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Disease Atlas · 循環器 · 疾患

心筋症

Cardiomyopathy

臓器系
循環器
科目
Cardiology, Heart Surgery, Angiology, Vascular SurgeryInternal MedicinePathology
トピック
循環器内科 A-04:拡張型心筋症循環器内科 A-05:肥大型心筋症内科学 S-03:心筋症病理学 B/36:心筋炎・心筋症
鑑別疾患
心室瘤(真性心室瘤・仮性心室瘤)
症状
労作時呼吸困難失神動悸浮腫
スコア
NYHA心機能分類
下位分類
カテコールアミン心筋傷害拡張型心筋症拘束型心筋症肥大型心筋症頻脈誘発性心筋症不整脈原性心筋症
元疾患
ミトコンドリア病
原因となる疾患
成人Refsum病

🧠 全体像:心筋症は「壁厚」と「」という2軸で表現型を整理すると、を主体とする拡張型(DCM)と、を主体とする(HCM)・拘束型(RCM)が並ぶ。ただし心筋症の分類体系は/AHA/で組み立て方が異なり、遺伝子診断の進歩とともに今も議論が続いている。このvaultにはを含む4型の疾患ノートがあるが、本ノートの型判別表・治療原則は「壁厚×」という表現型軸で対比しやすい・・の3型を対象とする。

分類の軸

心筋症は、観察される心筋の異常をそれだけで説明できる冠動脈疾患・高血圧・弁膜症・が無いのに、心筋が構造的・機能的に異常である状態と定義される。⚠️ ただしこれは「それらの疾患があれば心筋症ではない」という意味ではない。2023年ガイドラインは、心筋症が虚血性・弁膜症性・高血圧性疾患と共存しうるもので、一方の存在は他方の可能性を除外しないと明記している1。負荷条件で説明しきれるかを見極めることが要点である。そのうえで「壁厚」と「」の組合せから表現型を対比すると理解しやすい。

表現型 心室壁 主な機能障害 このvaultでの扱い
(DCM) 相対的に菲薄 著明に拡大
(HCM) 著明に肥厚(心室中隔優位のことが多い) 正常〜小さい (±)
(RCM) 正常〜軽度肥厚 正常〜小さい、両心房が拡大しやすい (心室)
右室(または両室、左室)の線維脂肪性置換 不整脈源性、進行性のポンプ失調

⚠️ は分類上重要だが、下の判別表・治療原則は「壁厚×」の軸で対比しやすいDCM・HCM・RCMの3型を対象とし、ARVCは対象外とする。詳細はの各論を参照。

💡 分類体系そのものに一つの定説があるわけではない。 古典的な/ISFC分類は形態機能パターン(DCM・HCM・RCM・ARVC・)だけで整理する。AHAの分類は遺伝性・・後天性という病因軸を導入し、全身性疾患に伴う二次性心筋症と対比する。の分類は表現型を主軸に据えつつ、家族性・遺伝性か非家族性・かで階層化する折衷的な体系を採り、現行の心筋症ガイドラインでも表現型駆動のアプローチと遺伝学的評価の統合が引き続き重視されている。本ノートは臨床的に扱いやすい表現型軸(壁厚×)を採用するが、これは数ある体系の一つであり国際的に完全な合意があるわけではないことに留意する。

⚠️ 心筋炎(心筋炎)は心筋症ではない。 心筋炎は炎症そのものがの原因となる独立した炎症性疾患であり、遷延・進行した場合にDCMへ移行しうる「原因の一つ」にすぎない。心筋症の分類として扱わない。

共通の初期アプローチ

心筋症の定義は「負荷条件や冠動脈疾患だけでは説明できない心筋異常」であるため、どの表現型を疑っても最初にやることは共通している。

flowchart TD
    A["心不全・不整脈・失神・偶発的画像異常"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ischemic heart disease (IHD)'>虚血性心疾患</span>・弁膜症・高血圧など<br>負荷で説明しきれるかを評価<br>(併存はありうる)"]
    B --> C["家族歴(3世代<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pedigree'>家系図</span>)・全身症状・曝露歴(アルコール・薬剤)を確認"]
    C --> D["心エコーで壁厚・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chamber size (diameter)'>心腔径</span>・収縮/拡張機能を評価"]
    D --> E["必要に応じ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiac MRI'>心臓MRI</span>で組織性状(線維化・浸潤・炎症)を追加"]
    E --> F["表現型+可能なら病因診断"]
    F --> G["各論の心不全治療・不整脈/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sudden cardiac death risk'>突然死リスク</span>評価・遺伝カウンセリングへ"]

心エコーがどの表現型でも標準となる第一検査で、壁厚との組合せから表現型を分類し、で線維化パターンや浸潤性疾患の手掛かりを補う。症状の程度は心で共通言語化する。

下位型の判別

疾患ノートが存在するDCM・HCM・RCMを対比すると、同じ「心筋固有の異常」でも機能障害の方向が異なることが分かる。DCMだけがで、HCMとRCMはともにだが、硬くなる原因が「心筋自体の肥大」か「間質・心内膜の浸潤や線維化」かで分かれる。

項目
壁厚 相対的に菲薄 著明に肥厚(壁厚≥15 mmが目安、家族歴や既知の病的変異があれば13 mm以上でも支持) 正常〜軽度肥厚(浸潤性疾患では肥厚するがの肥大ではない)
著明に拡大() 正常〜小さい 正常〜小さい。両心房が著明に拡大
主な機能障害 (EF低下) ()、約1/3でを伴う (心室)。EFは正常〜軽度低下に保たれる
代表的原因 特発性、家族性(約25%が常染色体優性、・等の変異)、心筋炎後、アルコール、頻脈誘発性、周産期 (など) 浸潤性(、)、()、心内膜心筋(、)、放射線照射後
代表的合併症 、心房細動、、進行性心不全 動的LVOTO、心房細動、不整脈・ 心房細動、右心不全、()
評価の軸 など心機能、負荷、CMR線維化などを統合 、失神、家族歴、NSVT、、CMR線維化などを統合 原因疾患ごとに異なる(・ではの評価が中心)

総論としての治療原則

DCMとHCMは機序が正反対(収縮不全 vs )なので、治療の方向性も逆になる。DCMはに準じた心不全治療(/阻害薬/、β遮断薬、MRA、阻害薬のに加え、適応があれば抗凝固・ICD)が軸となる。HCMは(を第一選択とし、無効・なら)で時間を確保し、難治性の流出路閉塞にはやを検討する。いずれも・突然死のリスク評価との判断、家族歴があれば遺伝カウンセリングと家族スクリーニングが共通の骨格になるが、具体的な薬剤選択・デバイス適応・運動制限の詳細は・の各論に譲る。

はこの2型とさらに方向が違い、共通の心不全治療よりも原因治療(のなど)が予後を決めるため、鑑別と病因診断そのものが治療の入口になる。詳細は各論に譲る。は高強度運動の制限と突然死予防が治療の中心とされる。詳細はに譲る。

まとめ

  • 心筋症は「壁厚×」で表現型を整理でき、DCMは拡大・菲薄化と、HCMは肥厚とが対極をなす。RCMは壁厚ももほぼ正常のままだけを来す第3の型で、両心房の拡大が手掛かりになる。
  • 分類体系(/AHA/など)は一つに定まっておらず、本ノートは臨床的に扱いやすい表現型軸を採用したにすぎない。
  • 心筋炎は心筋症ではなく、DCMの原因になりうる独立した炎症性疾患である。
  • ARVC/ACM()は分類上重要だが、上の3型判別表・治療原則の対象外とし、各論は別ノートに譲った。
  • 心筋症は冠動脈疾患・高血圧・弁膜症・だけでは説明できない心筋異常であり(これらと共存しうる)、心エコーを軸に表現型を確定してから各論の治療・不整脈評価・遺伝カウンセリングへ進む。

出典

  1. 1.2023 ESC Guidelines for the management of cardiomyopathies(European Society of Cardiology・2023)3.1節で、心筋症を「観察される心筋異常を引き起こすに足る冠動脈疾患・高血圧・弁膜症・先天性心疾患が無いのに、心筋が構造的・機能的に異常である心筋疾患」と定義し、同時に心筋症は虚血性・弁膜症性・高血圧性疾患と共存しうるもので、一方の存在は他方の可能性を除外しないと明記していることを確認した。閲覧 2026-09-24