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Symptoms · Published

咳

Cough

別名
咳嗽
臓器系
呼吸器
科目
Pulmonology and Thoracic SurgeryPediatrics
トピック
呼吸器内科 08:咳嗽小児科 1-15:小児の咳嗽
関連疾患
Caplan症候群COVID-19罹患後症状Löffler症候群Still肺病変Zenker憩室アカラシアアスピリン増悪呼吸器疾患エキノコックス症カドミウム中毒ギラン・バレー症候群クリプトコッカス症コクシジオイデス症スポロトリコーシスチック症(トゥレット症候群)ノカルジア症ハンタウイルス肺症候群びまん性汎細気管支炎ホジキンリンパ腫マイコプラズマ肺炎(非定型肺炎)レジオネラ症悪性中皮腫院内肺炎運動誘発性気管支攣縮器質化肺炎気管支原性嚢胞気管支喘息気腫合併肺線維症気道異物急性リンパ性白血病急性喉頭炎・慢性喉頭炎急性中耳炎・慢性中耳炎(滲出性中耳炎を含む)急性虫垂炎胸腺腫胸部外傷(肋骨骨折・血胸・外傷性気胸・フレイルチェスト)胸膜肺芽腫筋萎縮性側索硬化症金属ヒューム熱結核結核腫血液・腫瘍救急(発熱性好中球減少症・腫瘍崩壊症候群・上大静脈症候群)血管輪犬糸状虫症喉頭軟化症喉頭裂好酸球増多症候群高地肺水腫骨盤臓器脱再膨張性肺水腫市中肺炎住血吸虫症縦隔原発胚細胞腫瘍縦隔腫瘍重症筋無力症食道癌食道重複嚢胞食道閉鎖症・気管食道瘻心膜嚢胞新型コロナウイルス感染症人工呼吸器関連肺炎水銀中毒精巣腫瘍声帯麻痺先天性横隔膜弛緩症鼠径ヘルニア炭鉱夫塵肺症溺水伝染性単核球症電子タバコ関連肺傷害特発性肺線維症肺過誤腫肺癌肺気腫肺吸虫症肺血栓塞栓症反復性呼吸器乳頭腫症非結核性抗酸菌症百日咳普通感冒腹壁ヘルニア(腹側・臍・瘢痕ヘルニア)腹膜炎・消化管穿孔平滑筋肉腫閉塞性細気管支炎麻疹慢性肺移植片機能不全慢性副鼻腔炎慢性閉塞性肺疾患免疫関連有害事象野兎病輪状咽頭筋障害類脂質性肺炎α1アンチトリプシン欠乏症
起因薬
L-グルタミンアクリジニウムアニフロルマブアルグルコシダーゼ アルファイデベノンイプラトロピウムウメクリジニウムエロツズマブオビルトキサキシマブクロモグリク酸ナトリウムサプロプテリンニトロフラントインプラルセチニブボクロスポリンメタコリン

🧠 全体像:咳は分泌物・異物・刺激物を排除するであって、止めることが常に善ではない。鑑別の第一軸は持続期間で、3週未満・3〜8週・8週超で想定する原因群がまるごと入れ替わる(この週数は「誰の定義か」とセットでしか意味を持たない。下表のあとで出典ごとに示す)。では・喘息・の3つと薬剤(阻害薬)を当たるのが従来の入口で、これらは画像に写らないため「胸部X線が正常だから異常なし」という判断が最も起きやすい落とし穴になる。ただしこの枠だけでは相当数の患者が説明できないので、現行のBTSは性を含む「治療可能な形質」を並べて扱う書き方を勧めている。

持続期間で切る

⭐ 期間が変われば鑑別が入れ替わる。最初に必ず確認する。

期間 定義 代表原因
急性 3週未満 ウイルス性、、肺炎、喘息、異物、肺塞栓
亜急性 3〜8週 感染後咳嗽、百日咳、喘息
慢性 8週超 、喘息、、、阻害薬、、、悪性腫瘍

⚠️ この週数は「誰の定義か」とセットでしか意味を持たない。 急性の「3週未満」はのNG120が置く定義(逐語は「21日(3週)未満」)1、慢性の「8週超」はBTSの臨床ステートメントの定義で、この文書は表題のとおり成人を対象にしている2。亜急性の「3〜8週」はこの2つの定義のあいだに残る帯で、BTSの用語表は急性・慢性・などを定義するだけで、亜急性という項目を置いていない。週数だけを覚えず、どの資料の定義かを添えて覚える。

⚠️ 3週は定義上の線であって、「越えたら異常」という経過上の境界ではない。 同じNG120はのを「通常は自然に軽快し、抗菌薬なしで3〜4週以内によくなる」とし、平均18日・ときに29日(4週超)まで続くとも書いている。受診を勧める目安も「3〜4週で改善しないとき」に置かれている。1

咳反射の経路

は喉頭・のほか、外耳道や胸膜にもある。は主に迷走神経内喉頭枝を介して延髄・橋のへ至り、は迷走神経・・脊髄を通る。短い深吸気→→呼気筋収縮→開放という順序で高流速の呼気を作る。

💡 耳掃除で咳が出るのは、外耳道にがあるため()。咳の原因が気道にあるとは限らないことを示す例で、原因不明のではや異物も確認する。

乾性か湿性か

期間と組み合わせると鑑別がさらに絞れる。

咳の性状 原因の例
急性・湿性 、、肺炎
慢性・湿性 、、結核、中枢性肺腫瘍
急性・乾性 、炎、非定型肺炎、、喘息、肺塞栓、異物
慢性・乾性 喘息、、、阻害薬、心疾患、習咳嗽

⚠️ 痰の色だけで細菌感染と判断しない。 の痰はウイルス感染でも生じる(好中球由来のによる)。抗菌薬は色ではなく、診断・重症度・地域の指針で決める。

見逃してはいけない咳

⚠️ 次があれば早急に評価する。

赤旗 想定する病態
喀血 悪性腫瘍、結核、、肺塞栓
体重減少・ 悪性腫瘍、結核
反復する肺炎 気道の閉塞(腫瘍・異物)、誤嚥、免疫不全
安静時・夜間の強い呼吸困難 心不全、重症喘息
嚥下時のむせ 誤嚥。神経筋疾患、
嗄声 (、)
喫煙者の新規・変化した咳 肺癌。「いつもの咳」が変わったことが手掛かり
・ 、喉頭の閉塞。小児では緊急
突然の咳(小児) 。がなくても否定しない

⚠️ 小児の突然発症の咳と片側のは、がなくてもを疑う。気道確保を優先し、残存異物は気管支鏡で確認・摘出する。

評価の進め方

flowchart TD
    A["咳"] --> B{"赤旗があるか"}
    B -->|"あり"| C["胸部画像と標的評価を急ぐ"]
    B -->|"なし"| D{"持続期間はどれか"}
    D -->|"3週未満"| E["多くはウイルス性<br>肺炎・喘息・異物を除外"]
    D -->|"3〜8週"| F["感染後咳嗽・百日咳・喘息"]
    D -->|"8週超"| G["胸部X線・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spirometry'>スパイロメトリー</span><br>血算・可能ならFeNO"]
    G --> H["薬剤・喫煙を確認<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='angiotensin-converting enzyme'>ACE</span>阻害薬中止+治療可能な形質の評価"]
    H --> I{"改善しないか"}
    I -->|"改善しない"| J["適応に応じ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography'>CT</span>・喀痰検査<br>気管支鏡・専門評価を追加"]

成人のでは、頻度の高い原因への治療を試す前に、胸部X線・血算・診断的を全例の初期評価に含め、利用可能ならFeNO()も確認する。胸部CTは一律には行わず、でを除外するとき、肺癌を疑うかハイリスク群のとき、喀血、気道の虚脱性を疑う犬吠様の咳、といった適応に絞る。気管支鏡もには行わず、原因のはっきりしない、気道の虚脱性の疑い、異物、が得られない/役に立たないときの感染の除外と物の評価に用いる。胸部X線が正常で、疑われる誘因を治療しても改善しないは二次医療へ紹介する。2

⚠️ では阻害薬を最初に疑う。 開始から数週〜数か月後に出ることも、何年も内服してから出ることもある。BTSは、阻害薬が性そのものを誘発するとして、原因が何であれ、咳との時間的関係がどうであれ、の患者では全例で中止する(必要ならII受容体拮抗薬へ切り替える)とし、改善に4週間以上かかることがあるので判定を急がないとしている。2

⭐ の三大原因(・喘息・)はいずれも胸部X線が正常である。画像正常を「異常なし」と読まない。

では発症と期間、喀痰・喀血、、発作性の咳、・アレルゲン・運動・臥位との関係、昼夜差、喫煙、阻害薬、喘息・・の既往、職業・旅行・結核曝露を確認する。

慢性咳嗽の枠組み:三大原因から「治療可能な形質」へ

⚠️ 三大原因+阻害薬という枠だけでは、の相当数が説明できない。 BTSの臨床ステートメントは、1970年代末に作られた解剖学的診断プロトコル——喘息・上気道疾患・逆流という馴染みの三徴が咳を「起こしている」と仮定し、順に検査とを当てはめる方法——について、を治療しても30〜40%の患者がよくならないか、そもそも明らかなが無いと述べている。ただしこの方法を捨てよとは言っていない——「要素は今も妥当だが、練り直しが要る」という書き方である。2

BTSが代わりに勧めるのは、患者に「逆流咳嗽」「」と名前を付けるのではなく、/という総称を使い、寄与している治療可能な形質を並べて書くやり方である(たとえば「逆流、阻害薬使用、肥満、性、を伴う」と記載する)。BTSが治療可能な形質のに挙げているのは次のものである(臨床上の要点の節ではをひとまとめにするなど、同じ文書の中でも粒度が違う書き方をしている)。2

形質 見つけ方の例 対応
喫煙 (朝に強い)、尿中、呼気CO 禁煙。(がを抑えているので、やめた直後は一時的に悪化しうる)
刺激物曝露 、、ペット・趣味 曝露を減らす
阻害薬 (・喉の症状)、処方歴 全例で中止。必要ならII受容体拮抗薬へ
気道 喘息様症状、FeNO >25 ppb、末梢血 ≥0.3×10⁹/L 、全身ステロイド
喀痰の量と膿性、、を疑う、気管支鏡 ・、、抗菌薬、マクロライド
12週以上続く2症状以上(うち1つは鼻閉または) 点鼻ステロイド、、改善しなければ耳鼻科紹介
(吸気の苦しさ、、変動する症状)、
いびき・・肥満、、Epworth CPAP、、減量、下顎装置
の有無が治療反応の最良の指標。、pH・、内視鏡 、(多くは改善しない)
肥満 、体型 減量
性 ささいな曝露(・香水・会話)で誘発される、。形質に対処しても残る咳 咳コントロール療法()、低用量モルヒネ、/
不安・気分の落ち込み 、不安・抑うつのスクリーニング尺度(HADなど) 説明と安心づけ、心理的介入、抗うつ薬

💡 性は最も見落とされやすい形質である。 は喘息や逆流といった形質の単なる症状ではなく、多くの患者ではそのものの過敏性が背景にある。だけを標的にした治療がしばしば効かない理由の一端がこれで説明される。性症候群は、温度・機械的刺激・化学的刺激がわずかでも咳が誘発される状態で、迷走神経と中枢神経系を含む路の感作が機序と考えられている。2

鎮咳薬の位置づけ

⚠️ 咳はなので、を強力に止めると分泌物が滞留する。は原因治療の代わりにならず、痰の多い咳では慎重に扱う。

⚠️ 小児ではの・感冒薬の有害事象が問題になる。年齢制限を確認する。

まとめ

  • 咳はであり、止めること自体が目的ではない。
  • 鑑別の第一軸は持続期間(3週未満・3〜8週・8週超)。期間で原因群が入れ替わる。ただし急性の3週は NG120、慢性の8週はBTSの定義で、どの資料の線かを添えて覚える。3週は定義上の線であって、経過上は3〜4週かけて軽快するのが普通である。
  • 痰の色だけで細菌感染と判断しない。
  • 成人のでは胸部X線・を後回しにせず、薬剤・喫煙確認と並行して初期評価する。
  • では阻害薬を最初に疑う。BTSは原因や時間的関係によらず全例で中止するとし、改善判定には4週間以上を見込む。
  • 三大原因(・喘息・)を当たる解剖学的診断プロトコルは入口として今も妥当だが、これだけでは30〜40%が説明できない。BTSは性を含む治療可能な形質を並べて扱う枠組みを採る。
  • の三大原因は胸部X線が正常。画像正常を異常なしと読まない。
  • 喫煙者の「いつもと違う咳」、喀血、反復肺炎、嗄声は早急に評価する。
  • 小児の突然の咳はがなくてもを疑う。

出典

  1. 1.Cough (acute): antimicrobial prescribing (NG120)(National Institute for Health and Care Excellence・2019)急性咳嗽の定義と自然経過を Terms used in the guideline と Recommendations の両章で確認した。逐語は「急性咳嗽は21日(3週)未満続く咳と一般に定義される。平均の持続は18日だが、ときに29日(4週超)まで続くことがある」で、推奨1.1.1は急性咳嗽を「通常は自然に軽快し、抗菌薬なしで3〜4週以内によくなる」とし、推奨1.1.5は受診を勧める目安を「3〜4週で改善しないとき」に置いている。閲覧 2026-09-21
  2. 2.British Thoracic Society Clinical Statement on chronic cough in adults(British Thoracic Society・2023)出版社サイト(thorax.bmj.com)は403だが、Queen's University Belfast のリポジトリに置かれた査読後の著者最終稿(Accepted manuscript、CC BY-NC、全49頁)を取得して全文で照合した。用語の定義(本文は「急性咳嗽は3週以下、慢性咳嗽は8週超」、Table 1は急性を「3週未満」と書いており、3週ちょうどの扱いが本文と表で揃っていない。亜急性という区分は置いていない)、全患者に胸部X線・血算・診断的スパイロメトリー・可能ならFeNOを行うこと、胸部CTと気管支鏡を定型的に行わず適応を限ること、ACE阻害薬は原因や咳との時間的関係によらず全例で中止し改善に4週間以上かかりうること、解剖学的診断プロトコルの限界(併存疾患を治療しても30〜40%が改善しないか明らかな併存疾患が無い。ただし「この方法の要素は今も妥当で、練り直しが要る」とする)、咳過敏性を含む「治療可能な形質」を並べる枠組みを確認した。閲覧 2026-09-21