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Disease Atlas · 呼吸器 · 疾患

薬剤性肺障害

Drug-induced lung injury

別名
薬剤性間質性肺炎
臓器系
呼吸器腫瘍
科目
Internal MedicineAnesthesiology
トピック
内科学 L-17:肺炎麻酔科学 A-13:急性呼吸窮迫症候群の病態・症状・診断・治療
上位概念
間質性肺疾患
鑑別疾患
放射線肺臓炎
治療薬
プレドニゾロン
原因薬剤
ブレオマイシンアミオダロンメトトレキサートニトロフラントインニボルマブペムブロリズマブ
症状
乾性咳嗽労作時呼吸困難
検査値
拡散能(DLCO)
画像所見
すりガラス影コンソリデーション

🧠 全体像は「何十種類もの薬が何種類もの肺炎パターンを起こしうる」という広さゆえに、列挙しようとすると際限がなくなる主題である。本稿は幹を一本だけ立てる——HRCT・病理パターン(型・非特異性型・型・型・型)で分類し、パターンごとに代表薬を1〜2剤だけ覚えるという整理である。⚠️ どのパターンであってもであり、の中止こそが唯一確実な治療であるという一点は共通する。近年はによるが臨床で最も頻繁に遭遇する型になっている。

間質性肺疾患の中での位置づけ

は原因別に「特発性関連・・薬剤性・」という5つの引き出しに分類され、薬剤性はそのひとつを占める。本稿はこの「薬剤性」の引き出しの中身を展開するノートであり、のように単一の病理パターンを主題とするノートとは違い、複数のパターンにまたがる原因側の整理を担う。

パターンで分ける——代表薬は各1〜2剤

薬は「ほぼ全てのパターン」を起こしうるが、代表薬を1〜2剤に絞って覚えれば実地では十分機能する1

パターン 代表薬 特徴
型(OP) 胸膜下・優位の斑状。ステロイドに反応しやすい1
メトトレキサート 主体でを欠く1
型(HP) メトトレキサート 腫性の炎症反応。・BCG療法でも報告される1
型(DAD) 最も重症度が高い型。様の像を呈しうる
急性・慢性いずれの経過も取りうる
関連 単一のパターンに収まらず、が最多で非特異性が続く2

💡 「1剤=1パターン」に固定しない。 同じ薬でも患者によって異なるパターンを取りうる(例:はNSIP・のいずれも起こしうる)。表の「代表薬」は覚えやすさのための代表例であり、そのものを省略してよい根拠にはならない。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='culprit (suspected) drug'>被疑薬</span>の投与歴がある患者に<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='effort dyspnea'>労作時呼吸困難</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dry cough'>乾性咳嗽</span>が出現"] --> B["感染・心不全・腫瘍進行・肺塞栓など<br>他の原因を系統的に除外"]
    B --> C{"他の原因を除外できたか"}
    C -->|"いいえ"| D["薬剤性以外の原因を優先して評価"]
    C -->|"はい"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='drug-induced lung injury'>薬剤性肺障害</span>を疑う"]
    E --> F["HRCTパターンを確認し<br>5つの型に分類"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='culprit (suspected) drug'>被疑薬</span>を中止"]
    G --> H{"重症・進行性か"}
    H -->|"はい"| I["全身ステロイドを開始"]
    H -->|"いいえ"| J["中止のみで経過観察"]

診断は除外診断

⚠️ を裏付ける単一の検査は存在しない。 薬剤歴(新規開始・増量のタイミングと症状出現の時間的関係)、他の原因(感染、心不全、腫瘍進行、肺塞栓、の他の原因)の系統的な除外、HRCTパターンの評価を組み合わせて総合的に診断する1。生検が診断を確定させることもあるが、典型像がそろえば臨床診断で治療を開始することも多い。

免疫チェックポイント阻害薬関連肺臓炎——近年の主要な型

ICI関連は、他のと違い単一のHRCTパターンに収まらない。 PD-1/PD-L1阻害薬による頻度はで2.7〜10%、肺癌における実臨床データでは9.5〜15%とより高く報告され、発症時期の中央値は約34週(範囲1.5〜127週)だが多くは治療開始6〜8か月以内に生じる2。画像パターンはが最も多く、非特異性がこれに続く2

管理は重症度グレードに応じて段階づけられる——Grade 1はのうえ経過観察、Grade 2〜4は全身ステロイドを開始し、Grade 3〜4ではさらに高用量ステロイドに加え、ステロイド抵抗例へを追加する2など、ASCO/NCCNのirAE管理ガイドラインに準拠した薬剤が用いられる)。⚠️ の既往・併用は、ICI関連の感受性を高めるため、胸部放射線治療歴のある患者ではどちらが主体かの鑑別が特に重要になる。

危険因子とモニタリング

に依存するもの(など)と、的に生じるもの(型・型に多い)を区別すると理解しやすい。依存性の薬剤では、投与前の(特に・DLCO)をとして確認し、投与中も定期的に追跡することで早期発見につなげる。高濃度酸素投与・放射線治療歴・既存の肺疾患・高齢は、多くの薬剤でを増強する共通の増悪因子である。

治療——除外診断であり、被疑薬の中止が唯一確実な治療

⚠️ の治療の土台は「を中止すること」であり、これに代わる治療はない。 中止のみで軽快する軽症例もあれば、中止に加えて全身ステロイドを要する例もある1。ステロイドが効くのは炎症を鎮める対症療法としてであり、を継続したまま治療しても病態の進行を止められない。

の再投与は原則として避けるが、代替薬がない悪性腫瘍治療などでは、リスクとを慎重に検討したうえで個別に判断されることがある。

まとめ

  • 型・非特異性型・型・型・型のいずれのパターンも取りうるが、代表薬を1〜2剤に絞って覚えれば実地で十分機能する。
  • 診断はであり、単一の確定検査はない。薬剤歴・他疾患の除外・HRCTパターンを総合して判断する。
  • ⚠️ 治療の唯一確実な柱はの中止であり、ステロイドは炎症を鎮める対症療法にとどまる。
  • 関連は近年最も頻繁に遭遇する型で、単一パターンに収まらず、重症度グレードに応じた段階的な対応が必要になる。
  • とは、胸部放射線治療とICIを併用する患者で特に鑑別が問題になる。

出典

  1. 1.Pulmonary Complications of Cancer Therapy: Clinical Presentations, Imaging Patterns, and Management Strategies(Medicina (Kaunas, Lithuania)・2026)薬剤性肺障害の診断が除外診断であること、原因薬の中止が治療の基本であること(Drug-Induced Lung Injury節)、免疫チェックポイント阻害薬関連肺臓炎の頻度がPD-1/PD-L1阻害薬で2.7〜10%(肺癌における実臨床データでは9.5〜15%)、発症時期の中央値が約34週(範囲1.5〜127週、多くは治療開始6〜8か月以内)であること、画像パターンは器質化肺炎が最多で次いで非特異性間質性肺炎・びまん性肺胞傷害であること、グレードに応じてGrade 1は休薬・経過観察、Grade 2〜4は全身ステロイド、Grade 3〜4はさらに高用量ステロイドと二次治療の追加が推奨されること(3.2節)を確認した。閲覧 2026-08-12
  2. 2.Drug induced interstitial lung disease(The Open Respiratory Medicine Journal・2012)薬剤性間質性肺疾患の診断が除外診断であり他の原因を系統的に除外する必要があること(Diagnostic Procedures節)、治療の第一段階が原因薬の中止であること(Treatment節)、ブレオマイシンが結節性の器質化肺炎パターンを特徴的に起こすこと、メトトレキサート・抗TNF薬・BCG療法が過敏性肺炎パターンを、アミオダロン・メトトレキサート・カルムスチンが非特異性間質性肺炎パターンを起こしうること、ミノサイクリン・ブレオマイシン・アミオダロン・フェニトインを含む35以上の薬剤が器質化肺炎(BOOP)の原因として報告されていること(Histologic Findings節)を確認した。閲覧 2026-08-12