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Disease Atlas · 循環器 · 疾患

拘束型心筋症

Restrictive cardiomyopathy

別名
RCM
臓器系
循環器
科目
PathologyInternal MedicineCardiologyPediatricsAnesthesiology
トピック
病理学 B/36:心筋炎・心筋症内科学 S-03:心筋症循環器内科 A-04:拡張型心筋症病理学 A/13:アミロイドーシス内科学 S-43:ALアミロイドーシス小児科 3-56:炎症性心疾患と心筋症麻酔科学 A-07:閉塞性ショック
上位概念
心筋症
鑑別疾患
肥大型心筋症
続発疾患
慢性心不全心房細動
関連疾患
左室拡張機能障害
治療薬
フロセミド
症状
労作時呼吸困難末梢浮腫腹水倦怠感動悸肝腫大肝頸静脈逆流
検査値
ナトリウム利尿ペプチド心筋トロポニン全体長軸方向ストレイン
スコア
NYHA心機能分類
原因となる疾患
アミロイドーシス

🧠 全体像は「収縮はよく保たれているのに、心室が硬くて拡張期に血液を受け入れられない」心筋症である。(EF)が正常〜軽度低下のままでも心不全が成立する点でと並ぶ型の代表だが、は拡大せず両心房だけが著明に拡大するのが形態上の特徴である。臨床上の最大の関門は、同じく拡張期充満障害を来すがで治りうるとの鑑別であり、次に重要なのが原因診断——特にをATTR型とAL型に分けること——である。RCMは「原因を当てれば治療が変わる」病気へと大きく姿を変えつつある領域で、原因治療の可否が予後を左右する。

定義

は、心室壁のコンプライアンス()が低下し、拡張期のが障害される心筋症である。収縮機能・は正常〜軽度低下にとどまることが多く、のようなも、のような著明な壁肥厚も伴わないことが多い(浸潤など一部の原因では壁肥厚を伴う)。一方で両心房は上昇の結果として著明に拡大しやすい。

RCMは単一疾患ではなく、心筋への浸潤・蓄積・線維化などさまざまな原因が「硬い心室」という共通の血行動態に行き着く終着点である。したがって診断名を確定して終わりにせず、必ず背景の原因疾患まで踏み込む。

原因

分類 代表例
浸潤性 (ATTR型・AL型)、
心内膜 、好酸球性心内膜炎(
線維化性 放射線照射後、化学療法後の
特発性・家族性 関連遺伝子、などの変異

💡 原因を覚えるときは「なぜ心室が硬くなるか」で束ねるとよい。異常蛋白の沈着()、腫()、金属沈着(鉄)、好酸球顆粒による内膜)はいずれも心筋そのものを物理的に硬くする点で共通する。

病態

flowchart TD
    A["浸潤・蓄積・線維化などによる心筋障害<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='amyloid deposition'>アミロイド沈着</span>、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='granulation'>肉芽</span>腫、鉄沈着など)"] --> B["心室壁の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reduced vascular compliance'>コンプライアンス低下</span><br>(収縮は保たれるが弛緩できない)"]
    B --> C["拡張早期の急速充満と<br>後期のほぼ停止"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diastolic filling pressure'>拡張期充満圧</span>の上昇"]
    D --> E["肺うっ血・体<span class='jp-term jp-term-diagram' title='venous stasis'>静脈うっ血</span>"]
    B --> F["両心房への<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pressure overload'>圧負荷</span>"]
    F --> G["両心房の著明な拡大"]
    G --> H["心房細動のリスク上昇"]
    D --> I["EF保持〜軽度低下でも心不全が成立<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='heart failure with preserved ejection fraction'>HFpEF</span>型)"]
    B --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stroke volume'>一回拍出量</span>が心拍数に依存し固定化"]

⭐ 心拍出量が主に心拍数で規定される「」の状態になる点が重要である。頻脈は拡張期を短縮してさらに充満を減らし、逆に徐脈も拍出量を保てないため、を保ち適切な心拍数域を維持することがRCMの血行動態管理の軸になる。

症状と合併症

領域 主な所見
右心不全優位のうっ血 腹水
低心拍出
不整脈 心房細動に伴うで特に顕著)
進行例 低血圧、腎障害、

💡 肺うっ血よりも・浮腫・腹水など右心不全様の所見が前景に立ちやすい点が、症状が先行しやすいとの臨床的な対比になる。

収縮性心膜炎との鑑別

⭐ RCMの診療で最も重要なは、同じ「拡張期充満障害」を来すとの鑑別である。は肥厚・した心膜が心臓を締め付ける病態で、多くはによって治癒しうる。RCMをして不要な原因検索・薬物治療に終始する、あるいはその逆に治癒しうるをRCMとしての機会を逃すことは、いずれも避けなければならない。

検査 を示唆 RCMを示唆
心エコー:心室中隔の動き 呼吸に伴って中隔が異常に振れる septal bounce を認める 目立たない
心エコー:流入速度 吸気で著明に低下する 変動は乏しい
組織ドプラのe′ 心室自体は健常なため中隔側e′が保たれ、外側e′より高くなる annulus reversus を示す 心筋そのものが病的なため中隔・外側とも e′ が低下する
心臓カテーテル 吸気・呼気で左圧のピークが解離する、同時圧記録でのsystolic area index高値 は目立たない
CT・MRI ・石灰化を認めることが多い 心膜は正常なことが多い

⚠️ いずれの所見も単独では確定的でないため、複数のを組み合わせて総合判断する。で治りうるを見逃さないことが、この鑑別の最大の意義である。

診断

flowchart TD
    A["原因不明の心不全・両<span class='jp-term jp-term-diagram' title='atrial enlargement'>心房拡大</span>・拡張障害を疑う"] --> B["心エコーで壁厚・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chamber size (diameter)'>心腔径</span>・両<span class='jp-term jp-term-diagram' title='atrial enlargement'>心房拡大</span>・拡張能を評価"]
    B --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='constrictive pericarditis'>収縮性心膜炎</span>を示唆する所見があるか"}
    C -->|"疑いが強い"| D["組織ドプラ・心臓カテーテルで<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='ventricular interdependence'>心室間相互依存</span>を評価しCT/MRIで<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pericardial thickening'>心膜肥厚</span>を確認"]
    D --> E["確立した<span class='jp-term jp-term-diagram' title='constrictive pericarditis'>収縮性心膜炎</span>なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pericardiectomy'>心膜切除術</span>を検討"]
    C -->|"否定的"| F["RCMとして原因検索を進める"]
    F --> G["血清・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urine immunofixation'>尿免疫固定</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='serum free light chain ratio'>血清遊離軽鎖比</span>"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone scintigraphy'>骨シンチグラフィ</span>(99mTc-PYP等)"]
    H --> I{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='monoclonal protein'>単クローン性蛋白</span>が陰性かつ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone scintigraphy'>骨シンチ</span>陽性"}
    I -->|"はい"| J["ATTR型<span class='jp-term jp-term-diagram' title='amyloidosis'>アミロイドーシス</span>と診断<br>(生検を経ずに確定できる)"]
    I -->|"いいえ"| K["罹患臓器または腹壁脂肪の生検で<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Congo red stain'>コンゴレッド染色</span>・型判定"]

の診断は近年大きく様変わりした。血中・尿中にを認めずで心臓への強い取り込みがあれば、生検を経ずにATTR型と確定できる。一方、は高齢者に非特異的にみられるため、陽性であってもAL型との鑑別を省略しない。AL型が疑われる場合はなど形質細胞異常症の評価に進む。

心エコーではの原因検索として拡張能と両心房径を評価し、は上昇する。ではを組み合わせた(Mayo分類など)が予後評価に用いられる。症状の程度はで共通言語化する。

治療

原因治療が予後を決める

💡 は「診断できても手立てのない病気」から「が治療につながる病気」へ大きく変わった領域である。ATTR型では、TTRを安定化させて線維化の進行を遅らせるや、後発のが、心血管死・心不全入院を減らす薬剤として承認されている。AL型ではの各論に準じて、を標的とする(適格例ではを併用)を速やかに開始する。など他の原因も、それぞれの各論に沿って原疾患を制御することがRCMの進行抑制につながる。

対症療法の限界と注意点

⚠️ うっ血にはなどの利尿薬が有用だが、RCMは拡張期充満量そのものが乏しいため、前負荷を下げすぎると充満がさらに減って血圧が破綻しうる。少量から慎重に調整する。

⚠️ 心拍出量が心拍数に依存するの状態にあるため、への性が乏しく、心房細動は血行動態を急速に悪化させやすい。可能な限りを維持し、心房細動を来せば血栓塞栓リスクの評価と抗凝固を検討する(詳細は心房細動を参照)。

⚠️ では、ジゴキシンはに結合して通常量でもに達しやすく不整脈を誘発しうるため慎重投与とし、への結合による・低血圧のため一般に避ける。β遮断薬も、心拍数によって拍出量を代償している患者では低血圧・心不全増悪を来しやすく、通常量を機械的に導入しない。

まとめ

  • RCMは収縮機能を保ったまま心室コンプライアンスが低下し、拡張期充満障害によって心不全(型)を来す心筋症で、両が形態的な手掛かりになる。
  • 最大の鑑別は治癒しうるで、septal bounce、流入の、組織ドプラのannulus reversus、心臓カテーテルでの、CT/MRIのを組み合わせて判定する。
  • 原因は浸潤性()、など)、心内膜、線維化性、特発性・家族性に整理できる。
  • 陰性+陽性でATTR型を生検なしに診断できるまでに進歩し、ATTR型にはTTR安定化薬、AL型にはクローンという原因治療が予後を左右する。
  • 利尿薬は前負荷を下げすぎない範囲で慎重に用い、の維持を優先し、ジゴキシン・Ca拮抗薬・β遮断薬は特にで悪化因子となりうるため安易に導入しない。