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Drug Atlas · B27 Uterotonics & tocolytics / 子宮作用薬

カルベトシン

carbetocin

分類
Uterotonics & tocolytics / 子宮作用薬Pituitary & hypothalamic hormones / 下垂体・視床下部ホルモン
商品名(EU)
Pabal
科目
PharmacologyObstetrics and Gynecology (Obstetrics)
トピック
B27: Drugs acting on smooth muscles. Drugs influencing uterus contractions19: Stages of delivery. Management of the third and fourth stage
禁忌疾患
てんかん慢性腎臓病肝硬変
副作用
頭痛振戦めまい悪心腹痛嘔吐頻脈徐脈低血圧顔面紅潮

🧠 全体像:は長時間作用型の薬で、オキシトシンのにあたる。オキシトシンとの最大の違いは単回投与で数時間の子宮収縮を維持できる点にあり、予防のために持続静注ラインを確保・管理する手間を省ける。この利便性から、とくに帝王切開時の予防で単回投与の簡便さが評価される。

位置づけ

の中で、は「オキシトシンと同じ受容体を使うが、だけを延ばした薬」として位置づけられる。

分類 代表薬 位置づけ
短時間作用型薬 オキシトシン 予防の第一選択。半減期が短くまたはが必要
長時間作用型薬 単回投与のみで数時間作用が持続。帝王切開時の予防で持続静注の手間を省ける
PG系 ・ オキシトシン系が使えない・無効な場面の代替

の2025年統合ガイドラインは、予防にされたを1剤用いるという推奨のもとで、オキシトシン・・の3剤を挙げ、複数選択肢がある環境ではオキシトシンを第一選択としている1。

機序

オキシトシン受容体に選択的に結合し、のリズミカルな収縮を刺激する2。受容体そのものはオキシトシンと共通であり、作用の質はオキシトシンと変わらない。異なるのは分解されにくい構造による作用のである。

薬物動態

半減期は後33分・後55分と、単回の消失動態だけを見ればオキシトシンよりやや長い程度だが、実際にはこの半減期以上に子宮収縮作用そのものが数時間にわたって維持される2。⭐ この「単回投与で数時間の効果」が、オキシトシンの持続静注に対する最大の利点である。

適応

  • 帝王切開時の脊髄・下での(による)の予防
  • 経腟分娩における同様の予防(英国SmPCでは・いずれも可)2

⚠️ 日本国内での承認は確認できなかった。 PMDAの添付文書検索でまたは想定商品名を確認したが該当する承認品目は見当たらず、本ノートは英国のSmPC(Pabal)を出典とする。日本国内での使用を検討する場合は、承認状況を別途確認すること。

💡 製剤はコールドチェーンが確保できない環境向けの選択肢として位置づけられている。 10か国23施設・29,645例の経腟分娩を対象とした CHAMPION試験は、をオキシトシンと比較し、出血500 mL以上または追加使用というではを示したが(14.5% 対 14.4%)、より重症側の出血1,000 mL以上という評価項目ではを示せなかった3。⚠️ 経腟分娩後の出血予防という文脈での成績であり、重症のPPHに対する治療薬としての位置づけではない。

用法・用量

100 µgの単回投与のみ(は行わない)。帝王切開ではに限り、経腟分娩ではまたはのいずれかを選ぶ。はを避け、1分かけて緩徐に行う2。児娩出後、できるだけ早く(前が望ましい)投与する。

禁忌・注意

禁忌・注意 内容
分娩前・妊娠中の投与 ⚠️ 禁忌。作用が数時間持続するため、児娩出前に使うと・の危険がある2
肝疾患・腎疾患 禁忌2
重篤な心血管障害 禁忌2
てんかん 禁忌2

副作用

では頭痛・振戦・めまい、悪心・腹痛、頻脈・徐脈、低血圧・が報告されている。では頭痛・めまい、悪心・腹痛・嘔吐、頻脈が主体となる2。

まとめ

  • はオキシトシン受容体を作動させる長時間作用型オキシトシン誘導体で、単回投与で数時間の子宮収縮を維持できる。
  • 適応は帝王切開時・経腟分娩時のによるの予防で、100 µgの単回投与のみを用いる。
  • 製剤はコールドチェーンが確保できない環境での代替として位置づけられ、も条件付きで推奨する。
  • 禁忌は分娩前・妊娠中の投与、肝疾患・腎疾患、重篤な心血管障害、てんかん。
  • 日本国内での承認は本ノート作成時点で確認できなかった。

出典

  1. 1.Consolidated guidelines for the prevention, diagnosis and treatment of postpartum haemorrhage(世界保健機関(WHO。FIGO・ICMと共同で公表)・2025)WHO IRISのPDF全文(116頁、2025年10月5日公開、ISBN 978-92-4-011563-7)の推奨一覧と各推奨の Justification・Remarks で確認した。予防では推奨7「The use of a quality-assured uterotonic is recommended for the prevention of postpartum haemorrhage during the third stage of labour for all births.」のもとに7.1オキシトシン10 IU筋注/静注、7.2カルベトシン100 µg筋注/静注(低温流通を保証できない環境では耐熱性製剤)、7.3ミソプロストール400 µgまたは600 µg経口を置き、推奨10で複数の子宮収縮薬が使える環境ではオキシトシン10 IUを第一選択とするとしていること、オキシトシン・カルベトシンとも「best given immediately (preferably within 1 minute) after the birth of the baby or babies」と付記されていることを確認した。閲覧 2026-09-07
  2. 2.Pabal 100 micrograms in 1ml solution for injection — Summary of Product Characteristics (SmPC)(electronic medicines compendium (emc) — Ferring Pharmaceuticals・2023)全文で確認した(テキストの改訂日は2023年10月17日)。カルベトシンはオキシトシン受容体に選択的に結合し子宮平滑筋のリズミカルな収縮を刺激する合成オキシトシン誘導体であること、半減期は静脈内投与後33分・筋肉内投与後55分で、作用は数時間にわたり十分な子宮収縮を維持できること、適応は帝王切開時の脊髄・硬膜外麻酔下および経腟分娩における子宮弛緩による分娩後出血の予防であること、用量は100 µgの単回投与のみで帝王切開では静脈内のみ、経腟分娩では静脈内または筋肉内のいずれも可、静脈内投与は1分かけて緩徐に行うこと、禁忌として肝疾患・腎疾患、重篤な心血管障害、てんかん、分娩前・妊娠中の投与が明記されていること、主な副作用は静脈内投与時に頭痛・振戦・めまい、悪心・腹痛、頻脈・徐脈、低血圧・顔面紅潮、筋肉内投与時に頭痛・めまい、悪心・腹痛・嘔吐、頻脈が報告されていることを確認した。閲覧 2026-09-07
  3. 3.Heat-Stable Carbetocin versus Oxytocin to Prevent Hemorrhage after Vaginal Birth(New England Journal of Medicine・2018)10か国23施設・29,645例の経腟分娩を対象としたRCT(WHO CHAMPION試験)で、耐熱性カルベトシンはオキシトシンに対し出血500 mL以上または追加子宮収縮薬使用という主要評価項目で非劣性を示したが(14.5% vs 14.4%)、出血1,000 mL以上という評価項目では非劣性が示されなかったと報告閲覧 2026-08-26