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Drug Atlas · B30 Biologics & immunomodulators / 生物学的製剤 · 必修

トラロキヌマブ

tralokinumab

分類
Biologics & immunomodulators / 生物学的製剤
商品名(日本)
アドトラーザ
商品名(EU)
AdtralzaAdbry
科目
Pharmacology
トピック
B30: Immunopharmacology III (Antibodies and fusion proteins)
承認適応
アトピー性皮膚炎
影響検査値
好酸球増多
原因となる疾患
アレルギー性結膜炎

🧠 全体像と同じ「Type 2炎症を狙う抗体」だが、上流のIL-4Rαではなく、IL-13そのものに直接結合するという設計の違いがある。IL-13だけを狙う抗体はもう一つがあるが、同じIL-13を標的にしながら結合する部位(エピトープ)が異なり、その結果として「IL-13が受容体に結合する段階のどこを塞ぐか」が両者で違う。

薬効群の中での位置づけ

標的 薬剤 遮断するシグナル 特徴
IL-4Rα(IL-4とIL-13の共有受容体サブユニット) IL-4・IL-13の両方 Type 2疾患全般に適応が広い
IL-13(A・Dヘリックス) IL-13のIL-13Rα1・IL-13Rα2への結合の両方1 IL-13単独を狙う。適応は
IL-13(IL-4Rα結合面と重なるエピトープ) IL-13Rα1への結合は妨げず、IL-4Rαとの複合体形成を阻止 間隔が4週・8週と長い

「IL-13を狙う抗体は1種類ではない」ことがひっかけになりやすい。 はどちらも抗IL-13抗体だが、IL-13上の結合部位(エピトープ)が異なるのエピトープは構造解析で主にIL-13のD・Aヘリックスの残基から成ると同定されており、IL-13Rα1・IL-13Rα2の両方の結合を妨げる1。一方のエピトープはIL-4Rαの結合面と重なる位置にあり、IL-13がIL-13Rα1へ結合すること自体は妨げない。はIL-13そのものではなく、IL-4とIL-13が共有する受容体サブユニットIL-4Rαを狙う点で標的レベルから異なる。

機序

flowchart TD
    A["IL-13が分泌される"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tralokinumab'>トラロキヌマブ</span>がIL-13の<br>Aヘリックス・Dヘリックスに結合"]
    B --> C["IL-13Rα1への結合を阻止<br>(II型受容体=IL-4Rα+IL-13Rα1の形成を阻止)"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tralokinumab'>トラロキヌマブ</span>が結合したIL-13は<br>IL-13Rα2(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='decoy'>デコイ</span>受容体)にも渡らない"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epithelial barrier'>上皮バリア</span>機能低下・粘液産生↓"]
    C --> F["好酸球動員↓"]
    E --> G["皮膚<span class='jp-term jp-term-diagram' title='barrier function'>バリア機能</span>・そう痒の改善"]
    F --> G

💡 IL-13Rα2は「シグナルを伝えない(おとり)受容体」として、過剰なIL-13を吸収する役割を持つ。 が結合するエピトープ(IL-13のD・Aヘリックス)はIL-13Rα1・IL-13Rα2の両方の結合面と重なるため、が結合したIL-13はどちらの受容体にも渡らない1。⚠️ ただしこれは「経路によるIL-13の除去まで止めてしまう」という意味ではない——に捕捉されていない遊離IL-13はIL-13Rα2に結合して取り込まれうるため、内因性のIL-13Rα2によるIL-13クリアランス調節そのものは保たれると報告されている2。これに対しは、IL-13がIL-13Rα1へ結合すること自体は許し、その先のIL-4Rαとの複合体形成(シグナル伝達に必須のステップ)だけを止める。IL-13へのの方が高く、同一条件の表面プラズモン共鳴でIL-13に対しKd 187pM・Kd 1804pM、脱IL-13に対しそれぞれ6.3pM・904pMと報告されている3

薬物動態

項目 値・特徴
SC皮下注射
半減期 約3週間4
代謝
分布 主に血漿・炎症組織

適応

領域 使いどころ
皮膚 中等症〜重症の(12歳以上、局所治療で制御不十分な例)4

と異なり、喘息・など他のType 2疾患へのは無く、に特化した抗体という位置づけを保っている。

用法・用量

  • 成人:初回に600mg(150mg製剤4本、または300mg製剤2本)を投与し、以後は300mgを隔週でする。体重100kg未満で16週以降に状が「clear/almost clear」まで安定した患者では、300mgを4週間隔へ延長することを考慮できる4
  • 12歳以上の小児:初回300mgのの後、150mgを隔週でする4

の延長間隔オプションは「体重100kg未満・16週以降の安定例」という条件付きであり、が原則として4週または8週間隔まで広く設計されているのとは対照的である。

禁忌・注意

  • 禁忌:過敏症
  • 炎・角膜炎(を含む)が比較的高頻度で生じる。と同様、既存のとの鑑別が必要になることがある4
  • 好酸球増多を伴う基礎疾患が背景にある場合は注意する
  • 寄生虫(蠕虫)感染が併存する場合は、本剤開始前に治療する4
  • 投与中は生ワクチンを避ける4

副作用

頻度 内容
高頻度 群で23.8%)、炎・、7.5%)、注射部位反応(疼痛・紅斑・腫脹、7.4%)4
注意 好酸球増多(1.4%)
重篤・まれ 過敏症反応

まとめ

  • 抗IL-13ヒトIgG4抗体で、IL-13のA・Dヘリックスに結合しIL-13Rα1・IL-13Rα2の両方への結合を阻止する。
  • 同じ抗IL-13抗体のとは結合エピトープが異なる——はD・Aヘリックスに結合してへの結合を塞ぎ、はIL-4Rα結合面と重なる部位に結合してIL-13Rα1への結合は妨げない。IL-13へのの方が高い。
  • (抗IL-4Rα)と異なり適応はに限られ、他のType 2疾患へのが無い。
  • 半減期は約3週間。は原則300mg隔週で、体重100kg未満・16週以降の安定例に限り4週間隔への延長を考慮できる。
  • が特徴的な副作用で、と共通する注意点である。

出典

  1. 1.ADBRY (tralokinumab-ldrm) injection, for subcutaneous use — full prescribing information(U.S. Food and Drug Administration(DailyMed)・2021)成人の負荷用量600mg(初回)・維持用量300mgの隔週皮下投与、12歳以上の小児では負荷用量300mg・維持用量150mgの隔週投与、体重100kg未満で16週以降に皮膚症状が安定した患者では4週間隔への延長を考慮できること、半減期が約3週間であること、機序(ヒトIL-13に特異的に結合し受容体サブユニットとの相互作用を妨げるヒトIgG4モノクローナル抗体)、枠組み警告は無く警告・使用上の注意が過敏症・結膜炎および角膜炎・寄生虫(蠕虫)感染・生ワクチンのリスクの4項目であること、有害事象の頻度(上気道感染23.8%、結膜炎7.5%、注射部位反応7.4%、好酸球増多1.4%)を確認した。閲覧 2026-08-10
  2. 2.Structural Characterisation Reveals Mechanism of IL-13-Neutralising Monoclonal Antibody Tralokinumab as Inhibition of Binding to IL-13Rα1 and IL-13Rα2(Journal of Molecular Biology・2017)トラロキヌマブFabとヒトIL-13の複合体構造(2Å分解能)から、トラロキヌマブのエピトープが主にIL-13のD・Aヘリックスの残基で構成されること、およびトラロキヌマブがIL-13のIL-13Rα1への結合とIL-13Rα2への結合の両方を妨げることを確認した(生化学的なリガンド-受容体結合アッセイでも裏づけられている)。閲覧 2026-08-10
  3. 3.Tralokinumab Effectively Disrupts the IL-13/IL-13Rα1/IL-4Rα Signaling Complex but Not the IL-13/IL-13Rα2 Complex(JID Innovations・2023)トラロキヌマブがIL-13とIL-13Rα1の相互作用およびIL-13Rα1/IL-13/IL-4Rα三者複合体の形成を用量依存的に完全に遮断すること、一方でトラロキヌマブが結合していない遊離IL-13はIL-13Rα2に結合して取り込まれうるため、内因性のIL-13Rα2によるIL-13クリアランス調節は妨げられないことを確認した。閲覧 2026-08-10
  4. 4.Binding, Neutralization and Internalization of the Interleukin-13 Antibody, Lebrikizumab(Dermatology and Therapy・2023)表面プラズモン共鳴により、レブリキズマブが糖鎖付加IL-13にKd 187±7.9pM・脱糖鎖IL-13にKd 6.3±0.9pMで結合するのに対し、トラロキヌマブは同条件でKd 1804±154pM・904±119pMと3剤中もっとも弱い親和性を示したこと、およびレブリキズマブがトラロキヌマブとは異なるエピトープに結合すること(レブリキズマブはトラロキヌマブ結合済みIL-13にも結合できた)を確認した。なお本論文はA〜Dヘリックスなど個々のヘリックス名には言及していない。閲覧 2026-08-10