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Disease Atlas · 循環器 · 症候群

循環性ショック(心原性・循環血液量減少性・閉塞性・血液分布異常性)

Circulatory shock (cardiogenic, hypovolemic, obstructive, distributive)

臓器系
循環器全身
科目
PathophysiologyAnesthesiology
トピック
病態生理学 II-20:循環性ショックの定義と分類病態生理学 II-23:循環性ショックの進行麻酔科学 A-03:ショックの病態・分類・診断・治療麻酔科学 A-04:心原性ショック麻酔科学 A-06:出血性ショック麻酔科学 A-07:閉塞性ショック
鑑別疾患
毒素性ショック症候群
治療薬
ノルアドレナリンドブタミンエピネフリン
症状
低血圧浮腫乏尿
検査値
フィブリノゲン血算血小板数心筋トロポニン動脈血液ガス乳酸乳酸アシドーシスナトリウム利尿ペプチド呼気終末二酸化炭素分圧
画像所見
心嚢液貯留
スコア
qSOFASOFAスコア
元疾患
Waterhouse-Friderichsen症候群コレラたこつぼ症候群急性冠症候群急性心膜炎胸部外傷(肋骨骨折・血胸・外傷性気胸・フレイルチェスト)大動脈解離脱水肺血栓塞栓症泌尿生殖器外傷脾捕捉症候群
原因となる疾患
アナフィラキシー壊死性軟部組織感染症消化管出血(上部・下部)鈍的腹部外傷敗血症
禁忌薬
カルベジロールセリプロロールビソプロロールメキシレチンメトプロロール

🧠 全体像は血圧低下そのものではなく、組織へのが需要を満たせない急性の循環不全である。原因は・閉塞性・の4型に分かれるが、どの型でも「(負のフィードバック優位)→(正のフィードバック=悪循環)→」という共通の経過をたどる。蘇生と原因検索を同時に進め、型別の決定的治療(止血、再灌流、閉塞解除、)へ直結させることが救命の要である。

定義と酸素供給

(DO₂)は心拍出量(CO)との積で決まる。

DO2=CO×CaO2DO_2 = CO \times CaO_2
CaO2=(1.39×Hb×SaO2)+(0.003×PaO2)CaO_2 = (1.39 \times Hb \times SaO_2) + (0.003 \times PaO_2)

したがって灌流量だけでなく、Hbとも組織を左右する。DO₂低下が代償範囲を超えると、の増加だけでは需要を満たせなくなり、・乳酸上昇・・臓器不全へ進む。

💡 本質は「需要に供給が追いつかない」こと。 血圧が低いこと自体ではなく、組織が酸素を受け取れていないことがショックである。血管収縮で血圧が保たれたにも、の低灌流はすでに進行し得る。

flowchart TD
    A["循環血液量・心機能・血管抵抗のいずれかの異常"] --> B["心拍出量または有効灌流の低下"]
    B --> C["組織<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myocardial oxygen supply'>酸素供給</span>(DO2)の不足"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anaerobic metabolism'>嫌気代謝</span>・乳酸上昇"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endothelial injury'>内皮障害</span>・炎症・凝固異常"]
    E --> F["多臓器機能障害"]

分類

分類 機序 代表原因 前負荷 CO
血液・↓ → 前負荷↓ 出血、脱水、嘔吐・下痢・熱傷などの体液喪失 低下 低下 上昇
の喪失 、重症心筋症、急性弁膜症、 上昇しやすい 低下 上昇
閉塞性 ↑・充満障害 → CO↓ 高リスク肺塞栓、心タンポナーデ、 有効充満低下 低下 上昇
血管容量の増大・前負荷↓ 敗血症性、アナフィラキシー性、 正常〜低下 初期は上昇し得る 低下

これらは典型像であり、に変化し混合型も多い(例:敗血症性心筋障害、出血との併存)。が全体の中で最多(>50%)を占める。

血行動態の2型

flowchart TD
    S["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='circulatory shock'>循環性ショック</span>"] --> A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vasoconstrictive'>低拍出型</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypodynamic/vasoconstrictive'>血管収縮型</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypovolemic'>循環血液量減少性</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiogenic'>心原性</span>・閉塞性)"]
    S --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vasodilative'>高拍出型</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperdynamic/vasodilative'>血管拡張型</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='distributive'>血液分布異常性</span>)"]
    A --> A1["一次的にCO↓"]
    A1 --> A2["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='compensatory'>代償的</span>に全身血管収縮(TPR↑)でBPを維持"]
    B --> B1["一次的にTPR↓(血管拡張)→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='afterload'>後負荷</span>↓"]
    B1 --> B2["一過性にCO↑"]
    B2 --> B3["やがて静脈還流↓→CO↓(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vasoconstrictive'>低拍出型</span>に似てくる)"]

心臓へ血液を戻す力には、拡張期の吸であるvis a fronteに依存)と、前方への押し出しであるvis a tergo(大血管の伸展と発生圧)がある。では血液量↓→↓→前負荷↓→CO↓となるのに対し、ではの境界が右へずれ、正常な血液量でも十分なを作れず前負荷↓→CO↓となる。

進行:代償期から不可逆期へ

💡 進行のエンジンは正のフィードバック(悪循環)。 では負のフィードバックが優勢だが、それが枯渇すると低灌流がさらなる低灌流を生む悪循環に切り替わり、ある点を超えると介入しても戻らない(irreversible)。

flowchart TD
    C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='compensated stage'>代償期</span>(負のフィードバック優位)"] --> X["負のフィードバックの枯渇"]
    X --> P["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='progressive stage'>進行期</span>(正のフィードバック=悪循環が始動)"]
    P --> M["代謝破綻(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lactic acidosis'>乳酸アシドーシス</span>・ミトコンドリア抑制)"]
    M --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='irreversible stage'>不可逆期</span>→MOF/MODS(介入しても死)"]

負のフィードバックの枯渇(進行期への入口)

  • ↓(尿濃縮↓)
  • ADH枯渇
  • 枯渇
  • 組織からの血管拡張メディエーター・代謝物・毒素の放出
  • の破綻(血管抵抗↓、↑、↓)

正のフィードバックの悪循環

flowchart TD
    H["低灌流・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tissue hypoxia'>組織低酸素</span>"] --> V1["①<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coronary perfusion'>冠灌流</span>↓→CO↓→動脈圧↓→さらに<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coronary blood flow'>冠血流</span>↓"]
    H --> V2["②<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cerebral perfusion'>脳灌流</span>↓→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vasomotor activity (vasomotion)'>血管運動</span>中枢の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sympathetic outflow'>交感神経出力</span>↓"]
    H --> V3["③血管拡張メディエーター/毒素→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='venous pooling'>静脈貯留</span>(血が戻らない)"]
    H --> V4["④血管壁低酸素→ATPなし→血管拡張+透過性↑→浮腫+電解質喪失→血液量/静脈還流↓"]
    V1 --> H
    V2 --> H
    V3 --> H
    V4 --> H

代謝面では、による乳酸産生()とによる炭酸産生で代謝性アシドーシスが進み、ATP↓→Na⁺/K⁺ ATPase↓→→リソソーム不安定化→というミトコンドリア抑制の経路が加わる。

⚠️ ~50 mmHgでの(Cushing反射) は一過性にBPを高止まりさせるが、低下傾向そのものを逆転できない。BP単独はCOより遅れて落ちるため誤解を招きやすく、乳酸や皮膚灌流などの追加を併せてモニターする。に達すると正のフィードバックが優位となり、外的介入をしても死に至りMOF/MODSへ進む。

認識と初期評価

低血圧がなくてもショックは存在しうる。次を組み合わせて判断する。

  • 意識変容、、傾眠
  • ・まだら模様、延長(初期では温暖皮膚のこともある)
  • 頻脈、狭い脈圧、低血圧
  • 乏尿
  • 乳酸上昇、代謝性アシドーシス、臓器障害
  • 頸静脈、肺ラ音、、外出血、腹部・骨盤・背部所見

(心拍数/)は補助指標で、上昇は循環不全を示唆するがβ遮断薬、ペーシング、妊娠、年齢で修飾される。

RUSHとHI-MAP

は心臓・下大静脈・肺・大動脈・腹腔を一連で観察する。HI-MAPは観察対象を覚える枠組みである。

領域 主な確認点
心臓 左室収縮、右室拡大、性で小さい左室
下大静脈 容量状態の参考所見。ただし径・だけで輸液を決めない
・腹腔 肝腎境界、脾腎境界、骨盤の
大動脈 、解離を示唆する所見
、胸水。消失とは気胸を示唆

心電図、、血算、電解質、腎肝機能、乳酸、凝固、、培養を病態に応じて行う。安定化を遅らせない範囲でCTやへ進む。

初期対応の共通フロー

flowchart TD
    A["ショックを認識"] --> B["気道・呼吸・酸素化を評価"]
    B --> C["モニター・太い<span class='jp-term jp-term-diagram' title='IV access'>静脈路</span>・採血"]
    C --> D["蘇生と原因検索を同時開始"]
    D --> E{"主要病型"}
    E -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypovolemic'>循環血液量減少性</span>"| F["止血・適切な輸液または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blood components'>血液製剤</span>"]
    E -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiogenic'>心原性</span>"| G["再灌流・心機能支持"]
    E -->|"閉塞性"| H["閉塞を緊急解除"]
    E -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='distributive'>血液分布異常性</span>"| I["原因治療・輸液・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vasoactive drug'>血管作動薬</span>"]
    F --> J["反応を再評価"]
    G --> J
    H --> J
    I --> J
  • 低酸素血症には酸素を投与するが、正化に対する一律の高濃度酸素は不要である。
  • 輸液は適応・種類・量・速度・終了条件を決めて小分けに行い、の変化で反応をみる。
  • (出血性)ショックでは晶質液を大量投与せず、止血とを優先する。
  • では不用意な大量輸液が悪化を招く。
  • では、輸液中でも著しい低血圧が続けばから早期にノルアドレナリンを開始できる。

再評価は、意識・皮膚灌流・・尿量、MAPと脈圧・心拍数・不整脈、乳酸の推移と酸塩基状態、PLRや小量負荷に対する変化、肺うっ血・右左室機能・を反復し、必要例では動脈圧・を追加する。

心原性ショック

は、十分な循環血液量があるにもかかわらず心拍出量が低下し臓器低灌流を来す状態である。低血圧は典型的だが、血管収縮で血圧が保たれた早期にも進行し得る。

flowchart TD
    A["心筋・弁・心拍リズムの障害"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stroke volume'>一回拍出量</span>低下"]
    B --> C["心拍出量低下"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coronary perfusion'>冠灌流</span>と全身灌流の低下"]
    D --> E["虚血・乳酸上昇・臓器障害"]
    E --> F["心機能がさらに悪化"]

主な原因

機序 代表例 見逃せない所見
左室収縮不全 、劇症型心筋炎、、末期心筋症 肺水腫、広範な
右室不全 、肺高血圧 、右室拡大、が比較的清明
新規雑音、急激な肺水腫、、突然の虚脱
弁膜症 急性重症、急性大動脈弁逆流、重症狭窄 特徴的雑音はで弱いこともある
不整脈 、徐脈、、頻脈性心房細動 心電図で診断し、循環不安定なら直ちに治療

である高リスク肺塞栓、心タンポナーデ、を必ず鑑別する(も参照)。が原因のことも多く(参照)、が心タンポナーデや急性大動脈弁逆流を介してを来すこともある(参照)。

臨床像と重症度

低血圧、狭い脈圧、頻脈または徐脈、、意識変容・乏尿・乳酸上昇・代謝性アシドーシス、肺うっ血・・低酸素血症、・浮腫・肝うっ血がみられる。

分類は、A「リスクあり」、B「開始」、C「典型」、D「悪化」、E「極限」の5段階で進行を共通言語化する。単一時点の評価だけでなく、段階が上がるが重要である。

うっ血と灌流による表現型

表現型 灌流 うっ血 概要
温暖・非うっ血 保たれる なし 代償された状態
温暖・うっ血 保たれる あり うっ血優位の
・非うっ血 低下 乏しい 低充満または高度低心拍出
・うっ血 低下 あり 典型的な重症

診断

と連続モニターで虚血・不整脈を確認し、緊急心エコーで左・右室機能、、弁、を評価する。血算、電解質、腎肝機能、、BNP系、乳酸、血液ガス、凝固を測定し、が疑われれば安定化と並行して緊急へ進む。表現型が不明、治療反応不良、右左心の複雑な相互作用がある場合はを選択的に用いる。

初期治療

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiogenic shock, CS'>心原性ショック</span>を認識"] --> B["モニター・心電図・緊急エコー"]
    B --> C["酸素化と換気を支持"]
    C --> D["低血圧ならノルアドレナリンを検討"]
    D --> E["低心拍出が続けば<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inotropic agent'>強心薬</span>を検討"]
    E --> F["原因治療:再灌流・不整脈・機械的病変"]
    F --> G{"薬物で灌流を維持できるか"}
    G -->|"はい"| H["うっ血管理と頻回再評価"]
    G -->|"いいえ"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='shock team'>ショックチーム</span>で補助循環を選択"]
  • 低酸素血症には酸素を投与し、肺水腫ではまたは挿管を検討する。は静脈還流と血圧を下げ得るため、導入前から循環を準備する。
  • 明らかな低充満、などでは少量輸液を試せるが、反応をエコー・・肺うっ血で直ちに再評価する。
  • 著しい低血圧ではノルアドレナリンが一般に選択される。血圧が確保されても低心拍出・低灌流が続く場合はなどを個別に検討する。
  • を伴うでは、へのまたはが予後を左右する。
  • では外科・を緊急協議する。

機械的循環補助

装置 主な作用 適応の考え方 限界・合併症
拡張期膨張でを補助し、収縮直前の脱気でを軽減 の手術など選択例 に伴うへのルーチン使用は死亡を改善しない
左室をし前方流量を補う 選択された難治性左室不全 出血、溶血、血管損傷、肢虚血、費用
静脈・動脈で循環とガス交換を支持 可逆性または次の治療が見込める難治性 出血、血栓、溶血、感染、肢虚血、左室増大
右室・左室または両室を中 回復・移植・長期治療への橋渡し 、感染、血栓、出血

静脈静脈ECMO(VV-ECMO)は静脈・静脈でガス交換のみを補助し、単独では循環を支えない。VA-ECMOの期間を固定日数で区切る根拠はなく、回復可能性、予後、合併症、移植・VADへの橋渡しを専門施設の多職種で毎日再評価する。補助循環は装置を入れること自体が目標ではなく、導入前に回復への橋渡し、判断への橋渡し、VAD・移植への橋渡しのいずれかを明確にする。

循環血液量減少性・出血性ショック

循環血液量の急減により静脈還流、、心拍出量が低下し、交感神経性血管収縮で代償する。出血が続けば、乳酸性アシドーシス、へ進む。

flowchart TD
    A["出血(または体液喪失)"] --> B["循環血液量低下"]
    B --> C["静脈還流・心拍出量低下"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tissue hypoperfusion'>組織低灌流</span>"]
    D --> E["アシドーシス・低体温・低Ca血症"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coagulopathy'>凝固障害</span>"]
    F --> G["出血がさらに増悪"]

⚠️ ・アシドーシス・低体温に低Ca血症を加えた「」を早期から防ぐ。

出血源

外傷(外表、胸腔、腹腔、後腹膜、骨盤、)、消化管出血、産科出血、破裂、周術期・処置関連出血、抗凝固薬関連・などが主な出血源である。初期Hbが正常でもは否定できない。Hbは血漿と赤血球が同時に失われるため、希釈や後に低下が明瞭になる。

認識と評価

項目 所見
循環 頻脈、、低血圧、末梢
・意識低下、乏尿、乳酸上昇、増大
出血 活動性外出血、腹部膨隆、骨盤不安定、、吐
凝固 PT/INR、APTT、フィブリノゲン、血小板、検査

推定出血量によるクラスI〜IV分類(血液量喪失割合に応じて心拍数・血圧・脈圧・意識が段階的に変化するという古典的モデル)は学習上有用だが、実際にはが線形に変化するとは限らず、若年者・妊娠・高齢者・β遮断薬使用・運動選手ではバイタル反応が異なる。単一時点の分類よりと治療反応を重視する。

C-ABCDE

flowchart TD
    A["C:破局的外出血を直ちに止血"] --> B["A:気道と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cervical vertebra'>頸椎</span>保護"]
    B --> C["B:呼吸・胸部致死病変を治療"]
    C --> D["C:循環・骨盤・内出血を評価"]
    D --> E["D:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurological assessment'>神経学的評価</span>"]
    E --> F["E:全身露出と保温"]
  • 直接圧迫、創傷充填、止血帯で外出血を制御する。
  • 骨盤骨折を疑えばレベルにを装着する。
  • 胸部・腹部超音波、胸部・骨盤画像を病態に応じて行う。循環不安定患者を不要にCTへ移送しない。
  • 手術、内視鏡、インターベンショナルラジオロジー、産科処置など最短の止血法を選ぶ。

生命を脅かす異常を一次評価で治療した後、頭部から足先までの二次評価、アレルギー・薬剤・既往・最終摂取・を確認するAE歴、背面診察、必要な追加画像を行う。二次評価のために止血や蘇生を中断しない。

ダメージコントロール蘇生

  • 大量晶質液による、低体温、浮腫を避ける。必要な晶質液は少量のとし、施設の大量出血プロトコルを早期に起動する。
  • 重症がなければ、止血まで80〜90 mmHg、50〜60 mmHg程度の制限的蘇生を目安にする。重症ではを守るため、80 mmHg以上を目安に低血圧を避ける。
  • 赤血球、血漿、血小板を施設プロトコルに沿う均衡比で早期投与し、可能な環境では全血も選択肢となる。検査結果が得られた後は、フィブリノゲン、血小板、凝固因子を標準検査またはに補充する。
  • 輸血とで低下するCa²⁺を反復測定し、正常範囲へ補正する。
  • ・輸液を加温し、濡れた衣服を除き、保温装置で正常体温を維持する。

の重大出血またはそのリスクがあれば、受傷3時間以内、できるだけ早期に1 gを10分で静注し、続いて1 gを8時間で投与する。3時間を超えたルーチン投与は行わない。産科など他領域では各ガイドラインに従う。

抗凝固薬の拮抗

薬剤、最終服用時刻、腎機能を確認し、出血重症度に応じて速やかに特異的拮抗薬またはを用いる。ワルファリン関連重大出血ではと静注ビタミンKを併用する。では薬剤別の拮抗薬または施設手順を用いる。

再評価

止血できたか・隠れた出血源が残っていないか、意識・皮膚灌流・血圧・尿量・乳酸と、Hb・血小板・フィブリノゲン・凝固・Ca²⁺・体温・pH、・溶血・低体温などを反復評価する。

閉塞性ショック

は心臓外の機械的障害で心充満または血液が妨げられる病態である。急性の三大原因は心タンポナーデである(も充満障害を起こすが、多くは慢性病態でありこの三大原因とは区別する)。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intrathoracic pressure'>胸腔内圧</span>上昇・心嚢内圧上昇・肺<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular occlusion'>血管閉塞</span>"] --> B["右心への流入または右室<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ejection'>駆出</span>を阻害"]
    B --> C["左室前負荷低下"]
    C --> D["心拍出量低下"]
    D --> E["低血圧・臓器低灌流"]

鑑別

所見 高リスクPE 心タンポナーデ
病歴 突然の呼吸困難、胸痛、VTEリスク 、悪性腫瘍、外傷・処置 外傷、、肺疾患
頸静脈 怒張 怒張 怒張し得る
低酸素、所見は乏しいことも 通常両側換気音あり 片側呼吸音低下、胸郭運動低下
心エコー 右室拡大・機能低下、左室 、右房・右室虚脱、 心臓所見は非特異的
肺エコー 他原因除外に有用 胸水を伴うことあり 消失、
決定的治療 抗凝固と緊急再灌流 心嚢ドレナージ 即時減圧と

低血圧、頻脈、、低酸素、意識障害、乏尿、乳酸上昇を評価する。三徴(低血圧・など)がそろうのを待ってはいけない。

初期アプローチ

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='obstructive shock'>閉塞性ショック</span>を疑う"] --> B["気道・呼吸・循環を支持"]
    B --> C["ベッドサイド心肺エコー"]
    C --> D{"原因"}
    D -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tension pneumothorax'>緊張性気胸</span>"| E["直ちに胸腔減圧"]
    D -->|"心タンポナーデ"| F["緊急心嚢ドレナージ"]
    D -->|"高リスクPE"| G["抗凝固・緊急再灌流"]
    D -->|"不明"| H["蘇生継続・追加画像・専門科招集"]

輸液は原因解除までの一時的な前負荷支持に限り、小量ずつ反応をみる。、心室中隔偏位、ガス交換を悪化させる。低血圧にはノルアドレナリンを用い得るが、閉塞解除の代用にはならない。

緊張性気胸

臨床診断である。ショック、片側換気低下、胸郭所見、急激な悪化から疑えば、X線やCTを待たず直ちに減圧する。施設手順に従い、十分な長さの針・カテーテルまたは指による胸腔開放でし、続いて確実なを留置する。は静脈還流低下を増悪させるため、減圧を遅らせない。

心タンポナーデ

心嚢内圧上昇によって拡張期充満が障害される(が原因となることがある)。心エコーで、右房・右室の拡張期虚脱、下大、呼吸性流速変動を確認するが、血行動態との統合が必要である。または外科的する。血液貯留、では外科的処置が優先される。少量輸液やはドレナージまでの橋渡しであり、挿管・は静脈還流を急減させ得るため可能ならドレナージ準備後に行う。

高リスク肺塞栓症

心停止、、持続性低血圧を伴う肺塞栓症(参照)は高リスクである。不安定患者ではが最初の重要検査となり、右室負荷所見と高い臨床疑いがあれば緊急治療へ進む。禁忌がなければが標準的な再灌流治療であり、血栓溶解禁忌または不成功では外科的またはを施設能力に応じて選ぶ。出血禁忌がなければ抗凝固を開始する。右室不全ではを避け、ノルアドレナリンで冠・全身灌流を支え、選択例ではVA-ECMOを再灌流への橋渡しに用いる。

血液分布異常性(敗血症性)ショック

は血管容量の増大(血管拡張)を主体とする型で、敗血症性・アナフィラキシー性・がある。初めにTPR↓→↓、一過性にCO↑となるが、の境界が右へずれて前負荷を作れなくなり、やがてCO↓へとに近づく。臨床的にはショックの最多かつ全ショックの中でも最多の型であり、初期は皮膚が温暖なまま進行することがある点が他の3型と大きく異なる。

⭐ 敗血症・の定義、SOFA/による評価、初期輸液・ノルアドレナリンを中心とした循環蘇生、、臓器支持の詳細は 敗血症 ノートで扱う。本ノートでは重複を避け、の共通分類・進行機序・他の3型との鑑別に焦点を当てる。

血管作動薬・強心薬

受容体 主な循環・呼吸作用
α₁ 血管収縮により血管抵抗と血圧を上げる
β₁ 、心拍数、を高める
β₂ 気管支拡張と一部の拡張を起こす
V₁ を収縮させる
薬剤 主受容体・作用 主な用途 重要な注意
ノルアドレナリン α₁優位、β₁ (敗血症性)ショック第一選択、低血圧、の低血圧 、不整脈、漏出。開始を待ちで遅らせない
エピネフリン α₁、β₁、β₂ アナフィラキシー、心停止、難治性ショック 頻脈、乳酸上昇、高血糖、不整脈
(V₁) V₁ ノルアドレナリン増量時の追加 虚血、心拍出低下。単独第一選択ではない
β₁優位、β₂ 十分な血圧下でも低心拍出・低灌流( 頻脈、低血圧。不足する血圧支持を別に行う

薬剤選択は病型と血行動態に合わせる。だけを上げても、原因が未治療のままCO低下が残ればは改善しない。

まとめ

  • は組織不足を伴う急性循環不全であり、低血圧は必須の所見ではない。
  • ・閉塞性()と)に分け、典型的血行動態を知りつつ混合型・を常に想定する。
  • (負のフィードバック優位)→(正のフィードバック=悪循環)→という共通の経過をたどり、悪循環に入る前のが生死を分ける。
  • は再灌流・の是正・補助循環への橋渡しが軸、(出血性)ショックは大量晶質液を避けたが軸、はタンポナーデ・・高リスクPEの閉塞解除が軸となる。
  • (敗血症性)ショックの詳細な定義・SOFA評価・治療プロトコルは敗血症ノートに譲る。
  • 蘇生と原因検索を同時に行い、RUSH/HI-MAPで病型を絞りつつ、止血・再灌流・閉塞解除・という決定的治療へ早期につなぐ。