病理学

病理学 · A/13

アミロイドーシス

Amyloidosis

タグ
Mechanism / 機序High-yield / ポイント
応用トピック
ALアミロイドーシス
疾患
TNF受容体関連周期性症候群アミロイドーシス家族性アミロイドポリニューロパチー家族性地中海熱拘束型心筋症高IgD症候群・メバロン酸キナーゼ欠損症

🧠 全体像:は「異常フォールディングしたタンパク質が細胞外にβシート構造で沈着する」という一つの現象に、AL・AA・Aβ・TTRという全く異なる前駆体タンパクが行き着く病態——だから型を覚える鍵は沈着物そのものではなく「どの疾患・どのタンパク質が過剰に作られているか」という上流側にある。

定義

  • = 異常フォールディングしたの細胞外沈着 → と臓器機能不全。
  • 線維は構造で凝集 → 不溶性となり機能を障害する。
  • 染色 → 下で。⚠️ (振動方向によるの変化)と(振動方向による吸収の変化)は本来別の光学現象で、交差下に見える色は吸収ピーク近傍で最大となる異常色(anomalous colours)であり黄緑・黄・青緑・青など標本条件で変化しうる。古典的な「アップルグリーン」は単純化した表現であり、緑色だけを絶対条件として機械的に判定しない1。

関連する細胞内タンパク質蓄積

  • タンパク質の過剰負荷: での。
  • 合成亢進: 腫瘍性の免疫グロブリン → Russell小体()、Dutcher小体(核内)。
  • 細胞傷害: アルコール → Mallory小体(の凝集)。
  • 異常フォールディング: の機能不全 → 蓄積(例:)。

主なアミロイドの型

型 前駆体 関連
AL(一次性) 免疫グロブリン軽鎖(λ>κ) 形質細胞異常症・
AA(二次性) SAA(、肝由来) 慢性炎症(結核、関節リウマチ、IBD)
Aβ APP の
ATTR (T4と結合) (遺伝性):・心筋症/野生型:高齢者の(旧称:老人性全身性)

⭐ の分類は前駆蛋白質の名で行われ、この分類は定期的に更新される。 国際学会(ISA)の委員会は「A+前駆蛋白質の略号」(AL、AA、ATTRなど)という原則を維持しながら型を追加しており、2022年時点でヒトの蛋白質は42種に達した2。2024年の改訂でもは変わらず42種で、うち19種が全身性に、4種が・全身性のいずれにも沈着しうる。全身性の多くはが原因だが、AAとATTRでは沈着物の大部分が野生型蛋白(とその断片)である3。上表の「一次性」「二次性」は臨床像に基づく旧来の呼び方であり、前駆蛋白質名(AL・AA・ATTRなど)が現行の分類として使われる。⭐ Congo red陽性だけでは前駆蛋白質の型は決まらない。免疫染色は特異度・感度がともに低く、レーザーマイクロダイセクションとを組み合わせた型判定は訓練セット50例で特異度・感度100%、41例の検証セットで98%のを示し、生検の免疫染色より型判定の精度で優れる4。

flowchart TD
    A["慢性炎症<br>(結核・関節リウマチ・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inflammatory bowel disease'>IBD</span>など)"] --> B["マクロファージの活性化"]
    B --> C["IL-1・IL-6の産生"]
    C --> D["肝でのSAA(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Acute phase proteins, APP'>急性期タンパク</span>)産生"]
    D --> E["SAAの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proteolysis'>タンパク質分解</span>"]
    E --> F["AA<span class='jp-term jp-term-diagram' title='amyloid'>アミロイド</span>として沈着"]

形態

  • 大量沈着 → 腫大し、灰色がかった、蝋様で硬い臓器。ヨード+硫酸で褐色に染まる。
  • 顕微鏡:細胞外 → 細胞の。
  • 臓器: 腎(糸球体。頻度が高く重篤な臓器病変)、脾(・)、肝()、心(、線維の間)。

臨床

  • 非特異的(脱力、、体重減少)→ :
    • 腎:、、腎不全
    • 心:、。⭐ AL型では心病変が予後を最も強く規定する。T・・差(FLC-diff)の3項目で分けるMayo 2012病期(新規診断810例)の生存期間中央値は、I期94.1か月・II期40.3か月・III期14か月・IV期5.8か月だった5。💡 ATTRには(など)が登場しており、心筋症441例を30か月追跡した第3相試験ではを29.5%(42.9%、0.70)へ下げた6。
    • 肝:肝脾腫
  • 予後は型と臓器病変(とくに心病変)で大きく異なり、「一律に数年」とはいえない。治療の原則は前駆蛋白の供給を断つこと(ALでは形質細胞クローンへの治療、AAでは基礎にある炎症の制御)。AL型の予後は治療の進歩で改善しており、Mayo Clinicの新規診断1,551例では4年全生存率が幹細胞移植群で65%(2000〜2004年)から91%(2010〜2014年)へ、非移植群で16%から38%へ上がった7。

💡 ポイント: → が診断上の特徴。AL = などの形質細胞異常症、AA = 慢性炎症、Aβ = アルツハイマー、ATTR = 遺伝性()・高齢者の野生型心。 AL型の予後を最も強く左右するのは心病変。

まとめ

  • は異常フォールディングした()の細胞外沈着で、・下ので診断する。
  • AL(一次性)は由来でなど形質細胞異常症に、AA(二次性)は慢性炎症由来のSAAに関連する。
  • Aβはの、ATTRは(など)と野生型(高齢者の)に関連する。
  • 沈着した臓器はを来し、腎(・ネフローゼ・腎不全)、心(・)、肝(肝脾腫)などが侵される。
  • 予後は型と心病変の有無で大きく異なり(AL型のMayo 2012病期で生存期間中央値94.1か月〜5.8か月)、治療の原則は前駆蛋白の供給を断つこと。

出典

  1. 1.Physical basis of colors seen in Congo red-stained amyloid in polarized light(Laboratory Investigation・2008)配向したCongo redの複屈折は吸収ピーク近傍で最大となり、黄緑・黄・青緑・青など標本条件で色調が変わる異常色(anomalous colours)であることを確認した。複屈折(振動方向による屈折率の変化)と二色性(振動方向による吸収の変化)は別の光学現象であり、古典的な「アップルグリーン複屈折(apple-green birefringence)」という表現は単純化であって、より正確にはanomalous coloursと呼ぶべきである閲覧 2026-08-27
  2. 2.Amyloid nomenclature 2022: update, novel proteins, and recommendations by the International Society of Amyloidosis (ISA) Nomenclature Committee(Amyloid・2022)国際アミロイドーシス学会(ISA)の命名法委員会は、アミロイドを線維構成蛋白質で命名する原則(A+前駆蛋白質の略号。AL、AA、ATTRなど)を維持しながら定期的に前駆蛋白質ごとの命名を更新しており、2022年時点でヒトのアミロイド線維蛋白質は42種に達したとした。「原発性・続発性」という臨床像に基づく旧分類は前駆蛋白質を特定しないため現行の分類ではない閲覧 2026-08-27
  3. 3.Amyloid nomenclature 2024: update, novel proteins, and recommendations by the International Society of Amyloidosis (ISA) Nomenclature Committee(Amyloid・2024)2024年のISA命名法委員会の改訂(抄録で確認。出版社全文は403で未取得)で、命名の一般原則は変わらず、ヒトのアミロイド線維蛋白質は42種、うち19種が全身性沈着、4種が局所性・全身性のいずれもとりうること、全身性アミロイドーシスの多くは変異蛋白によるが、AAとATTRでは沈着物の大部分が野生型蛋白やその断片からなることを確認した閲覧 2026-09-23
  4. 4.Classification of amyloidosis by laser microdissection and mass spectrometry-based proteomic analysis in clinical biopsy specimens(Blood・2009)免疫組織化学など従来の免疫染色によるアミロイド型判定は特異度・感度がともに低く、レーザーマイクロダイセクションとタンデム質量分析を組み合わせた手法は訓練セット50例で特異度・感度100%、心アミロイドーシス41例の検証セットで98%の正診率を示し、生検の免疫染色より型判定の精度で優れることを確認した閲覧 2026-08-27
  5. 5.Revised prognostic staging system for light chain amyloidosis incorporating cardiac biomarkers and serum free light chain measurements(Journal of Clinical Oncology・2012)抄録で、ALアミロイドーシスでは心病変が予後不良を予測し従来の病期分類が心筋トロポニンTとNT-proBNPに基づくこと、新規診断810例から遊離軽鎖差(FLC-diff)18 mg/dL以上・心筋トロポニンT 0.025 ng/mL以上・NT-proBNP 1,800 pg/mL以上に各1点を与えるI〜IV期を作成し、各期の生存期間中央値が94.1・40.3・14・5.8か月だったことを確認した閲覧 2026-09-23
  6. 6.Tafamidis Treatment for Patients with Transthyretin Amyloid Cardiomyopathy(The New England Journal of Medicine(ATTR-ACT)・2018)トランスサイレチンアミロイド心筋症441例を30か月追跡した第3相ATTR-ACT試験で、疾患修飾薬タファミジスは全死因死亡を29.5%(プラセボ42.9%、ハザード比0.70、95%CI 0.51〜0.96)へ下げ、心血管関連入院の相対リスク比も0.68であった。ATTRアミロイドーシスに疾患修飾薬が登場したことを確認した閲覧 2026-08-27
  7. 7.Improved outcomes for newly diagnosed AL amyloidosis between 2000 and 2014: cracking the glass ceiling of early death(Blood・2017)抄録で、Mayo Clinicの新規診断ALアミロイドーシス1,551例(2000〜2014年)の4年全生存率が、自家幹細胞移植群で2000〜2004年65%・2005〜2009年73%・2010〜2014年91%、非移植群で16%・32%・38%と改善し、診断後6か月以内の死亡も37%から24〜25%へ減ったことを確認した閲覧 2026-09-23