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Disease Atlas · 呼吸器 · 外傷

気道異物

Airway foreign body

別名
気道異物吸引気管・気管支異物
臓器系
呼吸器小児耳鼻咽喉科
科目
PediatricsOtorhinolaryngology
トピック
小児科 2-24:気道異物:評価と救急処置耳鼻咽喉科 59:気管疾患と気道異物
鑑別疾患
アナフィラキシークループ・急性喉頭蓋炎・細菌性気管炎気管支喘息気管軟化症血管輪細気管支炎食道異物
合併症
肺膿瘍
症状
咳吸気性喘鳴喘鳴呼吸困難チアノーゼ嗄声
画像所見
無気肺

🧠 全体像:は「疑えるかどうか」で予後が決まる病気である。1〜3歳の子が食事中や遊んでいる最中に突然咳き込む——それだけで十分な理由になり、されていないこと、X線が正常なこと、症状が落ち着いてしまったことは、どれも否定の根拠にならない。異物の多くはのピーナッツなどの有機物で、に落ち着き、いったん咳が収まって無症候になったあとや治らない喘鳴として何週間も経ってから見つかる。だから最終判断は画像ではなくに預ける。閉塞の性質(不完全か完全か)で行き先が二手に分かれ、なら現場での・突き上げ、なら手を出さずに気管支鏡へ運ぶ。

好発と原因

3歳未満が最も多い。⚠️ 3歳未満の小児の事故死の7%を占める(下記総説が引用する値)1。

この年齢に集中するのには、そろって解剖学的・行動的な理由がある1。

  • 物を口に入れて環境を探索する時期である。
  • 食事中にじっとせず動き回り、が誤嚥を助長する。
  • 臼歯が未発達で、でしか食物を砕けないため十分にできない。
  • 喉頭のが完成していない。

原因異物は有機物、とりわけピーナッツなどの木の実が突出して多い。中国の小児3,149例では木の実が84%を占め2、インドの22例でも有機物が63.6%(ピーナッツが31.8%で最多)だった3。

💡 なぜピーナッツが最悪なのか。 ①なので単純X線に写らない、②水分を吸って膨張し、時間とともに嵌頓が固くなる、③脂質とタンパクが強い化学性の気道炎症()を起こす。「写らない・膨らむ・炎症を起こす」という三重の性質が、診断の遅れと摘出の難しさをどちらも悪化させる。

成人でも起こる。嚥下障害、の低下や鎮静、の使用、アルコール摂取が背景にある。

嵌頓部位

部位 割合
喉頭 3%
気管・ 13%
右肺 59%(うち52%)
左肺 23%(うち18%)
両側 2%

(本総説が引用する値1。別の小児22例の検討でもへの嵌頓が59.1%を占めた3)

⭐ に多いのは、のほうが太く・短く・気管の軸に近い角度で分岐するからである。ただし乳児では左右差が小さく、誤嚥時の体位でも分布は変わるため、「左だから異物ではない」とは言えない。

臨床像——3徴は揃わない

古典的には咳・片側の・片側性の喘鳴の3徴で語られるが、⚠️ 3徴が揃うとは限らない。 症候は嵌頓部位で大きく変わる1。

嵌頓部位 主な症候
喉頭 強い咳、、嗄声、えずき
・気管() 、咳、呼吸困難
気管支 ⚠️ 症状が乏しいことがある。片側性の喘鳴と片側の

⚠️ では発声も有効な咳もできなくなる。 声を出せない・咳ができない・だけが続くという状態はであり、短時間でチアノーゼとに至る。逆に声が出て咳ができるならである。

⚠️ 急性期を過ぎると症状は静まる。 誤嚥直後の激しい咳(窒息期)が数分〜数十分で収まると、いったん無症候になる。この「小康期」に受診しなければ、その後は反復する肺炎、軽快しない喘鳴、治らない咳として遅れて現れる。・・肺炎・喘息の症候に紛れるため、反復する肺炎、軽快しない、治療に反応しない喘息では常にを疑う1。

⚠️ されていないことは否定の根拠にならない。 85%は時期を逸せず診断されるが、診断が遅れた15%では肺炎・・といった合併症が生じる1。突然発症の咳と片側の呼吸音差があれば、誤嚥エピソードのがなくても疑いを下げない。

画像は除外に使えない

⚠️ 胸部X線は診断を支持できても、除外はできない。 誤嚥された物体の多くはであり、気管への吸引例の約50%、気管支への吸引例の約25%でX線は正常である1。実際、小児22例の検討でも36.3%で胸部X線が正常だった3。

  • :協力の得られる年長児では吸気時と呼気時の2枚を撮る。異物が呼気時にとして働き、患側に空気が閉じ込められる()ため、呼気時に患側が虚脱せずのまま残り、縦隔がへ偏位する1。
  • :では末梢の空気が吸収されて虚脱する。画像所見としての読み方はの項に譲る。
  • はが無いが依存で、も診断に用いうる1。⚠️ ただし疑いが強い例や不安定な例で、のために気管支鏡を遅らせない。

対応——適応の判断

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='airway foreign body'>気道異物</span>を疑う"] --> B{"有効な咳・発声があるか"}
    B -->|"ある:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='incomplete obstruction'>不完全閉塞</span>"| C["現場での用手手技を行わない<br>咳を促し体位を保ったまま搬送"]
    B -->|"ない:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='complete occlusion'>完全閉塞</span>"| D["直ちに救急要請し<br>年齢別の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='back blows'>背部叩打</span>・突き上げを開始"]
    D --> E{"反応が無くなったか"}
    E -->|"はい"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiopulmonary resuscitation (CPR)'>心肺蘇生</span>へ移行<br>見える異物のみ除去"]
    E -->|"排出された"| G["排出後も残存異物がありうる"]
    C --> H["全身麻酔下の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rigid bronchoscope'>硬性気管支鏡</span>"]
    G --> H
    F --> H
    H --> I["摘出後は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='laryngeal edema'>喉頭浮腫</span>・気胸・出血・肺炎・残存異物を監視"]

⚠️ 有効な咳があるうちに手を出さない。 は自力の咳が最も有効な排出手段であり、や突き上げは異物を移動させてへ変えうる。盲目的な指による掻き出しをしない。(用手手技の回数・組み合わせと年齢による使い分けは、蘇生指針に沿って小児科 2-24:が扱う。ここでは適応の判断だけを扱う。)

確定診断と摘出

⭐ 確定診断も治療もである。 誤嚥の疑いが高ければ、診断と治療の双方の目的で全身麻酔下のを最初の器械的手技として行う1。は太い操作路と換気路を同時に確保できるため、太い異物を把持しながら換気を維持できる。

  • は低侵襲で、など末梢の異物の同定に優れる一方、吸引・操作が限られ、換気能力と気道確保を欠く1。診断目的や成人例で選択されるが、小児の摘出の主役ではない。
  • 気管支鏡で摘出できない異物にはや・・を要するが、は症例の1%未満〜2.5%にとどまる1。
  • 致死的な例ではを摘出前後・術中の安定化に用いうる1。
  • ⚠️ 手技そのものにも危険がある。 中国の小児3,149例では、術後の重篤合併症(・・・気胸・・死亡)が9%に生じた2。「念のため全例に」ではなく、疑いの強さに応じて適応を立てる。
  • ⚠️ 術前の気道所見が陰性でも異物は否定できない2。

鑑別

まとめ

  • 3歳未満に多く、3歳未満の事故死の7%を占める。臼歯の未発達と喉頭の未熟が背景にある。
  • 原因異物はピーナッツなどの木の実が最多で、・膨張性・強い炎症惹起という三重の性質を持つ。
  • 嵌頓は右肺59%(52%)が最多だが、左でも両側でも起こる。
  • 3徴(咳・片側の・)は揃わないことが多く、気管支異物では症状が乏しいこともある。
  • 誤嚥のが無くても否定しない。診断が遅れた15%で肺炎・・膿瘍が生じる。
  • ⚠️ 胸部X線は除外に使えない。気管異物の約50%、気管支異物の約25%でX線は正常である。で患側のを探す。
  • 有効な咳があるうちは手を出さず、でのみ用手手技を行う。盲目的な指の掻き出しをしない。
  • 確定診断と摘出は全身麻酔下の。ただし重篤合併症が9%に生じるため、疑いの強さに応じた適応判断が要る。

出典

  1. 1.FOREIGN BODY ASPIRATION AND INGESTION IN CHILDREN(Acta Clinica Croatica・2023)気道異物の誤嚥が3歳未満の小児で最も多く、呼吸予備能が小さく気道径が細いため致死的になりうること。3歳未満が最も危険な理由として、物を口に入れて環境を探索すること、食事中にじっとせず動き回り啼泣が誤嚥を助長すること、臼歯が未発達で切歯でしか食物を砕けず十分に咀嚼できないこと、喉頭の防御反射が完成していないことを挙げていること。異物の嵌頓部位が本総説の引用する値で喉頭3%・気管および気管分岐部13%・右肺59%(うち右主気管支52%)・左肺23%(うち左主気管支18%)・両側2%であること。喉頭の異物では強い咳・窒息感・嗄声・えずきが多く、声門下や気管の不完全閉塞では吸気性喘鳴・咳・呼吸困難を生じ、気管支の異物では症状が乏しいこともあり片側性の喘鳴と片側の呼吸音低下がふつうにみられること。急性上気道感染・細気管支炎・肺炎・喘息の症候に紛れることがあり、反復する肺炎、軽快しないクループ、治療に反応しない喘息では常に気道異物を疑うべきこと。診断の最初の検査は胸部X線だが、これは診断を支持できても除外はできず、誤嚥された物体の多くがX線透過性であるために、気管への吸引例の約50%・気管支への吸引例の約25%でX線が正常となること。協力の得られる年長児では吸気時と呼気時の胸部X線が有用で、過膨張やエアトラッピングが異物を示唆すること。肺超音波は術者依存だが被曝が無く、CTも診断に用いうること。85%は時期を逸せず診断されるが、診断が遅れた15%では肺炎・無気肺・膿瘍といった合併症を生じること。誤嚥の疑いが高い場合は診断と治療の双方の目的で全身麻酔下の硬性気管支鏡が最初の器械的手技として用いられ、軟性気管支鏡は低侵襲で上葉気管支など末梢の異物の同定に優れる一方、吸引・鉗子操作が限られ換気能力と気道確保を欠くこと。気管支鏡で摘出できない異物には気管切開や開胸・気管支切開・肺切除を要し、開胸は症例の1%未満〜2.5%と報告されること。体外式膜型人工肺が致死的な気道異物の救済手段として摘出の前後・術中の安定化に用いうること。罹病率は10〜20%で、3歳未満の小児の事故死の7%を占めること。これらの数値は本総説が引用した文献に基づくものであること閲覧 2026-09-02
  2. 2.A time series observation of Chinese children undergoing rigid bronchoscopy for an inhaled foreign body: 3,149 cases in 1991-2010(Chinese Medical Journal・2015)中国の単一施設で1991〜2010年に気道異物疑いで硬性気管支鏡を受けた小児3,149例を対象とした時系列観察研究で、木の実(84%)が最多の原因異物であったこと、術後の重篤合併症(重症低酸素血症・喉頭浮腫・喉頭痙攣・気胸・無気肺・死亡)が9%に生じたこと、術前の気道所見が陰性でも異物が否定できない例が増えていたことを確認した。閲覧 2026-08-27
  3. 3.Clinico-Radiological Profile and Outcome of Airway Foreign Body Aspiration in Children: A Single-Center Experience From a Tertiary Care Center in Eastern India(Cureus・2022)インド東部の三次医療施設で1か月〜14歳の小児22例を後方視的に解析した研究で、胸部X線が正常だった例が36.3%に上ったこと、気管支鏡で回収された異物のうち有機物が63.6%(うちピーナッツが31.8%で最多)を占め、右主気管支への嵌頓が59.1%と多かったことを確認した。閲覧 2026-08-27