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Disease Atlas · 呼吸器 · 疾患

好酸球性肺炎

Eosinophilic pneumonia

臓器系
呼吸器免疫・膠原病
科目
Internal MedicineAnesthesiologyMedical Microbiology
トピック
内科学 S-05:間質性肺疾患麻酔科学 A-13:急性呼吸窮迫症候群の病態・症状・診断・治療微生物学 5/23:真菌性・寄生虫性の肺感染の病原体(一覧)
鑑別疾患
アスペルギルス症(ABPA)急性呼吸窮迫症候群好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
治療薬
プレドニゾロンメチルプレドニゾロン
原因薬剤
ニトロフラントイン
原因微生物
Ascaris lumbricoidesStrongyloides stercoralisToxocara canisToxocara cati
症状
乾性咳嗽労作時呼吸困難発熱
検査値
好酸球増多血中好酸球数
画像所見
すりガラス影コンソリデーション

🧠 全体像は「急性型と慢性型は別の病気」と割り切ると読みやすい。両者とも好酸球が肺胞・気道に浸潤する点は共通し、の好酸球比率(急性>25%、慢性>40%)で診断する枠組みも共通するが、・誘因・末梢血好酸球の有無・は対照的である。⚠️ は喫煙の開始・再開が典型的な誘因で、数日〜2週間という急速な経過で低酸素血症に至り、末梢血好酸球増多を欠くことが多いため診断がBALに依存する。一方は喘息の既往が多く末梢血好酸球増多を伴う亜急性〜慢性の経過をとり、再発しやすい。⭐ どちらも副腎皮質ステロイドに劇的に反応するという一点は共通する。

AEPとCEP——別の病気として読む

経過 数日〜2週間で急速に進行し急性呼吸不全に至りうる1 数週〜数か月の亜急性〜慢性経過
典型的な誘因 ⚠️ 喫煙の開始・再開(新規喫煙者が78%、発症までの中央値1か月〈範囲2週間〜2か月〉)2 特発性が多いが、喘息の既往が3分の1〜2分の1にみられる3
末梢血好酸球 初診時は増多を欠くことが多い——診断はBALに依存する1 ほとんどの症例でみられ、多くは1,000/mm³を超える3
BAL好酸球閾値 25%超1 40%超が多い1
胸部画像 両側びまん性浸潤影、、胸水を伴うことがある 中〜上優位の末梢性浸潤影。「肺水腫の陰画」は古典的だが大多数の症例では見られない3
ステロイドへの反応 劇的。数日で改善 ⭐ 劇的。症状・末梢血好酸球は数時間、画像所見も数日で改善3
再発 まれ 最大50%で中・中止後に再発3

急性好酸球性肺炎(AEP)

⚠️ 喫煙開始・再開が典型的な誘因である。 イラク近辺へ展開した米軍人を対象とした疫学調査では、AEP患者18例中14例(78%)が新規喫煙者であり、その喫煙開始は発症の中央値1か月前(範囲2週間〜2か月前)だった2。それまで喫煙歴のなかった患者が喫煙を始めて数週間以内に急性の発熱・呼吸困難で受診した場合、AEPを鑑別に挙げる。

は、急性の発熱性呼吸器症状、胸部画像での両側びまん性浸潤影、BALでの好酸球25%超(または生検での所見)、そして他の好酸球増多の原因の除外である4。⭐ 末梢血好酸球増多を欠くことが多いため、末梢血だけで除外してはならない——診断の決め手はBALである1。急速に進行し様の像を呈することがあるが、ARDSと異なりステロイドに劇的に反応するため、両者の鑑別はに直結する。

慢性好酸球性肺炎(CEP)

喘息の既往が3分の1〜2分の1にみられ、末梢血好酸球増多はほとんどの症例で認められ多くは1,000/mm³を超える3

💡 「肺水腫の陰画」は教科書的な古典像だが、実際にこの所見を示す症例は大多数ではない。 末梢優位のが中〜上に分布するという記載であり、肺水腫の分布(中心性・優位)とちょうど逆になることからこう呼ばれるが、典型像がそろわない症例の方が多いことを念頭に置く3

ステロイドへの反応は劇的で、症状と末梢血好酸球は数時間で軽快し、画像所見も数日で正常化する3。ただし⚠️ 中または中止後に最大50%で再発するため3、総投与期間は3か月以上、最適には6〜9か月にわたる緩徐なを要する1

鑑別——好酸球性肺浸潤を来す他疾患

疾患 見分ける手がかり
難治性喘息が先行し、血管炎期には・糸球体腎炎など血管炎としての臓器障害を伴う。はEGPAの一部分症としても起こりうる
・嚢胞性線維症患者に多く、血清総IgE高値・Aspergillus陽性・中枢性気管支拡張が特徴3
(寄生虫性) Ascaris lumbricoidesStrongyloides stercoralisToxocara canisなどが肺を一過性に通過する際に起こる遊走性・自然軽快性の浸潤影3
薬剤性 などが代表薬。詳しいパターン別整理はを参照。の中止で軽快することが鑑別の手がかりになる3

診断の進め方

flowchart TD
    A["急性〜亜急性の呼吸器症状+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonary infiltrate'>肺浸潤影</span>"] --> B["薬剤歴・喫煙開始歴・寄生虫曝露歴・喘息歴を聴取"]
    B --> C["末梢血<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blood eosinophil count'>好酸球数</span>を確認"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='BAL'>気管支肺胞洗浄</span>を施行"]
    D --> E{"BAL好酸球は"}
    E -->|"25%超・数日の経過"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='AEP'>急性好酸球性肺炎</span>"]
    E -->|"40%超・亜急性〜慢性の経過"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='CEP'>慢性好酸球性肺炎</span>"]
    F --> H["薬剤性・寄生虫性・EGPA・ABPAを除外"]
    G --> H
    H --> I{"除外できたか"}
    I -->|"できた"| J["特発性として副腎皮質ステロイドを開始"]
    I -->|"できない"| K["原因治療(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='culprit (suspected) drug'>被疑薬</span>中止・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deworming (anthelmintic treatment)'>駆虫</span>治療・EGPA/ABPAの治療)"]

治療

副腎皮質ステロイドが治療の中心であり、いずれの型でも劇的に反応する。 が基本だが、AEPでを来した重症例ではの静注から開始することがある。CEPは中・中止後の再発が多いため、症状・画像所見が消失してから2週間以上、総投与期間3か月以上(最適には6〜9か月)にわたり緩徐にする1。寄生虫性のでは、ステロイドの前に治療の要否を評価する。

まとめ

  • はAEPとCEPで別の病気として読む。AEPは喫煙開始・再開が典型的誘因で数日〜2週間の急速な経過、末梢血好酸球増多を欠くことが多くBALで診断する。CEPは喘息既往が多く亜急性〜慢性の経過、末梢血好酸球増多を伴い再発しやすい。
  • 「肺水腫の陰画」はCEPの古典的所見として知られるが、実際にこの像を示す症例は大多数ではない。
  • 鑑別はEGPA・ABPA・寄生虫性()・薬剤性の4方向に整理する。
  • ⭐ いずれの型もステロイドに劇的に反応するが、CEPは中・中止後に最大50%で再発するため長期の緩徐なを要する。

出典

  1. 1.Eosinophilic Pneumonia(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)急性好酸球性肺炎(AEP)が2週間以内に症状が進行する急速な経過をとること、気管支肺胞洗浄(BAL)で好酸球25%超を示すことが診断基準の一つであること、初診時には末梢血好酸球増多を欠くことが多いこと(History and Physical・Evaluation節)、慢性好酸球性肺炎(CEP)は数か月にわたる亜急性の経過をとり、BAL好酸球が40%を超えることが多いこと、末梢血好酸球増多をほとんどの症例で認めること(Evaluation節)、CEPの治療では症状・画像所見が消失してから2週間後まで、あるいは総投与期間3か月以上・最適には6〜9か月にわたるプレドニゾン漸減を要すること(Treatment/Management節)を確認した。閲覧 2026-08-12
  2. 2.Idiopathic chronic eosinophilic pneumonia(Orphanet Journal of Rare Diseases(Marchand E, Cordier JF)・2006)特発性慢性好酸球性肺炎(ICEP)患者の3分の1から2分の1が喘息の既往を持つこと、末梢血好酸球増多がほとんどの症例でみられ多くは1,000/mm3を超えること(Abstract)、「肺水腫の陰画」という古典的な胸部X線所見はICEP症例の**大多数では認められない**こと(Chest Imaging節)、ステロイド投与後は症状・末梢血好酸球が数時間で軽快し胸部画像所見も数日で正常化するほど反応が劇的であること(Treatment節)、ステロイド漸減中または中止後にICEP患者の最大50%で再発がみられること(Long-term Outcome節)、鑑別として好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(Churg-Strauss症候群)・アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)・薬剤性好酸球性肺炎・寄生虫感染(Löffler症候群の原因となるAscaris lumbricoides、Toxocara canisなど)を挙げていること(Differential Diagnosis節)を確認した。閲覧 2026-08-12
  3. 3.Acute Eosinophilic Pneumonia Following Secondhand Cigarette Smoke Exposure(Tuberculosis and Respiratory Diseases・2014)急性好酸球性肺炎(AEP)の診断基準として、急性の発熱性呼吸器症状、胸部画像での両側びまん性浸潤影、BAL好酸球25%超または生検での好酸球性肺炎所見、既知の好酸球増多原因の除外が用いられること(Introduction節)を確認した。閲覧 2026-08-12
  4. 4.Acute Eosinophilic Pneumonia Among US Military Personnel Deployed in or Near Iraq(JAMA(Shorr AF, Scoville SL, Cersovsky SB, et al.)・2004)2003年3月〜2004年3月にイラク近辺へ展開した米軍人183,000人中18例の急性好酸球性肺炎(AEP)を同定したこと、うち14例(78%)が新規喫煙者であったこと、新規喫煙者群は発症の中央値1か月前(範囲2週間〜2か月前)に喫煙を開始していたこと(Results節「Epidemiologic Evaluation」)を確認した。閲覧 2026-08-12