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Disease Atlas · 消化器 · 先天性疾患

食道閉鎖症・気管食道瘻

Esophageal atresia and tracheoesophageal fistula

別名
EA/TEF
臓器系
消化器呼吸器
科目
Microscopic Anatomy and Embryology (Embryology)
トピック
発生学 13.3:呼吸器系:臨床
関連疾患
気管軟化症喉頭裂先天性横隔膜ヘルニア肛門直腸奇形
治療薬
エソメプラゾール
症状
チアノーゼ咳

🧠 全体像:・(EA/TEF)は、共通前腸から気道と食道が分かれる過程の破綻で生じる。「分離の失敗」という一つの発生学的事故が、閉鎖(食道が途中で行き止まりになる)と瘻(本来つながってはいけない気管とつながってしまう)という2つの異常を同時に生む——この一体性が理解の軸になる。最多の型は「近位食道が、遠位食道が気管と瘻でつながる」組合せで、羊水を飲み込めないためを来し、出生後はがで止まることで診断が確定する。手術まではと胃酸の気管内逆流を防ぐ体位・管理が要になる。

病態

食道と気管は、発生初期には共通の前腸から分かれる。前腸の腹側にが形成された後、がこの憩室を頭尾方向に伸びながら食道と気管に分離していく、というのが古典的な説明である(発生学 13.3)。この中隔の癒合が不完全・偏位すると、食道の閉鎖(内腔のが絶たれる)や、(食道と気管の間に異常な交通が残る)を来す、と整理される。

⚠️ 「中隔の」は覚え方としては有用だが、確立した病因ではない。 発生学の側では、EA/TEFは前腸ののパターン形成・のパターン形成・形態学的分離という3つの過程のいずれかの破綻として捉えられており、原因は今も不明で、遺伝的・・環境要因の組合せによると考えられている1。単一の機械的事故に還元しない。

flowchart TD
    A["前腸から<span class='jp-term jp-term-diagram' title='respiratory diverticulum'>呼吸器憩室</span>が分岐"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tracheoesophageal septum'>気管食道中隔</span>が食道と気管を分離"]
    B --> C{"中隔の癒合は完全か"}
    C -->|"完全"| D["食道・気管が正常に分離"]
    C -->|"不完全・偏位"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='esophageal atresia'>食道閉鎖</span><br>(食道の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='continuous'>連続性</span>が絶たれる)"]
    C -->|"不完全・偏位"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tracheoesophageal fistula, TEF'>気管食道瘻</span><br>(食道と気管の異常交通)"]
    E --> G["近位<span class='jp-term jp-term-diagram' title='esophageal blind pouch'>食道盲端</span>+遠位食道が気管と交通<br>(全体の約86%を占める最多型)"]
    F --> G

病型分類

・は、閉鎖の有無と瘻の位置の組合せで複数の型に分けられる()。頻度の非対称性を押さえることが実践的に重要である。

型の特徴 頻度の目安
近位+遠位食道が気管と瘻で交通 最多(全体の約86%)2
瘻を伴わない孤立性 約7%2
閉鎖を伴わない(H型瘻) 約4%2
近位・遠位の両方が気管と瘻で交通 まれ
近位食道が気管と瘻で交通し遠位食道が 最もまれ

⭐ 「近位+遠位TEF」の組合せが圧倒的多数を占める点をまず押さえ、他の型は例外パターンとして位置づけると整理しやすい。

臨床像

⚠️ 最多型(近位+遠位TEF)では、胎児が羊水を嚥下できないためを来す(調節の原則に反する所見として出生前に気づかれることがある)。

出生後は以下の所見で気づかれる。

  • 哺乳時のむせ・咳嗽・チアノーゼ、(唾液を飲み込めず口腔内に溜まる)。
  • 遠位TEFを伴う型では、のたびに気管から胃内へ空気が入り込み、腹部膨満を来す。
  • 遠位TEFがない孤立性では腹部は逆に平坦・陥凹しやすい(消化管へ空気が入らないため)。
  • 胃酸が瘻を通じて気管内へ逆流すると、・を繰り返す。

合併異常(VACTERL連合)

EA/TEFでは約50%に他臓器のを合併し、その大半はの要素の1つ以上である2。

頭文字 異常
V
A
C
TE
R
L

💡 VACTERLは単一の遺伝子・機序で説明される症候群ではなく、原因が大多数で未同定の「」である。多くの臨床家・研究者は6中核要素のうち少なくとも3つが揃うことを目安とするが、厳密なについて確立した合意は無い3。EA/TEFの児では他臓器の系統的な評価(心エコー、、脊椎・四肢の診察)を怠らない。

⚠️ はでもある。 鑑別が広く、・・・・Townes-Brocks症候群など類似疾患の証拠が臨床的にも検査でも得られないことが要件になる3。・・必要に応じた遺伝学的検査を省略して「VACTERL」と呼ばない。

診断

  • 出生前: での、胃胞の描出不良(食道が閉鎖し胃へ羊水が届かないため)が示唆所見となる。
  • 出生後: ・経口胃管を挿入し、で先端が止まり胃まで進めないことで疑う。
  • 画像: 胸で、留置したカテーテルが上部食道でコイル状(とぐろ状)に描出される所見が特徴的。胃・腸管のガス像の有無で遠位TEFの有無を推定できる(ガスがあれば遠位TEFあり、ガスがなければ孤立性閉鎖を疑う)。
  • 造影剤を用いた検査は誤嚥のリスクがあるため、診断確定のために積極的には行わない。

⭐ 「カテーテルがで止まり胃まで到達しない」ことが最も直接的な診断の手がかりであり、出生後早期からのルーチンな哺乳開始前にこの手技で気づかれることが多い。

治療

術前管理

手術までの間、以下で・を防ぐ。

  • 経口摂取を中止し、に貯留する唾液を持続的に吸引するため上部にカテーテルを留置し持続吸引する。
  • 頭部を挙上した体位をとり、胃酸が遠位TEFを通って気管へ逆流するのを減らす。
  • 呼吸状態に応じて酸素投与・気道管理を行うが、TEFがある場合はによるが瘻を通じて胃をさせうる点に留意する。

外科的修復

  • 標準的な修復は、瘻を・し、食道の近位と遠位食道を吻合するである。・いずれのアプローチも用いられる。
  • 近位・遠位の断端間の距離が大きいではが困難であり、な段階的手術(など、食道を伸長させてから吻合する手技)を要することがある。
  • 術後合併症として、、瘻の再発、、などが知られ、長期的なフォローを要する。に対してはによる酸分泌抑制が用いられる。
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nasogastric tube (NG tube)'>経鼻胃管</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='esophageal blind pouch'>食道盲端</span>で停止・進まない"] --> B["胸腹部X線でカテーテルの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coiled catheter sign'>とぐろ状陰影</span>を確認"]
    B --> C["上部<span class='jp-term jp-term-diagram' title='esophageal blind pouch'>食道盲端</span>を持続吸引・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='head-of-bed elevation'>頭部挙上</span>体位"]
    C --> D["VACTERL評価(心・腎・脊椎・四肢)"]
    D --> E{"近位・遠位の距離は吻合可能な範囲か"}
    E -->|"はい"| F["瘻の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ligation'>結紮</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='avulsion'>離断</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='single-stage'>一期的</span>食道吻合"]
    E -->|"いいえ(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='long-gap esophageal atresia'>長区間食道閉鎖</span>)"| G["段階的手術(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='internal traction technique'>内部牽引法</span>など)で食道を伸長後に吻合"]
    F --> H["術後合併症(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anastomotic stricture'>吻合部狭窄</span>・瘻再発・逆流・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tracheomalacia'>気管軟化症</span>)を追跡"]
    G --> H

まとめ

  • EA/TEFはによる前腸の分離不全から生じ、近位+遠位TEFの型が全体の約86%を占める最多型である。
  • 最多型では、出生後は哺乳時のむせ・チアノーゼ、遠位TEFに伴う腹部膨満を来す。診断はがで止まることで確定し、X線でカテーテルのを確認する。
  • の一部として、心・腎・脊椎・四肢の合併異常を系統的に評価する。
  • 術前は上部の持続吸引と体位で誤嚥・逆流を防ぎ、は瘻の・+食道のである。では段階的手術を要する。
  • 術後は、瘻の再発、、を長期的に追跡する。

出典

  1. 1.Anatomy and embryology of tracheo-esophageal fistula(Seminars in Pediatric Surgery・2022)抄録のみを閲覧しており全文は未取得。食道閉鎖の原因が今なお不明で、遺伝的・エピジェネティック・環境要因の組合せによると考えられていること、正常な食道発生の鍵となる段階が前後軸の領域化、背腹軸のパターン形成、形態学的分離であり、動物モデルがこれらの分子・形態学的過程の理解を大きく進めたことを確認した閲覧 2026-09-07
  2. 2.Oesophageal atresia(Orphanet Journal of Rare Diseases・2007)全文を閲覧。食道閉鎖の86%が遠位気管食道瘻を伴い、7%は瘻を伴わず、4%は閉鎖を伴わない気管食道瘻であること、頻度が出生2,500に1人であること、50%に合併奇形を認め、その大多数がVACTERL連合(脊椎・肛門直腸・心・気管食道・腎・四肢)の1つ以上であること、羊水過多の存在が閉鎖の可能性を高めること、食道閉鎖では経鼻胃管が口から10 cmを超えて進まず胸腹部単純X線で確認すること、生存が出生体重と重大な心奇形の有無に規定され、1,500 g超で重大な心疾患が無ければほぼ100%、いずれか1つがあれば80%、両方があれば30〜50%へ低下することを確認した閲覧 2026-09-07
  3. 3.VACTERL/VATER Association(Orphanet Journal of Rare Diseases・2011)全文を閲覧。VACTERL/VATER連合が椎体欠損・肛門閉鎖・心奇形・気管食道瘻・腎奇形・四肢異常の6中核要素のうち少なくとも3つの存在で定義されるのが典型であること、厳密な診断基準について確立した合意は無く、多くの臨床家・研究者が3要素以上を要求すること、Baller-Gerold症候群・CHARGE症候群・Currarino症候群・22q11.2欠失症候群・Fanconi貧血・Feingold症候群・Fryns症候群・MURCS連合・眼耳脊椎症候群・Opitz G/BBB症候群・Pallister-Hall症候群・Townes-Brocks症候群・水頭症を伴うVACTERLなど広い鑑別があり、これらの証拠が臨床的にも検査でも得られないことが要件になること、発生率が1万〜4万出生に1人と推定されること、原因が同定されているのは一部にとどまることを確認した閲覧 2026-09-07