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Disease Atlas · 神経 · 疾患

てんかん

Epilepsy

臓器系
神経
科目
NeurologyPharmacologyPediatrics
トピック
神経内科 G1-21:てんかん重積状態神経内科 G2-29:てんかん発作とてんかん(鑑別診断・分類・原因)神経内科 G2-30:てんかんの臨床管理薬理学 A21:抗てんかん薬・鎮痛補助薬小児科 3-10:小児てんかんと熱性けいれん
鑑別疾患
Brugada症候群身体症状症・変換症・病気不安症先天性QT延長症候群統合失調症片頭痛・一次性頭痛症候群
関連疾患
自閉スペクトラム症知的発達症
治療薬
ラモトリギンレベチラセタムカルバマゼピンエトスクシミドバルプロ酸ミダゾラムジアゼパム葉酸ラコサミドオクスカルバゼピンペランパネルチオペンタールゾニサミドフェニトインフェノバルビタールトピラマート
原因微生物
Taenia solium
症状
筋痛筋力低下錯乱自動症焦点性発作発作麻痺
検査値
血糖
スコア
ILAE分類
下位分類
Dravet症候群Lennox-Gastaut症候群てんかん性脳症乳児てんかん性スパズム症候群
元疾患
ウイルス性脳炎ミトコンドリア病髄膜腫脳静脈洞血栓症脳膿瘍
原因となる疾患
海馬硬化外傷性脳損傷小児脳性麻痺低酸素性虚血性脳症(周産期仮死)熱性けいれん嚢虫症脳海綿状血管奇形脳梗塞
適応薬
トピラマートフェルバマットブリバラセタムプリミドンペランパネルラコサミドレベチラセタム大麻
禁忌薬
イミペネムシラスタチンシクロセリンセビメリントラマドールピロカルピンファンプリジンブプロピオンフルマゼニルプロチオナミドベタネコールメトクロプラミドメフロキンリンデン

🧠 全体像:てんかんは、非誘発性発作を生じる持続的な脳の素因をもつ疾患である。「発作という一回の出来事」と「反復素因としてのてんかん」を区別し、情報から発作型を分類したうえで、原因・症候群・併存症を統合して診断と治療を組み立てる。

定義

は、脳内の異常に過剰または同期した神経活動によって起こる一過性の徴候・症状である。てんかんは、そのような発作を生じる持続的素因と、それに伴う的・認知的・心理的・影響を含む脳疾患である。

ILAEの実用的定義では、次のいずれかを満たすとてんかんと診断する。

  1. 24時間を超えて間隔をあけた2回以上の非誘発性または
  2. 1回の非誘発性またはと、今後10年間の再発確率が60%以上と推定される持続的素因
  3. の診断

低血糖、電解質異常、急性脳卒中、急性中枢神経感染、などに時間的に密接して起こるは、それだけではてんかんを意味しない。誘因のない発作と、脳への急性侵襲に反応した発作を分けることが診断の入口である。

病態

発作は、興奮性と抑制性の均衡が崩れ、神経ネットワークが異常に同期することで生じる。イオンチャネル、、神経回路、グリア機能の異常が単独または複合してを低下させる。

構造病変の後には、神経細胞死、炎症、軸索再編、受容体発現変化などを介してな発作素因が形成されることがある。この過程をてんかん原性形成(epileptogenesis)という。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='genetic predisposition'>遺伝的素因</span>・構造病変・感染・免疫・代謝異常"] --> B["興奮性と抑制性の均衡が破綻"]
    B --> C["神経ネットワークが過剰に同期"]
    C --> D["一過性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epileptic seizure'>てんかん発作</span>"]
    D --> E["意識・運動・感覚・自律神経・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cognitive symptoms'>認知症状</span>"]
    A --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic'>慢性的</span>な発作素因が形成"]
    F --> G["反復する非誘発性発作"]

分類と原因

2025年ILAE発作分類

主分類 意味 記載の要点
片側大脳半球のネットワークから生じる 意識を認識と反応性の両面で評価し、徴候を時間順に記載する
両側性ネットワークへ速やかに関与する 、脱力などを記載する
焦点性かか不明 発作であるが起始側を決める情報が不足する 病歴、EEG、画像が揃えば再分類する
発作 情報不足または既存分類に当てはまらない 無理に分類せず、観察できた現象を残す

2025年分類では、主分類名から「起始」を外し、「意識」は認識と反応性の両面で評価する。従来の運動性・の二分は、の徴候という記述へ置き換えられた。には別の分類を用いる1

病因分類

病因 代表例
構造的 脳卒中、外傷、腫瘍、
遺伝的 遺伝性など
感染性 脳炎後、、HIV関連中枢神経感染など
代謝性 特定の
免疫性 など
不明 適切な評価後も原因が同定されないもの

一人に複数の病因が重なる場合がある。年齢、発作型、発達、神経診察、EEG、画像、遺伝学を統合して、可能ならまで同定する。

臨床像

発作症状

発作型 主な臨床像
片側の運動・、恐怖、嗅覚症状、など。両側へ進展しうる
突然始まり突然終わる短い反応停止。しばしば頻回で、の混乱は乏しい
一瞬の筋収縮。覚醒後や睡眠不足で目立つことがある
相に続く律動性の眠気・混乱、筋痛を伴いうる
筋緊張の急な増加または消失により転倒外傷を来しうる

では、症状の時間順序が焦点と伝播経路の推定に役立つ。舌咬傷、混乱、局在性の麻痺は支持所見だが、単独で診断を確定しない。

鑑別診断

鑑別 手掛かり
反射性失神 誘因、発汗・悪心・視野、蒼白、短い、速やかな回復
労作中または臥位での発症、、家族歴、心電図異常
片頭痛 数分かけて進展する陽性視覚・
TIA 突然の陰性局在症状が中心で、同じ短いに反復することは少ない
低血糖 発汗、振戦、行動変化と血糖低値
睡眠段階との関連、比較的長い複雑行動、部分的覚醒
長く変動する経過などが手掛かり。典型発作をビデオEEGで捉えて診断する

な行動ではなく、てんかんとの併存もある。頭皮EEGに変化が見えないもあるため、陰性EEGだけでと決めない。

小児と熱性けいれん

は、通常6か月〜5歳の発熱に伴う発作で、中枢神経感染、急性代謝異常、既往の無熱性発作がないものをいう。、15分未満、24時間内1回であり、焦点性、15分以上、または24時間復のいずれかを満たせばである。

に正常なら、EEG・画像・血液検査は通常不要で、長期による予防も通常行わない。、遷延する意識障害、があれば髄膜炎・脳炎を評価する。5分以上続くけいれんは原因にかかわらず救急治療の対象である。

診断

初回発作の評価

発作前の誘因、姿勢、、左右差、眼球・頭部、反応性、経過を本人と者から聴取する。スマート動画は診断精度を高めうる。

診察では血糖、神経局在徴候、外傷、感染徴候を確認し、電解質、腎肝機能、妊娠可能性、薬物・飲酒歴などを臨床像に応じて調べる。で、を模倣する不整脈・の手掛かりを探す。

flowchart TD
    A["一過性の意識・運動・感覚イベント"] --> B["本人・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='witnessed'>目撃</span>者・動画から<span class='jp-term jp-term-diagram' title='time course'>時間経過</span>を再構成"]
    B --> C["血糖・心電図・急性誘因を評価"]
    C --> D{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epileptic seizure'>てんかん発作</span>が疑わしいか"}
    D -->|"はい"| E["発作型を分類しEEGを検討"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epilepsy-protocol MRI'>てんかんプロトコルMRI</span>で構造病変を評価"]
    F --> G["病因・症候群・再発リスクを統合"]
    D -->|"不明または別疾患らしい"| H["失神・心疾患・片頭痛・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='functional seizure'>機能性発作</span>などを評価"]
    G --> I["個別化した治療と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='safety plan'>安全計画</span>"]

EEGと画像

  • EEGは発作型・症候群の診断を支持するが、正常でもてんかんを除外しない。
  • があっても、臨床イベントとの整合なしにてんかんと確定しない。
  • 通常EEGが正常でも疑いが残る場合、睡眠不足EEG、長時間・携帯型EEG、ビデオEEGを段階的に検討する。
  • 、腫瘍、脳損傷などを検索する。特発性など、画像を省略できる典型例もある。

初回非誘発性の治療は、神経診察、EEG、構造病変、既往脳損傷、症候群を基に再発リスクを評価し、薬剤の利益・有害事象と本人の希望を共有して決める。

治療

抗発作薬

原則として適切な単剤を少量から開始し、発作消失と副作用をみながら増量する。無効と判断する前に、診断、発作型、服薬状況、睡眠不足、飲酒、相互作用を再確認する。

主な初期選択 重要な注意
または カルバマゼピンなどは次の選択肢になりうる
バルプロ酸から個別選択 の併存を確認する
単独 他の発作型を伴う場合はを選ぶ
またはバルプロ酸 カルバマゼピン、フェニトインなどは悪化させうる

薬剤は発作型だけでなく、、年齢、腎肝機能、気分・認知、体重、骨健康、相互作用、服薬回数、生殖計画を含めて選ぶ。は重篤な皮疹を避けるため緩徐に増量し、では・抑うつなどの精神行動症状を確認する。

⚠️ バルプロ酸の妊娠中曝露は、重大なと児の神経発達障害を来しうる。妊娠可能性のある患者では臨床的に可能なら避け、他に十分な発作抑制を得られる選択肢がない場合は、妊娠検査陰性の確認、有効性の高い避妊の継続、専門医による年1回以上の適応再評価を含むの条件下でのみ用いる2

妊娠・生殖に関する管理

時期・状況 管理の要点
妊娠前 発作型に適するならを検討する。バルプロ酸を避け、可能ならも代替する。発作抑制と胎児リスクを両立する薬剤・用量を妊娠前から計画する
妊娠中 ・焦点性両側を最小化する。妊娠判明後に有効薬を自己中止・せず、専門医と産科で利益とリスクを再評価する
薬剤の妊娠中と臨床像に応じて測定・調整する。特には血中濃度が低下しやすい
葉酸 を使用する妊娠可能性のある患者では、少なくとも0.4 mg/日を妊娠前から妊娠中まで投与する。より高用量の適否は地域指針と個別リスクで決める
男性のバルプロ酸 3か月の父親曝露と児の神経発達障害について研究結果は一致せず、は未確立である。潜在的リスク、生殖能、避妊・受胎計画を説明し、現地に沿って定期評価する

発作抑制不良そのものも妊娠中の本人と胎児を危険にさらす。薬剤の胎児リスクだけを見て治療を中断せず、妊娠前からを行う。

発作が抑制されても一律に中止せず、無間、症候群、病因、EEG、画像、生活上の影響を基に再発リスクを個別評価し、決定した場合は原則として緩徐に減量する。

薬剤抵抗性てんかん

適切に選択され、された2つの治療を、単剤または併用で十分に用いても持続的な発作消失が得られない場合をとする。薬剤を際限なく追加せず、包括的てんかんセンターへ早期に紹介する。

焦点がなら、外科手術が長期発作消失の最良の機会となりうる。切除・術のほか、、専門チーム管理下のを病態に応じて検討する。

てんかん重積状態

けいれんが5分以上続く、または意識が回復しないまま反復すれば、として直ちに治療する。

flowchart TD
    A["けいれんが5分以上または回復なく反復"] --> B["安全確保・ABC・酸素化・血糖・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='IV access'>静脈路</span>"]
    B --> C["十分量のベンゾジアゼピン"]
    C --> D{"発作が停止したか"}
    D -->|"いいえ"| E["規定時間後に第二投与まで行う"]
    E --> F["第二選択:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='levetiracetam'>レベチラセタム</span>・フェニトイン系・バルプロ酸など"]
    F --> G{"なお持続するか"}
    G -->|"はい"| H["ICU・気道管理・麻酔薬・持続EEG"]
    D -->|"はい"| I["意識回復を確認し原因治療"]
    G -->|"いいえ"| I

十分量のベンゾジアゼピンで停止しない場合、フェニトイン(または)、バルプロ酸は同程度(約50%)の発作停止率と同様の安全性を示すため、いずれを第二選択としてもよい3。地域・院内の救急プロトコルと本人の個別緊急計画を優先する。発作が止まっても意識が戻らなければ、、鎮静薬作用、低血糖・電解質異常、脳損傷を再評価する。

長期管理と安全

  • 睡眠不足、過量飲酒、など本人固有の誘因を減らす。
  • 入浴・水泳、高所、火気、機械、運転は発作型と地域の法規に合わせてを作る。
  • は危険物を除き、頭部を保護し、可能ならにする。口に物を入れず、無理に押さえつけない。
  • 5分以上の発作、回復しない反復、、重い外傷、妊娠中の発作、初回発作では救急要請する。
  • うつ、不安、自殺リスク、認知、発達、睡眠、骨健康、学業・就労への影響を定期的に評価する。

てんかんにおける予期せぬ突然死(SUDEP)のリスクは診断時から個別に説明する。特に制御不良のまたは焦点性両側、服薬不良、アルコール・、夜間発作はな重要因子である。発作抑制とを最優先し、夜間発作がある高リスク例では本人・家族と夜間監視や発作検知機器の利点と限界を相談する。

まとめ

  • は一過性の出来事、てんかんは非誘発性発作を生じる持続的素因をもつ疾患である。
  • 2025年では焦点性、、焦点性かか不明、の4主分類を用いる。
  • 診断は情報を軸に、を除外し、EEG・MRI・病因・症候群を統合する。
  • は発作型と症候群に合わせ、併存症、相互作用、生殖リスクを含めて個別化する。
  • 適切な2治療が失敗したら薬剤抵抗性と考え、を含む包括的評価へ早期に紹介する。
  • けいれんが5分続けば重積状態として治療し、長期管理では外傷予防、心理社会面、SUDEPまで扱う。

出典

  1. 1.Updated classification of epileptic seizures: Position paper of the International League Against Epilepsy(International League Against Epilepsy・2025)2025年改訂のILAE発作分類が焦点性・全般性・不明・未分類の4主分類を維持し、意識を認識と反応性の両面で評価し、症状記載を観察可能性に基づく形へ改め、新生児発作を対象外としていること閲覧 2026-08-02
  2. 2.Randomized Trial of Three Anticonvulsant Medications for Status Epilepticus(New England Journal of Medicine・2019)ベンゾジアゼピン不応の痙攣性てんかん重積状態で、レベチラセタム・フェニトイン系(ホスフェニトイン)・バルプロ酸が同程度(約50%)の発作停止率と同様の安全性を示したこと閲覧 2026-08-02
  3. 3.Valproate and related substances - referral(European Medicines Agency・2018)妊娠可能性がある人にはバルプロ酸を、妊娠検査・有効な避妊・専門医の定期評価を含む妊娠防止プログラムの条件を満たさない限り使用してはならないという現行規制閲覧 2026-08-02