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Microbe Atlas · 細菌

Moraxella catarrhalis

分類
G− 球菌 / Gram− cocciMoraxella
性状
Gram陰性 (G−)球菌 Cocci
科目
Medical Microbiology
トピック
2/8: Neisseria gonorrhoeae. Moraxella genus5/4: Bacteria causing air-borne upper respiratory tract infections (list) and their diagnostics
自然耐性薬
バンコマイシンクリンダマイシンリネゾリド
原因となる疾患
クループ・急性喉頭蓋炎・細菌性気管炎急性中耳炎・慢性中耳炎(滲出性中耳炎を含む)急性副鼻腔炎市中肺炎慢性副鼻腔炎
作用する薬剤
シタフロキサシンセフィキシムセフロキシム(-アキセチル)

🧠 全体像:(スイスの眼科医Moraxにちなむ)はと分類上はだが、同じの形態を持つ上気道の常在菌である。M. catarrhalisはその代表種で、臨床像は中耳炎・副鼻腔炎・増悪という限られた顔ぶれに集約されるが、の9割以上がβラクタマーゼを産生するという一点がを強く縛る——本菌を相手にするなら、単純なアモキシシリンやアンピシリンは効かないと想定して薬を選ぶ必要がある。ただしこれは1970年代以降に広がったであり、種として生まれつき効かないとは区別する。

微生物学的な特徴

、で、培養すると白色コロニーを呈する。。ヒトだけを宿主とし、主に上気道に定着する——定着率は乳幼児で高く、成人では大きく下がる1。

⚠️ 培養では咽頭の常在とよく似るため、気道検体で常在菌として見落とされうる1。

病原性の仕組み

  • 特別な莢膜・外毒素は持たず、上気道粘膜への定着そのものが病態の起点
  • ⭐ βラクタマーゼ(BRO型)をの9割以上が産生する——1970年以前には産生株が見つかっておらず、最初の産生株は1976年に分離された。その後急速に広がり、豪州・欧州・米国の研究での90%超が産生するようになった。BRO酵素の遺伝子は染色体上にあるが、接合で菌間を移り、GC含量からも他菌種に由来する比較的最近の獲得と考えられている2。ではβラクタマーゼ産生が一部の株に限られ、肺炎球菌はβラクタマーゼではなくの変異で耐性化するのと対照的に、本菌はβラクタマーゼ産生が既定とみなしてよい

感染経路と疫学

  • 上気道正常フローラとして定着し、の防御機構が破綻したときに隣接臓器(中耳・副鼻腔・気管支)へ進展する
  • 好発:小児(中耳炎・副鼻腔炎)、などの肺機能低下患者(気管支炎・増悪)

起こす疾患

疾患 特徴
・(を含む) 小児の主要な原因菌の一つで、の15〜20%を占める1
・ 原因菌の一つ(ではに関わる)
黄色ブドウ球菌が最多で、本菌は続く原因菌の一つ
・気管支炎 肺機能が低下した成人での主要な原因菌。米国では年間推定200〜400万件の増悪を起こしている1

診断

  • 喀痰・・検体のグラム染色・培養
  • 白色コロニー、で同定する

治療と予防

⚠️ 本菌に対しては、単純なアモキシシリン・アンピシリンは無効と想定する。 の9割以上がβラクタマーゼを産生し、産生株はペニシリン・アンピシリン・アモキシシリン・に耐性となる2。ただしこれはであり、非産生株にはこれらの薬が効く。

⚠️ 種として生まれつき効かない薬()は別にある。 の想定耐性表現型では、本菌は(単剤)に耐性で、グラム陰性菌としてバンコマイシンなどの・、クリンダマイシンなどの、リネゾリドなどのにも耐性と想定される3。

まとめ

  • の代表種。、、白色コロニー。上気道正常フローラの一部。
  • の9割以上がβラクタマーゼ(BRO型)を産生し、アモキシシリン・アンピシリン単剤は効かないと想定する。これは1970年代以降に広がったで、(、など)とは区別する。
  • 小児の中耳炎(の15〜20%)・副鼻腔炎、患者の気管支炎・増悪が主な臨床像。
  • 本菌を狙う治療はアモキシシリン/が基本で、・マクロライドも使える。

出典

  1. 1.Moraxella catarrhalis, a human respiratory tract pathogen(Clinical Infectious Diseases・2009)抄録(Europe PMC、PMID 19480579)で確認した。ヒトだけを宿主とする病原体で、小児の急性中耳炎の15〜20%を占めること、米国で成人のCOPD増悪を年間推定200〜400万件起こしていること、培養で常在のナイセリア属に似るため気道検体で見落とされうること、上気道への定着率は乳幼児で高く成人で大きく下がること、大多数の株がβラクタマーゼを産生してアンピシリンに耐性である一方、複数系統の経口抗菌薬には感受性を保つこと。閲覧 2026-09-27
  2. 2.Moraxella catarrhalis: from Emerging to Established Pathogen(Clinical Microbiology Reviews・2002)PMC全文(PMC118065)で確認した。1970年以前にβラクタマーゼ産生株は見つかっておらず、最初の産生株は1976年に分離されたが、その後急速に広がり、豪州・欧州・米国の研究で分離株の90%超が産生するようになったこと。酵素はBRO-1とBRO-2の2型で染色体上の遺伝子にコードされ、接合で菌間を移ること、GC含量から他菌種に由来する比較的最近の獲得と考えられること。いずれもβラクタマーゼ阻害薬で容易に失活し、全分離株がアモキシシリン・クラブラン酸に感受性であること。βラクタマーゼによるペニシリン系耐性とトリメトプリムへの生来の耐性を除けば、気道感染の治療薬の大半に感受性を保つこと。閲覧 2026-09-27
  3. 3.Expected Resistant Phenotypes, Version 1.2(European Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing (EUCAST)・2023)現行版(v1.2、2023年1月)のTable 3(腸内細菌目・ブドウ糖非発酵菌以外のグラム陰性菌)で、Moraxella catarrhalis(規則3.2)の想定耐性表現型はトリメトプリムであり、表題で同群がグリコペプチド系・リポグリコペプチド系・リンコサミド系・オキサゾリジノン系にも想定耐性とされていることを確認した。アンピシリン・アモキシシリンなどのβラクタム系はこの表に挙げられていない。閲覧 2026-09-27