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Disease Atlas · 呼吸器 · 症候群

Löffler症候群

Löffler syndrome

別名
Loeffler syndrome単純性肺好酸球増多症Simple pulmonary eosinophilia
臓器系
呼吸器感染症
科目
Medical Microbiology
トピック
微生物学 5/23:真菌性・寄生虫性の肺感染の病原体(一覧)微生物学 4/35:回虫。鞭虫微生物学 4/31:ズビニ鉤虫とアメリカ鉤虫
鑑別疾患
アスペルギルス症(ABPA)好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)好酸球性肺炎好酸球増多症候群熱帯性肺好酸球増多症
治療薬
メベンダゾールアルベンダゾールイベルメクチンプレドニゾロン
原因微生物
Ascaris lumbricoidesAncylostoma duodenaleNecator americanusStrongyloides stercoralis
症状
咳喘鳴呼吸困難発熱
検査値
血中好酸球好酸球増多
画像所見
肺浸潤影

🧠 全体像:を読む軸は「移動する影・増える好酸球・軽い症状」という三徴に尽きる。回虫・鉤虫・などの幼虫が生活環の途中で肺を通過する際、宿主の反応が一過性に肺を襲う——これが胸部X線で「今日はここ、数日後には別の場所」と遊走する浸潤影として映る。本体は感染症というより幼虫通過に対するであり、することが多い。⚠️ 見落とされやすいのは、この時期にを投与しても効かないばかりか悪化させうるという一点で、治療のタイミングを理解することが臨床上の核心になる。

病態:幼虫の肺通過に対する好酸球性炎症

flowchart TD
    A["回虫・鉤虫・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Strongyloides stercoralis'>糞線虫</span>などの<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='infective larva'>感染幼虫</span>を経皮・経口的に獲得"] --> B["幼虫が血流に入り<br>肝臓を経て肺へ到達"]
    B --> C["肺胞・気道壁を幼虫が通過"]
    C --> D["幼虫抗原に対する<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='eosinophilic inflammation'>好酸球性炎症</span>反応"]
    D --> E["一過性・遊走性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonary infiltrate'>肺浸潤影</span>"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peripheral blood eosinophilia'>末梢血好酸球増多</span>"]
    D --> G["軽度の呼吸器症状<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dry cough'>乾性咳嗽</span>・喘鳴・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='low-grade fever'>微熱</span>)"]
    B --> H["気道を上行し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Expectoration'>喀出</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reswallowing'>再嚥下</span>"]
    H --> I["小腸で成虫へ発育<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intestinal phase'>腸管期</span>)"]

⭐ 三徴(移動する浸潤影・・軽い呼吸器症状)が揃えば、それだけでを強く疑う所見になる。 症状は無症状〜軽度の・喘鳴・にとどまることが多く、重篤な低酸素血症を来す例は少ない1。

原因:土壌媒介性線虫の幼虫移行

原因 特記事項
回虫 最も頻度の高い原因。経口摂取後のに出現
・ 後のに出現
(オートインフェクション)により反復・遷延しうる点が他の線虫と異なる

原因病原体は・・が中心だが、約3分の1の症例では原因が同定されない1。世界的には蠕虫感染負荷の高い開発途上国で頻度が高い一方、非流行地でも渡航関連例が生じる2。

💡 「」はLöffler自身が最初に記載した状態を指す同義語として使われる。 現在では回虫・鉤虫・によるの全般を指してと呼ぶことが多い。

臨床像

  • 多くは無症状〜軽度の・喘鳴・にとどまる1。
  • 成人では呼吸困難・喀血・を伴うことがあり、まれに低酸素血症・・呼吸不全に至る例も報告される2。
  • 小児は呼吸器症状に加え全身症状(発熱・倦怠感)を呈しやすい2。
  • 症状は多くの場合、数日〜数週間で自然に消退する。

診断:除外と経過観察が鍵

  • 胸部X線・でに位置が変化する浸潤影を確認する(初回と再検査での比較が重要)1。
  • の上昇(好酸球増多)を確認する。
  • での虫卵検出は、にはまだ成虫が産卵していないため陰性のことが多く、数週間後の再検査が必要になりうる。
  • 他の好酸球性肺疾患との鑑別が要点になる。

⚠️ 鑑別:他の好酸球性肺疾患と混同しない

の鑑別は広く、・・()・などが重なり合う臨床・画像所見を呈する2。

疾患 との違い
(急性・慢性) 浸潤影は遊走せず持続し、より重症・低酸素血症を伴いやすい。慢性型は再発を繰り返す
() ・気管支拡張を背景に持ち、中枢性のを呈する
(EGPA) ・多発血管炎を背景に、腎障害・など全身性の血管炎所見を伴う
(型) 寄生虫暴露歴がなく、の中止で改善する

💡 が「する一過性の病態」であるのに対し、他の好酸球性肺疾患の多くは治療なしには改善しない、あるいは重症・再発性である点が最大の鑑別点になる2。

治療:⚠️ 駆虫薬の投与タイミングが要点

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Löffler syndrome'>Löffler症候群</span>を疑う所見<br>(遊走性浸潤影+好酸球増多+軽症呼吸器症状)"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonary migration phase'>肺移行期</span>の<br>症状が続いているか"}
    B -->|"続いている"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anthelmintic'>駆虫薬</span>は投与しない<br>経過観察・対症療法"]
    B -->|"軽快し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intestinal phase'>腸管期</span>へ移行"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mebendazole'>メベンダゾール</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='albendazole'>アルベンダゾール</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Strongyloides stercoralis'>糞線虫</span>は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ivermectin'>イベルメクチン</span>)を投与"]
    C --> E{"重症・遷延する場合"}
    E -->|"該当"| F["副腎皮質ステロイドを考慮"]
    E -->|"該当しない"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spontaneous remission'>自然寛解</span>を待つ"]

⚠️ にを投与しても、移動中の幼虫には効果がなく、死滅した幼虫への炎症反応でかえって症状が悪化しうる。 は成虫が定着するにのみ有効であり、肺症状が落ち着いてから投与するのが原則である3。

予後

は良好で、多くは数週間以内に自然消退する。重症化・遷延化は稀で、背景疾患(特にの)の見落としがなければ予後は良い。

まとめ

  • は、蠕虫幼虫の肺通過に対する反応で、・・軽度の呼吸器症状の三徴を特徴とする。
  • 原因は回虫・鉤虫・が中心(約3分の1は原因不明)。
  • ⚠️ はには無効かつ症状を悪化させうるため、に入ってから投与する。
  • ・ABPA・EGPAなど他の好酸球性肺疾患との鑑別が要点で、はするのが最大の違いである。
  • 多くは対症療法のみでし、重症・遷延例には副腎皮質ステロイドを考慮する。

出典

  1. 1.Pulmonary Eosinophilia(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)Löffler症候群(単純性肺好酸球増多症)が、腸管寄生虫感染に伴う一過性の肺浸潤影と末梢血好酸球増多を特徴とすること、臨床像が無症状〜軽度(多くは乾性咳嗽)の呼吸器症状・遊走性肺浸潤影・末梢血好酸球増多からなること、原因として回虫症・鉤虫症・糞線虫症が最も多いが約3分の1では原因病原体が同定されないこと、胸部X線で経時的に変化する浸潤影を確認することが初期評価に含まれること、多くは自然寛解しうること、重症例には副腎皮質ステロイドを用いることを確認した。閲覧 2026-08-19
  2. 2.Parasitic-induced Loeffler's syndrome: A systematic review based on clinical reports(Journal of Infection and Public Health・2025)寄生虫性Löffler症候群が回虫・糞線虫感染との関連が深く、他の好酸球性肺疾患との臨床像の重なりから過小診断されやすいこと、2014〜2024年の23研究を対象に臨床像・診断法・治療戦略・地理的分布を解析したこと、蠕虫感染負荷の高い開発途上国で頻度が高い一方、渡航関連例は世界的に生じること、症状として咳嗽・呼吸困難・喘鳴・喀血・肺好酸球増多が多いこと、小児は呼吸器症状・全身症状を呈しやすく成人では掻痒性皮疹・低酸素血症・右心負荷・呼吸不全を呈しうること、治療の中心が駆虫薬と副腎皮質ステロイド・支持療法であることを確認した。閲覧 2026-08-19
  3. 3.Ascariasis(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)回虫症において肺移行期(幼虫が肺を通過する時期)に駆虫薬を投与すると死滅した幼虫への炎症反応でLöffler症候群様の好酸球性肺炎がかえって悪化しうるため治療を見合わせるのが原則であること、駆虫薬は成虫(腸管期)にのみ有効で移行中の幼虫には無効であることを確認した。閲覧 2026-08-19