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Disease Atlas · 呼吸器 · 疾患

市中肺炎

Community-acquired pneumonia

別名
CAP
臓器系
呼吸器感染症
科目
PulmonologyInternal MedicineAnesthesiologyPathology
トピック
呼吸器内科 25:肺炎内科学 I-07:市中肺炎内科学 L-17:肺炎麻酔科学 A-12:肺炎のICU入室適応と治療病理学 C/24:肺感染症(結核以外)
鑑別疾患
器質化肺炎気管支喘息急性胸部症候群結核肺癌肺塞栓症慢性心不全
合併症
胸水
続発疾患
敗血症急性呼吸窮迫症候群
関連疾患
レジオネラ症
治療薬
アモキシシリンドキシサイクリンアジスロマイシンセフトリアキソンレボフロキサシンバンコマイシンリネゾリドオセルタミビルヒドロコルチゾンセフタロリンホサミルセフロキシム(-アキセチル)
原因微生物
Streptococcus pneumoniaeHaemophilus influenzaeMoraxella catarrhalisMycoplasma pneumoniaeLegionella pneumophilaInfluenza A virusChlamydophila pneumoniaeSARS-CoV-2Human adenovirusRSウイルスヒトメタニューモウイルスStaphylococcus aureusPseudomonas aeruginosa
症状
悪寒胸痛倦怠感呼吸困難発熱頻呼吸頻脈低血圧乏尿喀血喀痰
検査値
C反応性蛋白(CRP)プロカルシトニン低酸素血症
画像所見
気管支透亮像コンソリデーション肺空洞
スコア
CURB-65肺炎重症度指数
組織像
気管支肺炎大葉性肺炎大葉性肺炎・黄色肝変(肉眼標本)
下位分類
マイコプラズマ肺炎(非定型肺炎)
元疾患
インフルエンザ新型コロナウイルス感染症百日咳
原因となる疾患
慢性閉塞性肺疾患
適応薬
セフォペラゾンテイコプラニン

🧠 全体像は、市中で獲得した微生物が肺胞・を起こし、呼吸器症状と新規を生じる疾患である。診療の軸は「肺炎らしさを画像で確かめる」「重症度から治療場所を決める」「通常病原体を確実に治療し、MRSA・緑膿菌は個別リスクがあるときだけ広げる」「を確認して化・短期化する」の4点である。

定義と位置づけ

は、入院前または入院直後に発症が確認され、ではない急性肺実質感染である。基本的な診療指針は免疫正常成人を対象とし、好中球減少、臓器移植、進行したHIV感染、強い免疫抑制治療などがある患者では、感染を含む別の診断・治療経路が必要となる。

「典型肺炎/非定型肺炎」という区別は病原体の性質を学ぶには役立つが、症状や画像だけで原因を正確に判別できない。は、このではなく重症度、併存症、疫学、過去の培養、地域の薬剤感受性に基づいて選ぶ。

病原体と危険因子

病原体は検査を尽くしても同定できないことが多く、地域、季節、年齢、ワクチン歴、検査法によって構成が変わる。肺炎球菌は重要な細菌性原因だが、も考慮する。

病原体群 代表例 疑う手掛かり
一般細菌 Streptococcus pneumoniaeHaemophilus influenzaeMoraxella catarrhalis 高齢、COPD、喫煙、、慢性心肺疾患
細胞内・細胞壁欠如病原体 Mycoplasma pneumoniaeChlamydophila pneumoniaeLegionella pneumophila 集団発生、若年、汚染水、旅行歴。低Na血症や下痢は補助所見にすぎない
インフルエンザSARS-CoV-2RSVなど 季節・流行、接触歴、上。陽性でもは除外できない
特殊リスク病原体 MRSAPseudomonas aeruginosa 過去の呼吸器検体からの分離、最近の入院・、局所で検証された危険因子

インフルエンザ後の急速な悪化、壊死・、喀血では黄色ブドウ球菌を考える。構造的肺疾患、過去の緑膿菌分離、反復する曝露では緑膿菌リスクを評価する。一方、介護施設居住や医療接触というラベルだけで広域薬を自動的に選ばない。

病態

多くは口咽頭分泌物の微小誤嚥または感染性の吸入から始まる。、分泌型免疫、を病原体量・が上回ると炎症が肺胞へ広がる。

flowchart TD
    A["微小誤嚥・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='respiratory droplets'>飛沫</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='aerosol'>エアロゾル</span>吸入"] --> B["気道防御・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alveolar macrophages'>肺胞マクロファージ</span>を突破"]
    B --> C["サイトカイン放出・好中球流入"]
    C --> D["肺胞内に蛋白・細胞・フィブリンが滲出"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alveolar consolidation'>肺胞性浸潤影</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bronchial breathing'>気管支呼吸音</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='crackles (lung); crepitus (joint)'>捻髪音</span>"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='V/Q mismatch'>換気血流比不均衡</span>・シャント"]
    F --> G["低酸素血症・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='work of breathing'>呼吸仕事量</span>増大"]
    C --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pleurisy'>胸膜炎</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='parapneumonic effusion'>肺炎随伴性胸水</span>"]
    C --> I["菌血症・全身炎症"]
    I --> J["敗血症・多臓器障害"]

ではうっ血、、消退という古典的組織像を取り得る。ではから斑状に炎症が広がる。ただし、実際の病変は抗菌薬、宿主、病原体、発症時点により混在し、形態だけで原因微生物は確定できない。

臨床像

  • 発熱悪寒喀痰呼吸困難、胸膜性胸痛
  • 頻呼吸頻脈、低酸素血症、
  • 高齢者や虚弱者では発熱・咳が乏しく、せん妄、転倒、食欲低下、機能低下だけで現れることがある。
  • 低血圧、意識変容、増加、乏尿、乳酸上昇、急速な画像悪化は重症化の徴候である。
合併症 主な所見・対応の方向
肺炎随伴性胸水 胸痛、胸水増加、隔壁化。超音波と胸水穿刺で評価し、はドレナージ
空洞、悪臭痰、喀血、遷延熱。を検索し、病原体に応じ治療を延長
呼吸不全・ARDS 増加、両側陰影。を含む臓器支持
敗血症・ショック 低血圧、乳酸上昇、臓器障害。適時の抗菌薬、循環蘇生、
心筋梗塞、不整脈、心不全が急性期に併発し得る

診断

肺炎の確認

診断は、急性呼吸器症状・感染徴候と、胸部画像上の新規浸潤影を組み合わせる。所見、CRP、白血球、はいずれも単独では確定・除外できない。

flowchart TD
    A["急性の咳・発熱・呼吸困難・胸痛"] --> B["ABCDE・SpO₂・血圧・意識を評価"]
    B --> C["胸部X線<br>熟練者がいれば<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lung ultrasound'>肺超音波</span>も選択可"]
    C --> D{"新規浸潤影と臨床像が整合するか"}
    D -->|"はい"| E["CAPとして<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Pneumonia Severity Index'>PSI</span>・酸素化・臓器障害を評価"]
    D -->|"不明・不整合"| F["CTまたは<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alternative diagnosis'>代替診断</span>を検討"]
    E --> G{"重症またはMRSA・緑膿菌リスクがあるか"}
    G -->|"はい"| H["血液培養・良質な下気道検体・病原体検査"]
    G -->|"いいえ"| I["必要検査を絞る"]
    H --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='empiric therapy'>経験的治療</span>を遅らせず開始"]
    I --> J
    J --> K["48〜72時間で反応と微生物結果を再評価"]

胸部X線で不明瞭でも疑いが強い、肺塞栓・腫瘍・閉塞・膿瘍を疑う、再発または治療不応の場合はCTを検討する。は適切な技能がある施設では胸部X線の代替となり得るが、肺塞栓や腫瘍など別疾患の評価を置き換えない。

微生物学的検査

状況 優先する検査
軽症外来 喀痰・血液培養をルーチンには行わない
重症CAP 抗菌薬前の血液培養、良質な喀痰または下気道検体、分子検査
MRSA・緑膿菌を経験的にカバー 培養を必ず採取し、MRSAでは鼻腔PCRも中止判断の補助にする
の疫学リスクまたは重症CAP 尿中抗原に加え、可能なら下気道検体の培養・
インフルエンザ流行時 抗原検査より分子検査を優先する

が低値でも、臨床・画像上CAPが成立する患者の初期抗菌薬を一律に控えない。ウイルス陽性時は、病原ウイルス、の所見、併存症、重症度、追跡可能性を統合する。

鑑別診断

心不全肺塞栓症COPD喘息増悪、、肺胞出血、肺癌結核を考える。48〜72時間で改善しなければ、耐性・未カバー病原体だけでなく、、薬剤有害事象を系統的に再評価する。

重症度と治療場所

入院判断にはを優先し、を簡便な補助として使う1。どの点数も低酸素血症、急速な悪化、経口摂取不能、重い併存症、支援不足を上書きしない。

評価 構成・解釈
年齢、併存症、身体所見、検査・画像から死亡リスクをI〜V群へ層別化。I〜II群は外来候補、III群は短期観察、IV〜V群は入院を考慮
新規意識障害、尿素 >7 mmol/L、呼吸数 ≥30/分 <90 mmHgまたは ≤60 mmHg、65歳以上を各1点
臨床判断 SpO₂・、臓器障害、服薬・摂食能力、妊娠、虚弱、支援、迅速な再診可能性

ICUへ直接入室すべきは、侵襲的を要する呼吸不全、またはを要するである。がなくても、次のが3項目以上なら重症CAPとしてICU管理を評価する。

閾値・所見
呼吸 呼吸数30/分以上、またはPaO₂/FiO₂比250以下
画像 多葉性浸潤影
神経 新規の混乱・
BUN 20 mg/dL以上
血液 白血球4,000/μL未満、または血小板100,000/μL未満
体温 36℃未満
循環 積極的輸液を要する低血圧

治療

経験的抗菌薬

場面 基本方針
外来・併存症なし アモキシシリンまたはドキシサイクリン。マクロライド単剤は肺炎球菌耐性率が地域で25%未満の場合のみ
外来・併存症あり アモキシシリン/または選択したにマクロライド/ドキシサイクリンを併用、あるいは単剤
入院・非重症 βラクタム+マクロライド、または単剤。両者に禁忌があればβラクタム+ドキシサイクリンを検討
入院・重症 βラクタム+マクロライド、またはβラクタム+

具体的薬剤・用量は、地域、薬剤アレルギー、腎肝機能、QT延長、血管系有害事象、妊娠、薬物相互作用、直近の抗菌薬曝露に合わせる。

  • MRSA:過去の呼吸器分離や局所で検証された高リスクがあればバンコマイシンまたはリネゾリドを追加し、培養・鼻腔PCRで早期中止を判断する。
  • 緑膿菌:過去の分離、最近の入院と、構造的肺疾患、局所疫学を基に抗緑膿菌薬を追加する。
  • 誤嚥:またはを疑わない限り、標準CAP治療に嫌気性菌カバーを定型追加しない。
  • インフルエンザ:入院・重症・高リスク患者には発症48時間を超えていてもなどを早期に開始する。

ウイルス陽性の外来患者で併存症がなく、の可能性が低く、確実に追跡できる場合は、 2025更新では経験的抗菌薬を処方しない選択が条件付きで示された。併存症がある外来患者と、非重症・重症を問わない入院患者では、同更新はを考えて初期抗菌薬を行い、経過と検査で中止・化する方針を示す2。ただし、この更新はの承認を得ておらず、IDSAはウイルス陽性の併存症あり外来例と非重症入院例への一律投与ではなく、細菌感染の可能性をに評価する個別判断を支持している3。エビデンス確実性は非常に低く、病原ウイルス、重症度、、局所疫学、追跡可能性を統合する。

支持療法と感染源制御

  • 低酸素血症には制御酸素を投与し、HFNC・NIV・侵襲的換気への移行を反応に応じて判断する。
  • ARDSでは低、適切なPEEP、適応例でを用いる。
  • では循環反応を反復しながら晶質液を投与し、ノルアドレナリンを第一選択とする。
  • は抗菌薬だけでなくを行う。

副腎皮質ステロイド

非重症の入院CAPにはを投与しない。 2025更新は重症CAPに早期全身性ステロイドを条件付きで提案するが、インフルエンザ肺炎は対象外であり、高血糖、、消化管出血などの害を評価する2。COPD・、ARDS、難治性など別の適応は独立して判断する。

治療期間と再評価

体温、心拍、呼吸数、血圧、酸素化、意識、経口摂取が安定し、初期治療開始後3日以内に改善していることを確認して期間を決める。

  • 外来および選択した非重症入院CAP:に達していれば、最低3日を確保した5日未満の治療を検討できる2
  • 重症CAP:5日以上を基本とする。
  • 黄色ブドウ球菌、緑膿菌、、菌血症性遠隔感染、免疫不全では、病原体・・反応に応じて延長する。

初診時に固定日数を機械的に決めず、毎日、静注から経口への切替、不要薬の中止、化、合併症の有無を見直す。

予防

  • 年齢・基礎疾患・地域推奨に応じた肺炎球菌、インフルエンザ、COVID-19、RSVワクチン。
  • 禁煙、口腔衛生、慢性心肺疾患・糖尿病の管理。
  • 誤嚥リスクがある患者の嚥下評価、食事姿勢、鎮静薬の見直し。
  • 症状が予定どおり改善した患者には、CAPだけを理由とした胸部画像のな反復を行わず、肺癌リスク、遷延症状、反復部位に応じて再画像を選ぶ。

まとめ

  • は急性呼吸器症状と新規で診断し、単独では確定・除外しない。
  • 、酸素化、臓器障害、社会背景から外来・病棟・ICUを決める。
  • 標準CAP治療を基礎に、MRSA・緑膿菌カバーは検証された個別リスクがある場合だけ追加する。
  • ウイルス陽性CAPの抗菌薬は、重症度・併存症・の可能性を統合し、開始後も検査と経過から中止・化を判断する。
  • 治療期間はで決め、非重症の選択例では最低3日の短期治療、重症例では5日以上を基本とする。
  • 非重症CAPにステロイドを定型投与せず、重症CAPではインフルエンザを除外して利益と害を個別評価する。

出典

  1. 1.Diagnosis and Management of Community-acquired Pneumonia: An Official American Thoracic Society Clinical Practice Guideline(American Thoracic Society・2025)ウイルス陽性CAPへの経験的抗菌薬(併存症なし外来は非投与、併存症あり外来・入院は投与)、重症CAPへの全身性ステロイド(インフルエンザ肺炎を除く)、非重症例の抗菌薬期間(最低3日を確保した5日未満)を確認した。閲覧 2026-08-03
  2. 2.Infectious Diseases Society of America (IDSA) Position Statement: Why IDSA Did Not Endorse the Community-Acquired Pneumonia Guidelines 2025 Update(Infectious Diseases Society of America・2026)IDSAがATS 2025更新の10推奨中2件(併存症あり外来のウイルス陽性例、非重症入院のウイルス陽性例への一律抗菌薬投与)に不同意で承認を保留したことを確認した。閲覧 2026-08-03
  3. 3.Diagnosis and Treatment of Adults with Community-acquired Pneumonia. An Official Clinical Practice Guideline of the American Thoracic Society and Infectious Diseases Society of America(American Thoracic Society / Infectious Diseases Society of America・2019)入院適応の判断にPSIを優先しCURB-65を補助的に用いる推奨を確認した。閲覧 2026-08-03