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Disease Atlas · 眼科 · 疾患

眼窩蜂窩織炎

Orbital cellulitis

別名
postseptal cellulitis眼窩隔膜後蜂窩織炎
臓器系
眼科感染症耳鼻咽喉科
科目
OtorhinolaryngologyMedical Microbiology
トピック
耳鼻咽喉科 34:副鼻腔炎の合併症微生物学 5/37:眼感染を起こす原虫と蠕虫(一覧)とその診断
鑑別疾患
ムーコル症眼窩コンパートメント症候群眼窩腫瘍丹毒・蜂窩織炎網膜芽細胞腫
続発疾患
海綿静脈洞血栓症眼窩尖端症候群
関連疾患
慢性副鼻腔炎
治療薬
セフトリアキソンバンコマイシンメトロニダゾール
原因微生物
Staphylococcus aureusStreptococcus pyogenes / GASStreptococcus pneumoniae
症状
眼球突出眼瞼浮腫結膜充血眼痛発熱
元疾患
急性副鼻腔炎歯性上顎洞炎涙嚢炎
原因となる疾患
根尖性歯周炎麦粒腫

🧠 全体像:は、より後方の軟部組織の感染である。隔膜より前方に留まる眼瞼(隔膜前)蜂窩織炎とはがまったく違い、・・・の有無が両者を分ける最になる。最多の原因は副鼻腔炎(特に)の波及で、最も恐ろしい進展先はである。診断がついたら抗菌薬より先に「隔膜の前か後か」を確定し、なら入院・造影CT・を急ぐ。

病態:隔膜前と隔膜後を分ける

は眼瞼を容と隔てる結合組織の壁で、この壁より前方の感染は眼瞼・皮下組織にとどまり、後方に及ぶと・・視神経周囲まで炎症が広がる。副鼻腔(特に)は薄い骨壁()を隔てて眼窩と接しており、静脈にも弁がなく・・が直接交通するため、感染がその薄い壁と無弁の静脈網を伝って眼窩、さらに頭蓋内へと波及しやすい。

flowchart TD
    A["副鼻腔炎<br>(特に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ethmoid sinusitis'>篩骨洞炎</span>)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='venous stasis'>静脈うっ滞</span>・眼瞼側からの波及<br>(紙様板は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='perforation (penetration)'>穿破</span>しない)"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lamina papyracea'>篩骨紙様板</span>を越えて<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='orbital septum'>眼窩隔膜</span>後方へ波及"]
    B --> D["眼瞼(隔膜前)蜂窩織炎"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='orbital cellulitis'>眼窩蜂窩織炎</span>"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subperiosteal abscess'>骨膜下膿瘍</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='orbital abscess'>眼窩膿瘍</span>"]
    C --> G["無弁の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ophthalmic vein'>眼静脈</span>を介して<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='cavernous sinus'>海綿静脈洞</span>へ波及"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cavernous sinus thrombosis'>海綿静脈洞血栓症</span>"]

⭐ の86〜98%に副鼻腔炎の合併があり、とが最も波及しやすい型である1。が原因の場合は嫌気性菌の関与が多くなる2。

⚠️ その副鼻腔炎が「歯から来ている」ことがある。 の洞外合併症を集めた系統的レビュー(75研究・110例)では、およそ70%がであり、合併症を起こしたの原因として最も多かったのはのであった2。⚠️ 同レビューでは副鼻腔炎の進展範囲と眼窩・の間に関係が認められていない——副鼻腔の所見が軽く見えることは合併症を否定する根拠にならない2。💡 の根尖はに近接しており、が洞粘膜へ波及してとなり、そこから眼窩へ及ぶ経路である。したがってで副鼻腔炎を見つけたら、上顎歯の・・歯科治療歴を必ず確かめる。

隔膜前と隔膜後の鑑別

所見 眼瞼(隔膜前)蜂窩織炎 (隔膜後)
・ あり あり
なし あり
・ なし あり(最も重要な鑑別点)
なし あり得る(を示唆)
外来治療が可能なことが多い 入院・造影CT・が必須

⚠️ 最も重要な鑑別点は、・・の有無である。 これらを欠けば隔膜前にとどまる可能性が高いが、いずれかがあれば隔膜後()への波及を疑う1。双側性のはほぼの診断を意味する3。

起因菌

起因菌は(黄色ブドウ球菌、、肺炎球菌など)が主体である。9歳以下では感染が多いのに対し、それ以上の年齢では嫌気性菌を含むがありうる3。が原因なら嫌気性菌の関与を積極的に想定する2。真菌(など)によるは、や強い免疫抑制など特定の背景で鑑別に挙がる。

診断

  • を伴う場合、または適切な抗菌薬投与後24〜48時間で症状が進行する場合は、造影CTが必要になる3。
  • 造影CTで副鼻腔・眼窩・骨・膿瘍を評価し、頭蓋内・が疑われれば造影MRI/を追加する4。
  • 血液培養を含む培養採取後、結果を待たずを開始する。
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='eyelid edema (periorbital edema)'>眼瞼浮腫</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conjunctival injection (hyperemia)'>結膜充血</span>で受診"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='impaired ocular motility (ophthalmoparesis)'>眼球運動障害</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pain on eye movement'>眼球運動時痛</span>・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='exophthalmos'>眼球突出</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='decreased visual acuity'>視力低下</span>があるか"}
    B -->|"なし"| C["眼瞼(隔膜前)蜂窩織炎として<br>外来治療を検討"]
    B -->|"あり"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='orbital cellulitis'>眼窩蜂窩織炎</span>として入院・<br>造影CT・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='broad-spectrum intravenous antibiotics'>広域静注抗菌薬</span>"]
    D --> E{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='optic neuropathy'>視神経障害</span>・24〜48時間で<br>症状進行・双側性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='exophthalmos'>眼球突出</span>があるか"}
    E -->|"あり"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cavernous sinus thrombosis'>海綿静脈洞血栓症</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intracranial extension'>頭蓋内進展</span>を疑い<br>造影MRI/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='MR venography'>MR静脈撮影</span>を追加"]
    D --> G{"膿瘍径10mm超または<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='intracranial extension'>頭蓋内進展</span>があるか"}
    G -->|"あり"| H["緊急の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='surgical drainage'>外科的ドレナージ</span>"]

治療

  • 入院のうえのを、血液培養提出後に結果を待たず開始する3。
  • が背景にあれば嫌気性菌を含めて広くカバーする抗菌薬選択とし、歯・副鼻腔のも同時に行う2。
  • がある例、または膿瘍径が10mmを超える例では、手術(ドレナージ)がほぼ必須の適応になる1。視機能悪化・保存治療不応でも同様に外科的介入を検討する。
  • 眼科・(歯性なら歯科口腔外科も)が連携し、副鼻腔・眼窩・の同時ドレナージを検討する4。

鑑別

疾患 鑑別点
・蜂窩織炎 眼窩に限らない。・を欠けばより・蜂窩織炎(眼瞼部の)を考える
小児の進行例でに似たを呈することがある。発熱・急性の経過に乏しく、の既往や腫瘤性病変の画像所見が手掛かりになる

まとめ

  • はより後方の感染で、隔膜前のとはが異なる。・・・の有無が両者を分ける最である。
  • 副鼻腔炎(特に)の波及が最多の原因で、薄い骨壁と無弁のを介してへ進展しうる。
  • ⚠️ その副鼻腔炎が歯性のことがある。の洞外合併症のおよそ70%はで、原因として最も多いのはのである。副鼻腔炎の進展範囲は合併症の有無を予測しないので、所見が軽く見えても原因歯の検索と嫌気性菌を覆う抗菌薬選択、原因歯と副鼻腔の同時のを怠らない。
  • 起因菌はが主体だが、9歳を超えると嫌気性菌を含むがありうる。
  • 診断はで隔膜前後を鑑別し、や症状進行があれば造影CTを追加する。治療は入院下のが必須で、や10mm超の膿瘍では手術を検討する。

出典

  1. 1.Orbital Cellulitis(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)眼窩蜂窩織炎の86〜98%に副鼻腔炎の合併があり、汎副鼻腔炎と篩骨洞炎が眼窩蜂窩織炎に至りやすい副鼻腔炎の型であること、最も重要な鑑別点は眼球運動障害・眼球運動時痛・眼球突出の有無であること、眼窩・膿瘍の造影CT適応となる臨床所見があること、頭蓋内進展例または直径10mmを超える膿瘍では手術がほぼ必須の適応となることを確認した。閲覧 2026-08-11
  2. 2.Extrasinus Complications From Odontogenic Sinusitis: A Systematic Review(Otolaryngology–Head and Neck Surgery・2022)歯性副鼻腔炎の眼窩・頭蓋内合併症では嫌気性菌とα溶血性レンサ球菌の検出率が高く、好気性菌と嫌気性菌を覆う全身抗菌薬に加えて、合併症(眼窩・頭蓋内)と感染源(歯列と副鼻腔)の双方への外科的介入を伴うのが通例であること、質的解析に含まれた歯性副鼻腔炎の洞外合併症110例(75研究)のうちおよそ70%が眼窩合併症であったこと、合併症を伴う歯性副鼻腔炎の原因として最も多かったのが上顎大臼歯の根尖性歯周炎であったこと、副鼻腔炎の進展範囲と眼窩・頭蓋内合併症の間に関係が認められなかったことを抄録(Results・Conclusion)で確認した。全文は取得していない閲覧 2026-08-09
  3. 3.Orbital Cellulitis(American Academy of Ophthalmology (EyeWiki)・2026)眼窩蜂窩織炎は眼窩隔膜より後方の軟部組織の感染で隔膜前蜂窩織炎と異なり眼球突出・眼球運動時の痛みと制限・視神経障害を伴う視力低下を来すこと、双側性の眼球突出はほぼ海綿静脈洞血栓症の診断を意味すること、視神経障害を伴う場合や抗菌薬投与24〜48時間後の症状進行では造影CTが必要になること、起因菌はグラム陽性球菌が主体で9歳以下は単一菌がそれ以上の年齢では嫌気性菌を含む多菌性感染がありうること、治療は入院のうえ広域スペクトラムの静注抗菌薬の開始が必須であることを確認した。閲覧 2026-08-03
  4. 4.Sinogenic Orbital Complications(Deutsches Ärzteblatt International・2022)副鼻腔炎の眼窩合併症には海綿静脈洞血栓症などの頭蓋内波及リスクがあり、入院下の広域抗菌薬を基本として重症例や膿瘍ではドレナージを要すること閲覧 2026-08-09