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Disease Atlas · 神経 · 疾患

脳梗塞

Ischemic stroke

別名
Cerebral infarctionAIS
臓器系
神経循環器
科目
PathologyNeurologyRehabilitation
トピック
病理学 C/106:脳血管障害(低酸素・虚血・梗塞)神経内科 G1-17:脳血管障害の診断手順神経内科 G2-25:脳血管障害の分類神経内科 G2-28:急性期脳虚血の治療リハビリテーション 05:脳卒中のリハビリテーション
上位概念
脳卒中
鑑別疾患
ベル麻痺(末梢性顔面神経麻痺)ミトコンドリア病メニエール病一過性脳虚血発作脳静脈洞血栓症脳内出血(非外傷性)良性発作性頭位めまい症・前庭神経炎
合併症
血管性・レビー小体型・前頭側頭型認知症など非アルツハイマー型認知症
続発疾患
てんかん感音難聴声帯麻痺
関連疾患
アルツハイマー病歯周炎末梢動脈疾患
治療薬
アルテプラーゼアセチルサリチル酸クロピドグレルアピキサバンアトルバスタチンジピリダモールワルファリン
症状
めまいバリズム単麻痺Gerstmann症候群Bálint症候群意識障害運動失調性片麻痺複視片麻痺麻痺嚥下障害痙攣失語失行半側空間無視同名半盲小脳性運動失調
検査値
血算血糖
画像所見
頭部CTの早期虚血性変化拡散強調画像高信号
スコア
NIHSSFIMFAC
組織像
脳梗塞白色脳軟化と赤色脳軟化
下位分類
延髄外側症候群
元疾患
可逆性後頭葉白質脳症可逆性脳血管攣縮症候群
原因となる疾患
2型糖尿病Fabry病Trousseau症候群アテローム性動脈硬化症抗リン脂質抗体症候群高血圧症心房細動心房粗動非細菌性血栓性心内膜炎卵円孔開存
適応薬
グリセロール
禁忌薬
エトラシモドオザニモドフィンゴリモド

🧠 全体像は、脳動脈の閉塞またはによって局所脳組織が不可逆的に壊死するの救急疾患である。急性期は「出血を除外する」「閉塞血管と救済可能な脳を探す」「適格なら再灌流を遅らせない」を並行し、その後は病型に合う抗血栓療法、合併症予防、リハビリテーション、へ切れ目なくつなぐ。

定義と病型

は、局所脳虚血による組織梗塞に対応する神経機能障害である。症状が短時間で消失しても画像上の急性梗塞があればであり、急性梗塞を伴わない一過性の局所脳・脊髄・とする。

病型 主な機序 手掛かりとの軸
頭蓋内外動脈の、局所血栓、 頸動脈・頭蓋内動脈の狭窄、同一血管領域の反復。と危険因子管理
心房細動、、弁膜症などからの塞栓 突然の最大発症、複数血管領域、。適応があれば抗凝固薬
高血圧・糖尿病などによる細動脈障害 深部の小梗塞、純粋運動・感覚症候など。と危険因子管理
その他の原因 動脈解離、血管炎、など 年齢、疼痛、全身所見、血管像から
原因不明 十分な検索でも単一原因を特定できない 長期心電図などでを探索し、推測だけで抗凝固しない

病態生理と病理

が途絶えると、中心部ではATP枯渇、破綻、が進み、不可逆的な(ischemic core)となる。その周囲のは機能を失っていても一定時間は生存しており、迅速な再灌流で救済できる。

flowchart TD
    A["血栓・塞栓・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-grade stenosis'>高度狭窄</span>"] --> B["局所<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cerebral blood flow, CBF'>脳血流</span>の低下"]
    B --> C["酸素・ブドウ糖供給の不足"]
    C --> D["ATP枯渇・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ion pump'>イオンポンプ</span>破綻"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ischemic core'>虚血コア</span>:不可逆的細胞死"]
    B --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='collateral circulation'>側副血行</span>で辛うじて維持される<span class='jp-term jp-term-diagram' title='penumbra (ischemic penumbra)'>ペナンブラ</span>"]
    F --> G["早期再灌流で機能回復し得る"]
    F --> H["閉塞持続・低血圧・発熱・低酸素"]
    H --> E

は他臓器の多くと異なり、主にを来す。急性期には、続いてマクロファージによる壊死組織除去が進み、長期にはを伴う嚢胞性空洞を残す。塞栓の自然溶解や治療による再灌流では、梗塞内にを生じることがある。

高血圧性小血管障害ではが閉塞し、、基底核、視床、橋などにを作る。では主要動脈の境界域にを生じやすい。

臨床像

発症は通常突然で、症候はに対応する。症状が軽い、変動する、消失したという理由で救急評価を遅らせない。

障害部位・血管領域 代表的な症候
反対側の顔面・上肢優位麻痺と感覚障害、
領域 反対側下肢優位麻痺・感覚障害、低下、反射
領域 反対側、記憶障害、視床症候。ではなど
領域 めまい、構音・嚥下障害、失調、脳幹症候、意識障害
純粋運動、純粋感覚、感覚運動、

⚠️ 低血糖、痙攣後麻痺、片頭痛、機能性神経症状、などはを来す。一方、低血糖の補正や鑑別に必要な検査で、適格患者の再灌流を不必要に遅らせない。

診断

救急評価

発症時刻ではなく、症状が始まる直前に正常だったを記録する。気道・呼吸・循環、酸素化、血糖、体温を確認し、で重症度を共通言語化する。抗凝固薬の種類と最終内服、出血・、発症前の生活機能も再灌流判断に必要である。

flowchart TD
    A["突然の局在神経症状"] --> B["脳卒中チーム起動・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='last known well'>最終健常確認時刻</span>"]
    B --> C["ABC・血糖・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='National Institutes of Health Stroke Scale'>NIHSS</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antithrombotic agent'>抗血栓薬</span>歴"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='non-contrast CT'>非造影CT</span>で出血と広範な不可逆的変化を評価"]
    D --> E["CTAで頭頸部の閉塞・狭窄を評価"]
    E --> F["4.5時間以内の障害性症状"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intravenous thrombolysis'>静注血栓溶解療法</span>の適格性判定"]
    E --> H["治療可能な動脈閉塞"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endovascular thrombectomy, EVT'>機械的血栓回収療法</span>の適格性判定"]
    D --> J["発症不明または遅発来院"]
    J --> K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diffusion-weighted imaging'>DWI</span>–FLAIRまたは<span class='jp-term jp-term-diagram' title='perfusion mismatch'>灌流ミスマッチ</span>で静注療法を評価"]
    K --> G
    J --> L["血管画像+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ischemic core'>虚血コア</span>・臨床画像で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endovascular treatment'>血管内治療</span>を評価"]
    L --> I

画像と原因検索

検査 急性期の役割 注意点
出血、腫瘤、広範なを迅速に評価 期に正常でも小さなを否定できない
CTA 頭頸部の大、狭窄、解離、を評価 の候補では早期に行い、不要な遅延を避ける
MRI 超早期・病変の検出に優れる 実施可能性と所要時間を考え、再灌流を遅らせない
CT・MR の不均衡を評価 発症不明・拡大時間枠の選択に用いる
心電図・リズム監視 心房細動や他の不整脈を検出 原因不明例ではより長期の監視を検討
心エコー・頸動脈画像 源、頸動脈を検索 急性再灌流後の病型診断とに直結する

血算、電解質、腎・肝機能、凝固、血糖、脂質、HbA1cなどを評価する。既知の抗凝固薬使用やがなければ、すべての検査結果を待つことを再灌流の前提にしない。

治療

再灌流療法

治療 主な対象と時間枠 重要な判断点
原則として最終健常確認から4.5時間以内の適格な障害性症状 2026年AHA/ASA指針ではまたはを同等に選択できる1が低くても障害性なら除外しない
画像選択による静注療法 発症不明、または発症4.5〜9時間の一部 –FLAIRまたはを確認し、専門チームで選択
治療可能な大。早期例に加え、選択例は24時間まで 血管部位、、重症度、発症前機能を統合。大きなの一部にも適応が拡大
発症24時間以内で 10以上などの選択例 症状を見逃さず、血管画像を急ぐ

静注療法との両方に適格なら、静注療法の反応を待ってを遅らせない。非障害性の軽微症状ではの利益が示されておらず、適格な非例では短期を選ぶ。

⚠️ では、・活動性の重大出血、制御不能な高度血圧、臨床的に重要な凝固異常・残存する抗凝固作用、最近の重大な手術・外傷などを標準チェックリストで確認する。禁忌は一律の単語だけで決めず、時期、重症度、画像、薬剤別検査、期待利益を脳卒中専門チームが評価する。

血圧と全身管理

状況 一般的な考え方
185/110 mmHg未満へ慎重に調整
後24時間 180/105 mmHg未満を維持
なし 維持のため急激なを避ける。220/120 mmHg以上で他の緊急適応がなければ、最初の24時間に約15%の緩徐な低下を一つの目安とする
静注療法を行わない候補でも手技前は185/110 mmHg以下、手技中・後24時間は180/105 mmHg以下を上限の目安とし、再灌流・出血リスク・併存症で個別化する。成功再灌流後に140 mmHg未満を一律に目指す強化は行わない

など別の緊急適応がある場合は、その病態固有の目標を優先する。

  • 低血圧と循環血液量低下を是正し、低酸素血症がある場合だけ酸素を投与する。
  • 低血糖を直ちに補正し、著しい高血糖を管理する。80〜130 mg/dLを狙う強化は行わない。
  • 発熱の原因を検索して治療し、正常体温を目指す。
  • 経口の水分・食事・薬剤を開始する前に嚥下スクリーニングを行い、必要ならによる詳しい評価と栄養計画へ進む。
  • 不動例ではなどでを予防する。発作のない患者にを一律に予防投与しない。
  • 意識悪化、瞳孔変化、嘔吐などでは脳浮腫とを再評価する。の圧迫では、早期にを検討する。

抗血小板療法と抗凝固療法

再灌流直後と長期を区別する。

  • を行っていない多くの患者では、出血を除外後24〜48時間以内にを開始する。
  • 後は、通常24時間後の画像で出血がないことを確認するまでを控える。
  • 早期来院した軽症非の適格例では、を通常21日間併用し、その後は単剤へ移行する。長期二剤併用は出血を増やすため行わない。重度症候性頭蓋内狭窄などでは期間を別に個別化する。
  • 心房細動など明確なでは、禁忌がなければ経口抗凝固薬を用いる。では通常DOACを優先し、または中等度以上のではワルファリンを用いる。開始時期は梗塞の大きさ、、再塞栓リスクを踏まえて個別化する。2026年AHA/ASA指針は、軽症など慎重に選んだ例に限って早期開始が延期に比べて低リスクで妥当としつつ、早期の再発予防効果そのものは確立していないと明記しており、severity を問わない一律の早期開始を勧めているわけではない(推奨クラス2a)1を代用品にしない。
  • 進行予防を目的とした一律の緊急ヘパリン投与は利益がなく、出血を増やす。原因不明の塞栓性にも推測だけで抗凝固薬を投与しない。

リハビリテーションと合併症予防

脳卒中ユニットで、残存機能と患者の目標に応じた多職種リハビリテーションを早期から計画する。医学的に安定した後の離床・反復課題訓練は重要だが、発症24時間以内の高用量・高頻度の離床を機械的に行わない。

評価領域 主な介入
運動・感覚・歩行 、課題指向型訓練、バランス・・歩行訓練、評価
上肢・ 、麻痺側上肢の使用、環境調整、補助具
言語・脳機能 への評価と訓練
嚥下・栄養 嚥下評価、食形態・姿勢調整、口腔衛生、安全な栄養経路
情動・社会生活 抑うつ、認知、疲労、運転、就労、負担、社会制度を評価
二次合併症 、肩痛、、転倒、を予防

二次予防

は病型に合わせる。全員に同じを処方するのではなく、動脈硬化、、心房細動、動脈解離などの原因を確定して再発機序を断つ。

危険因子 現行の目安
血圧 多くの患者で 130/80 mmHg未満を目標とし、症候性低血圧、重度狭窄、などで個別化する
脂質 疾患ではを用い、LDLコレステロール 70 mg/dL未満を目標に、必要ならなどを追加する
糖尿病 低血糖を避け、年齢・併存症・機能に応じHbA1c目標を個別化する
生活 禁煙、減塩を含む地中海型食事、安全な、体重・飲酒・睡眠時無呼吸への介入を続ける
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cerebral infarction'>脳梗塞</span>後の病因評価"] --> B["非<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiogenic'>心原性</span>"]
    A --> C["心房細動など<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiogenic'>心原性</span>"]
    A --> D["症候性頸動脈狭窄"]
    A --> E["原因不明"]
    B --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Antiplatelet drugs'>抗血小板薬</span>+危険因子管理"]
    C --> G["適切な時期に経口抗凝固薬"]
    D --> H["早期に内膜剥離術・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stent'>ステント</span>の適格性評価"]
    E --> I["長期心電図など原因検索を継続"]
    F --> J["血圧・脂質・糖尿病・禁煙・運動・食事"]
    G --> J
    H --> J
    I --> J
  • 高血圧、、糖尿病、肥満、喫煙、過量飲酒、睡眠時無呼吸を評価し、個別目標で治療する。
  • 疾患ではを軸にを行い、反応とに応じて追加治療を検討する。
  • 症候性高度頸動脈狭窄では、非障害性脳卒中後の適格例を早期に評価へつなぐ。内膜剥離術とは年齢、解剖、併存症、周術期リスクで選ぶ。
  • 減塩を含む地中海型の食事、禁煙、服薬支援、能力に合わせた安全なを多職種で継続する。
  • 家族・と再発徴候、服薬、出血、転倒、救急受診の基準を共有する。

まとめ

  • では、血糖、、CTAを並行し、出血除外と再灌流適格性判定を急ぐ。
  • 障害性症状の適格例では4.5時間以内のを遅らせず、発症不明・遅発例では画像による選択を検討する。
  • 治療可能な動脈閉塞ではを評価し、静注療法への反応待ちでを遅らせない。
  • 急性期は過度のを避け、低酸素、低血糖、発熱、誤嚥、、脳浮腫を予防する。
  • 抗血栓療法は病型で選び、非では、心房細動などでは適切な時期の抗凝固薬を用いる。
  • 多職種リハビリテーションと原因別を急性期から始め、機能回復と再発予防を一つの診療計画にする。

出典

  1. 1.2026 Guideline for the Early Management of Patients With Acute Ischemic Stroke(American Heart Association / American Stroke Association・2026)静注血栓溶解療法はアルテプラーゼ・テネクテプラーゼを同等に選択できる4.5時間の時間枠を維持する。心房細動関連脳梗塞では、軽症など慎重に選んだ例に限り早期の経口抗凝固薬開始が延期に比べて低リスクで妥当だが、早期再発予防の有効性は確立していない(推奨クラス2a。重症度別の具体的な日数は示していない)閲覧 2026-08-03