病理学

病理学 · A/12

アテローム性動脈硬化症(アテローム硬化)

Atherosclerosis

タグ
Mechanism / 機序High-yield / ポイント
応用トピック
虚血性心疾患の臨床像と評価ST上昇型急性冠症候群I:病因・病態機序・診断冠血行再建術:冠動脈バイパス術(CABG)下肢末梢動脈疾患の症状・診察・画像診断と糖尿病足血管造影・基本的血管内治療・血管外科技術・血管グラフト大動脈弓上分枝・上肢動脈疾患の症状・診断・治療急性大動脈症候群心血管疾患による突然死狭心症末梢動脈疾患
疾患
アテローム性動脈硬化症
症状
不安定プラーク
画像所見
血管石灰化

🧠 全体像:は「」の一言に尽きる——から始まり、の取り込みで生まれるが慢性炎症を維持し、の増殖がを作る。試験で問われるのは「どの段階で何が破綻するとどの合併症が起こるか」(被膜が破れれば血栓、中膜がすれば動脈瘤)という一点。

定義

  • 動脈硬化 = 動脈壁の全般的な肥厚+弾性の喪失。
  • = その一亜型。血管壁の慢性炎症反応(、マクロファージ・への、血栓症)。
  • = 脂質(壊死)核(、細胞破片、)+(、コラーゲン、内皮、血管新生)。

危険因子

是正不能

  • 加齢(中年以降に臓器障害)、男性・閉経後(閉経前はエストロゲンが保護的)、遺伝(のほか、糖尿病・高血圧の。糖尿病・高血圧そのものは下の因子)。

是正可能(主要)

  • : LDLの上昇(「悪玉」、コレステロールを組織へ運ぶ)、HDLの低下(「善玉」、コレステロールを肝へ戻す)。リポタンパク(a)は冠動脈リスクを上げる。
  • 高血圧(血管傷害)、喫煙(1日1箱 → 約2倍のリスク)、糖尿病。
  • 因子が重なるとリスクは乗算的に増える(2因子で約3倍、3因子で約7倍)。

その他

  • 炎症(CRP上昇)、肥満、運動不足、ストレス、。

発生機序(傷害反応説)

  1. な(内皮剥離を伴わない。高血圧の、による)→ ROS増加、NO低下。分岐部・部は低く乱れたにさらされるため、直線部の高いに比べて動脈硬化を促進する内皮の遺伝子・蛋白発現が誘導されやすく、これが好発部位を規定する一因になる1。
  2. 内膜へのリポタンパクの蓄積 → LDLの酸化()。
  3. 単球の接着・遊走 → マクロファージがを介しを取り込む → 。
  4. 血小板の接着+(マクロファージ、内皮、血小板由来)→ の遊走・増殖+(被膜を安定化)。
  5. 脂質の蓄積(細胞内・細胞外)。
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic'>慢性的</span>な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endothelial injury'>内皮傷害</span><br>(高血圧の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='turbulent flow'>乱流</span>、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hyperlipidemia'>高脂血症</span>)"] --> B["内膜へのリポタンパク蓄積<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='low-density lipoprotein'>LDL</span>の酸化"]
    B --> C["単球の接着・遊走<br>マクロファージが<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oxidized LDL'>酸化LDL</span>を取り込む"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='foam cells'>泡沫細胞</span>の形成"]
    D --> E["血小板の接着+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='growth factor'>増殖因子</span>放出"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='smooth muscle cells'>平滑筋細胞</span>の遊走・増殖<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='extracellular matrix'>細胞外基質</span>の産生"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lipid core'>脂質核</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fibrous cap'>線維性被膜</span>=<span class='jp-term jp-term-diagram' title='atherosclerotic plaque'>アテローム性プラーク</span>"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='complicated plaque'>複雑病変</span>:破裂・血栓・動脈瘤・石灰化"]

形態

  1. — 内膜の。血流障害はなく、乳児にも見られる。⚠️ 若年でも既に進行しうる病変で、した15〜34歳2876例の剖検(PDAY研究)では隆起性がで15〜19歳の約20%から30〜34歳の約40%へ、で約10%から約30%へと年齢とともに増加し、冠危険因子との関連は10代後半から認められている2。
  2. — 白黄色の隆起病変(細胞++)。辺縁に血管新生。
  3. — 動脈瘤(中膜の)、潰瘍・破裂、血栓(→ 心筋梗塞・脳卒中・塞栓)、プラーク内出血、、石灰化。

⭐ は、薄い・大きな脂質・活発なを特徴とする。 プラーク表面の破綻には2つの機序がある。古典的なプラーク破裂は・Th1細胞由来のマトリックスメタロプロテイナーゼが被膜のを分解して起こり、の60〜80%にみられるとされる。内皮が剥離するびらんは例の20〜40%にみられ、女性・若年の突然死例に多いとされる(いずれも総説が先行研究をまとめた値で、分母が異なる)。近年は破裂に対するびらんの割合が増える傾向にあると報告されている3。(OCT)で患者126例のを分類した前向き研究では、破裂43.7%・びらん31.0%・石灰化結節7.9%であり、びらんは破裂例より若年(53.8歳対60.6歳)で非に多かった4。

好発部位と予防

💡 ポイント: プラーク = +。 → が重要な初期段階。プラーク破裂 → 急性血栓症が心筋梗塞・脳卒中の基盤。喫煙と上昇が主要なリスク。

まとめ

  • は血管壁の慢性炎症反応で、+からなるを形成する。
  • の流れ:な→の取り込み→形成→の遊走・増殖→。
  • な危険因子は加齢・男性/閉経後・遺伝、な主要因子は(上昇・低下)・高血圧・喫煙・糖尿病で、因子が重なるとリスクは乗算的に増える。
  • として動脈瘤(中膜の)、潰瘍・破裂・血栓(心筋梗塞・脳卒中の基盤)、、石灰化がある。
  • 好発部位は冠動脈・頸動脈/脳動脈・大動脈()・末梢動脈で、にはスタチン・アスピリン・を用いる。

出典

  1. 1.Effects of disturbed flow on vascular endothelium: pathophysiological basis and clinical perspectives(Physiological Reviews・2011)動脈の直線部では高いずり応力の層流が動脈硬化を抑制する内皮の遺伝子・蛋白発現を誘導する一方、分岐部・彎曲部では低く不安定なずり応力を伴う乱流が動脈硬化を促進する内皮の遺伝子・蛋白発現を誘導し、この違いがアテローム性動脈硬化病変の分岐部・彎曲部への好発局在を説明するという概念を確認した閲覧 2026-08-27
  2. 2.Associations of coronary heart disease risk factors with the intermediate lesion of atherosclerosis in youth. The Pathobiological Determinants of Atherosclerosis in Youth (PDAY) Research Group(Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology・2000)外因死した15〜34歳2876例の剖検研究(PDAY)で、隆起性脂肪線条は腹部大動脈で15〜19歳の約20%から30〜34歳の約40%へ、右冠動脈で約10%から約30%へと年齢とともに増加し、冠危険因子(非HDL高値、HDL低値、高血圧、肥満、耐糖能異常)との関連は10代後半から既に認められた閲覧 2026-08-27
  3. 3.Inflammation and plaque vulnerability(Journal of Internal Medicine・2015)破裂型プラークは薄い線維性被膜と大きな脂質核を特徴とし、活性化マクロファージとTh1細胞が産生するマトリックスメタロプロテイナーゼが被膜の膠原線維を分解する。表面の破綻は「プラーク破裂」(急性冠症候群の60〜80%)と内皮が剥離する「びらん」(冠動脈血栓症例の20〜40%、女性・若年の突然死例に多い)の2つに分かれ(いずれも本総説が先行研究を引用して示す値)、近年は破裂に対するびらんの割合が増える傾向にあると報告されていることを、PMC全文で確認した閲覧 2026-08-27
  4. 4.In vivo diagnosis of plaque erosion and calcified nodule in patients with acute coronary syndrome by intravascular optical coherence tomography(Journal of the American College of Cardiology・2013)光干渉断層法(OCT)で急性冠症候群患者126例の責任病変を評価した前向き研究で、プラーク破裂43.7%、プラークびらん31.0%、石灰化結節7.9%と分類され、びらんはより若年(53.8歳対60.6歳)で非ST上昇型急性冠症候群に多く見られた閲覧 2026-08-27
  5. 5.Low-density lipoproteins cause atherosclerotic cardiovascular disease. 1. Evidence from genetic, epidemiologic, and clinical studies. A consensus statement from the European Atherosclerosis Society Consensus Panel(European Atherosclerosis Society Consensus Panel(European Heart Journal)・2017)200を超える前向きコホート研究・メンデル無作為化研究・無作為化比較試験(対象200万人超、追跡2000万人年超、心血管イベント15万件超)を統合すると、血管がLDLコレステロールに曝露される絶対量とアテローム性動脈硬化性心血管疾患のリスクとの間に一貫した用量依存性の対数線形関係が認められ、曝露期間が長いほど効果が増すため、LDLコレステロール低下はその絶対低下幅と曝露期間の累積に比例してリスクを下げると結論した(達成されたLDLコレステロール低下がLDL粒子数の低下と一致し、有害な標的外作用がないことを条件とする)閲覧 2026-08-27