組織病理学

組織病理学 · H1-094

粥腫性冠動脈プラーク

Atherosclerotic plaque – atheromatous

描出疾患
アテローム性動脈硬化症

🧠 全体像:は、冠動脈内膜の脂質壊死核をが覆う病変である。被膜の厚さ、肩部炎症、壊死核、血管新生に加え、破綻・出血・血栓の有無がリスクを左右する。

プラークの構築

冠動脈は脂肪内を走行するため、の周囲には心筋、脂肪、心膜がみられる。まず冠動脈内腔と血管壁を同定し、その後にの各成分を追う。

構成 主な内容
と密な
脂質壊死核 細胞外脂質、壊死細胞、
溶出したの針状空隙
肩部 被膜と正常内膜の移行部。マクロファージ・T細胞が集まりやすい
や炎症細胞流入の経路になりうる
石灰化 壊死核や被膜に生じる

形成から合併症まで

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='low-density lipoprotein'>LDL</span>の内膜滞留・変性"] --> B["単球流入と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='foam cells'>泡沫細胞</span>形成"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fatty streak'>脂肪線条</span>"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='smooth muscle cells'>平滑筋細胞</span>移動・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='collagen fiber'>膠原線維</span>形成"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fibrous cap'>線維性被膜</span>と脂質壊死核"]
    E --> F["安定した狭窄性プラーク"]
    E --> G["肩部炎症・被膜菲薄化"]
    G --> H["破裂またはびらん"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='platelet activation'>血小板活性化</span>・血栓"]
    I --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute coronary syndrome, ACS'>急性冠症候群</span>"]

安定性の比較

項目 比較的安定なプラーク 脆弱なプラーク
厚くが多い 薄い。破裂のとされるthin-cap fibroatheromaでは65 µm以下1
脂質壊死核 比較的小さい 大きい
炎症 少ない 肩部にマクロファージが多い
比較的多い 少ない
主な転帰 、虚血 破裂・血栓、

が最大のプラークだけが急性イベントを起こすわけではない。中等度狭窄でも脆弱な被膜が破綻すれば、急速に閉塞性血栓を形成しうる。697例を中央値3.4年追跡したPROSPECT研究では、3年間の主要心血管事故20.4%のうち11.6%が治療したではなく非から生じ、それらはベースラインでは狭窄32.3±20.6%と上軽度だった。事故と独立に関連したのはではなく、プラーク量70%以上(5.03)、最小内腔面積4.0 mm2以下(同3.21)、でのthin-cap fibroatheroma分類(同3.35)である2。

組織像での注意

所見 解釈
内腔の亜全閉塞 固定性プラークと血栓の双方を評価する
過去の後に内皮化・線維化・が進んだ所見
プラーク内 出血・炎症を促す可能性がある。はプラークを急速に膨張させ、破裂を伴わなくてもを起こしうる3
肩部炎症 被膜分解と破綻リスクに関与する

が存在する病変は、単なる「未合併プラーク」ではない。破裂・びらんまたは血栓付着を経た複雑化病変として理解する。

💡 破裂とびらんは別の顔をもつ。 冠動脈血栓のは破裂とびらんに大別され、の最多原因は破裂で、とくに男性に多い。破裂病変は陽性()リモデリングを伴い、大きな壊死核と、してが浸潤した薄い被膜を示す。これに対しびらん病変は陰性リモデリングを示し、とに富んで炎症はごく乏しい。剖検データでは50歳未満の女性ではびらんの頻度が高く、高齢女性では10年ごとに破裂の頻度が増す3。⚠️ 炎症細胞が乏しく被膜も薄くない病変を見ても、それだけでのを否定しない。

臓器別の転帰

部位 主な転帰
冠動脈 、、心筋梗塞
頸動脈・脳動脈 、
下肢動脈 、急性肢虚血、壊疽
大動脈 動脈瘤、プラーク塞栓

管理の考え方

治療は禁煙、血圧・管理、運動・食事、リスクに応じた低下療法を組み合わせる。スタチンは基盤薬であり、既往イベントや全体リスクに応じて追加薬を検討する。では緊急評価、、必要なを病型に応じて行う。

石灰化の読み方は H1-093:石灰化斑 で確認する。

まとめ

  • 性プラークは、脂質壊死核、肩部炎症からなる。
  • 、石灰化、、を確認する。
  • 被膜破綻・びらんに血栓が重なるとを起こす。
  • は過去のプラーク合併症を示し、未合併病変とは扱わない。

出典

  1. 1.Pathophysiology of atherosclerosis plaque progression(Heart, Lung and Circulation・2013)プラーク破裂の前駆病変とされる薄い線維性被膜をもつ粥腫(TCFA)は、壊死性コアの上を覆う被膜の厚さが65 µm以下でマクロファージとTリンパ球が浸潤したものと定義される。被膜はマクロファージ由来のMMP放出と平滑筋細胞のアポトーシスによって薄くなり、プラーク内出血が壊死性コア拡大の主要因である閲覧 2026-08-24
  2. 2.A prospective natural-history study of coronary atherosclerosis(New England Journal of Medicine・2011)急性冠症候群の697例を中央値3.4年追跡したPROSPECT研究で、3年間の主要心血管事故は20.4%、うち非責任病変由来が11.6%であり、事故を起こした非責任病変はベースラインでは血管造影上軽度(平均径狭窄32.3±20.6%)だった。多変量解析で再発事故と独立して関連したのはプラーク量70%以上(ハザード比5.03)・最小内腔面積4.0 mm2以下(同3.21)・血管内超音波でのthin-cap fibroatheroma分類(同3.35)である閲覧 2026-08-24
  3. 3.Update on acute coronary syndromes: the pathologists' view(European Heart Journal・2013)冠動脈血栓を起こす責任病変の形態はプラーク破裂とプラークびらんに大別され、急性心筋梗塞の最多原因は破裂で、とくに男性に多い。剖検データでは50歳未満の女性ではびらんの頻度が高く、高齢女性では10年ごとに破裂の頻度が増す。破裂病変は陽性(拡張性)リモデリングを伴い、大きな壊死核と、断裂して泡沫状マクロファージが浸潤した薄い線維性被膜を特徴とする。びらん病変は陰性リモデリングを示し、平滑筋細胞とプロテオグリカンに富み炎症はごく乏しい。プラーク内出血は破裂(亀裂)からも新生血管からも起こり、プラークを急速に膨張させて不安定狭心症を来しうる閲覧 2026-08-24