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Disease Atlas · 免疫・膠原病 · 症候群

アナフィラキシー

Anaphylaxis

別名
Anaphylactic shockアナフィラキシーショックアナフィラキシー反応
臓器系
免疫・膠原病全身呼吸器
科目
AnesthesiologyInternal Medicine
トピック
麻酔科学 A-05:アナフィラキシーショックの症状・診断・治療内科学 R-14:アレルギー
鑑別疾患
クループ・急性喉頭蓋炎・細菌性気管炎サイトカイン放出症候群遺伝性血管性浮腫気管支喘息血清病薬疹(SJS・TENを含む)
続発疾患
循環性ショック
関連疾患
蕁麻疹
治療薬
エピネフリンサルブタモールヒドロコルチゾンメチルプレドニゾロンファモチジンラニチジン
症状
下痢吸気性喘鳴血管性浮腫喉頭浮腫呼気性喘鳴失神腫脹低血圧腹痛嗄声嘔吐顔面紅潮気管支攣縮
検査値
血清トリプターゼ
元疾患
食物アレルギー

🧠 全体像:アナフィラキシーは検査結果や皮膚所見を待つ疾患ではない。既知・可能性の高いアレルゲン曝露後に気道・呼吸・循環のいずれかが急速に障害されれば、その場で臨床診断し、大腿前外側へのを最優先で行う。抗ヒスタミン薬・H2遮断薬・ステロイドはABCを救わない補助治療にすぎない。

定義と病態生理

アナフィラキシーは、肥満細胞・からのメディエーター放出により、血管拡張・が数分〜数時間で急速に進行する重症全身性過敏反応である。多くはIgE依存性(食物・薬剤・虫毒などへの感作後の再曝露)だが、補体・IgG・肥満細胞の直接活性化によるIgE非依存性の機序でも同一の臨床像を呈し、両者はが変わらないため急性期には区別を急がない。

によるへの急速な体液漏出(数分での最大半分が漏出しうる)はの要素を重ねてもたらし、は換気・酸素化障害を同時に引き起こす。

flowchart TD
    A["アレルゲン曝露(IgE依存性・非依存性)"] --> B["肥満細胞・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='basophil'>好塩基球</span>の活性化"]
    B --> C["ヒスタミン・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tryptase'>トリプターゼ</span>・PAF・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='leukotriene'>ロイコトリエン</span>放出"]
    C --> D["血管拡張・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='increased vascular permeability'>血管透過性亢進</span>"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bronchoconstriction'>気管支収縮</span>・気道<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mucosal edema'>粘膜浮腫</span>"]
    C --> F["消化管<span class='jp-term jp-term-diagram' title='smooth muscle contraction'>平滑筋収縮</span>"]
    D --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='circulating plasma volume'>循環血漿量</span>急減・血液分布異常"]
    G --> H["低血圧・ショック"]
    E --> I["換気・酸素化障害・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='upper airway obstruction'>上気道閉塞</span>"]
    F --> J["腹痛・嘔吐・下痢"]

💡 PAF()の重要性:PAFはヒスタミンよりへの寄与が大きく、血中PAF濃度と重症度・PAF分解酵素活性の低さが重症アナフィラキシーや死亡と関連する。ヒスタミン単独では説明できない重症例の機序として理解しておく。

診断基準

アナフィラキシーは臨床診断であり、確定検査の結果を待たない。次のいずれかを満たせば可能性が高いと判断する。

条件 内容
条件1 皮膚・粘膜症状(蕁麻疹、掻痒を伴う、口唇・舌・の腫脹)+呼吸器・循環・重度消化器症状のいずれか1系統以上を急性に伴う
条件2 既知または可能性の高いアレルゲンへの曝露後、数分〜数時間で急性の呼吸器症状または循環器症状(状の有無を問わない)

状を欠く例は約1〜2割存在するため、「状がない=アナフィラキシーではない」と早合点しない。逆に状だけで他臓器症状を伴わない場合はアナフィラキシーと呼ばない(蕁麻疹単独として扱う)。

誘因

  • 食物(ナッツ類、甲殻類、卵、乳、そばなど)
  • 薬剤(抗菌薬、NSAIDs、造影剤、など)
  • ハチ・アリなどの昆虫毒
  • 周術期(抗菌薬、が代表的誘因)
  • 運動、寒冷などの物理的誘因
  • 誘因を同定できない特発性アナフィラキシー

臨床像

系統 代表所見
気道 嗄声、咽頭違和感、舌・口唇腫脹、
呼吸 、頻呼吸、低酸素、増大
循環 低血圧、頻脈または重症例の徐脈、失神、虚脱
皮膚・粘膜 、蕁麻疹、(欠くこともある)
消化管 腹痛、嘔吐、下痢

β遮断薬服用中の患者や高齢者ではが出にくく、徐脈のまま急速に虚脱することがある。妊娠関連アナフィラキシーでは仰臥位低血圧症候群を助長しないよう体位に注意する。

初期治療

flowchart TD
    A["アナフィラキシーを疑う"] --> B["応援要請・誘因を中止"]
    B --> C["仰臥位・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='leg elevation'>下肢挙上</span>を基本に体位調整"]
    C --> D["大腿前外側へアドレナリン筋注"]
    D --> E["気道・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high flow'>高流量</span>酸素・モニター・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='IV access'>静脈路確保</span>"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='isotonic crystalloid'>等張晶質液</span>を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rapid administration (bolus)'>急速投与</span>し再評価"]
    F --> G{"5分で改善するか"}
    G -->|"不十分"| H["アドレナリン筋注を反復"]
    G -->|"改善"| I["経過観察・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='biphasic reaction'>二相性反応</span>に注意"]
    H --> J{"適切な筋注を反復しても難治か"}
    J -->|"はい"| K["熟練者管理下でアドレナリン静注<span class='jp-term jp-term-diagram' title='repeated/continuous dosing'>持続投与</span>"]
    J -->|"いいえ"| I

アドレナリン

  • 成人:1 mg/mL製剤(1:1000)0.3〜0.5 mgを大腿前外側へ筋注する。改善が不十分なら5〜15分ごとに反復する。
  • 小児:0.01 mg/kgを筋注し、通常最大0.5 mgとする。
  • 通常の初期治療ではを行わない。や過度の高血圧を招きうるため、静注は熟練者によるに限る。
  • ⚠️ アドレナリン投与にはない。心血管疾患があっても、アナフィラキシーによる死亡リスクの方が投与リスクを上回る。

体位とABC

  • 原則として仰臥位で下肢を挙上し、突然の立位・歩行を避ける(静脈還流が急減し心停止に至る「」のリスクがあるため)。
  • 呼吸困難が強ければ脚を伸ばした座位、妊娠後半はを考慮する。意識がなく呼吸があればとする。
  • 酸素を投与し、連続SpO₂・心電図・血圧を監視する。
  • 太いを確保し、低血圧にはを成人500〜1,000 mLずつして反応をみる。大量のを想定し、必要なら反復する。
  • が進行する前に経験者を呼び、挿管困難と確保の準備をする。

難治性アナフィラキシー

適切な用量・部位でアドレナリン筋注を複数回(目安2〜3回)行っても呼吸・循環障害が続く場合、難治性として扱う。

  • 熟練者が連続血圧・心電図監視下でアドレナリン静注に切り替える。
  • 十分な晶質液投与、気道管理、誘因除去を並行する。
  • β遮断薬服用中でアドレナリンに反応不良な場合、グルカゴン(成人1〜5 mgを5分かけて静注し、その後5〜15 μg/分で、小児20〜30 μg/kg)をが検討する。グルカゴンはβ受容体を介さずを活性化するため、β遮断薬下でも・血管抵抗を改善しうるが、嘔吐による誤嚥に注意する。
  • 心停止に至れば標準的なと静注アドレナリン投与へ移行する。

補助治療

いずれもアドレナリンの代用にはならない。ABCの安定化を優先し、これらを理由に投与を遅らせない。

治療 位置づけ
吸入 持続するへの補助。単独では・循環障害を治療しない
H₁抗ヒスタミン薬 ABC安定後の蕁麻疹・掻痒に使用。低血圧・気道閉塞には無効で、効果発現も遅い
H₂受容体拮抗薬(など) H₁薬との併用が試みられてきたが、生命を脅かす症状への効果を示す質の高い根拠に乏しく、ルーチンの第一選択治療には位置づけられない。物質(NDMA)混入問題で多くの市場から回収済みであり、現在はなどに置き換わっている
副腎皮質ステロイド( 効果発現が数時間単位と遅く、急性期のABC治療にもの予防にもルーチンには推奨されない

二相性反応と観察

は、初回症状が完全に消失してから48時間以内に、再曝露なく症状がする現象である。重症度が高いほど、またアドレナリンを複数回必要とした例ほど起こりやすい。

⭐ 観察時間は一律の固定時間ではなく、重症度・アドレナリン反復回数・誘因・・医療アクセスに応じて個別に決める考え方へ移行している。軽症で初期治療後1時間症状がなければの可能性は低いが、重症例、複数回のアドレナリンを要した例、が高度だった例では、より長い観察や入院を個別に判断する。

検査と鑑別診断

は診断を補助するが、採血のために治療を遅らせない。発症後1〜2時間程度でピークを迎え、可能であれば回復後のと比較する。が正常でもアナフィラキシーは否定できない(特に食物誘発例では上昇しないことが多い)。

鑑別 鑑別点
(失神) 徐脈・蒼白・が主体で、蕁麻疹やを伴わない。臥位で速やかに改善する
主体で皮膚・循環症状を伴わないことが多いが、アナフィラキシーにが合併することもある
・恐怖感が主体で、蕁麻疹・・低血圧を伴わない
など 蕁麻疹を伴わない反復性。アドレナリン・抗ヒスタミン薬に反応が乏しく、量・機能で評価する
不適切に保存された魚の摂取後、ヒスタミン様症状を呈するがIgE機序を介さない

退院後・二次予防

  • 誘因の同定と回避指導を行う。
  • 再発時の行動計画(の使用手順を含む)を書面で共有する。
  • 適応があればを処方し、使用訓練を行う。
  • アレルギー専門医への紹介、必要に応じた検査やを計画する。
  • 医療用アラート(アクセサリーなど)の携帯を検討する。

まとめ

  • アナフィラキシーは臨床診断である。皮膚所見がなくても、既知・可能性の高いアレルゲン曝露後の急性の気道・呼吸・循環障害があれば診断し、治療を開始する。
  • 第一選択は大腿前外側へので、成人0.3〜0.5 mgを必要に応じ5〜15分ごとに反復する。は初期治療では行わない。
  • 仰臥位・を基本とし、突然の起立・歩行を避ける。酸素、気道準備、を並行する。
  • 抗ヒスタミン薬・H₂遮断薬・ステロイドは補助治療であり、救命的なABC治療の代用にはならない。
  • 難治例ではβ遮断薬使用の有無を確認しつつ、熟練者管理下でアドレナリン静注やグルカゴンを検討する。
  • は重症度とアドレナリン反復回数に応じてリスクが上がるため、観察時間は固定せず個別に判断し、退院時には薬と行動計画を整える。