊急病態を、両側性・緩徐発症や全身性自己免疫疾患を背景に持つぶどう膜炎など、より全身的な原因を示唆しやすい。ただしこれは傾向であり、両側性でも急性期の緊急疾患を除外する手を緩めない。

💡 乳幼児は眼痛を言葉で訴えられず、による眼瞼攣縮、目をこする仕草、、機嫌の悪さとして現れることがある。年齢相応の代理徴候を見落とさない。

💡 点眼麻酔薬への反応で表在性痛か深部痛かが見分けられる。 点眼で痛みがほぼ消失すれば角膜・表層由来の表在性痛、消失しなければ深部痛・を疑う。ただしこれは初診時に診断目的で単回使う場合の話であり、鎮痛目的ですることとは全く別である(詳しくは後述)。

病態生理

角膜・の知覚は)が担う。に分かれたのちを素通りし(節内でシナプスするのは副交感線維だけ)、として眼球へ入り角膜・の感覚を伝える。

💡 に富み、体表の中でも際立って密度が高い組織である。だからごく小さな上皮欠損でも強い痛みとしてされる。

深部痛は主に3つの機序で生じる。

  • が産生する→瞳孔→という経路で排出され、通常のはおよそ15 mmHgに保たれる。でこの経路が断たれるとが急激に上昇し、の急な伸展そのものが激痛を生む。
  • 炎症:前部ぶどう膜炎・では、ぶどう膜・に分布する知覚神経終末が炎症メディエーターで直接刺激される。
  • 虚血や感染によりが落ちると、の閾値がさらに下がる。

💡 に特徴的だが、視神経実質そのものに痛みを感じるわけではない。視神経を包む硬膜性の鞘が眼球運動のたびに牽引されることで痛みが生じると考えられている。同じ理由で、眼窩の炎症・腫瘤がを巻き込む病態でもが起こりうる。

は、が副鼻腔・前額・の知覚も併せて担う共と、副鼻腔炎が薄い骨壁を介して眼窩へ直接波及しうる解剖学的近接の両方で説明される。片頭痛も同じ神経系を介して眼周囲に投射される痛みを生む。

⚠️ 見逃してはいけない病態

危険度の高い順に並べる。

  • ⚠️ 眼でによりが急激に上昇し、片側の激しい深部痛・頭痛を来す。そのものが視神経を不可逆的に傷めるため、疑えば直ちに測定と眼科紹介を行う。初期対応は局所・全身の下降薬でを下げてから、できるだけ早くに進む方針が確立している1・抗ヒスタミン薬などを持つ薬によるが発作の誘因になることがあり、原因薬の使用歴も確認する。緑内障の項も参照。
  • ⚠️ 、とくにコンタクトレンズ使用者。 コンタクトレンズ装用はの最多の危険因子であり、なかでも夜間装用・消毒不良・レンズケースの水道水すすぎでリスクが上がる2。緑膿菌感染は進行が速く・穿孔に至りうるため、装用者の眼痛・充血・では装用歴をし、・潰瘍の有無を確認する。も未診断のままステロイド点眼を使うと悪化する。
  • ⚠️ 眼内手術後・穿孔性眼外傷後の深部痛、急激な下方の膿の貯留)は緊急事態で、治療の遅れがそのまま視力予後を決める。
  • ⚠️ を伴う急性のを来し、などの初発症状でありうる。
  • ⚠️ 眼瞼のみに留まるを伴わない)と、視機能を脅かす(隔膜後)への進展を区別する。副鼻腔炎から波及し、・眼球運動制限や運動時痛・眼瞼縁を超える浮腫のいずれかがあれば造影CTの適応で、両側化や意識障害を伴えばを疑う3副鼻腔炎の合併症と地続きの病態である。
  • ⚠️ 外傷・ 眼窩の腫脹に乏しい片側性の激痛と眼球外傷やを疑い、眼球への圧迫を避けた診察に切り替える。
  • ⚠️ 炎。 高齢者の側頭部痛・を伴う片側性の眼窩深部痛はによるでありうる。
  • ⚠️ CN III麻痺による痛みを伴う 眼窩深部痛に急性の麻痺)を伴えばによる圧迫を疑い、緊急の血管画像を行う。瞳孔が温存された麻痺は虚血性を示唆するが、を伴う例では圧迫性病変の除外を急ぐ。

鑑別の進め方

でまず表在性・深部・の見当をつけ、次にで充血の分布・視力・瞳孔所見・の有無を確認し、必要に応じて測定や画像検査に進む。この順序を守ると、初期対応の段階での高い病態を取りこぼしにくい。

充血の分布はを見分ける。周囲が最も強い紫紅色の充血で、輪部から離れるほど淡くなり、ぶどう膜炎・炎・など深部の炎症を示唆する。は瞼・球全体に広がる色の充血で輪部に向かってむしろ淡くなり、炎など表層疾患を示唆する。

flowchart TD
    A["眼痛の訴え"] --> B{"表在性・深部・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='referred pain'>関連痛</span>のどれか"}
    B -->|"表在性(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='foreign body sensation'>異物感</span>・灼熱感)"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluorescein staining'>フルオレセイン染色</span>で<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='corneal erosion'>角膜びらん</span>・異物・角膜炎を評価"]
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='referred pain'>関連痛</span>(眼所見に乏しい)"| D["副鼻腔・三叉神経・頭痛の病歴を評価"]
    B -->|"深部痛"| Z{"片側性か両側性か"}
    Z -->|"両側性・緩徐発症"| ZB["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='keratoconjunctivitis sicca'>乾燥性角結膜炎</span>・全身性疾患背景の<br>ぶどう膜炎を優先して評価"]
    Z -->|"片側性・急性"| E{"充血は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conjunctival injection (hyperemia)'>結膜充血</span>か<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ciliary injection'>毛様充血</span>か"}
    E -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conjunctival injection (hyperemia)'>結膜充血</span>優位"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conjunctiva'>結膜</span>炎など軽症疾患を優先して評価"]
    E -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ciliary injection'>毛様充血</span>"| G{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='decreased visual acuity'>視力低下</span>を伴うか"}
    G -->|"なし"| H["前部ぶどう膜炎・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sclera'>強膜</span>炎を評価"]
    G -->|"あり"| I{"瞳孔所見は"}
    I -->|"中等度<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mydriasis'>散瞳</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='(pupillary) light reflex'>対光反射</span>低下"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraocular pressure'>眼圧</span>測定で<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute angle-closure glaucoma'>急性閉塞隅角緑内障</span>を除外"]
    I -->|"急性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mydriasis'>散瞳</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ptosis'>眼瞼下垂</span>"| K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oculomotor nerve (CN III)'>動眼神経</span>麻痺として<br>緊急血管画像"]
    I -->|"正常〜<span class='jp-term jp-term-diagram' title='miosis'>縮瞳</span>"| L{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pain on eye movement'>眼球運動時痛</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='exophthalmos'>眼球突出</span>を伴うか"}
    L -->|"あり"| M["造影CTで<span class='jp-term jp-term-diagram' title='orbital cellulitis'>眼窩蜂窩織炎</span>・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='optic neuritis'>視神経炎</span>を評価"]
    L -->|"なし"| N["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endophthalmitis'>眼内炎</span>・角膜炎などを<br>眼科で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='slit-lamp'>細隙灯</span>評価"]

対応の考え方

  • 深部痛・原因不明の眼痛は当日眼科紹介が原則。 非眼科医が測定なしに深部痛の原因を確定することはできず、上記の見逃してはいけない病態の多くは眼科での評価を要する。
  • ⚠️ 診断確定前に点眼を反復して処方・使用しない。 ・実質・内皮に用量・の毒性を持ち、反復使用は・実質浸潤・瘢痕を来す。症状が非定型化するためされやすく、診断が遅れたまま自己点眼を続けて重篤な視力障害に至った例が報告されている4。初診時に診断目的で単回使うことと、鎮痛目的で反復処方することは全く別である。
  • ⚠️ 未診断の角膜病変への副腎皮質ステロイド点眼はを悪化させる。 で樹枝状びらんを除外してからでなければステロイド点眼を開始しない。
  • ⚠️ コンタクトレンズ関連のに眼帯・治療用コンタクトレンズを使わない。 眼帯や治療用レンズで覆うと二次性の(緑膿菌を含む)のリスクが上がるため、レンズ装用者のは眼帯をせず、レンズ装用そのものも中止させる2
  • 表在性痛は原因(異物除去、の上皮化を待つ、へのなど)を治療すれば軽快し、は補助的に短期間のみ用いる。
  • 深部痛・は原因診断が先で、痛みの強さそのものをにした対応(の増量、麻酔薬の反復)に走らない。疼痛全般で成り立つ原則——機序を先に決める、への反応で重症度を代用しない——がここでも当てはまる。
  • 所見に乏しいのに眼痛が慢性・反復する例では、に伴う角膜のも検討する。眼表面に異常が乏しくても痛みは実在し、所見のなさを痛みの否定材料にしない。

まとめ

  • 眼痛は表在性(角膜・由来)・深部痛(眼球そのもの)・(副鼻腔・三叉神経・頭蓋内由来)の3つに分けて考える。
  • 角膜・の知覚はが担い、角膜は密度が高いため小さな病変でも強い痛みを生む。・炎症・虚血が深部痛の主な機序である。
  • 危険度で優先すべきは(とくにコンタクトレンズ使用者)、、外傷・炎、痛みを伴うCN III麻痺である。
  • 鑑別は充血の分布・の有無・瞳孔所見・で絞り込む。
  • 深部痛・原因不明の眼痛は当日眼科紹介が原則で、診断確定前の反復使用・未診断角膜病変へのステロイド点眼は避ける。

出典

  1. 1.Primary Angle-Closure Disease Preferred Practice Pattern(American Academy of Ophthalmology・2020)急性閉塞隅角発作は隅角閉塞と自覚症状を伴う高眼圧で定義され、初期対応は房水産生抑制薬・毛様体収縮薬・高浸透圧薬などの薬物療法で眼圧を下げたのち、できるだけ早くレーザー虹彩切開術を行う方針、および僚眼への早期予防的虹彩切開の必要性を確認した。閲覧 2026-08-02
  2. 2.Bacterial Keratitis Preferred Practice Pattern(American Academy of Ophthalmology・2023)英国・イタリアの後ろ向き研究でコンタクトレンズ使用が細菌性角膜炎の最多の危険因子であること、夜間装用・消毒不良・レンズケースの水道水すすぎでリスクが上がること、コンタクトレンズ関連角膜びらんに眼帯・治療用レンズを用いるべきでないことを確認した。閲覧 2026-08-02
  3. 3.Adverse Reactions from Topical Ophthalmic Anesthetic Abuse(Journal of Ophthalmic & Vision Research・2022)局所麻酔薬点眼の反復使用は角膜上皮・実質・内皮に用量・時間依存性の細胞毒性を来し遷延性上皮欠損・実質浸潤・瘢痕を生じること、症状が非定型化して感染性角膜炎などと誤診されやすく、診断確定までの継続使用が重篤な合併症につながりうることを確認した。閲覧 2026-08-02
  4. 4.Orbital Cellulitis(StatPearls・2023)眼窩蜂窩織炎が疑われる際、眼球突出・眼球運動制限/運動時痛・複視・視力低下・眼瞼縁を超える浮腫・好中球絶対数10,000/μL超・CNS症状・1歳未満・治療開始24〜48時間で無改善のいずれかがあれば造影CTを行う方針を確認した。閲覧 2026-08-02