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Symptoms · Published

徐脈

Bradycardia

別名
徐拍bradycardia
臓器系
循環器
科目
Internal MedicinePhysiologyPharmacology
トピック
内科学 L-06:徐脈患者の鑑別診断と管理生理学 2.1:心臓における興奮の発生と伝導。ペースメーカー電位の機序薬理学 Core65:薬剤性有害反応:徐脈・房室ブロック内科学 L-41:低K血症・高K血症
関連疾患
コリン作動性クリーゼ急性冠症候群甲状腺機能低下症自律神経過反射徐脈性不整脈(洞不全症候群・房室ブロック)
起因薬
アルプロスタジルアンベノニウムエポプロステノールオキシメタゾリンカルバコールキシロメタゾリンナファソリンピリドスチグミンピロカルピンベタネコール

🧠 全体像:徐脈という所見に出会ったら、最初に決めるのは原因の探索順ではなく「症候性か無症候性か」である。血行動態が破綻していれば原因の特定より先に安定化を進め、そうでなければ可逆的な心外性原因があるかを系統的に洗い出す。徐脈の多くは伝導系そのものの疾患ではなく、薬剤・電解質・内分泌・といった心臓の外から説明がつく。心外性の原因を除外して初めて、や房室ブロックといったとしての精査に進む。の適応や房室ブロックの分類はのノートに譲り、ここでは所見としての徐脈にどう向き合うかを軸に置く。

定義と用語の整理

  • 成人では心拍数<60/分を徐脈と定義する。ただし救急の現場で治療対象となるのは通常50/分未満で、かつ臨床状態に対して不適切な場合であり、心拍数の絶対値だけで介入を決めない1
  • 訓練された運動選手の安静時や、睡眠中の生理的は正常範囲であり、無症候であれば病的意義を持たない。
  • 「徐脈」は所見、「」は疾患概念という区別を保つ。徐脈は心拍数の記述にすぎず、原因は伝導系の異常に限らない。・房室ブロックという伝導系自体の異常を指す用語で、心外性の徐脈をここに含めない。
  • 💡 (発熱の程度に見合うはずの頻脈が伴わない状態)も臨床的意義を持つ。で知られるが、これは頻脈が「出るべきなのに出ない」現象であり、本稿で扱う徐脈そのものとは性質が異なる。

病態生理

徐脈の機序は、部位で3群に整理すると鑑別が動く。

機序 代表例
低下 加齢性線維化、虚血、心筋症、の亢進
の障害 虚血(とくに)、変性疾患、浸潤性疾患、術後
心外性・可逆性の原因 薬剤、電解質異常、内分泌疾患、低体温、頭蓋内圧亢進、低酸素血症、

は、を介した緩徐な脱分極(If)にT型・L型が続くことで生まれる。副交感神経はの開口でを過分極させ、このを遅らせる。迷走神経の効き目は交感神経より強いため、の亢進だけでも著明な徐脈を来しうる。の障害はとは別の問題で、ブロックの分類や部位診断はに譲る。

心外性・可逆性の原因は「見逃さない」という観点でとくに重要である。

代表例
疼痛、・嘔吐、排便・排尿、の圧迫、操作
薬剤 β遮断薬、)、ジゴキシン
電解質 カリウム
内分泌
体温 低体温(
中枢性 頭蓋内圧亢進(脳浮腫で解説)
呼吸性 低酸素血症(夜間の迷走神経優位による徐脈)

これらはいずれも伝導系自体は正常であり、原因を除去すれば徐脈も解消しうる点で・房室ブロックと本質的に異なる。

⚠️ 見逃してはいけないこと

⚠️ な徐脈は、原因検索より先に安定化を進める。 低血圧、意識変容、虚血性胸部症状、のいずれかが徐脈に起因すると判断したら、可逆的原因の補正と並行して1 mg静注を3〜5分ごとに反復し(最大3 mg)、無効ならへ進める1。段階分けの詳細はの急性期治療を参照する。

⚠️ は徐脈・房室ブロックを伴いやすい。 は多くの例での両方を灌流し、虚血そのものに加え再灌流時の)も徐脈を助長する。徐脈を単独のと決めつけず、を示す胸部症状・心電図変化を必ず確認する。

⚠️ は徐脈から数分で心停止に至りうる。 、P波消失、という進行を追い、やブロックが出現したらカリウム値の結果を待たず静注カルシウムで心筋を保護する。

⚠️ 薬剤性、とくに中毒量では通常の徐脈治療が効きにくい。 ジゴキシン中毒、β遮断薬・Ca拮抗薬の過量では、や通常量のに反応が乏しいことがあり、、グルカゴン、など原因に応じた特異的治療を検討する。

⚠️ 頭蓋内圧亢進によるを徐脈単独の問題として扱わない。 高血圧・・徐脈・不規則呼吸が揃えばが切迫しており、心拍数への対処より頭蓋内圧そのものの管理を優先する。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["徐脈を確認"] --> B{"めまい・失神・呼吸困難・<br>胸部症状・意識変容を伴うか"}
    B -->|"いいえ"| C["無症候性として経過観察<br>薬剤歴・既往を確認"]
    B -->|"はい"| D["ABC・モニター・血圧・SpO2・<br>12誘導ECGを速やかに実施"]
    D --> E{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemodynamic instability'>血行動態不安定</span>か"}
    E -->|"はい"| F["安定化を優先しつつ<br>可逆的原因を並行して検索"]
    E -->|"いいえ"| G["病歴・身体所見で<br>可逆的な心外性原因を検索"]
    F --> H["血算・電解質・甲状腺機能・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='drug concentration (drug level)'>薬物濃度</span>・動脈血ガス"]
    G --> H
    H --> I{"心外性の原因が見つかるか"}
    I -->|"あり"| J["原因を是正し徐脈の推移を確認"]
    I -->|"なし"| K["心エコーとECGで<br>伝導系そのものを評価"]
    K --> L{"ECGは<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sinus (cardiac origin)'>洞性</span>か房室ブロックか"}
    L -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sinus (cardiac origin)'>洞性</span>"| M["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sinus node dysfunction'>洞結節機能不全</span>として精査"]
    L -->|"房室ブロック"| N["房室ブロックとして精査"]

では薬剤歴(新規開始・増量)、透析歴、の既往、・頭痛を必ず確認する。身体所見では、浮腫、甲状腺腫、体温を評価し、検査はと電解質・甲状腺機能・・動脈血ガスを軸にする。心外性の原因が除外できて初めて、心エコーや長時間心電図で伝導系そのものの異常を精査する段階に進み、か房室ブロックかに応じてとしての精査へ移る。

対応の考え方

介入の主軸は「徐脈そのものを抑える」ことではなく、原因が可逆的かどうかで決まる。

  • 可逆的な心外性原因があるとき:原因治療が第一選択である。原因薬剤の中止・減量、の是正、甲状腺ホルモン補充、、頭蓋内圧の管理を行えば、多くは徐脈自体への介入なしに解消する。やペーシングは、原因是正が効くまでの橋渡しとして使う。
  • 血行動態が不安定なとき:原因が判明する前でも、→昇圧性薬剤・という順で心拍数そのものに介入する。原因検索を止めない。
  • 可逆的原因がなく、伝導系自体の異常(・高度・など)が確認されたときが定義的な治療となる。適応の詳細はに譲るが、症状との時間的関連が明確なと、可逆的原因のない後天性以上の房室ブロックが主要な適応である2
  • 無症候性で可逆的原因もないとき:とくに睡眠時や運動選手の生理的徐脈は、それだけで治療対象にしない。

まとめ

  • 徐脈は心拍数<60/分と定義されるが、治療対象となるのは通常50/分未満かつ症状に不適切な場合である。
  • 「徐脈」は所見、「」は伝導系自体の疾患概念という区別を保つ。
  • 機序は低下、の障害、心外性・可逆性の原因の3群に整理する。
  • 心外性の原因には、薬剤、症、低体温、頭蓋内圧亢進、低酸素血症、がある。
  • な徐脈は原因検索と並行してへ速やかに進める。
  • 、薬剤中毒、頭蓋内圧亢進によるは見逃すと致命的になりうる。
  • 心外性の原因があれば原因治療を優先し、やペーシングは橋渡しとして使う。
  • 可逆的原因のない房室ブロックや症候性のは、が定義的な治療となる。

出典

  1. 1.2018 ACC/AHA/HRS Guideline on the Evaluation and Management of Patients With Bradycardia and Cardiac Conduction Delay(American College of Cardiology / American Heart Association / Heart Rhythm Society・2018)可逆的原因のない後天性Mobitz II型・高度・完全房室ブロックは症状の有無にかかわらず恒久ペースメーカー植込みの主要適応であり、洞結節機能不全では症状との時間的関連が確認された場合に適応となることを確認した閲覧 2026-08-03
  2. 2.Adult Bradycardia With a Pulse Algorithm(American Heart Association・2025)症候性徐脈の初期薬物治療はアトロピン1 mg静注を3〜5分ごとに反復し最大3 mgとすることを確認した閲覧 2026-08-03