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Drug Atlas · B30 Biologics & immunomodulators / 生物学的製剤 · 必修

セネジャーミン

cenegermin

分類
Growth factors / 成長因子製剤
商品名(EU)
Oxervate
科目
Pharmacology
トピック
B30: Immunopharmacology III (Antibodies and fusion proteins)
副作用
眼痛結膜充血流涙羞明

🧠 全体像は、これまでの治療薬(など)とは根本的に発想が異なる薬である。他の治療が「傷ついた角膜表面をどう保護・被覆するか」という対症的なアプローチであるのに対し、は遺伝子組換えヒト神経(NGF)そのものを補充することで、病態の根幹であるの栄養因子供給の途絶に直接介入する唯一の薬である。作用機序は他の眼科用薬にほぼ例のない生物学的製剤(製剤)であり、緑内障点眼薬のような小分子とはまったく異なる系統に属する。

薬効群の中での位置づけ

の治療は、病期()が進むにつれて対症療法から積極的介入へと重心が移る。はその中で唯一「原因(栄養因子の欠乏)そのものを補う」薬である。

治療の系統 代表 アプローチ 病期の目安
保護・湿潤 無添加 を補い上皮への機械的刺激を減らす I度(
自己修復の補助 血清中の・栄養因子を補う(NGFを含むが濃度・組成は非 I〜II度
そのものの補充 遺伝子組換えヒトNGFを化された濃度で直接補充し、上皮のターンオーバーを回復させる II度
構造的な保護・被覆 、治療用コンタクトレンズ、部分 上皮欠損部を覆う・保護する(栄養因子は補わない) II〜III度
外科的再建 知覚神経そのものを再建する、または角膜をに置換する III度(末期)

との違いを混同しないことが重要である。 自己血清にもNGFは含まれるが、患者ごと・採血ごとに濃度が変動する非である。は組換え技術で製造された化されたNGF製剤であり、用量・投与法がで確立されている点で自己血清とは薬剤としての性格が異なる。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='trigeminal nerve impairment'>三叉神経障害</span>により<br>角膜神経終末が減少・機能不全になる"] --> B["角膜神経が供給していた<br>NGF・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='substance P'>サブスタンスP</span>・IGF-1などの<br>栄養因子供給が途絶する"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='corneal epithelium'>角膜上皮</span>細胞の接着・遊走・増殖が低下"]
    C --> D["上皮のターンオーバーが低下し<br>微小な損傷が修復されないまま蓄積"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='persistent epithelial defect'>遷延性上皮欠損</span>・実質病変<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurotrophic keratopathy'>神経栄養性角膜症</span>の進行)"]
    F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cenegermin'>セネジャーミン</span>点眼<br>(遺伝子組換えヒトNGF)"] --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='corneal epithelium'>角膜上皮</span>細胞・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='parenchymal cell'>実質細胞</span>の<br>TrkA受容体を直接刺激"]
    G --> H["神経由来のNGF供給の途絶を<br>薬剤として代替する"]
    H --> I["上皮細胞の接着・遊走・増殖を<br>直接的に促進"]
    I --> J["上皮のターンオーバーが回復し<br>角膜治癒が進む"]

💡 は「神経を治す」薬ではなく「神経が果たしていた化学的な役割を薬剤で肩代わりする」薬である。 三叉神経の物理的な損傷(腫瘍による圧迫、術中の切断など)そのものは治療しない。が薬剤投与によって回復するわけでもない。あくまで神経が絶たれた結果生じる栄養因子供給の途絶という下流の問題だけを、化されたNGFの外部からの補充によって是正する薬である。

適応

領域 使いどころ
眼科 II度以降、特にを伴う例)の治療12

米国のピボタル試験では、8週間の投与で群の角膜治癒率が69.6%(保守的評価65.2%)と、ビヒクル群の29.2%(同16.7%)を有意に上回った3

用法・用量

1回1滴を患眼に、1日6回・2時間間隔で8週間点眼する1を含まない単回使用の点眼製剤であり、開封後は指示された保管条件・使用期限を厳守する。コンタクトレンズを装用している場合は点眼前に外し、再装用は点眼から15分後とする1

禁忌・注意

  • 添付文書の禁忌欄は「該当なし」であり、も無い1
  • 8週間・1日6回という頻回な点眼スケジュールを患者ができるかが治療成功の鍵であり、低下(点眼を怠る)は効果不十分の主因になりうる
  • 無添加製剤であるため、開封後の保存方法・使用可能期間を守らないと感染・汚染のリスクが生じる
  • 点眼時の眼痛・不快感は治療開始後にしばしばみられるが、多くは軽度〜中等度で一過性であり、これのみを理由に安易に中止しない

副作用

頻度 内容
高頻度(>5%) 眼痛、眼炎症、増加1
中頻度(1〜10%) 角膜沈着物、、頭痛1
重篤・まれ 現時点で重大な全身性副作用は乏しく、報告される有害事象は主に・軽度・一過性である3

まとめ

  • は遺伝子組換えヒト神経(NGF)の点眼製剤であり、の他の治療(など)とは異なり、病態の根幹である栄養因子供給の途絶そのものに介入する薬である。
  • 三叉神経の物理的損傷やそのものを治すのではなく、神経が担っていた栄養因子供給の役割を薬剤として肩代わりし、のターンオーバーを回復させる。
  • II度()以降の肢に位置づき、米国のピボタル試験では8週間投与で約7割の角膜治癒率を示し、ビヒクル群を有意に上回った。
  • 用法は1日6回・2時間間隔で8週間点眼という頻回なスケジュールで、コンタクトレンズは点眼前に外し15分後に再装用する。
  • 禁忌欄は「該当なし」でも無く、報告される副作用は主に眼局所の軽度〜中等度の反応にとどまる。

出典

  1. 1.OXERVATE (cenegermin-bkbj) Ophthalmic Solution — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration (DailyMed)・2025)セネジャーミン点眼液(20μg/mL)が2018年に米国で神経栄養性角膜炎治療薬として初承認されたこと、用法が1回1滴を1日6回・2時間間隔で8週間であること、禁忌欄が「該当なし」で枠組み警告の項目も無いこと、最も高頻度な副作用(5%超)が眼痛・結膜充血・眼炎症・流涙増加であり眼痛は約16%であることを確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.Topical Recombinant Human Nerve Growth Factor (Cenegermin) for Neurotrophic Keratopathy: A Multicenter Randomized Vehicle-Controlled Pivotal Trial(Ophthalmology (Pflugfelder SC, Massaro-Giordano M, Perez VL, et al.)・2020)米国11施設48例を対象としたピボタル試験で、セネジャーミン20μg/mL群(1日6滴・8週間)の角膜治癒率が69.6%(保守的評価では65.2%)とビヒクル群の29.2%(同16.7%)を有意に上回ったこと、有害事象は主に局所性・軽度・一過性であったことを確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.Neurotrophic Keratitis(StatPearls Publishing (NCBI Bookshelf)・2025)角膜神経がサブスタンスP・NGF・IGF-1などの栄養因子を上皮へ供給しており、神経成長因子製剤セネジャーミンがMackie分類II度以降の治療選択肢としてガイドライン上位置づけられていることを確認した閲覧 2026-08-03