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Disease Atlas · 呼吸器 · 病態

気管軟化症

Tracheomalacia

別名
気管気管支軟化症気管軟化
臓器系
呼吸器小児耳鼻咽喉科
科目
OtorhinolaryngologyPediatrics
トピック
耳鼻咽喉科 59:気管の疾患、気道異物小児科 30:閉塞性気管支炎・気管支喘息・急性声門下喉頭炎
鑑別疾患
クループ・急性喉頭蓋炎・細菌性気管炎気道異物喉頭軟化症声門下狭窄
関連疾患
気管気管支拡張症再発性多発軟骨炎食道閉鎖症・気管食道瘻慢性閉塞性肺疾患
症状
呼気性喘鳴湿性咳嗽チアノーゼ
原因となる疾患
血管輪

🧠 全体像:軟らかい気管が、呼気の陽圧で潰れる。 が吸気で虚脱するのに対し、気管の軟化は呼気で虚脱する——⭐ この相の違いが両者を分ける最初の手掛かりである1。だが診断の本体はではなく、自発呼吸のまま気管支鏡で虚脱を見ることにある2。⚠️ 鎮静も陽圧も気道の動きを変えてしまうので、「眠らせて陽圧をかけて覗く」と病気が消えてしまう。そして本症を見つけたらなぜ軟らかいのかを探す——一次性か、・・・長期挿管といった二次性かで、治療も予後もまったく違う。

何を「軟化」と呼ぶか

気管は16〜20個の輪に支えられ、後壁だけが膜性(U字型で後方が開いている)である。この支持が失われると内腔のが狭くなり、半円形が崩れて後方のが内腔へ張り出す1。

⚠️ 虚脱そのものは正常でも起こる。 乳児のでは気管内腔が径の30%まで狭くなるのは生理的である。換気の障害になるのは径の50%を超える虚脱で、ここで初めて臨床的なになる1。

💡 だから「気管支鏡で潰れて見えた」だけでは診断にならない。 どの程度潰れたかを、どの呼吸相で、どんなのもとで見たのかまでが所見である。⚠️ は重症度について普遍的に受け入れられた分類は存在しないと明言している2。

原因——3群に分ける

国際的に合意された分類は無いが、病因は3群に整理できる1。

群 中身
①気管そのものの 軟骨の未熟性。、、。⭐ では最大75%に気管の欠陥がありうる。も関連する
②後天的に気管をさせる病態 ⭐ 反復・長期のが成人後天性の最多原因。、、、異物、腫瘍、気管支炎、、
③外部からの圧迫 (がのおよそ40%)、、左肺動脈の起始異常、甲状腺腫、、
  • 成人のびまん性の虚脱はCOPDでしばしば見つかり、頻度は7〜15%と報告されている1。
  • 成人の先天性型として Mounier-Kuhn 症候群()がある。弾性線維の萎縮による気管・の弛緩と拡張・虚脱で、報告例は約300例にとどまる1。

💡 ①〜③は治療の入口が違う。 ①は待てば固くなる(成長)、②は原因の除去、③は圧迫源への手術——「」という一語では決まらない。

臨床像

中心はである。呼気のによって生じる1。

⚠️⚠️ 「気管軟化=」は半分しか正しくない。 の気管が虚脱するのは呼気だが、胸郭外(上部)の軟化では吸気時に虚脱する1。病変の高さで相が変わるので、相だけで部位を決めきらない。

特徴 内容
発症時期(先天性) が生後4〜6週以降に始まる1
悪化する状況 活動、咳、、哺乳、仰臥位。⭐ 安静で軽減する1
咳 分泌物の排出障害によると気道感染への1。ERSは金属様のを挙げる2
随伴所見 ・肋間の、嗄声、、、1
重症例 呼吸窮迫、無呼吸、チアノーゼ、気道閉塞。はまで起こりうるとする21
吸気は正常なのに呼気に異常音を聴く1

⭐ 姿勢が診断のヒントになる。 による圧迫のある小児は、頭頸部をしてする——気管を引き伸ばして圧迫を減らすためである1。

💡 食後に悪化するならの関与を疑う1。

⚠️ 反復する様発作とな喘鳴では、のを考える1。としてを出し続けても改善しない小児は、ここで立ち止まる。

診断

flowchart TD
    A["生後4〜6週以降の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='expiratory wheeze'>呼気性喘鳴</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='crying (infant cry, clinical sign)'>啼泣</span>・哺乳・仰臥位で悪化"] --> B["病歴:周産期、早産、<br>手術・挿管歴、哺乳と体重増加"]
    B --> C["自発呼吸下の気管支鏡<br>(gold standard)"]
    C --> D{"呼気で径の50%超の虚脱"}
    D -->|"あり"| E["部位と範囲を決める<br>限局性かびまん性か"]
    D -->|"なし"| F["他の気道病変を探す<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='subglottic stenosis'>声門下狭窄</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vocal fold paralysis'>声帯麻痺</span>・異物"]
    E --> G["二次性の原因を探す<br>造影CTで<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular ring'>血管輪</span>・圧迫源"]
    G --> H["重症度と原因で<br>保存的か外科的かを決める"]
  • gold standard は自発呼吸下の気管支鏡による直接観察である。硬性・軟性のどちらでもよく、両者を比較した研究は無い1。も「自発呼吸の小児に対する」を通常の診断法とする2。
  • CTは迅速で、気管支鏡と組み合わせると診断精度が高い。⚠️ ただしがあり、幼児では鎮静が気道動態を変えてしまう1。
  • 造影を併用したは特異度が高く感度が低い1。
  • ・ultrashort echo-time はも鎮静も避けられる可能性がある1。は低造影量の・・といった動的画像法を挙げる2。
  • はを示しうるが、単独では診断にならない12。
  • 単純X線では気管の異常が写らないことがある1。

治療

⚠️ どの治療もエビデンス基盤が限られているとは述べている2。

が出発点。 先天性および軽症の後天性は自然軽快しうるので、適切な監視下で保存的に扱う1。

  • 、の回避、、の管理、誤嚥を避ける哺乳法1
  • ⚠️ ・・・抗菌薬は使われているが、有益性の根拠は乏しい12
  • ⚠️ も広く処方されているがエビデンス基盤は乏しい2
  • がしないときはCPAP。呼吸補助が要るときは顔マスクまたはを介したCPAPが最もよく使われる12

外科は「発作」で決める。 、、、チアノーゼ発作のある例が手術適応になりやすい1。

術式 位置づけ
多くの施設で好まれる。を面へして前方へ持ち上げる1。合併症は気胸・胸水・・・出血
が挙げる選択肢2。後方の内方への虚脱に対応しうる
・ 短い分節の病変に限る。経験のある施設で1
非常に重症の例に限る。⚠️ ・血管びらん・を起こし、症状改善の持続が予測できない。びまん性病変には不適(気道全体には置けない)1
気道の が挙げる選択肢2
長期人工呼吸と気道の効果を与えるが合併症が多い。末期・近位・びまん性病変に限る1

⚠️ のは重い——、、1。

予後

  • 先天性かつ軽症なら予後は良好で、症状はおおむね2歳ごろまでに軽快する1。
  • 他疾患を伴わない先天性は他の気道へ及ばず、通常12〜24か月で消退する1。
  • 併存症のある例は小児期後半まで症状が残る。成人まで残るとの低下を来しうる1。
  • 二次性の予後は原因病態と病変の程度で決まる1。
  • 無治療の合併症は気道閉塞、、1。

💡 保護者は「診断の遅れ」と「どう管理すればよいか分からない不安」を訴え、より多くの情報を求めているとは記録している2。⭐ 自然軽快する病気ほど、待つ理由を説明する側の責任が大きい。

鑑別

相手 分けるもの
吸気性喘鳴。の組織が吸気で虚脱する。通常2歳までに軽快1
体位で変わらない1
両側性は気道緊急。喘鳴と高度の呼吸困難がありながら声・はほぼ正常1
急性の感染性緊急。喘鳴と嚥下障害1
窒息のエピソード。X線不透過なら単純X線で写る1
による良性腫瘍。喉頭を中心に乳頭腫が反復して発生し末梢へ及びうる1

まとめ

  • 気管軟骨の支持が失われ、気管が過度に虚脱する病態。先天性気管疾患のおよそ半数を占める。
  • ⚠️ 乳児ので径の30%までの虚脱は正常。50%超で臨床的なとされる。⚠️ 重症度の普遍的分類は存在しない。
  • 原因は①先天的な軟骨の未熟性(では最大75%に気管の欠陥)、②後天的(成人は反復・長期挿管が最多)、③外部圧迫(、が約40%)の3群。
  • 中心症状は生後4〜6週以降ので、・哺乳・仰臥位で悪化し安静で軽減する。⚠️ ただし胸郭外の軟化は吸気で虚脱する。
  • 診断は自発呼吸下の気管支鏡。鎮静と陽圧は所見を消しうる。・は補助、は診断的でない。
  • 治療はまず保存的。薬物療法ももエビデンスは乏しい。重症でCPAP、発作があればなどの手術。はびまん性病変に不適。
  • 先天性・軽症は12〜24か月で消退し2歳ごろまでに軽快する。併存症があると小児期後半まで残る。

出典

  1. 1.Tracheomalacia(StatPearls Publishing(NCBI Bookshelf、Yang D, Cascella M)・2023)全文を閲覧。気管軟化症が気管軟骨の構造異常により気管が過度に虚脱する病態で、先天性気管疾患のおよそ半数を占めること、国際的に合意された分類は無いが病因を①気管の構造そのものの先天異常、②正常に発達した気管を後天的に脆弱化させる病態、③気管を外部から圧迫する病態の3群に分けられること、気管が16〜20個の硝子軟骨輪に支えられ後壁だけが膜性であること、乳児の努力呼気では気管内腔が径の30%まで狭くなるのは正常で、換気の障害となる虚脱は径の50%を超えるものとされること、先天性の関連としてEhlers-Danlos症候群・気管支肺異形成・先天性心疾患があり、気管食道瘻の患者では最大75%に気管の欠陥がありうること、食道閉鎖も関連すること、血管輪では胎生2か月以降の重複大動脈弓の遺残が最多で先天性血管圧迫のおよそ40%を占め、右大動脈弓・左肺動脈の起始異常なども圧迫を起こすこと、成人の先天性型としてMounier-Kuhn症候群(気管気管支拡張症、報告例は約300例)があること、後天性では反復・長期の気管挿管が成人の最多原因であり、気管切開・肺切除・胸部外傷・異物・腫瘍・気管支炎・再発性多発軟骨炎・気管支拡張症も原因となること、COPDにおける気管気管支軟化症の頻度が7〜15%と報告されていること、症状は呼気時の気流閉塞による呼気性喘鳴が中心で、胸腔内の虚脱は呼気に起こる一方で胸郭外(上部)の軟化では吸気時に虚脱すること、先天性型では呼気性喘鳴が生後4〜6週以降に始まり活動・咳・啼泣・哺乳・仰臥位で悪化し安静で軽減すること、食後の悪化は胃食道逆流の関与を示唆すること、血管輪による圧迫のある小児は頭頸部を過伸展して臥床すること、鎖骨上窩・肋間の吸気性陥没、嗄声、失声、哺乳障害、成長障害を伴いうること、反復する呼吸器感染が症状を増悪させ重症では呼吸窮迫・無呼吸・チアノーゼ・気道閉塞から挿管を要しうること、聴診では吸気が正常でも呼気に異常音を聴くこと、反復するクループ様発作と非典型的な喘鳴では声門下病変を考えるべきこと、診断のgold standardが自発呼吸下の気管支鏡による直接観察であり硬性・軟性のいずれでもよいこと、造影を併用したシネ透視は特異度が高く感度が低いこと、CTは迅速で気管支鏡と組み合わせると診断精度が高いが被曝と鎮静による気道動態の変化が問題になること、動的MRIやultrashort echo-time MRIは被曝と鎮静を避けうること、呼吸機能検査は閉塞性パターンを示しうるが単独では診断できないこと、単純X線では気管の異常が写らないことがあること、先天性および軽症の後天性は自然軽快しうるため予防接種・受動喫煙の回避・胸部理学療法・胃食道逆流の管理・誤嚥を避ける哺乳法などの保存的管理と経過観察を行うこと、気管支拡張薬・抗ムスカリン薬・去痰薬・抗菌薬が使われるが有益性の根拠は乏しいこと、保存的管理が奏効しない場合にCPAPが選択肢となること、無呼吸発作・成長障害・反復性肺炎・チアノーゼ発作のある例が手術適応になりやすいこと、ステント留置は非常に重症の例に限られ肉芽・血管びらん・粘膜過形成を起こしうるうえ、症状改善の持続が予測できずびまん性病変には不適であること、気管切開は長期人工呼吸と気道のステント効果を与えるが合併症が多く末期・近位・びまん性病変に限るべきこと、大動脈固定術(aortopexy)が多くの施設で好まれ上行大動脈を胸骨後面へ縫着して前方へ持ち上げる手技であること、短い分節の病変では気管切除・端々吻合が選択肢になること、予後は先天性かつ軽症であれば良好でおおむね2歳ごろまでに軽快し、他疾患を伴わない先天性気管軟化症は他の気道へ及ばず通常12〜24か月で消退すること、併存症のある例は小児期後半まで症状が残り成人まで残ると運動耐容能の低下を来しうること、無治療の合併症が気道閉塞・反復性呼吸器感染・成長障害であること、気管切開の早期合併症が出血・感染・反回神経損傷・偽腔形成で晩期合併症が気管食道瘻・気管腕頭動脈瘻・声門下狭窄であること、大動脈固定術の合併症が気胸・胸水・無気肺・横隔神経麻痺・出血であること、鑑別が喉頭軟化症(吸気性喘鳴、通常2歳までに軽快)・声門下狭窄(体位で変わらない二相性喘鳴)・声帯麻痺・急性喉頭蓋炎・気道異物・再発性呼吸器乳頭腫症であることを確認した閲覧 2026-09-08
  2. 2.ERS statement on tracheomalacia and bronchomalacia in children(European Respiratory Society(European Respiratory Journal、Wallis C, Alexopoulou E, Antón-Pacheco JL, et al.)・2019)気管軟化症・気管気管支軟化症が大気道の一次性異常であることも、多様な先天性・後天性疾患に伴うこともあること、診断・分類・管理に関するエビデンスが乏しく、重症度について普遍的に受け入れられた分類が存在しないこと、臨床像が病変の部位と重症度により早発の喘鳴または固定性の喘鳴・反復する感染・金属様の咳(brassy cough)・瀕死発作にまで及ぶこと、診断は通常は自発呼吸下の小児に対する軟性気管支鏡で行われるが、低造影量の気管支造影・CT・MRIといった他の動的画像法でも示しうること、呼吸機能検査は補助的な根拠となるが診断的ではないこと、治療は病変の性質と重症度により内科的にも外科的にもなりうるがいずれの治療もエビデンス基盤が限られること、気管支拡張薬・抗ムスカリン薬・去痰薬・抗菌薬および併存疾患の治療が用いられるが現時点で有益性の根拠はほとんど無いこと、胸部理学療法が広く処方されているがエビデンス基盤は乏しいこと、症状が重いときの外科的選択肢が大動脈固定術・後方気管固定術・短い病変分節の気管切除・内腔ステント・気道の外部スプリントであること、呼吸補助を要する場合は顔マスクまたは気管切開を介したCPAPが最もよく用いられる方法であること、保護者が診断の遅れと管理への不安を訴えより多くの情報を求めていること、軟化症のエビデンス基盤を確立するにはさらなる研究が必要であることを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得閲覧 2026-09-08