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Disease Atlas · 循環器 · 疾患

アテローム性動脈硬化症

Atherosclerosis

臓器系
循環器
科目
PathologyTranslational Medicine and Pathophysiology
トピック
病理学 A/12:アテローム性動脈硬化症病態生理学 I-14:動脈硬化(アテローム性動脈硬化症)
鑑別疾患
高安動脈炎
続発疾患
頸動脈狭窄症急性冠症候群脳梗塞大動脈瘤慢性腎臓病慢性冠症候群(安定狭心症)末梢動脈疾患腎動脈狭窄症
関連疾患
鼻出血
治療薬
アトルバスタチンロスバスタチンエゼチミブエボロクマブアセチルサリチル酸クロピドグレルアリロクマブインクリシランベンペド酸
症状
間欠性跛行不安定プラーク疼痛
画像所見
血管石灰化Hollenhorst斑
スコア
SCORE2・SCORE2-OP
組織像
動脈の粥状硬化大動脈粥状硬化症(肉眼標本)石灰化を伴う冠動脈粥状硬化斑粥腫性冠動脈プラーク
元疾患
Tangier病脳腱黄色腫症
原因となる疾患
2型糖尿病Werner症候群メタボリックシンドローム家族性異常βリポ蛋白血症家族性複合型高脂血症高血圧症脂質異常症
適応薬
アリロクマブエボロクマブベンペド酸ロスバスタチン
禁忌薬
メタンフェタミン

🧠 全体像:は「動脈の内膜に脂が溜まり、それを免疫が炎症で片付けようとして失敗する」慢性疾患である。高が傷ついた内膜へ入り込んで酸化され、マクロファージが食べてとなり、がを張って封じ込めようとする。何十年もかけてと被膜からなるプラークが育ち、被膜が薄くなって破裂すると急性血栓が生じ、冠動脈なら心筋梗塞、脳血管なら脳卒中、末梢動脈ならを起こす。無症候の期間が長いからこそ、危険因子の管理と低下療法による一次・が治療の主役になる。

概要・病態

  • 動脈硬化(arteriosclerosis)=動脈壁が全般的に肥厚し弾性を失った状態の総称。(atherosclerosis)はその中で最も臨床的に重要な亜型で、大型〜の内膜に生じる慢性炎症性疾患である。
  • プラークの実体は、脂質(壊死)核(、細胞破片、)を(・コラーゲン・内皮・)が覆う構造。⭐ 「+」という2成分モデルを軸に、被膜の厚さが臨床的な安定性を左右すると理解すると診断・治療が繋がる。

危険因子

分類 因子 補足
加齢、男性・閉経後女性、遺伝(、糖尿病・高血圧の家族歴) 閉経前はエストロゲンが血管保護的に働くため女性のリスクが相対的に低い
(主要) 高コレステロール血症、、高血圧、喫煙、糖尿病 喫煙は1日1箱で非喫煙者の約2倍、重喫煙者ではが極めて高くなる。危険因子は相加ではなくに作用し、2因子で約3倍、3因子で約7倍にリスクが増える
その他の関連因子 慢性炎症(・hs-上昇)、肥満、運動不足、、高値 はに富み遺伝的に規定される独立した冠動脈疾患リスク因子

💡 危険因子はいずれも共通して内皮を傷害し、NF-κBを介したを活性化する点で収束する。個々の因子を暗記するより「・炎症・のどの段階を促進するか」で整理すると応用が利く。

発生機序(傷害反応説)

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic'>慢性的</span>な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endothelial dysfunction'>内皮機能障害</span><br>(高血圧の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='turbulent flow'>乱流</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hyperlipidemia'>高脂血症</span>・喫煙などによる、内皮剥離を伴わない)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reactive oxygen species (ROS)'>活性酸素種</span>増加・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nitric oxide, NO'>一酸化窒素</span>低下<br>→ <span class='jp-term jp-term-diagram' title='low-density lipoprotein'>LDL</span>が内膜へ透過し酸化(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oxidized LDL'>酸化LDL</span>)"]
  B --> C["単球の接着・遊走 → 内膜でマクロファージへ分化"]
  C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='scavenger receptor'>スカベンジャー受容体</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oxidized LDL'>酸化LDL</span>を取込み → <span class='jp-term jp-term-diagram' title='foam cells'>泡沫細胞</span>"]
  D --> E["血小板の接着+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='growth factor'>増殖因子</span>(マクロファージ・内皮・血小板由来)"]
  E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='smooth muscle cells'>平滑筋細胞</span>が中膜から内膜へ遊走・増殖 → コラーゲン等の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='extracellular matrix'>細胞外基質</span>を産生"]
  F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fibrous cap'>線維性被膜</span>の形成+脂質の細胞内・細胞外蓄積 → プラークの成熟"]
  G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='foam cells'>泡沫細胞</span>のアポトーシス・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='necrotic core'>壊死コア</span>拡大 → 被膜が菲薄化 → 破裂しやすいプラーク"]

プラークの病期

  1. :内膜の。血流障害を伴わず、乳児の大動脈にも見られる可逆的な。
  2. :白黄色の隆起病変。細胞(、マクロファージ/、T細胞)・(コラーゲン、)・脂質()の3成分から成り、辺縁に血管新生を伴う。
  3. :動脈瘤(中膜の)、潰瘍・被膜破裂、(→心筋梗塞・脳卒中・)、プラーク内出血、、石灰化。⚠️ 薄いを持つプラーク(“vulnerable plaque”)は、必ずしもでなくても破裂しやすく急性血栓症の主因となる。

臨床像

長い無症候期の後、好発部位に応じたとして顕在化する。

好発部位 主な臨床像
冠動脈 、(・心筋梗塞)
頸動脈・脳動脈 、血栓性
大動脈 (中膜の)、大動脈原性塞栓
下肢動脈など末梢動脈 、安静時疼痛、・壊疽
、
  • プラークが緩徐に増大して内腔を狭窄すれば労作時の需要増加時にのみ虚血が出る安定型の症状(、)となる。
  • 一方、が破裂・びらんするとが活性化して急性血栓が形成され、内腔を突然閉塞する。⭐ この「安定プラーク→破裂→急性血栓」への転換が、慢性の症状から・脳卒中・へ移行する病態の核心である。
  • 高齢者・長期罹患例では無症候性のまま健診の画像検査(頸動脈エコー、)で発見されることも多い。

診断

そのものを直接「診断」するというより、の評価と臓器別の臨床的帰結(狭心症・・など各疾患の)の2段階で捉える。

リスク評価

  • 欧州ではSCORE2/SCORE2-OP(年齢・性別・喫煙・血圧・から10年間の・非リスクを算出。40〜69歳は、70歳以上は別モデルのを用いる)、米国ではASCVD risk score(pooled cohort equations)を用いて40〜75歳の対象者を層別化する。
  • 家族歴、慢性炎症性疾患(関節リウマチ、SLE、感染など)、・の既往、、持続する高値などはリスク増強因子として、境界域のリスク判定を上方修正する材料になる。
  • コレステロールが190 mg/dL以上などの場合は年齢を問わずを疑い、家族歴・(Dutch Lipid Clinic Networkスコアなど)を確認する。

検査

  • :、、、。可能なら生涯で一度はを測定し、例のリスク再分類に用いる。
  • 画像検査:(・プラーク性状)、冠動脈カルシウムスコア(、境界〜例でを再分類する際に有用)、必要に応じ/。
  • ():低値はの存在を示唆し、全身のの重症度指標にもなる。

治療

治療の骨格は、危険因子の是正とコレステロールの低下による一次・であり、急性血栓イベント発生後は各疾患(、など)別の急性期治療に引き継がれる。

LDLコレステロール目標値(ESC/EAS 2019年版・2025年焦点改訂に基づく)

目標値そのものは2019年版が定めたもので、2025年の焦点改訂は「各リスクカテゴリの目標と治療指針は2019年版から変更していない」と本文で明記している1。

リスクカテゴリ 代表例 目標 推奨クラス
極めて高いリスク ①最大量のスタチンを基礎とする治療下でを繰り返す例、②多(例:冠動脈と末梢動脈)にわたる動脈疾患 40 mg/dL未満(<1.0 mmol/L)を考慮してもよい IIb
確立した性心血管疾患(心筋梗塞・・の既往、または画像で確認された)、/ 20%以上、+または他の主要危険因子、高度( 30 mL/min/1.73 m²未満)、を伴う糖尿病・主要危険因子3つ以上・罹病20年超の1型糖尿病 ベースラインから50%以上低下 かつ 55 mg/dL未満 I(のFH例のみIIa)
高リスク / 10%以上20%未満、著明な単一危険因子( 190 mg/dL超、310 mg/dL超、血圧180/110 mmHg以上)、他の主要危険因子を伴わないFH、中等度( 30〜59 mL/min/1.73 m²)、のない糖尿病で罹病10年以上または他の危険因子を伴う例 50%以上低下 かつ 70 mg/dL未満 I
/ 2%以上10%未満、罹病10年未満で他の危険因子のない若年の糖尿病(1型35歳未満・2型50歳未満) 100 mg/dL未満 IIa
低リスク / 2%未満 116 mg/dL未満 IIb

⚠️ 「40 mg/dL未満」は2025年に新しくできた目標ではない。 2019年版に既にクラスIIb・Bの推奨としてあり、その対象は「最大量のスタチンを基礎とする治療中に2年以内に2回目の(1回目と同じ種類とは限らない)を起こした患者」という限定された層だった2。2025年の焦点改訂で変わったのは、Figure 1 がこの層に独立した区分名(図中の表記は Extreme risk)を与え、多の動脈疾患を対象に加え、反復イベント側の「2年以内」という限定を図の文言から外したことである1。⚠️ ただしこの区分は図にしか現れず、対応する推奨表は置かれていない——一律に到達を求める目標ではなく、「考慮してもよい」(IIb)どまりであることは2019年版から変わらない。

💡 「50%以上の低下」と「絶対値目標」は併記されており、ベースラインが低い患者でも相対的な低下幅を確保することが重視される。2025年改訂が新たに置いた推奨は、①または治療決定の閾値付近の人で、画像による無症候性や冠動脈カルシウムスコアの上昇をリスクとして考慮する(IIa・B)、②50 mg/dLを超えるを全成人でリスク増強因子とみなす(IIa・B)、③の入院中にを強化する(入院前に治療を受けていた例ではI・C、治療歴がなくスタチン単独では目標到達が見込めない例では+の併用開始をIIa・B)の3つである1。「早めに併用薬へ進む」という考え方が推奨として書かれているのはの場面であって、安定例の全般的な指示ではない。なお「成人で生涯に少なくとも1回を測定することを考慮する」は2019年版のクラスIIa・レベルCの推奨で、180 mg/dL超の例を拾うことが本来の目的である2。

flowchart TD
  S["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lifestyle intervention'>生活習慣介入</span>(禁煙、食事、運動、体重管理)+ <span class='jp-term jp-term-diagram' title='risk stratification'>リスク層別化</span>に基づく<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-intensity statin'>高強度スタチン</span>導入"] --> T{"目標<span class='jp-term jp-term-diagram' title='low-density lipoprotein cholesterol'>LDL-C</span>を達成?"}
  T -- "達成" --> M["同用量を継続し定期的に再評価"]
  T -- "未達成" --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ezetimibe'>エゼチミブ</span>を併用"]
  E --> T2{"目標<span class='jp-term jp-term-diagram' title='low-density lipoprotein cholesterol'>LDL-C</span>を達成?"}
  T2 -- "達成" --> M
  T2 -- "未達成(特に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='very high risk'>超高リスク</span>例)" --> P["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proprotein convertase subtilisin/kexin type 9'>PCSK9</span>阻害薬または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inclisiran'>インクリシラン</span>を追加"]
  P --> T3{"目標<span class='jp-term jp-term-diagram' title='low-density lipoprotein cholesterol'>LDL-C</span>を達成?"}
  T3 -- "未達成" --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bempedoic acid'>ベンペド酸</span>などその他の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='low-density lipoprotein'>LDL</span>低下薬を検討"]

まとめ

  • は、を起点にの取り込み・形成・増殖を経てプラークが形成される慢性炎症性疾患。
  • プラークは+から成り、被膜が菲薄化して破裂すると急性血栓症を来し、心筋梗塞・脳卒中・などの急性イベントに直結する。
  • 危険因子は(加齢・性別・遺伝)と(高値、高血圧、喫煙、糖尿病)に分けられ、複数因子の重なりでリスクはに増大する。
  • 臨床像は罹患血管によって決まり(冠動脈→狭心症・、脳血管→・、大動脈→、末梢動脈→)、長い無症候期を経て発症することが多い。
  • 診断はや risk scoreによる、、頸動脈エコー・スコアなどの画像評価を組み合わせて行う。
  • 治療の中心はとコレステロール低下療法(スタチン→→阻害薬/の順で強化)であり、では・・禁煙支援を併用する。

出典

  1. 1.2025 Focused Update of the 2019 ESC/EAS Guidelines for the management of dyslipidaemias(European Society of Cardiology / European Atherosclerosis Society・2025)Internet Archive 経由(web.archive.org の id_ 付きURLが academic.oup.com の advance-article-pdf を watermark02.silverchair.com へ転送する)で誌上前の advance article 版PDF(20頁)を自分で取得して確認した。本文に `It is important to note that the LDL-C treatment goals (Figure 1) and therapeutic guidance (Table 4) for persons in each risk category have not changed from the 2019 ESC/EAS Guidelines.` とあり、目標値そのものは2019年版から変わっていないこと。Figure 1 が低リスク<3.0 mmol/L(<116 mg/dL、Class IIb)・中等度リスク<2.6 mmol/L(<100 mg/dL、IIa)・高リスク<1.8 mmol/L(<70 mg/dL、I)・超高リスク<1.4 mmol/L(<55 mg/dL、I。ただし一次予防のFHで超高リスクの例はIIa)といずれも≥50%のベースラインからの低下を示し、その下に `Extreme risk` という区分を置いて<1.0 mmol/L(<40 mg/dL)をClass IIbで示すこと。Extreme risk の対象は `Patients with ASCVD who experience recurrent vascular events while taking maximally tolerated statin-based therapy` と `Patients with polyvascular (e.g. coronary and peripheral) arterial disease` の2つで、2019年版にあった「2年以内」の限定は図の文言には無いこと。⚠️ この `Extreme risk` は Figure 1 にしか現れず、対応する Recommendation Table は置かれていない(Recommendation Table 1 は一次予防の薬物療法開始基準までで、極めて高いリスクの行は無い)。Recommendation Table 4 の新推奨は `Lp(a) levels above 50 mg/dL (105 nmol/L) should be considered in all adults as a CV risk-enhancing factor, with higher Lp(a) levels associated with a greater increase in risk.` でClass IIa・Level B であり、「生涯に少なくとも1回測定する」は本文が2019年版(参考文献1)に帰属させている記述であること。Recommendation Table 1 の新推奨は、中等度リスクまたは治療決定の閾値付近の個人で画像による無症候性冠動脈硬化またはCACスコア上昇をリスク修飾因子として考慮する(IIa・B)こと。Recommendation Table 3 の2つの新推奨は急性冠症候群の入院中に限った話で、入院前に何らかの脂質低下療法を受けていた例では入院中の強化が推奨(I・C)、治療歴が無くスタチン単独では目標到達が見込めない例では高強度スタチン+エゼチミブの併用開始を考慮(IIa・B)であること閲覧 2026-09-17
  2. 2.2019 ESC/EAS Guidelines for the management of dyslipidaemias: lipid modification to reduce cardiovascular risk(European Heart Journal(Mach F, et al., 2020, DOI 10.1093/eurheartj/ehz455)・2020)ジュネーヴ大学のリポジトリ archive-ouverte.unige.ch から誌上版PDF(80頁)を自分で取得して確認した。LDL-C目標の推奨表が、二次予防の超高リスクでベースラインから50%以上の低下かつ1.4 mmol/L(55 mg/dL)未満(I・A)、一次予防でFHのない超高リスクも同じ目標(I・C)、一次予防でFHのある超高リスクは同じ目標をIIa・Cで考慮、高リスクで50%以上の低下かつ1.8 mmol/L(70 mg/dL)未満(I・A)、中等度リスクで2.6 mmol/L(100 mg/dL)未満、低リスクで3.0 mmol/L(116 mg/dL)未満であること。逐語で `For patients with ASCVD who experience a second vascular event within 2 years (not necessarily of the same type as the first event) while taking maximally tolerated statin-based therapy, an LDL-C goal of <1.0 mmol/L (<40 mg/dL) may be considered.` とあり、Class IIb・Level B で、この40 mg/dL未満という目標が2019年版に既に存在すること。ただしこの版に `polyvascular` および `extreme risk` という語は全文で0件で、治療目標の図(Figure 4B)も低・中等度・高・超高の4段階しか持たないこと。Lp(a) については `Lp(a) measurement should be considered at least once in each adult person’s lifetime to identify those with very high inherited Lp(a) levels >180 mg/dL (>430 nmol/L)…` がClass IIa・Level C であること閲覧 2026-09-17
  3. 3.Aspirin Use to Prevent Cardiovascular Disease: US Preventive Services Task Force Recommendation Statement(US Preventive Services Task Force・2022)心血管疾患の既往がない成人への一次予防としてのアスピリン投与は、40〜59歳で10年心血管リスク10%以上の一部に限り個別判断で考慮しうるにとどまり、60歳以上では新規開始の正味の利益がないとして、ルーチンには推奨されない。閲覧 2026-08-02