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Disease Atlas · 耳鼻咽喉科 · 疾患

急性副鼻腔炎

Acute sinusitis

別名
急性鼻副鼻腔炎Acute rhinosinusitisABRS
臓器系
耳鼻咽喉科感染症
科目
OtorhinolaryngologyInternal Medicine
トピック
耳鼻咽喉科 32:急性・慢性鼻副鼻腔炎と治療原則内科学 I-05:上気道感染症・咽頭炎・中耳炎・副鼻腔炎・急性気管支炎
鑑別疾患
鼻茸
合併症
眼窩蜂窩織炎
治療薬
アモキシシリンクラブラン酸
原因微生物
Streptococcus pneumoniaeHaemophilus influenzaeMoraxella catarrhalis
症状
鼻汁顔面痛発熱
適応薬
ノルフロキサシン

🧠 全体像:は粘膜ので、その大半はウイルス性であり自然軽快する。診療の核心は「いつ細菌性を疑うか」を期間とな悪化パターンで線引きすることにある——10日を超える持続、重症な発熱+の初期持続、一度改善したあとの再増悪()のいずれかがあればを疑う。原因菌は肺炎球菌・・が中心で、治療は対症療法が主体、抗菌薬を使うにしてもまず経過観察という選択肢がある。まれだが見逃せないのがをはじめとする眼窩・である。

定義・分類

副鼻腔炎()は症状の持続期間で分類する1。

分類 期間
急性 4週未満
亜急性 4〜12週
慢性() 12週以上
再発性 症状が完全に消失する4週未満のエピソードが年4回以上

はさらにウイルス性とに分かれる。に伴うの大部分はウイルス性で、多くは治療しなくても軽快する。細菌感染へ進展するのはごく一部にとどまり、ウイルス性からの進展率は小児で約6〜13%、成人では約2%と報告されている1。

⚠️ 「があれば細菌性」ではない。 ウイルス性副鼻腔炎でもを伴うことがあり、単独の所見では細菌性を確定できない。細菌性を疑うかどうかは、後述する期間・重症度・経過パターンという3つの臨床基準で判断する。

原因菌

の主要な原因菌は次のとおりである1。

  • Streptococcus pneumoniae(肺炎球菌)
  • Haemophilus influenzae()
  • Moraxella catarrhalis
  • ・黄色ブドウ球菌(頻度は上記3菌種より低い)

これらはの主要原因菌ともほぼ重なる。副鼻腔・中耳のいずれも耳管・という狭い交通路の閉塞から感染が成立するという共通の病態を持つためである。

急性細菌性副鼻腔炎を疑う臨床基準

次の3パターンのいずれかがあれば、ウイルス性経過ではなくを疑う1。

パターン 基準
持続 改善の兆候なく10日を超えて症状が続く
重症 39℃以上の発熱と膿性が経過の最初に3〜4日以上持続
典型的なが一度改善したあと、発熱・・顔面痛が再増悪する
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='upper respiratory tract infection'>上気道炎</span>症状で発症"] --> B{"10日を超えて持続、または<br>重症な発熱+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='purulent nasal discharge'>膿性鼻汁</span>が3〜4日以上、<br>または一度改善後の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='double worsening / biphasic worsening'>二峰性増悪</span>があるか"}
    B -->|"いずれもなし"| C["ウイルス性副鼻腔炎として<br>対症療法・経過観察"]
    B -->|"いずれかあり"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute bacterial rhinosinusitis'>急性細菌性副鼻腔炎</span>を疑う"]
    D --> E{"眼窩・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intracranial complication'>頭蓋内合併症</span>を<br>疑う所見があるか"}
    E -->|"なし"| F["経過観察、または<br>抗菌薬(アモキシシリン±<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clavulanate'>クラブラン酸</span>)"]
    E -->|"あり(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='exophthalmos'>眼球突出</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='impaired ocular motility (ophthalmoparesis)'>眼球運動障害</span>・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='decreased visual acuity'>視力低下</span>・神経症状など)"| G["造影CTなど緊急画像評価へ"]

画像検査(・単純X線)はルーチンには不要で、合併症を疑う場合や診断が不確実な場合に限って行う。

慢性副鼻腔炎・鼻茸との違い

項目 (を伴う型が)
期間 4週未満 12週以上
主な機序 大半がウイルス性、一部が急性細菌感染 持続する(好酸球性)または
典型像 発熱・・顔面痛が急性に出現し軽快する 慢性の鼻閉・。を伴う型では内視鏡で灰白色の腫瘤を確認する
治療の軸 対症療法、細菌性なら短期抗菌薬 ・を長期継続、難治例で生物学的製剤・手術

⚠️ 「副鼻腔炎」という同じ語でも、急性と慢性は別の病態として扱う。 を繰り返しても自動的にになるわけではなく、の診断には12週以上の持続症状に加えて内視鏡またはでのな炎症所見が要る。はの一亜型であり、の合併症として現れるものではない。

合併症

の合併症はが最多で、合併症全体のおよそ80%を占める1。副鼻腔(特に)は薄い骨壁()と無弁の静脈網を介して眼窩・頭蓋内と直接交通しているため、炎症がその経路をたどって波及する。

  • :の86〜98%に副鼻腔炎の合併があり、・が波及しやすい2。・・・があれば強く疑う。
  • 、(両側性は強い手がかり)
  • (髄膜炎、、Pott’s puffy tumorなど)はまれだが重篤である1

⚠️ 眼窩・を疑う所見(、、抗菌薬投与後24〜48時間での症状進行など)があれば、抗菌薬選択の前に緊急の造影画像評価を優先する。

治療

  • 対症療法が中心。 加湿、温湿布、十分な水分摂取、によるが基本となる。抗ヒスタミン薬は推奨されず、局所(点鼻薬)は3〜5日を超えて使い続けない1。
  • は抗菌薬投与の明確な優位性を一貫して示していない——多くの(ウイルス性はもちろん、軽症の細菌性も含め)は対症療法だけで軽快する1。
  • 合併症のない成人では、まず経過観察を選ぶ選択肢がある3。
  • 抗菌薬を用いる場合の第一選択はアモキシシリン(単独またはとの配合剤)である。StatPearlsはアモキシシリン500 mgを1日3回・5〜10日間とし、との有効性は同等としている1。AAO-HNSの2025年更新ガイドラインは5〜7日間の投与とし、適切な抗菌薬投与でも3〜5日で改善しないか悪化する場合は再評価するとしている3。
  • ペニシリンアレルギーなどでは代替としてドキシサイクリンなどが検討される。

鑑別

疾患 鑑別点
12週以上持続する慢性の炎症性疾患で、のような急性期の発熱・顔面痛主体の経過ではなく、慢性の鼻閉・が主症状
期間(12週以上)と内視鏡・での所見の有無で急性と区別する

まとめ

  • 副鼻腔炎は症状期間で急性(4週未満)・亜急性(4〜12週)・慢性(12週以上)・再発性に分類する。
  • の大半はウイルス性で自然軽快する。細菌性への進展は小児で約6〜13%、成人で約2%にとどまる。
  • 細菌性を疑う基準は①10日を超える持続、②重症な発熱+の初期持続、③一度改善後ののいずれか。原因菌は肺炎球菌・・が中心。
  • 治療は対症療法が主体で、は抗菌薬の明確な優位性を示していない。合併症のない例では経過観察も選択肢で、抗菌薬を使うならアモキシシリン±を5〜10日程度。
  • 最多の合併症は(全体の約80%)で、からまで進展しうる。はまれだが重篤。
  • ・とは別の病態であり、期間と所見(内視鏡・)で区別する。

出典

  1. 1.Acute Sinusitis(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)副鼻腔炎は症状の持続期間で急性(4週未満)・亜急性(4〜12週)・慢性(12週以上)・再発性(4週未満で消失する急性エピソードが年4回以上)に分類されること、原因はウイルスが最多であり、ウイルス性上気道感染から細菌性副鼻腔炎へ進展する割合は小児で約6〜13%、成人で約2%にとどまること、細菌性の主要原因菌が肺炎球菌・インフルエンザ菌・モラクセラ・化膿レンサ球菌・黄色ブドウ球菌であること、細菌性副鼻腔炎を疑う臨床基準が①症状が10日を超えて持続、②39℃以上の発熱と膿性鼻汁が経過の初期に3〜4日以上持続、③最初の10日以内に一度改善したあと症状が再増悪する「二峰性増悪」のいずれかであること、合併症は眼窩合併症が最多(合併症全体の約80%)で眼窩蜂窩織炎から眼窩膿瘍・海綿静脈洞血栓症に至りうること、頭蓋内合併症(髄膜炎・硬膜下膿瘍・Pott's puffy tumorなど)はまれであること、第一選択の抗菌薬がアモキシシリン500mgを1日3回・5〜10日間でありペニシリン系とセファロスポリン系の有効性は同等であること、無作為化比較試験は抗菌薬投与の明確な優位性を一貫して示しておらず多くの症例が対症療法で軽快すること、対症療法として加湿・温湿布・水分摂取・生理食塩水による鼻洗浄が挙げられる一方で抗ヒスタミン薬は推奨されず局所血管収縮薬は3〜5日を超えて使用しないことを確認した。閲覧 2026-09-07
  2. 2.Orbital Cellulitis(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)眼窩蜂窩織炎の86〜98%に副鼻腔炎の合併があり、汎副鼻腔炎と篩骨洞炎が眼窩蜂窩織炎に至りやすい副鼻腔炎の型であること、最も重要な鑑別点は眼球運動障害・眼球運動時痛・眼球突出の有無であることを確認した。閲覧 2026-08-11
  3. 3.Clinical Practice Guideline: Adult Sinusitis Update(American Academy of Otolaryngology–Head and Neck Surgery Foundation(Otolaryngology–Head and Neck Surgery誌)・2025)合併症のない成人急性細菌性鼻副鼻腔炎では経過観察を優先する選択肢があり、抗菌薬を用いる場合はアモキシシリン単独またはクラブラン酸との配合剤を5〜7日間用い、適切な抗菌薬投与を行っても3〜5日で改善しないか悪化する場合には再評価すべきであること。閲覧 2026-08-09